新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

19 / 37
あけましておめでとうございます。そしてお久しぶりです
いよいよガメラ1編最終話となった14話をお送りします。また細かく区切ってもアレなので一気に最後まで書き上げました
原作とかなり変わっておりますがご容赦くださいませ


第14話

江の島海岸にギャオス現る。ありえない報告にGフォース、特殊戦略作戦室共に混乱していた

 

樹海がある富士山周辺から江の島海岸までは直線距離で77kmも離れている

距離もそうだが、何よりギャオスに地下の岩盤を掘削する能力があるとも思えない

だが実際に二羽の巨鳥は夕闇迫る江の島海岸に存在し、江ノ島水族館に顔を突っ込んで中で飼育されている水棲動物たちを貪り食っている

 

後に判明したことだが、ギャオス2羽は地下を掘り進んで江の島まで移動したわけではなかった

古くから、富士山北西麓の地下にある火山噴火の溶岩で出来た洞窟は江の島まで続いていると言う言い伝えがあり、それが真実であった

一際巨大なガスの噴出痕が長く長く続き、藤沢の地下まで広がり、そこを通じてギャオスは人類側の防衛網を突破したのだ

 

 

幸運にもギャオスの飛行能力を考慮し、関東一円に避難命令が発令されていたため水族館に客の姿はなく、周辺の住民も既に避難を完了させている

 

だが、自衛隊とGフォースは完全に出鼻をくじかれる形となった。富士周辺に展開している陸上部隊は移動に時間がかかりすぎ、その上空中待機中であった航空機部隊も丁度定時交代の時刻であった

幸運にも厚木基地にて待機中であった轟天号の艦載XF-1部隊が発進可能状態で待機していたため、即座に全機がスクランブル発進

同じく厚木基地所属の米軍空母艦載機部隊もその後を追って随時出撃していった

江の島に近い米軍横須賀基地所属のミサイル巡洋艦にGフォースを経由しての支援指示が届けられ、衛星によって捕捉されたギャオスへの攻撃が開始された

 

江ノ島水族館の魚や動物たちをすべて食べつくしたギャオス二羽は、久方ぶりの食事に満足したような声を上げ、破壊した水族館の跡地に座り込んでいる

その姿を探査衛星から解析していたGフォース基地では、ギャオスの体内にギャオス本体とは別の熱源があることを発見する

複数の小規模な熱源がギャオスの下腹部に集まっているのだ

 

……妊娠している

司令部の人員は総毛だった。同時に米海軍が発射したミサイルがギャオスに迫る

着弾数十秒前になったところで、二羽のギャオスは首をしきりに回転させて何かを調べ探るような仕草をした後、一気に水族館跡地から飛翔した

寸前になって発射されたミサイル群が水族館に着弾する

 

直撃を受けて水族館に爆炎が立ち上がる。と、爆風の中から紫色の粘液に紛れて白い何かが飛び出してきた

卵の破片だ。矢張りギャオスは既に妊娠し出産を行おうとしていたのだ

 

寸ででミサイルを回避したギャオスたちは卵を破壊された怒りの鳴き声を上げ、凄まじい速度で北上を開始する

そこに第二派の艦対空ミサイルが飛来するが、それを全てギャオスは回避した

翼を自在に変形させ、翼長100mはあろうかと言う巨体が空中で躍動する

鮮やかな回避運動、反転するミサイルに対して発射されるヴァイブレート・レイ

ミサイルは次々と超音波の刃に破壊され、空中が爆発の光で照らされ、煙を突っ切ってギャオスは進む

だが海の果てには未だ落日に至っていない太陽があり、本来ならばまだギャオスは行動が緩慢なはずだ

何故日の光が強いこの時間帯であんなにも素早く動くことが出来るのか?

 

困惑するGフォース司令部に、つくばから現地に向かって移動中のGフォースヘリより通信が入る

連絡を入れたのは真弓だ。彼女と米盛、草薙親子に藤戸親子がヘリに乗り込んでいた

意識を取り戻した浅黄とみどりがガメラの接近を感知し、それを知らせるべく現地に向かっていた

その機中で、Gフォース司令部に送られてくる映像データを未希が持つデバイスを経由して転送し分析していたのだ

真弓はギャオスの顔に着目していた。目の部分に赤黒く光を反射する、遮光板の様な器官が見て取れる

既にギャオスは太陽への対抗が完了していたのだ。もはや太陽すら人間の力にはなれない

それだけでなく、その部位がフィルターの様な役目を果たし、ミサイルが放っている誘導用の電波を目視しているのだという

ハチドリが紫外線を目で見ることが可能な様に

そしてそれに加えて鋭敏な聴覚があり、接近する発射音でミサイルの兆候をつかんでいたのだ

 

真弓の解説に司令部の一堂は愕然となる。もはや一刻の猶予もない、このギャオス二羽を速やかに殲滅しなければ日本が、否、世界が滅んでしまう

 

 

小林、月岡率いるXF-1隊がギャオスを補足した頃、ギャオスは既に川崎市の上空にまで到達していた

扇島にある自動制御された工業企業の製鉄施設が無人のまま稼働しており、その光に誘導されたギャオスは地上の工場施設に向かって無差別にヴァイブレート・レイを照射。直撃した工場群が炎に包まれる

 

XF-1部隊が攻撃を開始した。増槽をパージしミサイルを発射。運動性でXF-1に劣る米軍航空機隊は上空に残って援護に徹し、XF-1とF-16改の即席編隊が速度を上げて突撃する

 

ミサイルを感知したギャオスは体を高速でローリングさせて全てを回避し、逆に戦闘機部隊に突撃。すれ違いざまにヴァイブレート・レイと翼から生み出す衝撃波で複数のF-16を撃墜する

重力制御装置のお陰で強引な空中機動が可能なXF-1部隊は辛うじて撃墜を免れるが、自機よりも優れた空中飛翔能力を持つギャオス相手のドッグファイトは厳しく、辛うじて発射位置に付けてもビーム、ミサイル共に悉く回避されてしまう

 

意識がレッドアウトするギリギリでのマニューバー戦が繰り広げられる中、ついに小林機の真後ろをギャオスが取る。口が開かれ、その奥に黄色い輝きが見えたその瞬間

ギャオスの真上から炎の塊が飛来した!

 

小林機とギャオスの合間を縫うように落下してきた火球によってギャオスはスピードを落とさざるを得ず、小林機は上空に向かって退避する

 

そしてそれとすれ違うかのように、雲の合間から爆光を伴ってガメラが現れる!

 

傷を癒し、浅黄、みどりとの交流を経て人の心の強さを得たガメラは勇猛果敢にギャオスに向かって頭部から突撃を仕掛ける!

回避できなかったギャオスは体当たりを受けて吹き飛ばされ、態勢を整えるとガメラが連射するプラズマブリットを回避しながら速度を上げ、ここに怪獣同士の空中戦が開始された

 

一方、それを目撃したもう一羽のギャオスは相方を援護しようとするが、それを阻止せんと眼前を光の帯が貫く!

 

振り返れば、浮島に上陸したゴジラの姿があった

3度に渡って逃げおおせたギャオスにゴジラの怒りが向かう

 

なぜゴジラがここまでギャオスに怒りを向けるのか

それは、ゴジラの一族が持つ固有能力に端を発する

ゴジラとその同族は、身振りと鳴き声だけではなく、脳波同士をテレパシーの様に伝達することでコミュニケーションを取っている。その強さは地球の反対側にいても互いに伝え合うことが可能なほどで、ゴジラはアドノア島にいながら、常に頭の片隅で母たる梓の心の声を聞こうとしていた

そこに、姫神島の上空でギャオスに襲われた時の、梓の恐怖心が強烈な精神波となって飛び込んで来る

愛しい母に向かって悍ましい口を広げ襲い掛かる醜悪な悪魔。ゴジラがこれを許せるはずもない

そしていざ日本で戦ってみれば、ギャオスは他の多くの人の心に恐怖を植え付け、凄まじい恐怖の感情がゴジラに雪崩れ込む

人類を半ば同族として認識していたゴジラは、ギャオスを自分『達』の絶対な敵と判断したのだ

 

眼前の相手に怒りを抱いているのはギャオスも同じ、幾度も自分たちを邪魔した忌々しい存在に対し、成長しきったギャオスもこれまでと同じではないとばかりに、今度は逃げずに躍りかかる

 

ゴジラの目の前にヴァイブレート・レイを放って建物を爆破し、一瞬の衝撃と煙でゴジラのスピードが落ちたところに、両足を高く掲げ、猛禽類の狩りのようにギャオスが襲い掛かる

鋭い爪がゴジラの顔面を削り、スパークが散る

見ればギャオスの足の爪が黄色い光を帯びている。ヴァイブレート・レイの応用で、喉の骨で発生させた超音波を骨伝導で足の爪にまで伝搬させ爪の殺傷力を高めたシェイバーネイルだ

超振動する爪でゴジラの顔を集中的に狙い、頭部に向かってもヴァイブレート・レイを撃ち込むギャオス

苦悶の声をゴジラは上げ、腕と尾を振り回して顔から引き離そうとするが、素早いギャオスはその攻撃を回避して常に頭部やや上を陣取って、熱線を封じたままゴジラへの攻撃を繰り返す

 

とうとう奴もゴジラ並みか

麻生司令の呟きが司令部に溶けていく

 

一方、ガメラとギャオスの空中戦も熾烈を極めていた。速度に優れるガメラと運動性に優れるギャオスは相変わらずで、速度で追い詰めたガメラを急激な機動でギャオスは引き離し、プラズマブリットを掻い潜ってはヴァイブレート・レイを撃ち込み、ガメラはそれを甲羅で受け止めるを繰り返す

 

 

一進一退の攻防が続く中、ガメラは急に機首、頭部を真上に向け急上昇する

尻目を挑発するようにギャオスに向けると、成長によってガメラと互角にまで強大となったギャオスはそれに乗り、翼を折りたたんで全身を細くし、凄まじい速力を発揮してガメラに追従する

ガメラ、ギャオス共に速度はマッハ3を突破、XF-1部隊の追従も不可能な速度で垂直に上昇し、ついには大気圏を突破する

ガメラの上空を取り、ギャオスは嗤う。それは高い知能を持ったがゆえに同じく得てしまった油断と慢心

それを同じく高い知能を持つガメラは利用した

足のジェットの推力を敢えて弱め、ギャオスに自分をオーバーシュートさせたのだ

そのまま足に噛みつき、今度は大気圏に向かって自分から突入する

断熱圧縮によって赤熱化する二大怪獣。ゴジラ並みの体躯を手に入れたとはいえ、ガメラやゴジラ程の熱耐性を持ち合わせていないギャオスは全身を焼き尽くす熱に絶叫する

 

熱圏を突破し落下するガメラ、地上でギャオスを狙うゴジラを、多摩川を挟んだ羽田空港の上空、Gフォースヘリの中から米森と浅黄たちが見守っている

ガメラの感覚を追って、ヘリの天井越しに空を見上げる浅黄とみどりの頬にうっすらと紅い線が伸びる。足に食らいつくガメラを引きはがそうとギャオスが放ったヴァイブレート・レイのダメージがフィードバックしているのだ

幸運だったのは、交信器具である勾玉を二人同時に触ったことで浅黄とみどりの二人が同時に交信者になった事でダメージのフィードバックが二人に半分ずつに分かれている事だろう

 

熱に耐えかねたギャオスは、がむしゃらにヴァイブレート・レイを連射してガメラを引きはがそうとする

 

浅黄たちの全身に、ガメラからのダメージが痛みとなって襲い掛かる。苦しむ娘を案じて、強く手を握りしめる、草薙と拓也たち

ゴジラも、一瞬の隙を突かれ首筋にギャオスが噛みつき、苦悶の唸り声をあげている

 

このままでは…その時、未希が浅黄とみどりに向かって叫ぶ

ガメラに、ゴジラの方に向かってギャオスを投げつけ、ゴジラと同時に攻撃するように伝えて欲しいと

 

勾玉を強く握りしめる浅黄とみどり、一方未希も胸にぶら下げるモスラの紋章を模したネックレスを握り、ジュニアに向かって思念を送る

ギャオスをガメラに向かって投げて欲しいと。かつてより自分の超能力の力は落ちている。怪獣達の思念を読み取ることはできるが、自分から伝えることはできなくなりつつあった

でも、もしここで伝えることが出来るなら…!

 

ガメラと、ゴジラ。二大怪獣の瞳に意思の炎が宿り、互いを無音のままに見つめ合う

種族も違う

姿も違う

だが今だけは、同じ未来の為に二体の怪獣は戦うことを決めた。この悪魔を打ち倒すという未来の為に

 

ギャオスを黙らせるためにガメラは空中でスピン、空中回転攻撃シェルカッターでギャオスをヴァイブレート・レイが撃てない状態に追い込み、その超回転の勢いのままゴジラに向けてギャオスを投げつける

 

一方のゴジラも、熱線のエネルギーをチャージしながら頭にかじりつくギャオスを離れないならばと言わんばかりに両腕で抑え込み、全身を回転させてギャオスへと投げつけ、同時に熱線を発射!

 

ゴジラの放った熱線はギャオスを押し上げ、ガメラから投げつけられたギャオスに向かって吹き飛ばしていく

一方ガメラも体内のプラズマエネルギー精製炉を限界まで稼働させ、従来発射している数倍の大きさまで巨大化させたプラズマ火球『ハイ・プラズマブリット』を発射する!

 

ゴジラが放った熱と圧力、電子が肉体を燃やし、潰し、貫通する感覚の中、ギャオスは目の前に同胞が、自分と同じように宿敵の熱攻撃に押し込まれながら自分に向かって来ている光景を見る

それはギャオスが見た最後の景色、断末魔を上げる暇すらなく、二羽のギャオスは空中で熱線と火球の挟み撃ちになり大爆発を起こした

 

川崎駅一体のエリア上空にまで広がる、プラズマの衝突で発生したバースト

オーロラの様な幻想的な空模様を見て、浅黄とみどりは脱力する。小さな体躯で怪獣に立ち向かった少女たち、草薙も、拓也も雅子も、そんな娘の姿に誇らしさと痛ましさを同時に感じ涙ぐむ

 

工場街の廃墟に着陸するガメラ、向かい合うゴジラ。二体は同時に咆哮する。共鳴する咆哮がどこまでもどこまでも響き渡り、ガメラは浅黄とみどりを一瞥すると、そのまま空へと消えていった

米盛には、一瞬だけだがガメラの表情が柔らくなったように見えた

ゴジラも未希のいる方向へ、自らの行いを誇る様に鳴くと海に向かい、日本を去っていく

 

ガメラの声が聞こえなくなった。悲しむ浅黄とみどりの頭を未希が撫でる。きっとこっちからの声は伝わっているから大丈夫。またいつか会える、と

 

戦いは終わった。だが、これはある意味で始まりだ。大西洋を起源とする文明が生み出したギャオスが日本にいたと言うことは、地球規模での渡りを行った可能性がある、と拓也と米盛、真弓は言う

今もこの世界のどこかで新たなギャオスが産声を上げる瞬間を待ちわびているかもしれない。その可能性は非常に高い、否、むしろ時間の問題だろう

その時こそ、再びガメラは現れるだろう。災いを消し去る希望として、そしてゴジラも

 

人類は歩みを進めなくてはならない。ギャオスの復活を抑制し、地球生命ともっと寄り添いあって生きる世界を創るために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等の再会の時は、ここにいる全員が思うよりも余程早く、最悪な時になる等とは、誰もが想像だにしていなかった




誤字脱字などございましたらどんどんご指摘ください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。