新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

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長らくお待たせいたしました…方向性などで悩んでいましたが何とか形になってきています
第15話をお送りいたします


第15話

ギャオスとの戦いが終わってから数か月、秋も深まってきた晩秋の頃

昨今俄かに、トレジャーハンター業界が活気づいている

それまでオカルトや似非歴史扱いされていた超古代文明の信ぴょう性が、インファント島の現存する遺跡群の研究や、ガメラギャオスと言った当時の残滓と言える怪獣の存在で確定的となり

改めて伝承や口伝に登場する現人類史以前に存在していたかもしれない、古代の遺物の価値が好事家の間で高騰したのである

それに欲をかいたトレジャーハンターの活動が活発化、発掘作業を行う国に無許可での発掘、サルベージを行う悪質なトレジャーハンターの数が増加

そう言った悪質な連中は平然と遺物の捏造を行うこともあり、好事家も良識を持たない人間は贋作と理解した上でステイタスになれば何でもいい、と言う悪循環となり、ある種の社会問題となってしまっていた

これを重く見た国連科学委員会U.N.S.C.とユネスコは、世界各国と合同で規制を強化する方針を取る

 

同じ頃、ルポライター寺沢健一郎は南太平洋のキリバス共和国に居た

同国最東端のライン諸島の南端に小さいティアボー島は存在する

1941年、米軍と日本軍が激突する後のガルヴァニック作戦の事前準備に、このティアボー島をキリバス諸島群へ部隊を展開するための橋頭保として連合軍が確保、多数の米兵が島に進出し当時の様子を日記や報告の形で残していた

この時に記された米兵の日記を偶々入手したところ、現地の島民との交流を記した文面の中で、虹を背負う悪魔と言う伝承を島民が語った事に健一郎は気づく

 

不吉な枕詞が付属した虹と言うキーワードに健一郎は聞き覚えがある

それはかつて藤戸拓也が解読した、ガメラの甲羅に載っていた石碑のフレーズだ。あちらでは死の虹、こちらでは虹を背負う悪魔。何かしらのつながりがあると健一郎の感が告げており、それに従うことに彼は決めるのだった

 

 

健一郎がティアボー島に滞在して今日で二週間程になる。人口わずか500有余名、観光資源も皆無なキリバスの辺境の島を訪れた日本人を島民は皆珍しがっていたが、陽気で外界からの渡来者にも快く接する島民と健一郎が意気投合するのに時間は掛からなかった

現在彼は村で唯一のスーパー兼民宿を拠点とし、島のあちこちを探索したり、村の人々を相手に島に伝わる口伝やしきたりについての情報を集めている

彼の世話をしているのは、村長の娘アーヤとカレンの2名。閉鎖的な村の環境を憂慮し、外の世界で新たな知識を得て欲しいと考えていた村長と当人二人にとっては、外の世界の知識を得るのにちょうどいい機会であった

 

人当たりの良い村民は、健一郎の質問の殆どには快く答えてくれた。島の成り立ちや伝承について、戦時中米兵と殴り合いになった、その時島民と結婚した子孫が自分だという自慢話等

だが死の虹、虹を背負う悪魔の話題になると住民たちは皆口をつぐんだ。正確には、一定以上の年齢の村民は話をはぐらかしたり話を逸らす一方、それよりも若い世代の村民は純粋に意味を理解していないように健一郎は感じた

島の情報が記載されているキリバス政府の公的資料などを読み解けば、島内のほとんどを占める森林地帯の奥深くに何時頃に建築されたのか不明だが小さな遺跡が残っていることは分かる

だが元々国家予算が多くない国と言うこともあり、学術的な調査はされていなかったようだ

この遺跡が怪しいが、自分だけで到達することは難しいと健一郎は理解もしていた

 

そんなある日、ティアボー島の沖合に、クレーンやガントリーを甲板上に多数設置した見慣れない船が現れ、そこから何人かの人物が島に上陸。村長に対し島の発掘調査を行うと宣言した

現れた集団のリーダーの名はマクロム・ジェロムと名乗り、その名に健一郎は心当たりがあった

フランスの新鋭IT企業の創始者で、数年前にTIMES紙のパーソン・オブ・ジ・イヤーを飾ったこともある

企業経営者とは別に、趣味としてトレジャーハンティングを行い海底から沈没船を引き上げ財宝を手に入れたことがニュースになった事もあるが、同時にユネスコが制定した沈没遺産を保護する条約を破ることも平然と行っており、評判のいい人間とはお世辞にも言えない

彼は悪びれることもなく島の森林の奥にある遺跡部分の発掘を行うと宣言、人員を村民からも募集するが、その高圧的な態度から参加する村民は出てこず、自分の許可もなく勝手な事をするなと怒る村長にもキリバス共和国政府からの許可状を見せて黙らせる

横柄な態度に怒りを感じた健一郎の記事にするという挑発にも動じなかった

 

翌日からマクロム一派は島の中央で発掘作業を開始、平然と爆発物や銃器を持ち込んで森林を切り開き、森の中央部にある古代遺跡への道を作り上げると、遺跡を解体しながら内部を掘り進んでいる様だ

いきなり自分達が住む島で好き放題し始めた外部の人間に怒った村民は抗議の声を上げるが、恫喝に近い警告を受けては引き下がるしかできなかった

 

やがてマクロム一派は発掘と伐採作業を終了し、撤収の準備を始めた。切り開かれた森をそのままに揚々と引き上げるマクロム達

健一郎はマクロム自身が運転するトラックの上に載っている物を見て驚愕する

太陽の光を浴びて紅、蒼、橙と極彩色に輝く人一人分はあろうかという大きさの宝石。おそらくはオパールだろう巨大な宝石だった

それを見た瞬間村の大人たちの一部が息をのむ、或は悲鳴を上げると言ったりアクションを取った。そして顔面蒼白となった村長が一団から飛び出しトラックを止めようとするが、それも目に入らないのかマクロム達は船へと引き上げていく

 

後に残され途方に暮れる村長に、健一郎は問いかける。あの宝石はなんなのか、森の奥の遺跡には何があったのか

 

憔悴しきった顔の尊重はただ一言、バルゴンが解き放たれた。とだけ呟くのだった

 

 

バルゴン。それはこの島の村民に伝わる虹を背負う悪魔の名。遙か太古より数千年に一度目覚め、島の様な大きな体で暴れまわり、背負った虹でこの世全てを死と冬で埋め尽くす、始まりは鮮やかに輝く石である。それは宝ではない、悪魔の始まりである

そう健一郎が渡された古文書には残されていた

代々の村民はその伝承の通り遺跡や島そのものに誰も近づかせないようにしていたが、大戦中の連合国兵士との邂逅と人類文明電体のグローバル化の波によって島の若い世代には外の世界に興味を持ち、島民たちの中には伝承は所詮迷信であるという考えも広まりつつあった

ならば狭い島で一生を終えるよりは、とある年を境に言い伝えの継承を辞めていたのである。それゆえ、伝承そのものの知名度が一定の世代で完全に二つに分かれていたのだ

 

だが、伝承は真実だった。その通りの巨大なオパールを見た村長は確信したという。最も、時すでに遅きに失していたのだが

あれが外の世界に解き放たれるのを防がねばならない。バルゴンの正体は島の人間もわからない、だが伝承がその通りであれば、あの宝石はまさに怪獣の卵だ。覚醒する前にマクロム達を止めなければ

 

健一郎は国連G対策センターから、現地調査中の緊急事態に備え、Gフォース基地に直通で世界中から連絡を送れる専用の衛星携帯電話を持たされている

それで島で起こった出来事とバルゴンの伝承についてを麻生司令官たちに伝えると、自分もマクロムを追うこととした

村長の提案で、バルゴンを殺す時に必要だと代々村の長の家に受け継がれている、これまた巨大なダイヤモンドを持ち、アーヤとカレンの姉妹も健一郎に同行。G対策センターの緊急措置により、パスポートを持たない彼女ら二人も国外での行動が許可された

 

日本まで行くのは時間がかかる。空路でティアボー島を立った健一郎たちは、首都タワラから飛行機に乗ってグアムを経由し日本への帰国ルートを取った

幸運だったのは、国連がアメリカ経由でグアム政府に便宜を図り、グアムにある米軍アンダーセン空軍基地から特別機を飛ばしてくれる手筈が整ったことだ

タワラからグアムまで日数がかかっており、先に島を出発したマクロム達からは大分遅れている

だが、国連の調査でキリバスはマクロムに発掘の許可など出していない事、あの時提示した許可証は偽造されたものの可能性が高い事から、今度どこかの港に寄港すればそれを理由に彼らを一時拘束することも可能だと健一郎は踏んでいた

しかし、既に事態は健一郎の想像を超えた方向に進んでいた

 

アンダーセン基地で健一郎が受け取ったG対策センターからの電話

それによると、マクロム達の船はフィリピンにある拠点に戻る途中、カロリン諸島、ディナイー島付近でメーデーを発した直後に通信が途絶

ミクロネシア連邦海軍の救助機がスクランブルし駆けつけた時には、既に海面に船の残骸がバラバラになって散乱し、謎の液体で海の水面が紫色に変色していたという

 

バルゴンの卵の行方は、わからなくなってしまった




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