新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

23 / 45
今回もバルゴン編の続きでございます
次々回あたりでバルゴンとの戦いにも終止符が打たれる…はず!


第18話

金属が軋む様な、耳障りな鳴き声をあげながらバルゴンは鹿児島工業地帯の一角、七ツ島に上陸

額の赤い宝石と角を不気味に輝かせながらドッグや工場を次々と破壊し、県道219号線沿いに北上を開始した

ぐりぐりと左右の両目を別々の方向に向けながら、まるで愉しむかのように破壊の限りを尽くすバルゴン

前足で鉄塔や煙突を粉砕すると、足元で爆発が起こる。だが、その爆発で発生した火は、なんとその形のままに根元から凍っていき、燃焼した化学燃料が固形化したオブジェとなってしまう

 

米軍の偵察衛星がバルゴンをサーチした所、バルゴンの体温は何と氷点下100℃前後と言う観測結果が表示された

そしてバルゴンの周囲50m以内は氷点下99℃とその体温に匹敵する程に気温が低下し、極超低温空間となってしまう

バルゴンが存在するだけで、その周囲は凍り付いてしまうのだ

 

 

怪獣を見慣れている日本人の真弓から見ても、その光景は異常だ

生物にとって本来熱は生きるために必須なもので、それが周囲の気温を上げ熱するのならば、怪獣と言う存在を加味してもまだ自然である

だが、肉体から周囲を、そして本来ならば塩を含み凍りにくいはずの海水すら一瞬で氷結させてしまう生物など聞いたこともない

あれもまた、ギャオスと同じく超古代に人が生み出してしまった罪の一端、怪獣兵器なのだろう

 

そして、桜島内の真弓たちラドン対策チームにも退避命令が出た。隊員たちが可能な限り機材を回収し、名残惜しそうにホワイトラドンを見つめる真弓を促して行く

真弓の視線の先、ホワイトラドンはまんじりともせずにバルゴンを見つめていた

いや、もしかしたらホワイトラドンは待っているのかもしれない。真弓が危険な領域から遠ざかることを

ジープに乗り込んでため息をつく真弓。落ち着かないまま窓の外に流れる景色を眺めていると、携帯電話への着信に気付いた

相手は先日のギャオス事件で世話になった草薙からだった。もしやとの予感を抱きつつ出てみると、それは即座に正解であったと判明する

浅黄とみどりがガメラが目覚めた事を感じ取ったという

 

 

 

凍結していく街並みを敢えて破壊しながら突き進むバルゴンの姿には、明確な悪意が感じ取れる

ラドン以上の脅威であるとGフォースは断定し、自衛隊と連携しての撃滅命令が下された

 

ラドン警戒の為に鹿児島市街地に展開していた陸上部隊が北上するバルゴンを迎え撃つために移動、上空待機していた自衛隊とGフォースのそれぞれの航空機隊も地上部隊を掩護する為にバルゴンに殺到する

 

警戒するのは、バルゴンを中心とした半径200m以内の超低温領域

そこに入り込めば戦車や戦闘機と言えど一瞬で凍り付き身動きが取れなくなってしまう

 

最前線に自動操縦化された90式戦車<改>、74式戦車<改>が展開、足止めと誘導を同時に行いながら、メーサー部隊の火力集中点で待ち構え強力な弾幕を形成する

 

メーサービームと実弾の雨がバルゴンに打ち込まれ、後方に展開していた自走砲、ロケットランチャー部隊も追撃を仕掛ける

バルゴンの全身で大小さまざまな大きさの爆発が起こる

数発は頭部に直撃し、思わず痛がるように身を捩じったバルゴンは、低い唸り声と強い怒りの籠った咆哮を上げる

 

バルゴンの額の赤い宝石と鼻先の角が強く発光し、大きく開かれた口からは鞭のようにしなりながら長い長い舌が飛び出してくる

蛇が首をもたげるように柔軟に撓った鋭い舌の先が左右に裂けると、そこから青みがかった液体状のガスが噴き出される

念性の強い液体ガスはビルの外壁や地面、高架線、バルゴンに攻撃を加えていた車両部隊にも吹きかけられ、その瞬間に凍結する

先ほどまでの激戦が嘘のように静まり返る鹿児島市内。一瞬で凍り付いた市街地を見回したバルゴンは嗤う様に鳴き、空から攻撃を仕掛けてくる航空機部隊にも冷凍ガス『ブリザード・ブレイザー』を吹き付けた

戦闘機部隊も空中で凍結し、機体に掛かる空力に耐えきれず、飛行しながら機体がバラバラに砕け散る

 

第一次攻撃部隊が壊滅したことを知り、霧島市内の移動司令拠点も撤収作業を開始、桜島から撤退してきた真弓たちの部隊も合流し、二人はとりあえずお互いの無事を確認し安堵する

 

と、桜島のホワイトラドンが動いた。巣から飛び立つと垂直に上昇して高度を稼ぎ、そのままバルゴンに向かって飛翔する

 

周囲の環境が異常変化していることを感じ取り、その根源こそが目の前の存在だと見抜き排除する事こそ、小さき母を守る最適解だと判断した

小さく、生まれたばかりでまだ飛び方すらおぼつかない体で、戦う恐怖を本能で押し殺して、ホワイトラドンは翔んだ

 

姶良市や霧島市側から増援として展開した自衛隊も蹴散らしたバルゴンは、鹿児島市の中心市街地を執拗に破壊しながら、上空から攻撃を仕掛けてくるスーパーXⅢや轟天号と小競り合いを繰り返していた

両艦の主砲とも言える熱エネルギーレーザー砲、プラズマメーサー砲ともに明確なダメージにはならず、バルゴンのブリザード・ブレイザーも届かない高度を維持しているため、互いに千日手状態になっていた

 

すると、小柄な体格を活かして鋭角な軌道でビルの間をすり抜けてきたホワイトラドンが、両足を猛禽類の様に前に向け、加速していた速度そのままにバルゴンの横腹に飛び込んだ

爪が頑強な皮膚を貫き、吹き飛ばされるバルゴンは白波スタジアムに叩き込まれ

ホワイトラドンは鹿児島県庁舎に着陸する

吠えて威嚇するホワイトラドンに対し、横合いから攻撃を受けたバルゴンは自衛隊へのそれよりも上の怒りと、それを与えた存在の小ささを見て、矜持を傷つけられたような屈辱感を抱く

底冷えするような唸り声を上げ、爪で切り裂かれた横腹から紫色の血を滴らせながらホワイトラドンを見上げるバルゴン

一方のホワイトラドンにバルゴンを見下ろす余裕はなく、ただ母を守ると言う思いだけで恐怖を押し殺していた

 

 

上空で二体の怪獣の睨み合いを見守っていた轟天号のレーダーに、高速で戦闘エリアに向かってくる飛行物体が認識される

発熱パターンがライブラリーに存在しており、それを確認したレーダー手は大声を上げる

 

曇天を切り裂いて、空から高速回転する物体が飛来する。飛行形態のガメラであった

突如自分達に真上から降り注いだ明るい光に、バルゴンホワイトラドン共に驚き空を見上げる

回転しながら高度を下げたガメラは頭部と腕を甲羅から突き出して直進し、バルゴンに向かってプラズマブリットを3発連射、周辺の球戯場や競技場毎バルゴンに直撃し大爆発を起こす

 

加速のままに着陸したガメラは地面を滑り、鹿児島大学のキャンパスを破壊しながら停止、ホワイトラドンとバルゴンを挟み込む様な形になる

 

一瞬目を向け合うガメラとホワイトラドン。次の瞬間ホワイトラドンは空へ飛び、ガメラはバルゴンに向かって突進

敵の敵は味方である、生物的な本能で理解した二体は即席で連携を取る決断を下した

立ち上がろうとするバルゴンの背中をホワイトラドンが鋭い嘴で突き、一方のガメラはバルゴンの頭を両腕で抑え込み、首筋に鋭い下牙を突き立てようとしていた

 

バルゴンはガメラに比べ一回り大きく、パワーを活かして二体を何とか引きはがそうとするが、ガメラはエルボークローを首筋に何度も叩きつけ決して逃がさんとその力を緩めない

ガメラは力圧しのままに東側の海岸線にバルゴンを押し込んでいき、ラドンもすれ違いざまに何度も嘴で背中を打つ一撃離脱戦法でガメラを援護する

バルゴンの焦るような声が大きくなる。角と宝石の発光が強くなり、ついにバルゴンも反撃を始めた

 

まず首を抑え込むガメラの力が弱まった一瞬の隙に拘束を解くと、長い舌を砲撃の様に勢いよく口中から打ち出す『ハンマー・ストライク』を、柔らかいガメラの腹部に直撃させ自身から引き離す

そのまま鞭のように舌を振り回し、背中に向かって突進してきたホワイトラドンを薙ぎ払って吹き飛ばす

ビル群に倒れ込むガメラと鹿児島市電を巻き込んで大地に叩きつけられるホワイトラドン

 

二体の怪獣から距離を取ったバルゴンは、身を振るうと口を半開きにし、目をカっと見開く

すると、背中の七列ある背鰭が七色に眩しく発光し、首元と尾部の前後端から背中の中央に向けて光が収束していく。光は巨大な球体となって背中の上で膨張していき

バルゴンが一際大きく吠えると同時に、七色の光の柱となって上空に発射された

虹色のエネルギー光は上空で鋭角に曲がり、複数に別れて地面へと降り注いで来た

それは身動きを取れなくなっているガメラ、ホワイトラドンを周囲の街諸共に薙ぎ払い、周辺は獄炎に包まれた火焔地獄となり、二体の怪獣は大爆発に飲み込まれ見えなくなる

 

それだけでなく、照射された虹色の破壊光線『ディアーヴォル・カルマ』は、上空に居た轟天号、スーパーXⅢにも直撃。想定されていなかった真上からの激烈なダメージで推進系の一部を損傷したスーパーXⅢは出力が低下、高度が下がり、そこにブリザード・ブレイザーが浴びせかけられる

超高温と超低温、あまりにも温度差がある状態に次々に置かれたことで操縦系統を始めとした機体のあちこちでエラーが発生し、コンソールディスプレイがエラーメッセージで埋め尽くされる

黒木からスーパーXⅢの機長の任を引き継いでいた雨沢修は、辛うじて機体を安定させると、いち早く戦闘領域からの離脱を指示

くやしさを滲ませながら、なんとか墜落と言う最悪の状況だけは避けることが出来るのだった

 

 

瞬時にして一面が破壊し尽くされた鹿児島市内。形勢が逆転し、ディアーヴォル・カルマの直撃を受けたガメラはダメージがひどく身動きが取れず。そこにやってきたバルゴンは至近距離からブリザード・ブレイザーを浴びせかけていく

瞬時に絶対零度の極超低温化合液で全身が包み込まれ、シャーベット状に凍り付いていくガメラ

腕の力だけで何とかバルゴンに近づいていくが、その歩みも徐々に弱まり、やがてはバルゴンに怒りの籠った瞳を向け、戦う意思は抱いたままその姿は一つの氷の彫刻となってしまう

 

勝利を確信したバルゴンは高々と舌を伸ばし、鹿児島の市街地を氷と雪で染めていく

虹を背負い、死と冬で世界を埋め尽くしていくその姿は、まさにティアボーの言い伝え通りであった

 

バルゴンが勝利の美酒に酔っているその後ろで、全身に傷を負いながらもまだ意識を失っていなかったホワイトラドンが、弱弱しくも立ち上がり、その姿を風に乗せ宙に飛び立つ

忌々しい鳥が生きていたことに気付いたバルゴンは、トドメとばかりにごくわずかなブリザードをホワイトラドンへと吹きかけた

 

全身の筋肉が凍り付き、血流が動きを止め、意識が徐々に黒く染まっていく中、それでも必死にホワイトラドンは少しでも空高くへと飛び上がろうともがき続け

やがて全身が脱力し、痛々しい声を空に溶かしながら、遙か上空から桜島の火口に向かって落下する

 

火口にその姿が消え、マグマが天高々と跳ね上がる

まるでホワイトラドンの断末魔を思わせる光景に、真弓は膝から崩れ落ちてしまった

 

 

 

バルゴンの足を止めるものはもうここにはいない、死と冬に支配された鹿児島を尻目に、バルゴンは北へ北へ向かっていった




お読みいただきありがとうございました!
感想・誤字脱字報告などお待ちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。