新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

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…ご無沙汰しております。あるゲームに嵌ったり夏の暑さでへろへろになったり急に創作意欲駄々下がりで完全に燃え尽きておりました
これからも更新頻度は上がらないかもしれませんが続けていきたいとは思っております…
そんな作品ではありますが時間に余裕がありましたらお付き合いくださいませ…


第19話

惨劇から一夜明けた鹿児島。バルゴンは防衛線を突破し九州縦貫自動車道に沿うように北上を開始、現在は霧島市横山町付近を移動している

航空機部隊が複数回にわたって行動遅延を目的とした爆撃を行うも、何れも虹色光線の対空攻撃で撃退され成果は発揮できていない

そしてバルゴンも数km進んでは眠ると言う事を繰り返しており、じりじりとした嫌な戦いが繰り広げられていた

 

一方、壊滅した鹿児島市内では、Gフォース、自衛隊、在日米軍が現地入りし、共同でがれきの撤去、救助作業を並行して行っていた

普通科部隊が忙しそうに走り回る隙間を縫って、移動作戦本部にスーツ姿の男性陣が入ってくる

特生自衛隊とGフォースは全国各地の大学と協力関係にあり、有事の際には事件現場の近隣の大学から必要とされる情報や技術の専門家を招集することがある

怪獣との戦いにおいて一番重要な事は如何に早くその怪獣の能力や弱点を見つけるかであり、専門知識を持ったアドバイザーの意見は欠かせない

今回は襲撃現場の直近にあった鹿児島大学から物理学や生物学の専門家が駆けつけ、その中にはデストロイア事件で活躍した伊集院研作博士の姿もある

同大学での講演を予定し鹿児島市内のホテルに滞在していたため、事態解決に協力したいと駆け付けたのだった

 

Gフォース、特殊戦略作戦室、現地司令部が画像会議を開始したのは正午になってからだ

現地鹿児島ではバルゴンが生み出した氷の処理に戸惑っていた。異様なほど氷結した部分が頑丈で、本日の気温25℃とかなりの夏日でありながら殆ど溶け出してすらおらず、こういった作業では世界一とされる陸自でも撤去に苦労していると報告が提出される

分析に参加していた伊集院博士はバルゴンが口から放った青い冷凍液にその謎のカギがあるとして、冷凍液のと体液のサンプルの検証を行う事を決定

特殊戦略作戦室はバルゴンの行動の検証と予想を繰り返していた

北上したことで鹿児島に近い川内原発の安全こそ確保されたものの、このまま一直線に北に向かえばその先には九州一の人口密集地帯である福岡に到達する

それまでの間に、何かしら攻略のカギとなる弱点、或は誘導に活用可能な習性を見つけなければいけない

 

残された時間は決して多く無い、そして大抵そういう時に限ってバッドニュースだけは数多く報告される

先立ってバルゴンと戦い破損したスーパーXⅢだが、作戦終了後佐世保にある三友重工の大型船舶用ドッグに緊急退避しており、そこでの整備の結果、次の作戦への展開、それどころか直近での修復すらほぼ不可能だという報告が上がって来た

原因はバルゴンの放った冷凍ガスと虹色の光線だ

あの二つの攻撃を立て続けに浴びたことで極度の温度変化が引き起こされ、機体内部の電装系やメインフレームが著しく損傷してしまっていた

元々スーパーXⅢは搭載している兵装が殆ど冷凍兵器と言う事から、基本的な対低温処理は徹底されているが、バルゴンの攻撃力はそれを上回っていた

絶対零度に近い超低温冷線の直撃までは想定されていない

同じような攻撃が直撃した轟天号が装甲パネルの交換で済んだのは、設計の段階から外宇宙の様な極限的な環境下での運用を想定していたのが功を奏した結果だった

それに加え、現在自衛隊ではMFS計画とSXⅣ計画が並行して動き、更に新型メーサー兵器を始めとした新兵器開発も続いて行われているため、どうしてもスーパーXⅢの修復の優先度や予算配分はどうしても後手に回ってしまうのだ

現在パイロットクルーたちは機体から降りて前線指揮所にて戦術構築の支援を行っているが、機長の役目を黒木から引き継いだ雨沢修三等特佐の落胆は大きいという

 

続けて、ティアボー島からアーヤとカレンの二人の手で持ち込まれた巨大ダイヤモンドを用いた誘導作戦についての作戦結果検証が行われた

開始されたのは夜明け前の午前5時15分、2機のしらさぎが大隈横川駅付近で山に寄りかかって眠るバルゴンの上空に飛来

前方の機体が下部ハッチを展開し、そこから防御フレームで出来た箱にティアボー島のダイヤモンドを入れて下ろし、後方のもう一機が同じく機体下部ハッチから高出力レーザーライトをダイヤモンドと同じ高さに待機させる

島の口伝にあったダイヤモンドがバルゴンを死に誘うと言う一節から、このダイヤモンドにバルゴンが興味を示し誘導することが出来るのではないかと言う仮説から行われた作戦だ

後方のしらさぎにはアーヤとカレンが島の大切なものだからと乗り込み、護衛としてハイヤード隊員の平田浩一郎、啓次郎兄弟も脇に控えている

無色のレーザーがダイヤモンドに向かって照射され、ダイヤモンドを通過して増幅、白く輝く光線となって眠るバルゴンの顔を不気味に照らし出す

不快感をあらわに唸り声を上げて目を覚ますバルゴン、睨むようにヘリを見上げ、少しだけ首を伸ばす……それだけだった

どれだけ光線を照射しても興味をそそられて動くような事はせず、苛立ったような鳴き声と共に角やトゲが光り出す

光線の攻撃が来る前ぶれだとしらさぎの機長が判断し、二機は速やかにバルゴンの射線の外へと退避

唖然とするアーヤとカレン。可能性としては一番高い行動だったが、これで伝承から取れる手段は皆無となってしまった

 

 

僅かではあるが吉報も舞い込んできている

Gフォース経由で米国USCXFが先ごろ開発に成功した、対怪獣用戦闘攻撃機XF/A-01ナイチンゲールで編成された部隊が援軍として派遣されることとなった

元々米国の空中戦艦ランブリングの艦載機部隊であり、各国の米軍基地に配備された同機の操縦ノウハウを現地のパイロットたちに伝授する教導部隊として活動しており、グァム基地に逗留中の彼等が急遽実弾装備を行ったうえで、沖縄基地にて轟天号に合流する手はずになっていた

 

 

伊集院博士は福岡の大学にある研究施設に到着し、現地の研究員たちと共にバルゴンの二種類の体液の秘密を解き明かすため奮闘していた

オンラインのテレビ通話で茨城にいる桐島一人ともつながっており、既に向こうにも検体が到着。リアルタイムで双方が情報を共有させながらその作業は続いている

 

青い冷凍液、紫色の血液。バルゴンの体内に存在する子の二種類の体液は、0.4%ほどの組成の違いしかないが、持ち合わせている特徴はまさに正反対だ

青い冷凍液は水分の分子結合を増強させ、通常の水で作り出した氷の数十倍もの耐久性と耐熱性を与え、付着した物体から急速に熱を奪う

このせいで鹿児島とガメラは未だ氷の下に沈んでおり、復興作業に入れずにいた

一方で紫色の血液は超低温下においても水分子の結合を防ぎ、氷点下においても液体状を維持させることのできる凍結防止剤、或は融氷剤としての特性を持っている

恐らくこの体液のお陰でバルゴンの新陳代謝は非常に低い体温でも維持され、氷点下においても血液が凍結することなく体内で循環しているのだろう

伊集院博士は未だ証拠は見つかっていない勘の段階だが、この二つの体液は本当に簡単な反応現象を起こすことで機能が反転すると言う確信があった

では何が原因でバルゴンの体液はまったく別の特性に切り替わるのか、それを突き止めることが出来れば、バルゴン攻略の目途がきっと立つはずだ

焦燥感を必死に抑えながら、伊集院博士は次々コンピュータが吐き出すデータと睨み合い続けていた

 

 

午後、霧島市役所の屋上に真弓の姿はあった。火口から濛々と煙を上げる桜島を見つめている

心にあるのはホワイトラドンの事。今でも火口に落ちる時の苦しげな悲鳴が耳にこびりついて離れていなかった

意気消沈していた彼女の元に、なんと米森がみどりと浅黄を連れて現れた、ガメラが気になった二人はいてもたってもいられず家族に直談判、丁度日本に寄港してい数日間の休日を享受していた所、直哉と拓也から二人を託されたのである

氷漬けになったガメラを見て意気消沈する浅黄とみどり、真弓も無力感に苛まれるが、そんな三人を勇気づけるように未希が告げる

ガメラもホワイトラドンもまだ生きている、と

 

 

 

 

 




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