新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

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皆さまお久しぶりです。ダイジェスト風にするべきか個々のシーンをしっかり描くかで悩みに悩んで時間がかかってしまいました…本当に申し訳ありません

対バルゴン編ももう間もなく一区切り、楽しんでいただけたなら幸いです


第22話

始まった最終決戦

全身を雨粒に打たれ、バルゴンの体表から赤紫色の体液がにじみ出てくる

苦悶の唸り声をあげ、苦悶にもだえる姿に黒木と麻生は全部隊に一斉攻撃の命を下す

地上に展開している部隊の使命はバルゴンをTCフィールドに押しとどめる事

バルゴンが山の側に逃げようとすれば後方に展開した部隊と協調して圧力を高め、そこに天草市側や湾内湾外の支援攻撃部隊からの攻撃も降り注ぐ

 

自分が最悪の場所に足を踏み入れたことを理解したバルゴンは懸命に口から冷凍ガスを放ち、更に地面の電位差発生装置を破壊して安全エリアを作ろうと藻掻くがそれも想定の範囲内

改良された電位差発生装置はコンピューターによって同時に管理されており、複数の発生装置が連動して電圧を制御することで

かつてのTCシステムでは電位差発生装置に向かって直に落雷を落とすことしかできなかったところを、落雷を誘導し目標に向かって発生させることが可能となっている

幾つもの閃光の筋がバルゴンを包む様に突き刺さると、口から放たれる青紫色の冷凍ガスはその色と性質を変え、ただの体液となって周囲にまき散らされるばかり

やはり研作博士らの目論見通りの結果となった

最大の好機が訪れている、これを活かさない手はない

 

一時的に止んだ落雷を縫って戦闘地帯の上空を四角形に編隊を組んだCH-47が通過し、バルゴンの上空に到達した瞬間何かを投下する

バルゴンの全身を包み込むサイズ、東京製綱が開発した鋼より強く絹糸よりしなやかと開発者が太鼓判を押す特殊な帯電ネットだ

全身を覆いつくすネットに不快感を感じる間もなく連続して落雷がバルゴンに突き刺さる

それはネットを通じて全身に隙間なく広がっていき、肉体を灼き赤紫の体液を滴らせることとなった

 

苦しみのたうつバルゴン。そこに上空から飛来した戦闘機、攻撃ヘリ、メーサー攻撃機も追撃を駆ける

陸海空の多重攻撃は確実にバルゴンを最大の弱点である海へと近づけていった

作戦は順調だ、油断することなく攻撃を続ければ、バルゴンを撃滅できる

そう誰もが思っていた

だが…

 

 

頭部に一発のミサイルが直撃する

全身を包む激痛と屈辱感、ついにバルゴンの怒りが爆発した

周囲の雨粒が蒸発し霧になるほどの怒号を放ち、バルゴンの頭部のクリスタルが、背中を一直線に貫く水晶の背鰭が赤く明滅する

バルゴンの体が蒸気に包まれる、体内の高エネルギーが体表に当たる雨を蒸発させていた

高エネルギーの反応を司令部も感知、すぐさま周囲の各部隊に一斉に退避指示が下されるが

一手、遅い

 

 

帯電ネットが熱に耐えきれず弾け地切れると同時に生み出される目も眩む様な赤い閃光、

バルゴンの背から放たれた極太の虹色の光の柱ディアーヴォル・カルマ

天を衝いたそれは雨雲を貫き、光の柱を中心に円形に雲が瞬時に蒸発、霧散する

頂点に達した虹光は柱の上に球体を作り出し、それは四方八方に降り注ぎ地表の全てを薙ぎ払う死の虹と化した

電位差発生装置、ソニックビーム車と言ったらTCS構成機材、バルゴンを包囲していた主力車両部隊、海を挟んだ対岸の野砲部隊、更には湾内のくらしきのヘリ甲板が吹き飛び、湾外の米軍駆逐艦が直撃を受け爆散

上空の航空機にも被害が及び、落下してくるディアーヴォル・カルマの光線が数機のヘリと戦闘機に直撃、更に光の奔流が周囲に電磁波を嵐の様にまき散らしたため、それによって計器が破損したグリフォンが二機湾内に不時着

追尾してくる光線をXF-1とナイチンゲール部隊はなんとか回避

だが轟天号が直撃を受けブリッジに激震が走った。推進系をはじめ各回路に発生したダメージを補修要員が必死に修復を行う

 

 

爆風と轟音が飛び交う地獄と化した八代市郊外

天高くに昇った爆炎は遠く熊本にある前線指揮所でも確認でき、更に爆発で発生した地震も伝わって来た

周囲の隊員たちが混乱する中、黒木と麻生は混乱を沈めながら、後方で待機しているしらさぎとグリフォンの予備要員にすぐさま再び戦場上空へのヨウ化銀コロイド散布を命じる

だが、前線に展開していた車両部隊の損耗率は45%程

天草市の支援部隊、湾内外の支援攻撃部隊にも被害が及び、TCSを構成する電位差発生装置とソニックビーム車が多数破壊されたことで落雷制御機能も大幅に低下

更に上空の雷雲が霧散したため再びヨウ化銀を散布し人工雲を発生させるには最低でも2時間も時間が必要となる

まず、間に合わない

混乱を収束させ、残存部隊を球磨川以北に後退させ体勢を立て直したとして、バルゴンに対して再び有利に立てるだけの札がほぼない状態になってしまった

嫌な汗が黒木の顔を伝い落ちていく

それでも諦める事だけはできない。司令部の後方退避命令を下しつつも、黒木は必死に脳を回転させ状況の改善を図っていた

 

 

 

同時刻、桜島ではラドン復活作戦が開始された

ヘリに吊り下げられた大型スピーカーを通してサイキックメロディが鳴り響き、それを桜島を囲う様に設置された音響増幅装置が効果を高める

真弓はホワイトラドンに向けて祈る。どんな選択肢を選んでもいい

ただあなたに生きて欲しいと

浅黄とみどりも、同じくガメラに向けて強く思いを届けた

目覚めて欲しい、共に歩んで欲しい

手と手を重ね、二人に握りしめられた勾玉が熱を帯び赤く煌めく

 

 

 

熱いマグマが揺蕩う、地の底の暗闇

凍った体を大地の熱が溶かし、ホワイトラドンは静寂の中で傷を癒していた

頭に浮かぶのはバルゴンの恐怖、そして母の事

戦う事への恐怖もあったが、何より大切な母を守れなかったことが悔しかった

 

ふと、ホワイトラドンは何かが聞こえてくることに気付いた

それは歌だ。シプニオキスの思念波を通じて、子供たちが歌うサイキックメロディがホワイトラドンの元に届いた

親が子に強く幸福に生きることを願う、そのイメージがラドンに染み渡る

そして子供達の声に、シピニオキスの思念波に乗って一つのイメージがホワイトラドンの脳裏に浮かびあがった

目をつむり、手を握り、懸命に自分を想い願う真弓の、母の姿

 

カっとホワイトラドンは目を見開く。母親が自分の生を願っている、それは子供にとって何よりの希望だ、勇気が胸の奥から無限に湧き上がってくる

それは実際にホワイトラドンの肉体にも変化を与えた

全身から紫色の光が心臓の脈動に従って断続的に溢れ出し、全身に力が巡り、傷が癒え、翼が大きく大きく広がっていく

自分を包む溶岩の何倍もの熱を体内に感じながら、ラドンは一目散に火口へ、空に向かって飛びあがった

全ては、大切な人を守るために、戦うために

 

 

噴火の危険から自衛隊に連れられて桜島を離れ、垂水市にある牛根麓稲荷神社の境内から桜島を見守っていた真弓たち一同

火口付近では今もサイキックメロディが断続的に流れ続けているが、まだ島にも火山にも変化はない

やはりだめなのか…

 

 

その時、微かにだが地面が揺れ始めた

火山性の地震は、それを米森が知覚した瞬間一気に強くなり、浅黄とみどりが思わず転げそうになるほどになった

同時に、桜島の火口が赤く明滅する。断続的な発光は直ぐに継続的な光に変わり、やがて天高くに向かって赤々とした赤熱の柱が伸び上がった

かなり離れたここでも熱を感じるほどで、手を顔の前にかざしつつも真弓は炎の柱を凝視する

柱は伸びて伸びてやがて弾け、一つの影が弾けた柱の中から飛び出して来た

 

聞き覚えのある甲高い鳴き声。そう、ホワイトラドンだ

翼は一回りほど大きくなり、月明かりを反射して輝く銀色の体は紫焔を纏っている

雄々しい意志を感じさせる瞳の上、頭頂部の三本の角が、火山のエネルギーを内包していると表すかのように赤い光を引いていた

 

思わず笑顔になって崖のギリギリまで駆け出す真弓。声を上げながら手を振ると、ホワイトラドンもしっかりと真弓を見つめ返し鳴き声を返した

母の姿を確認したホワイトラドンはそのまま鹿児島湾上空を旋回、七ツ島からバルゴンの上陸ルートをトレースするように低空で飛行する

 

するとどうだろう、バルゴンが凍らせた市街地の氷が、ホワイトラドンの体から発せられる熱で音を立てて溶けていく

だが不思議な事に、同じくホワイトラドンの熱波を浴びた、真下で活動中の自衛隊員や救助隊員は穏やかなぬくもりを感じるだけで火傷一つ負う事はなかった

体内の熱を完ぺきに制御可能なホワイトラドンだからこそ出来る荒業だった

やがて

ひとしきり鹿児島湾に沿って飛んだホワイトラドンは、鹿児島大学キャンパス跡にある巨大な氷塊、ガメラの元に着陸した

翼を広げ、氷塊を挟んで包み込む。薄紫色の光がホワイトラドンから放たれ、氷塊が融解し目を開けられない程の水蒸気がホワイトラドンの姿を隠していく

水分が蒸発する音だけが霧の向こう側で響く時間が過ぎ、やがて情発音すらも搔き消え、静寂が周囲を包む

自衛隊員がかたずをのんで見守っていると、濛々とした水蒸気の壁の向こうで何かが赤く、そして紫色に光り、聞き覚えのある大きな大きな鳴き声が響いた

 

次の瞬間、水蒸気を熱風が吹き飛ばし、空に向かって二つの存在が急上昇した

高速飛行形態に変形したガメラとホワイトラドンが、それぞれ赤と紫の光を引きながら空を進んでいく

ガメラが復活した、なんとか吹き飛ばされずに済んだ自衛隊員はひたすらにそれを連呼するのだった

 

 

桜島を挟んで反対にいた真弓たちも、通信を傍受した自衛隊員からガメラ復活の報を聞き、北の空を見上げる

遠く高い空に、さらに北へと向かう二条の赤と紫の光が見て取れた

 

米森が言う、バルゴンにリベンジに向かうんだと

真弓はうなずき、勝利を願い続けるのだった




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