新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

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箸休めのドゴラ編最終話となります。
はてさて次回登場する怪獣は…?


第25話

宇宙から突如飛来した無定形の怪獣、首都パリに出現した個体に対応するべくエクレールが出撃したが、現れた数は一体ではなかった。

ほぼ同時期に2体の同種の存在が確認され、1体はフランス南部、地中海に面したマルセイユ。

もう1体は欧州大陸を挟んだ真反対、英国本島に面した港湾都市ダンケルク

そちらにはGフォースEU、フランス空軍、およびESSOAの航空機部隊が即座に発進、フランス海軍も軍艦を派遣し迎撃作戦を開始した。

 

 

パリ上空に到着したエクレールのリニアカタパルトが展開され、電磁加速を賭けられた6機の航空機が発進する。

フランス初の対特殊戦略作戦用多用途戦闘機として開発されたF・I フィエルテだ

ダブルデルタ翼とカナード翼を持つ優れた運動性が持ち味の機体で、日本のXF-1、アメリカのナイチンゲール同様に重力制御装置を内蔵し空力に縛られない機体制御が可能である。

指揮を執るのはかつてGフォースで対G超兵器ガルーダの正規パイロットを務めていたランディ・ジョンソン大尉。

 

 

 

主兵装であるミサイルとレーザーカノンを発射し怪物に攻撃を仕掛けるフィエルテ戦隊。

だがミサイルの直撃で分裂したはずの怪獣の体組織は、生命活動を停止することなく発行を続け、小型の怪獣となってしまった。

物理的な爆発ではむしろ敵を増やすだけと判断したエクレール艦長ヴュレ大佐は光学兵器攻撃に切り替える物の、凄まじい大きさを持つ怪獣の細胞を完全に焼却するには火力があまりにも足りなさすぎた。

 

出撃命令を受けたサンライトSY-1が大気圏に突入、パリに到着した時には怪獣は既にパリ中心部から西側に進み、フランスの経済中心地であるラ・デファンス地区の工場地帯を破壊し、崩壊させた建築物から何かを吸い出していた。

黒く鈍い光を放つそれは、現在様々な分野で活用されているMG-Tecの産物であるスーパーカーボン繊維の素材となる炭素結晶体だ。

これは先日破壊された超高効率太陽光発電衛星でも使用されているもので、当然それを保守するEUFS03でも大量に備蓄されていた。

 

 

 

この怪物が先日の宇宙遭難事件の真犯人と言うわけだ。

すぐさまサンライトSY-1も攻撃に参加するが、物理的な攻撃は怪獣の分裂をただ促進するだけにすぎず、結局破壊した工場から炭素素材を吸いつくすと、怪獣はそのまま黒雲の中に姿を消していった。

それはマルセイユとダンケルクでも同様で、港湾設備内に備蓄されていた流通途中の炭素繊維素材が怪獣によってすべて貪られており、その過程で発生した被害もまた甚大だ。

複数の工場、倉庫から火の手が上がり、十万tクラスの輸送船が複数転覆、あるいは沈没してしまっている。

 

 

 

 

 

翌日、フランス空軍の中枢であるパリ第117空軍基地で早速今回の怪獣の事件に対する対策会議が開かれることとなる。

各セクションの首脳陣が集まり、被害状況と怪獣についての情報共有、確認が行われた。

まず、今回出現した怪獣を古代ガリアの神話に登場する死神からドゴラと命名。

戦闘で本体から分離した細胞を解析した結果、この怪獣の外見上の肉体は細胞レベルの微小なドゴラが集まって構築された群体であることが判明した。

複数のドゴラ細胞が分裂と増殖の過程で生命活動に必要なパーツとしての機能に特化して成長し、空を埋め尽くす巨大なドゴラの異様となっていたのである。

自然界でいうなればカツオノエボシ等に似た生体を持っていることになる。

ミサイル攻撃を受けてはじけ飛んだドゴラの破片が空中に留まっていたのはこのためだ。

メーサー大鉄球の制御にリソースを割く為に特装砲である艦首のハイパープラズマメーサーキャノン以外をすべて実弾兵装で固めているエクレールとの相性は最悪と言っていい。

レーザー砲を装備しているフィエルテの攻撃は細胞を直接焼却できるためダメージを与えることが可能だが、巨大な細胞となったドゴラを完全殲滅するのは難しいだろう。

 

また、ドゴラ出現の際に発生する大規模電波障害は生命活動が活発化したドゴラが群体内で意思疎通を行う際に発生する生体電気が原因であると推測された。

 

 

 

他方、ドゴラが今回フランスを襲撃した理由も戦闘中に判明している。

ハイパーカーボン繊維の素材となる炭素こそがドゴラ達のエネルギー源。宝石店を襲ったのもダイヤモンドの存在を探知したからだろう。

 

炭素繊維で作られるハイパーカーボン工材は今後のあらゆる分野において必須であり、これを貪られることは人類の発展の停止を意味する。

そして同時に、炭素を捕食対象としていると言う事はいずれドゴラは人をも食べ始める可能性を持ち合わせていることを意味していた。

 

炭素は人の肉体を形作るうえで無くてはならない元素だ。

筋肉、骨格、DNA、RNAの根幹は炭素であり、人体を構成する元素の割合で言えば酸素の次に多く、体重50kgの成人男性で言えばそのうちの9kgが炭素の割合になる

一般的に流通しているダイヤモンドよりも余程量は多く、いずれ人やそれ以外の生命体も有効な炭素接種元として味を占めるだろう。

その前に何としてもドゴラ撃滅の糸口を見つけ出さなければならない。

 

 

 

ドゴラのフランス襲撃から数日後。

今までに無いタイプの怪獣の姿と性質に人々が頭を悩ませていた時、破壊されたマルセイユの炭素貯蔵庫近くで検証を続けていたGフォースの化学研究班が奇妙な物体を発見する。

一抱え程もある奇妙な色の木片、あるいは石の様な塊。それが貯蔵庫の裏手あちこちに転がっていた。

研究所に持ち帰って精密な検査を行ってみたところ、驚くべきことが分かる

先立って回収されたドゴラの細胞と非常に組成が似通っている。

更に検証を進めていくと、それはチャグロゼニモンスズメバチと言う、欧州全体を生息域にする地中棲のスズメバチの毒によって化学変化が起こり、結晶化・死亡した物であると判明した。

 

地中に有ったスズメバチの巣が貯蔵施設が破壊される過程で地上に露出し、怒ったスズメバチの反撃を受けてドゴラの細胞が変化してしまったのだ。

 

これこそドゴラ最大の弱点であると見抜いたGフォースとESSOAは世界中に蜂毒の組成を公表し、世界規模での生産を依頼。

早速世界各国で合成蜂毒薬品を大量に生産、アメリカや日本は轟天号、ランブリングをも用いてフランスへと輸送。

更に欧州環境機関が人口降雨研究の中で開発した大型噴霧器を蜂毒散布の為に提供

エクレール、フィエルテの搭載する全ミサイルも弾頭に蜂毒を内蔵した炸裂式ミサイルに変更され、ドゴラ迎撃の為にESSOA、GフォースEUのメーサーを始めとした対獣迎撃部隊もパリ市内、マルセイユ、ダンケルク両港に展開する。

 

迎撃準備完了から二日後、再びパリ上空で大規模な衛星通信障害が発生、エクレールとサンライトSY-1、フィエルテ部隊が出撃し、花の都を暗く包み込む暗雲の中にドゴラの姿を見つける。

続けてマルセイユ、ダンケルクにも再びドゴラ出現の報が舞い込んできた。

 

攻撃命令が発生され、各航空隊、高射部隊は次々と蜂毒入りの対空ミサイルを発射、メーサー部隊も火力支援を行い、空を包み込まんばかりに巨大化したドゴラに向かって攻撃が突き刺さる。

前回は何食わぬ顔で空を進んでいたドゴラだったが、やはり今回は蜂毒が効果を発揮、苦しむ様に体内の発光器官を滅茶苦茶に明滅させると、明確な敵意を持って航空機に向かい触手を伸ばしてくる。

フィエルテは鋭角軌道で、サンライトは機体の前後を二機の航空機に分離させて回避する。

サンライトSY-1は分離・合体機能を有した万能宇宙機だ、前方は速力と運動性に優れた戦術偵察戦闘機『αラプター』に、後方は大推力と大火力を両立した高速戦闘攻撃機『βバスター』へと分離し巧みなコンビネーションを発揮することが出来る

レーザービームとミサイルの雨を放ちながら触手の間を潜り抜ける二機の攻撃を受け、ドゴラの結晶化は更に侵攻。

ついに半透明だったその体はステンドグラスを思わせる極彩色の角ばった物に変質し、きしむ様な音を立てて身動きを止めた。

そこにエクレールが突撃、メーサー大鉄球を真正面から撃ちこむと、ついにドゴラは粉々に砕け散った。

 

マルセイユ、ダンケルクにおいても奮戦の結果二匹のドゴラの撃滅に成功したと連絡が届き、司令本部には歓喜の声が鳴り響く。

 

 

パリを襲った宇宙の悪魔は人々の努力によって撃退された。

一方で今回の戦いの推移は、空からの襲来者への備えの甘さを痛感させるものとなった。

改めて本格的な地球へ襲来する空の脅威への対策を講じなければいけない。

国と人々を守る役目につく者達はそれを痛感するのだった。

 

そう、空の果てからも脅威は地球へとやってくる。

地球への衝突コースを取る隕石をNASAが発見したのは、年も明けて直ぐ、2002年初頭の事であった。

 




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