新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

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おまたせいたしました…今回にてレギオン編、終幕で御座います!


第36話

全身の傷痕から圧縮酸素を噴射し、ぎこちなく、弱々しく、それでもマザーは電波源のG対策センター本部に向かって歩みを進める。

誘導唯一残されたサイスレッグで、本能のままに無理やり体を押し進めていた。

ゆらりと、熱を持った空気を背中に感じ、マザーは振り替える。

 

 

視線の先で起こる爆発、揺らめきながら、ガメラとゴジラが再び立ち上がる。

崩れ落ちそうになる脚に必死に力を入れ、ガメラはマザーを睨み付けていた。

このままでは自分も、仲間達も持たないだろう。取るべきは最後の手段、可能ならば使うことは避けたかった、自身の今放てる最大の一撃を解放する!

 

リスクは大きい、これから放つそれは、自然界のエネルギーたるマナを大量に消費してしまう。それはギャオスの新たな復活を、まだ見ぬ怪獣達の目覚めを意味するだろう。

だが、それを緩和しようと奮闘する存在を、ガメラは感じ取っていた。

 

 

仙台で、自分達の勝利を信じ、無心に祈りを捧げている少女達、子供達を。

 

 

南の島で、マナを少しでも多く産み出そうと、極彩色の守護神の前で歌を奏でる双子を。

 

 

海の奥底で、身の内の神秘の力を発動させ、マナを産み出す手助けをしている古い戦友、蒼き龍を。

 

 

天高く雲の中に鎮座し、蒼き龍と同じくマナを産み出し、世界よ静穏なれと願う白き聖獣を。

 

 

日本の各地に眠る、千年の守護者達を。

 

 

南と西の彼方にて、眠りながらも地熱と共にマナを活発化させ、戦いに備える二体の守護獣を、獅子の王を。

 

 

世界中で目覚めの時を待つ仲間達がいることを、ガメラは理解した。彼らの産み出してくれたマナの暖かさを感じながら、覚悟を決める。

自分がしていることは、決して孤独な戦いなどではない、畏れることはないのだと。

 

空を同心円状の光が巡る。地球全体から放たれたそれらは、日本の、ガメラへと向かって集いつつあった。

眼前の奇妙な光景に、僅かな危機と莫大な怒りを抱いたマザー。

再び攻撃を受けるのはごめんだとレギオビュートの射出体制に入る。蛇のように赤い触手がのたうち、勢い良く発射され、ガメラへと到達する……

 

 

直前に

 

 

ガメラの前に立ちふさがったゴジラの全身に吸い込まれた。

 

首筋から胸、腹にかけてゴジラの頑強な皮膚をレギオビュートは軽々と貫通する。忌々しい肉の盾にマザーは苛立ち、バラバラに引き裂いてやろうとして、気がついた。

動かない、ゴジラの体を貫いたレギオビュートの触手がびくともしない。ゴジラが全身全霊の力を込め、レギオビュートが抜けるのを防いでいる!

 

 

ゴジラが抱いているのは怒りだ。ガメラが、ホワイトが、かけ替えの無い仲間が傷ついている事への怒り。

周囲から脳波で聞こえてくる、傷ついた仲間を救おうとし、叶わず慟哭するGフォース、自衛隊員の、同胞の無念への怒り。

そして、その事態を引き起こしている、自分自身の弱さへの怒り。

 

沸々と、着実にゴジラの中で大きく膨らんでいったそれが、今このとき遂に弾けとんだのだ。

 

 

レギオビュートに串刺しにされながら、それを気にしないかのようにゴジラは天高くへ彷徨する。ガメラへと集結するマナに呼応するかのように、ゴジラの体が発光する。

背鰭が明滅し、瞳が輝き、やがて皮膚の内側から閃光が全方位に向かって放たれた。

一瞬カメラすら焼き付かせた光ののち…蒼い光が夜空を照らした。

ゴジラが、体内から発光しているのだ。モニター越しに目撃した黒木が総毛立つ。まさか…かつてのゴジラと同じく……!?

 

 

だが、上がってくる報告はゴジラの肉体が崩壊していることを次々と否定した。体内温度は正常、放射線の漏洩もなく、ゴジラの周囲の気温が急上昇することもない。

ただこれまでのゴジラとは桁違いのエネルギーを内包していることだけは観測できていた。

 

蒼い輝きをまとい、ゴジラが再び咆哮する。怒号に乗った核エネルギーが、衝撃波と共にマザーの全身に叩きつけられた。

ゴジラよりも巨大な体躯が大きくのけ反り、熱線の直撃に耐えたはずの白い外殻の至るところが罅割れる。これまでの戦いで負ったダメージが、ゴジラの放射咆哮で遂に限界を超えたのだ。

 

ゴジラの二度目の咆哮、全身の蒼い光が強くなり、白いスパークが全身に突き刺さったレギオビュートを遡り、マザーへと殺到する。

逆流する核エネルギーに耐えきれずレギオビュートを構築する炭素複合結晶が次々と焼け落ち、体内に到達したエネルギーはマザー頭部のクリスタルリフレクターから大爆発を引き起こす。

とうとうマザーレギオンは全ての攻撃手段を失ったのだ。

 

 

大ダメージを受け、鑪を踏んで前後不覚に陥るマザー。それを見届けると、ゴジラの全身から発光が止み、目を閉じると同時に大地にうずくまってしまった。

呼吸と心拍は確認できる、死亡したわけではない。恐らくエネルギーを使い果たしたのだろうとモニター越しに四郎は推測する。

 

ゴジラが、稼げたのは本のわずかな時間、だがそれだけで十分だった。ガメラは既にエネルギーチャージを終えている。

腹部の鱗が分割線に沿って外側に弾けるように開かれる。

そこにあるのはクレーター、あるいは巨大な砲口のごとき孔。

中心に光が灯り一秒にも満たない時間でガメラ自身よりも巨大な火球へと成長しそれは放たれた。

 

ウルティメイトプラズマ

 

別名、究極超烈火球

 

ゴジラの蒼い輝きの数倍はあろうかというエネルギーの塊は、進路状のあらゆる物体を灰にしながら直進し、マザーに直撃した。

現在のマザーが産み出す微弱な電磁バリアーでは、その光の渦を押さえ込むことは出来ない。

 

全身の外殻を砕き散らしながら、プラズマエネルギーにマザーは押し戻されていく。

断末魔を上げたのち、それすらも爆音に飲み込まれ、なにも見えない程の光が柱となってマザーレギオンを消滅させた。

爆発の衝撃と残光は、遠くはなれた名崎にいた祐介達からも、さながら夜明けのように見えたほどだ。

 

 

戦いは終わった。

白い大群獣は遂に駆逐されたのだ。静寂に包まれた戦場が人類の、地球生命の勝利を物語る。

前線で、そして司令部で、生き残った戦士達は歓声をあげ、両手をあげて勝利の美酒に酔いしれる。

涙を流すものもいた。脱力し、静かに椅子に崩れ落ちる者もいた。

アラートが鳴りやんだGフォース本部では、自爆シークエンスを解除した麻生司令と兵藤副司令が、静かに笑みを浮かべ、強く手を握りあっていた。

 

 

 

ゴジラとガメラは何とか立ち上がると、ホワイトに先導される形で鉾田市の海岸にたどり着いていた。

 

感慨深くお互いを見つめ合うゴジラとガメラ。2頭の命の限界を超えた奮闘と、数多くの奇跡と、人類の支援がなし得たギリギリの勝利だった。

いつか再び、地球に危機が迫ったなら、そう誓い合う3頭。

ジェットを噴射し、ガメラは空の彼方へ。ゴジラとホワイトは海の彼方へ去っていく。

その姿を、生き残った隊員たちは見えなくなるまで送り続けていた。姿勢を正し、偉大な戦友に敬礼を送るものもいた。

 

 

 

 

数ヵ月後、地下鉄網の悲劇から復興を果たした札幌の街。碧は戦後処理をようやく終えて休暇を勝ち取った祐介達レギオン事件で活躍した一同をつれ、大通りを歩いていた。満と保が結んだ約束を果たすためである。

満が既に到着している、彼が太鼓判を押す名店へのガイドだった。

 

道すがら、祐介は戦いの後に判明した幾つかの事実を碧に話していた。

 

ゴジラが放った蒼い光の正体は、先代のゴジラから吸収し、自身がゴジラ化するに至った、ゴジラの体内の核エネルギーが最大出力になってはなたれたそれである可能性が高いこと。

 

つまりゴジラはかつてのゴジラの暴走状態、バーニング状態を意図して再現することが可能だと推測されること。

 

あの青い状態をブルーバーニングと呼称すること。

 

ガメラが超高出力プラズマビームを放つ直前に起こった環状発光現象は、地球の生命エネルギーであるマナをガメラが吸収したために発生した可能性が高いこと。

 

同時に世界の各地で、そのマナの消費をを補うように瞬間的なエネルギーの放出現象が発生したこと。

 

この限定的なエネルギーの放出は、インファント島や黄海でも発生したことから、モスラやプルガサリ、ヤンガリー、ガメラ同様に、地球生命の守護を使命とした、特殊生物が地球各地に多数眠っている可能性が高いこと。

 

マナの消費が彼らによって補われたとはいえ、少なからず地球の生命力は疲弊したと言って良い。

今後どのような怪獣が現れるのは想像できず、戦いでかなり疲弊したと思われるゴジラ、ガメラ、ホワイトラドン共に以前ほど活発に活動は行っていない。豪天号は除籍判定されなかったのが奇跡という程の損傷も受け、大規模修復のためにドック入りしている。

今まで以上に苦しい戦いを人類は強いられるだろう。祐介の口調には重苦しいものがあった。

 

一方、碧にも懸念していることはあった。地球意思の体現者達にも、価値観や最終的な目的の違いが存在する。

モスラやガメラ達、今目覚めている守護者達は人にも寄り添おうとしてくれているが、かつてのバトラのように、最終的に地球環境が正常化するならば犠牲を厭わない方針の、人にとっては破壊者と言える守護者も存在した。

今人類は、怪獣というあまりにも大きな教訓から、地球や生命と寄り添い共に歩む手段を見つけるために奔走している。だがもし今後この方針が覆され、傲慢を極めてしまえば……

 

 

ガメラ達と、ゴジラ達と道を違えることはしたくない。人類の未来の為にも、何より同じ地球に住む隣人と仲たがいする後味の悪さを感じないためにも。

そう締め括り、碧達は目的の居酒屋の暖簾を潜るのだった。




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