ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜   作:アイリエッタ・ゼロス

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戦王の使者 Ⅴ

「オシアナス・グレイブ....洋上の墓場か。趣味の悪い名前だな」

 俺は客船に刻まれた名前を見て呆れたようにそう呟いた。

 俺は今、姫柊と一緒に南湾地区の大桟橋に来ていた。そして、俺達の

 目の前には巨大な豪華客船が停泊していた。

 

「戦王領域がそれだけの権力を誇示するのが目的なんだと思いますよ」

「そういうもんなのか....その辺は俺にはよくわからんな」

 姫柊は説明してくれたが、俺はあまりピンとこなかった。

 

「....まぁ、そうだと思いました。それよりも、早く行きましょうか。

 ここで止まっていても仕方がないですから」

「....そうだな。じゃあ行くか」

 そう言って、俺と姫柊は船に乗り込んだ。

 

 〜〜〜〜

 船内

 

「....俺達、完璧に浮いてるよな」

 船内に入って、俺はまずそう思った。船内には大物政治家や俺でも知ってる

 絃神市の要人達ばかりだったからだ。

 

「いえ、第一真祖の使者がこの島に訪れて真っ先に挨拶すべき相手はこの地を支配する

 第四真祖である先輩です。先輩がこのパーティーのメインゲストなんですから

 もっと堂々としていてください」

 姫柊は俺に淡々とそう言ってきた。

 

「そんなこと言われてもだな。俺は数ヶ月前までただの高校生だったんだよ!」

 俺がそう言うと、姫柊は少し同情したような目で俺を見てきた。

 

「....ていうか、俺を呼びつけた張本人はどこにいるんだ?」

「おそらく上かと。行きましょう先輩」

 姫柊はそう言って上に上がる階段の方に向かって歩き出した。そして、人気が少なく

 なったところを歩いていると、急に俺に向かってナイフとフォークが飛んできた。

 

「うおっ!?」

「先輩!?」

 俺は咄嗟に後ろに下がってナイフとフォークを躱した。すると目の前に茶髪の

 チャイナドレスを着た女が立っていた。

 

「雪菜から離れなさい、暁 古城」

「っ、何で俺の名前を....」

「紗矢華さん!?」

 姫柊が驚いてそう言った瞬間、紗矢華と呼ばれた女は俺を突き飛ばして姫柊に抱きついた。

 

「雪菜! 雪菜雪菜雪菜! 久しぶりね、元気だった?」

「は、はい。でも、どうして紗矢華さんがここに?」

「アルデアル公の監視の任務で来たの」

「っ、じゃああの手紙は紗矢華さんが....」

「そうよ。それよりも身体は平気? 獅子王機関も何て酷い! 私がいない間に雪菜を

 第四真祖の監視を押し付けるなんて....」

「おい姫ら....」

「呼ばないで」

 俺が姫柊の名前を呼ぼうとした瞬間、女は俺にそう言ってきた。

 

「はぁ!?」

「貴方に雪菜の名前を呼ばれたくない。雪菜もそうでしょ?」

「え、えーっと....」

「っ、とにかくコイツは誰なんだ?」

 俺は姫柊の方に向かってそう言った。

 

「煌坂 紗矢華。獅子王機関の舞威媛で私のルームメイトだった人です」

「舞威媛? 剣巫とは違うのか?」

「舞威媛の真髄は呪詛と暗殺。雪菜につきまとうものを抹殺するのが私の使命」

「いや完全に私情を挟んでるだろ!」

 舞威媛の説明を聞いて俺はそう叫んだ。

 

「ま、まぁまぁ先輩。それよりも紗矢華さん、アルデアル公の監視役なのに

 ここにいて良いんですか?」

「違うのよ。アルデアル公に連れてくるように言われたの。そこの変態真相をね」

 煌坂は俺を睨みながらそう言ってきた。

 

「だったらさっさと案内してくれ....」

「言われなくても分かってるわよ。だからさっさと死んできて」

「死ぬかっ!」

「待ってください先輩、紗矢華さん」

 俺は煌坂について行こうとした瞬間、姫柊が俺達に向かってそう言ってきた。

 

「どうしたの雪菜?」

 煌坂が姫柊に聞くと、姫柊は雪霞狼を構えて背後を向いてこう叫んだ。

 

「さっきから私達をつけていますが、一体何者ですか!」

 姫柊が叫んでから少しすると、物陰から金髪でタキシードを着た男と、薄緑色の髪で

 赤いドレスを着た女が現れた。

 

『気づいていたのか』

「えぇ....」

『そうか。なかなか洗練された感覚だな』

 金髪の男は素直に賞賛したように言った。

 

「それはどうも。それで貴方達は一体何者ですか? ただの人間では無いようですが....」

『俺は豪脚のブラストモンク』

『私は質量転移のレディフェンサー。黒輪の根絶者(デリーター)様に仕える者よ』

「黒輪の根絶者(デリーター)....!」

「っ!」

 二人がそう言った瞬間、姫柊は警戒し、煌坂は目を見開いて驚いていた。

 

「....どうして私達をつけていたのですか?」

『それが私達に与えられた任務だからよ。ディミトリエ・ヴァトラーにこの島に来た

 目的を聞くこと。そして第四真祖、あなたの護衛をするためよ』

「俺の護衛?」

「一体どういう事ですか?」

『さてね。それよりも、そこのあなた。私達も勝手について行かせてもらうわよ』

 ドレスの女は煌坂を指差してそう言った。

 

「....」

「紗矢華さん?」

「っ! な、なに?」

「あの人達も勝手について行くって言ってますけどどうしますか?」

「....好きにしてくれたら良いわ」

 煌坂は少し動揺しながらもそう言って階段の方に向かって行った。

 

『そうか』

 金髪の男は煌坂の後ろについて行った。そして、女は俺の隣にやって来た。

 

『安心してくれて良いわ。私達は貴方達と敵対するつもりは毛頭無いから』

「....」

「そ、そうか....」

 姫柊は雪霞狼を直したが、未だに警戒を続けているようだった。俺も少し動揺していたが

 向こうに敵意が無いのは何となく分かったので、大人しく煌坂について行った。

 そして、俺達は上甲板に出た。すると、広大なデッキに一人の男が立っていた。

 金髪で白いスーツを纏った男は蒼い瞳で俺を見ていた。

 刹那、男の全身が純白の閃光に包まれた。閃光の正体は炎の蛇で、俺は咄嗟に

 躱そうとしたが....

 

『ふっ!』

 いつのまにか俺の目に前に金髪の男と薄緑色の髪の女が立っており、男は蛇を上空に

 蹴り上げ、女は何処から取り出したのかレイピアで蛇を斬り裂いていた。

 

「なっ!?」

 その様子に姫柊は驚いて目を見開いていた。

 

『随分と手荒な歓迎だな、ディミトリエ・ヴァトラー』

 金髪の男は白いスーツの男を睨みながらそう言った。

 

「まさか、彼の部下が乗り込んでいるとは....これは想定外だったねぇ」

 白いスーツの男は二人の正体に驚きながらもこっちに近づいて来た。

 

「初めまして、と言っておこうか、暁 古城。我が名はディミトリエ・ヴァトラー。我らが真祖、

 “忘却の戦王(ロストウォーロード)”よりアルデアル公位を賜りし者。 今宵は御身の尊来をいただき恐悦の極み....」

 男の口上に、俺、姫柊、煌坂は固まっていた。

 

「そして同時に、黒輪の根絶者(デリーター)に仕える者達よ。久しぶりと言っておこう。その節は

 随分と世話になったものだね」

『....こっちは大迷惑を被ったけど』

『もう数十年はお前と顔を合わせなくても良かったがな....』

 二人は嫌そうにそう言っていた。

 

「と、とりあえず。あんたが俺を呼び出した張本人のディミトリエ・ヴァトラーなんだな?」

 俺は困惑しながらそう聞いた。

 

「その通りだ暁 古城、いや焔光の夜伯(カレイドブラッド)。我が愛しの第四真祖よ!」

 ヴァトラーは愛おしそうに俺を見つめながら腕を広げていた。

 

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