ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜   作:アイリエッタ・ゼロス

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戦王の使者 Ⅶ

「....あの蛇遣いが来ているのか。それも暁 古城も巻き込んで」

「あぁ。俺の部下の二人が目的を聞くのと忠告はしてくれたけど....」

 次の日の朝、俺は学校にあるなっちゃんの部屋に行って昨日の事を話していた。

 

「あの軽薄男が忠告を聞くとは到底思えんがな....」

「それに関しては同感だ....」

主人(マスター)根絶者(デリーター)。紅茶です」

 俺となっちゃんが話していると、アスタルテが紅茶を淹れてくれていた。

 

「ありがとう。それと、俺のことは根絶者(デリーター)じゃなくて名前で頼む」

命令受託(アクセプト)。では、これからは終夜さんと呼ばせていただきます」

「あぁ」

 何故ここにアスタルテがいるのかと言うと、俺がなっちゃんにアスタルテを預けたからだ。

 俺の所にいると俺が黒輪の根絶者(デリーター)という事がバレてしまうため、俺の正体を

 知っており、何かあった際にすぐ見に行く事が出来る人物に頼った結果、なっちゃんの所に

 預ける事になったというわけだ。それにアスタルテは現在保護観察中の身のため、

 攻魔師であり、教師であるなっちゃんの所が適任だったというのも理由だ。

 

「そういや、昨日行ったカノウ・アルケミカル・インダストリー社はどうだった?」

 俺はなっちゃんが昨日、攻魔師の仕事で行った所のことを聞いた。

 

「あぁ、黒死皇派のシンパがいた。それとガルドシュの目的がわかった」

「ガルドシュの?」

「奴の目的はナラクヴェーラだ」

「....ナラクヴェーラ?」

「南アジア、第九メヘルガル遺跡から発掘された先史文明の遺産だ。かつて存在した

 無数の都市や文明を滅ぼしたといわれる神々の兵器だ」

 なっちゃんは丁寧にナラクヴェーラについて説明してくれた。

 

「まさかと思うが、そんな危険物がこの島に?」

「表向きには無いはずの物だが、カノウ・アルケミカル・インダストリー社がサンプルの

 一体を非合法に輸入していた。....既に強奪されていたがな」

「強奪って....」

「所詮九千年前に作られたガラクタだ。制御するためにはこの石版を解かない限り

 動く事は無いだろう」

 そう言ってなっちゃんは一枚の紙を見せてきた。そこには訳の分からない呪文なのか

 術式なのかを書かれた石版の写真があった。

 

「(全く読めねー....)」

「ま、今日か明日にでも特区警備隊がガルドシュを狩り出すだろう」

「....だと良いけどな」

 俺は石版を見ながらそう呟いた。

 

「....どういう意味だ?」

「何か嫌な予感がするんだよなぁ....」

「....お前がそう言うと当たりそうで嫌なんだが」はぁ

 なっちゃんは嫌そうにため息をついてそう言ってきた。

 

「そう言われてもなぁ....」

「....そういえば、一つお前に頼みたい事があったな」

 なっちゃんは何か思い出したようにそう言った。

 

「頼みたい事?」

「あぁ。アスタルテの力を制限する事はできるか?」

「アスタルテの?」

 何でもアスタルテの眷獣の力が俺の魔力をキッカケに強力になったため、

 黒死皇派のシンパがかなりの重傷を負ったらしい。そのため、力を少し封印して欲しいそうだ。

 

「まぁ、それぐらいならすぐにできるけど....」

「そうか」

「アスタルテ、ちょっとこっちに来てくれ」

 アスタルテにそう言うと、アスタルテは俺の前に立った。

 

「ちょっと手を触るぞ」

「はい」

 俺はアスタルテの手を握って、魔力の流れを見た。

 

「....これで良いか。呪縛(ロック)

 俺はそう呟いて、アスタルテに渡している魔力の一部を呪縛(ロック)した。

 

「良し。もう良いぞ」

 そう言って手を離そうとしたのだが、俺の手はアスタルテに強く握られて離せなかった。

 

「アスタルテ?」

「っ! すいません!」///

 アスタルテに声をかけると、アスタルテは逃げるように俺から距離を取った。

 その時のアスタルテの顔は少し赤くなっていた。

 

「(な、何かまずいことしたか....?)」

 俺が困っていると、なっちゃんは俺の方を見て苦笑していた。

 

「....何さ」

「いや、お前も罪作りな男だと思っただけだ」

「どういう事....?」

 そう言って話していると、扉が開く音がした。

 

「那月ちゃん。少し良い....」

 入ってきたのは古城と姫柊で、古城の顔面には広辞苑が投げられていた。

 

「私のことを那月ちゃんと呼ぶなと言っているだろう。いい加減に学習しろ暁 古城」

「イッテェ....って、終夜!」

「伊吹先輩! こんな所で何してるんですか」

 二人は俺がいることに驚いていた。

 

「コイツは私が呼んだ。コイツには聞きたい事があってな。....まぁその話はもう終わったが」

「そういうこと。二人は何か聞きに来たのか?」

「あ、あぁ」

「そうか。ま、大事な話そうだから俺は退出するか。じゃあななっちゃん」

「....教師をちゃん付けで呼ぶな!」

 なっちゃんは俺に向かって扇を投げつけてきた。俺はそれを慌てて躱して逃げるようにして

 教室に向かった。

 

 〜〜〜〜

 那月side

 

「はぁ....それで、お前達はこんな朝から何の用だ」

 私は目の前にいる二人に聞いた。

 

「クリストフ・ガルドシュについて教えてください」

「....蛇遣いから聞いたな」

「ヴァトラーのこと知ってるのか!」

 暁 古城は驚いたようにそう叫んだ。

 

「当たり前だ。それで、ガルドシュを捕まえるとでも言うのか?」

「っ! 何故その事を!」

 予想通りの反応に私はため息をついた。

 

「奴から聞いた」

「奴って?」

「黒輪の根絶者(デリーター)の部下だ」

「「っ!?」」

 私がそう言った瞬間、二人は目を見開いた。

 

「黒輪の根絶者(デリーター)と知り合いなんですか!」

「知り合いなどでは無い。昔に共闘した事があっただけの関係だ。今では私に

 面倒ごとを押し付けてくる厄介な奴だがな」

 そう話していると、アスタルテが紅茶を淹れて持ってきた。アスタルテの姿を見て、

 再び二人は驚いていた。

 

「お前、オイスタッハのオッサンが連れてた眷獣憑きの....!」

「アスタルテ....さん!?」

「お前達とは顔見知りだったな。アスタルテも少し前に奴から預かった。

 自分の所より、私の所が安全だという理由でな。アスタルテ、そいつらに茶はいらん」

「....命令受託(アクセプト)

 アスタルテはそう言って下がっていった。

 

「....とにかく、お前達がガルドシュを捕まえる必要はない。黒死皇派が成そうと

 していることは無駄だからな」

「どう言う意味ですか....?」

「(....面倒だが、仕方あるまい)」

 私はそう思いながらナラクヴェーラの事について話した。

 

 

「とにかく、あの蛇遣いが何かを言ったところで、お前達の出る幕はない。強いて言えば、

 追い詰められた獣人どもの自爆テロに気をつけることだな」

「自爆テロ....!」

 思いがけない私の言葉に、暁 古城は顔を引きつらせていた。

 

「それからもう一つ忠告しといてやる。ディミトリエ・ヴァトラーには気をつけろ。

 奴は自分よりも格上の“長老”....真祖に次ぐ第二世代の吸血鬼をこれまでに二人も喰っている」

「同族の吸血鬼を喰った....アイツが!?」

 中等部の転校生と暁 古城は驚愕していた。

 

「奴が、“真祖に最も近い存在”といわれる所以だ。せいぜいお前も喰われないようにする事だ。

 わかったならとっとと出て行け。私ももう出る」

 そう言って、私は二人を無理矢理部屋から追い出した。

 

「さて、アスタルテ。留守番は任せるぞ」

命令受託(アクセプト)

 私はアスタルテにそう言って外に待たせている車に乗って増設人工島(サブフロート)に向かった。

 

 〜〜〜〜

 終夜side

 

「(何なんだろうな....あの石版を見た時と嫌な予感)」

 俺は教室でそんな事を考えていた。

 

「(なっちゃんは動くことはないって言ったが....っ!)」

 そう考えていると、急にこの校舎の屋上から巨大な魔力を感じた。

 それと同時に、校舎の窓ガラスが割れ始めた。

 

「(この魔力の気配....古城か!)」

 俺は急いで教室から出て屋上に向かって走り出した。そして、屋上に着くと、膝をついている

 古城と、茶髪のポニテで剣を持った女と、気を失って倒れている浅葱と、雪霞狼を持った

 姫柊がいた。

 

「....これは一体、どういう状況だ?」

 話しを聞くと、そこにいる剣を持った煌坂という女が古城に襲いかかって眷獣の一体が

 覚醒しそうになったらしい。その気配に気づいた姫柊が雪霞狼で古城の眷獣を止めたそうだ。

 すると....

 

「雪菜ちゃん! 何かすごい勢いで飛び出していったけど大丈夫?」

 急に屋上の扉が開き凪沙ちゃんが入ってきた。

 

「って、何これ! なんで屋上が壊れてるの!? それに浅葱ちゃん!? 

 怪我してる!? どうしよう!?」

「....はぁ。伊吹先輩、すみませんが私と凪沙ちゃんが藍羽先輩を保健室に連れて行きますから。

 その間、二人の事を監視してもらえませんか?」

「別に構わないが....」

「ありがとうございます。先輩と紗矢華さんはここで正座して反省していてください」

「ひ、姫柊!?」

「そんな殺生な!」

「....文句は聞きません。良いですね」

「「は、はい....」」

 姫柊の睨みで二人は縮こまってその場で正座した。

 

「あ、それと先輩。これをお願いしますね」

 そう言って姫柊は折りたたんだ雪霞狼を古城に渡した。

 

「それでは伊吹先輩。二人の監視、お願いしますね」

「あぁ。浅葱のことは頼んだぞ」

「はい」

 

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