ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜   作:アイリエッタ・ゼロス

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戦王の使者 XIII

 煌坂side

 

 伊吹 終夜が島への攻撃を防ぐと言ってここを離れてから、私達はナラクヴェーラと

 対峙していた。

 すると、ナラクヴェーラは私達に向かってミサイルを放ってきた。

 私は二人の前に立ち、ミサイルを受け流した。受け流したミサイルはいくつかが本島の方に

 向かってしまったが、伊吹 終夜が召喚した三体の獣が全て撃ち落としていた。

 

「凄いわね....あんな力を持った獣を一気に三体も召喚するなんて」

 私は三体の獣の動きや、攻撃の威力、防御力を見てそう呟いた。

 

「あぁ....だけど、これなら後ろに気を使わずに戦える!」

「そうですね」

「さぁ、一気に行くぜ! 獅子の黄金(レグルス・アウルム)!」

 暁 古城は獅子の黄金(レグルス・アウルム)を召喚して、ナラクヴェーラの女王機に攻撃したが、

 ナラクヴェーラの女王機には装甲の表面に少し焦げ目をつけただけだった。

 

「なっ!? 効いてねぇのかよ!」

『その眷獣の攻撃は君達が戦っていたナラクヴェーラを通して既に学習済みだ。

 もう通用しないのだよ!』

 女王の機体からはガルドシュらしき男の声が聞こえてきた。

 

「マジかよ....! そんなもん、どうやって倒すんだよ!」

「大丈夫ですよ先輩。方法なら....」

 そう言って雪菜が何かを説明しようとした時、突如空が暗雲に包まれた。

 

「っ、今度は何だ!」

 突然の暗雲に、私達やガルドシュは周囲を警戒した。

 

「(向こうも警戒している? という事は、ガルドシュの味方ではなさそうね....)」

 そう考えていると、増設人工島(サブフロート)から数百m離れたところで巨大な竜巻が発生した。

 

「竜巻!?」

「何故あんな所で....!」

 暁 古城と雪菜は突然の出来事に驚いていた。そして警戒していた次の瞬間、

 竜巻が晴れ、そこに青いロボットのようなものが現れた。

 

「アレは....!」

「黒輪の、根絶者(デリーター)....」

 私と雪菜は、その現れた正体を獅子王機関の資料で見たことがあった。

 

「何で、こんな所に....」

 私がそう呟いた瞬間、黒輪の根絶者(デリーター)の姿は消え、いつのまにか私達の背後に浮いていた。

 

「いつの間に....!」

 そして、黒輪の根絶者(デリーター)は近くにいたナラクヴェーラを一機、バンチで破壊した。

 

「嘘だろ....!? 一撃でナラクヴェーラを!」

『バニッシュデリート』

 黒輪の根絶者(デリーター)は破壊したナラクヴェーラにそう言うと、ナラクヴェーラは

 黒い球体の中に封じ込まれた。そして、黒輪の根絶者(デリーター)は私達の方を向いた。

 

『また会ったな、暁 古城、姫柊 雪菜。....それと、お前はあの時の少女か』

 黒輪の根絶者(デリーター)は私を見てそう言ってきた。

 

「っ! 覚えていてくれたの」

『まぁな。それよりも、前を見ろ』

 そう言って、黒輪の根絶者(デリーター)は巨大なバリアを張って私達に向かってきた

 ナラクヴェーラのレーザーを全て無効化した。

 

『あの女王機に何も手立てが無いなら、俺がもらうぞ』

 その言葉に....

 

「待ってください! あの女王機を倒す手立てはあります。ですから....

 あなたは手を出さないでください」

 雪菜が待ったをかけてそう言った。その言葉に私と暁 古城は驚いた。

 

『....良いだろう。ならば、俺は雑魚の処理をしてやる。その間に、奴をさっさと倒せ』

「....言われなくても」

『そうか』

 それだけ言うと、黒輪の根絶者(デリーター)はナラクヴェーラの破壊を始めた。

 

「ひ、姫柊! 本当にナラクヴェーラを倒す手立てはあるのか?」

 黒輪の根絶者(デリーター)がナラクヴェーラを破壊している間に暁 古城は雪菜にそう聞いた。

 

「はい。この携帯にナラクヴェーラの自己修復を利用して自滅させる

 コンピューターウイルスの一種があります。その音声を女王機の中で流せば....」

「一体、どこでそんなものを....」

「藍羽先輩が解析をしながら作ったそうです」

 それを聞いて、私は暁 古城の周りにいる人間はめちゃくちゃだと思った。

 

「なるほどな。だが、この状態をどうやって抜ける....?」

 ナラクヴェーラはどんどん黒輪の根絶者(デリーター)が黒い球体の中に封じ込めていくが、

 ナラクヴェーラの増援は増えていった。それに、黒輪の根絶者(デリーター)のレーザーや

 攻撃でこの中を突破して女王機に潜り込むのは至難の技だった。

 だけど、私には一つだけ策があった。

 

「....私が動きを止めるわ」

 そう言って私は前に出て煌華麟を前に突き出して煌華麟を真の姿にした。

 

「"六式重装降魔弓(デア・フライシュッツ)"....これが煌華麟の本当の姿よ。

 そして、この状態で使う事の出来る技が一つあるわ。だけど、チャンスは一度きりよ。

 もし失敗でもしたらアンタのこと灰にするから」

「....わかった」

「....では、行きます!」

 雪菜の言葉に暁 古城と雪菜は女王機に向かって走り始めた。

 

 〜〜〜〜

 終夜side

 

『(姫柊はまだ警戒してるか....)』

 俺はナラクヴェーラ達を呪縛しながらそんな事を考えていた。

 すると、さっきまで話し合いをしていた三人がそれぞれ動き始めた。

 

『(さて、俺は援護してやるか)』

 そう思いながら、俺は古城達に向かってレーザーを放とうとする

 ナラクヴェーラを集中的に攻撃した。すると....

 

「黒輪の根絶者(デリーター)!」

 急に煌坂に呼ばれた。

 

「今から私が技をそこの周囲に向かって放つわ! 魔法陣が現れたら、その魔法陣の外に出て!」

 煌坂はそう言うと、弓の形になった煌華麟を上空に向けた。

 

「獅子の舞女(ぶじょ)たる高神の真射姫(まいひめ)が讃え奉る。極光の炎駒(えんく)、煌華の麒麟、其は天樂(てんがく)と轟雷を統べ、

 憤焰をまといて妖霊冥鬼を射貫く者なり!」

 煌坂の詠唱が終わり、銀色の矢を放つと上空に巨大な魔法陣が描かれた。

 俺はそれを見て、急いで魔法陣の外に出た。魔法陣からは無数の光の矢が

 ナラクヴェーラに降り注ぎナラクヴェーラ達の動きを止めた。

 

『(チャンスだな....)』

 俺はそう思い、動きが止まったナラクヴェーラに向かって身体から出ている

 コードでナラクヴェーラを貫き、一斉に呪縛(ロック)した。

 

「っ、先輩!」

「あぁ! 獅子の黄金(レグルス・アウルム)! 双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!」

 古城は一気に駆け抜け、二体の眷獣で女王機に攻撃した。

 

『(なるほどな....)』

 女王機は既に二体の眷獣の攻撃に耐性はついているが、二体同時の攻撃の

 耐性を付いていないことに古城は気づいたようだった。

 すると、女王機から獣人化したガルドシュが出てきた。

 

「ハハハッ! やはり戦争というのはこうでなくては!」

「守るべき国も民も持たないあなたに、戦争を語る資格はありません!」

 姫柊は哀れみの目でガルドシュを見ると、煌坂の援護を受けて女王機に走っていった。

 

「うおぉぉぉ!」

 そして、姫柊に気を取られていたガルドシュは、背後に回っていた古城に殴られて

 吹き飛ばされた。

 

「ぶち壊れてくださいナラクヴェーラ!」

 そして、姫柊は携帯を女王機に投げ入れると不協和音が流れ始めた。

 それは、聞いているだけで気分が悪くなりそうな音だった。

 そして、その音ともにナラクヴェーラは崩壊を始めていった。

 呪縛(ロック)していたナラクヴェーラも同じように身体の崩壊を始めていた。

 

解呪(アンロック)

 俺は音が止まると、呪縛(ロック)していたナラクヴェーラ達を解呪(アンロック)した。

 そこから出てきたのはただの砂となったナラクヴェーラだった。

 

『(これで、全部終わった....)』

 そう考えていた矢先、背後から強力な魔力を持った蛇が俺に向かってきた。

 

『....はぁ』

 俺は向かってきた蛇の首を掴んで消滅させた。

 

『....何の真似だ、ヴァトラー』

 俺は蛇を飛ばしてきたヴァトラーを睨みつけながらそう聞いた。

 

「決まっているだろう? 君へのリベンジだ! あの時、君にはやられてしまったからねぇ」

 ヴァトラーはそう言いながら魔力を高めていった。

 

「さぁ、君も構えたまえ」

『断る。ここで俺とお前が戦えば島が無事では済まないからな』

 そう言いながら、俺はヴァトラーに手を向けた。

 

解呪(アンロック)

 すると、ヴァトラーの中にある眷獣の呪縛(ロック)解呪(アンロック)された。

 

「これは....」

『お前の中にある眷獣を三体解呪(アンロック)した。だから、ここは引いてもらおうか』

「断ったら?」

『....この場で根絶(デリート)する』

 そう言ってしばらく対峙していると、ヴァトラーは自分の魔力を抑えた。

 

「....わかったよ。今日のところは引こう」

『....そうか』

 その言葉を聞き、俺も腕を下げた。

 

「では、僕はガルドシュを連れて帰るとしようかな。彼を連れて帰らないと僕の沽券に

 関わってくるからね」

『ならさっさと帰れ。お前がいると面倒で仕方がない』

「ふふふ、釣れないなぁ」

 そう言って、ヴァトラーはガルドシュを担いで何処かに歩いていった。

 

『....俺も帰らせてもらうか。ではな、姫柊 雪菜、暁 古城、煌坂 紗矢華』

「っ、どうして私の名前を....!」

『....さてな。召喚(コール)、黒門を開く者』

 俺は適当に言葉を濁してゲートの中に入り、この場から姿を消した。

 

 

 

 

 


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