ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜 作:アイリエッタ・ゼロス
聖者の右腕 Ⅰ
「熱い....焼ける....焦げる....灰になる」
俺の隣にいる友人、暁 古城はそんな事を言いながら問題集を解いていた。
「....言ってる場合かよ。浅葱、今何時だ?」
俺は目の前でパフェを食っている友人、浅葱に聞いた。
「もうすぐ4時。後、3分32秒後」
「マジか....終わる気がしねぇ」
「確か追試は明日の9時からだったな」
「あぁ....」
「じゃあ今夜徹夜したら17時間はあるな」
浅葱の隣に座っている友人、矢瀬は笑いながらそう言った。
「笑い事じゃねぇよ....ていうか、なんで俺はこんなに大量の追試をやらなきゃならねぇんだ!
追試の範囲は広すぎるし、授業でもやってねぇよ! ウチの学校の教師は俺になんか
恨みでもあんのか!」
古城の言葉を聞いて、俺達三人は目を合わせてため息が出た。
「そりゃあるだろ....」
「毎日毎日授業サボってるから舐めてると思われたんじゃない?」
「それに夏休み前のテストも無断でサボったしな」
「....あれは不可抗力なんだよ。色々事情があったんだ。ていうか、今の俺の体質的に
朝一はキツいって散々言ってるのにあの担任は....」
古城は担任に恨みを込めたようにそう言った。
「那月ちゃんには感謝した方が良いんじゃない? その課題やったら単位くれるんでしょ。
アンタに恨む筋合いはないわよ」
「浅葱の言う通りだな」
「うっ....理不尽だ。俺は朝起きれない体質なのに....」
古城がそう言うと、浅葱は不思議そうな表情をした。
「体質って何よ。古城って花粉症だっけ?」
「あ....いや、朝起きるのが苦手ってつぅか何というか....」
「それって体質の問題? 吸血鬼じゃあるまいし」
「だ、だよな....」
古城は浅葱の言葉を聞いて苦笑いしていた。それを見ながら俺はため息が出た。
「ま、そんなあんたを哀れに思ってこうして勉強見てあげてるんだから。
感謝しなさいよね」
「そんだけ飲み食いして恩着せがましい事言うなよ」
「それを立て替えるのは俺と終夜だぞ古城」
「わかってるって畜生....お前ら本当に温かい血の通った人間かよ」
「ひでぇ言われようだなおい....」
「だな。それに今の差別用語だから気をつけろよ」
そう話していると、浅葱はカバンを持って立ち上がった。
「んじゃ、私はお先に」
「浅葱が帰るなら俺も帰るか」
そう言って矢瀬も荷物をカバンに入れて立ち上がった。
「ま、頑張ってね〜。後、終夜またね」
「精々足掻けよ古城。じゃあな終夜」
「おう。じゃあな」
俺は二人に手を振って見送った。
「はぁ、やる気無くすぜ....」
「なら俺らも帰るか。いつまでも居座ってるのは店にも迷惑だし」
「だな....」
〜〜〜〜
「あぁ〜、あっちぃ....」
「そりゃ夏だからな。お前に取っては地獄だな」
会計を終えた後、俺達は自分達が住んでいるマンションに向かって歩いていた。
「他人事みたいに言いやがって....」
「まぁな。....それよりも」
俺と古城は店の影になっている所で足を止めた。
「古城、気づいてるか」
「あぁ。ファミレスを出た時からだが、俺達つけられてるよな」
俺達の背後15mにはギターケースを背負った彩海学園の中等部の制服を着た少女がいた。
「俺達じゃなくてお前だと思うがな。....ま、もう少し泳がせてみるか」
「わかった」
そう言って、俺達はショッピングモールの中に入った。そして、俺達はゲームセンターの
中に入って店の外の様子を見た。
俺達の事をつけていた少女は店の目の前で立ち止まっていた。
「凪沙ちゃんの友達か?」
「いや、どうだか....?」
少女は店の前でオロオロしだした。おそらく、古城の姿を見失いたくないのだろうが、
店の中に入っては古城と鉢合わせする可能性が高くなる。
その葛藤に板挟みになっているのだろう。それを見て俺達は....
「終夜、俺凄い罪悪感に襲われてるんだが....」
「それは俺もだ....」
「はぁ、しゃあない....出ようぜ」
そう言って俺達はゲーセンを出たが、偶然その少女と鉢合わせてしまった。
「っ! 第四真祖!」
少女はそう叫んでギターケースの中身をいつでも取り出せるように警戒していた。
すると、古城は急に変な事をやり出した。
「オゥ、ミディスピアーチェ! アウグーリ!」
大げさなリアクションで腕を大きく動かしながら古城はそう言ったので、目の前の
少女はポカーンとしていた。
「(何をしとるんだコイツは....)」
「私、通りすがりのイギリス人でぇす。日本語わかりませぇん!」
「お前みたいなイギリス人がいるか」
そう言って、俺はカバンで古城の頭をしばいた。
「ぐふっ!?」
古城はその場で頭を抑えた。
「えっ? えっ?」
少女はその様子に困惑していた。
「はぁ....悪いなこのバカが。それと、第四真祖は人違いだと思う。
すまないが他を当たってくれ」
そう言って、俺は古城を引きずってその場から離れた。
〜〜〜〜
「お、お前なぁ! 本気でしばくなよ!」
「本気ではしばいてねぇよ。てかあの子、お前の正体を知ってたみたいだな」
俺と古城はゲーセン近くの物陰に身を潜めていた。
「そうだな....一体どこで知ったんだ」
そう話していると少女はゲーセンから出てきた。だが、出てきた瞬間、二人の男に
ナンパされていた。
そして何かを言い争っていると、ナンパ男の一人が少女のスカートをめくった。
俺は咄嗟に目線をそらしたが、古城はガン見していた。
すると少女は....
「っ、若雷!」
何か呪文のようなものを唱えてスカートをめくった男を吹き飛ばした。
「っ、コイツ攻魔師か!」
そう言った男の表情は歪み、瞳は真紅に変わり牙が生えた。
「(D種か....)」
俺は男が吸血鬼に変わるのを見てそう思った。
「灼蹄! その女をやっちまえ!」
男がそう言うと、眷獣は少女に向かっていった。
「街中で眷獣を使うなんて! 雪霞狼!」
少女がそう言うと、ギターケースから銀色の槍を取り出した。そして、その槍を眷獣に
突き刺した。眷獣はその槍によって一瞬で消滅した。
「う、嘘だろ! 俺の眷獣が一撃で....」
男はそこから後ずさった。そして、少女は槍を男に突き刺そうと走り出した。
「(流石にあれはマズイな....)」
そう思い、俺は男の前に移動して槍の柄を掴んで止めた。
「えっ!?」
「そこまでにしとけ」
そう言って俺は少女にデコピンをした。
「ひゃん!?」
少女は今のが堪えたのか涙目で座り込んだ。
「す、すまん! 助かった!」
「....はぁ。これに懲りたらナンパは控えろ。じゃないと死ぬぞ」
「あ、あぁ。肝に免じておく」
そう言って、男は吹き飛ばされた男を担いで逃げていった。
「....どうして邪魔したんですか」
座り込んでいた少女は立ち上がって俺の事を睨みつけてそう言ってきた。
「流石に殺すのはやり過ぎだ」
「公共の場での魔族化、しかも市街地で眷獣を使うなんて明白な聖域条約違反です。
あの人は殺されても文句は言えないはずです」
「確かにその通りだな。だが....」
「先に手を出したのはお前だろ」
「古城....」
俺が言おうとした事を先に古城に言われた。
「そ、それは....」
「俺はお前が何者なのかは知らねぇけどよ、ちょっとパンツが見られたぐらいでそんな
危険な物振り回して殺そうとするのはあんまりだろ。いくら連中が魔族だからって....」
そう言った瞬間、少女の目から光が消えた。
「(余計なことを....)」はぁ
俺はそれを見て頭を押さえた。
「もしかして、見てたんですか?」
「あ、いやそれは....」
古城は俺に助けを求める視線を向けたが、俺はそれを無視した。
「....もう良いです」
少女はそう言って槍をギターケースに直して歩いて行った。その時、振り返りながら....
「いやらしい....」
そう言ってどこかに歩いて行った。
「....お前、一言余計」
「うっ....」
「はぁ....とりあえず俺らも帰る....」
俺はそう言って帰ろうとしたが、道に財布が落ちているのに気づいた。
「この財布....さっきの子の財布か」
そう言いながら、俺は財布の中にある彩海学園の生徒証を見た。
そこにはさっきの少女の写真があった。名前は“姫柊 雪菜”と書かれていた。
〜〜〜〜
夜
『
俺が部屋にあるベッドの上で携帯を触っていると、急に頭の中から声が聞こえた。
「どうかしたのか、“ジョーカー”?」
『昼の少女の事、彼女に報告しなくて良いのか?』
「なっちゃんにか? どの道明日会うから大丈夫だろ」
『そうか....気をつけろ
バレている可能性があるはずだ』
「わかっている。もしも俺や古城達に危害を加えるようなら、その時は....」
『あぁ。その時は....』
ジョーカーがそう言うと、しばらく静寂が続いた。
『ではな、
そう言うと、頭の中から声が消えた。
「(さて、これから荒れそうだな....)」
そう思いながら、俺は部屋から街を眺めた。