ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜 作:アイリエッタ・ゼロス
次の日の朝、俺は隣に住んでいる古城の家に来ていた。
「あ、おはようシュウ君!」
「おはよう凪沙ちゃん。古城のバカはまだ寝てるか?」
「古城君? まだ寝てるよ。あ、そうだ! シュウ君朝ご飯食べていないなら
食べていってよ!」
「わかったよ。じゃ、お邪魔します」
そう言って俺は暁家に入り、古城の部屋に向かった。古城は凪沙ちゃんが言っていた通り
爆睡していた。
「....」
俺は携帯を取り出して古城の耳元で大音量でアラームを鳴らした。
「っ!? な、なんだ! 何が起きた!?」
古城は音に驚いて飛び起きた。
「起きたか追試男」
「しゅ、終夜かよ! 朝から驚かすな!」
「わざわざ起こしに来てやったのに失礼な奴だな。さっさと着替えてリビングに来い。
凪沙ちゃんが朝飯作ってくれてるぞ」
そう言って俺は部屋から出た。リビングでは凪沙ちゃんが料理をしていた。
「凪沙ちゃん、これテーブルに運べばいいか?」
「うん! ありがとうシュウ君!」
そうして凪沙ちゃんの手伝いをしていると、制服に着替えた古城が出てきた。
「おはよう古城君! 熱いうちに朝ご飯食べて!」
「あぁ....」
「んじゃ、俺もいただきます」
俺と古城は凪沙ちゃんが作ってくれた朝ご飯を食べ始めた。
「やっぱ凪沙ちゃんの飯は美味いな」
「ありがとうシュウ君! あ、これも食べて良いよ!」
そう言って凪沙ちゃんは冷蔵庫から果物を出してきた。
「ありがとな」
そうして朝飯を食べ終わった俺と古城は学校に向かった。
〜〜〜〜
学校
古城が追試を受けている時、俺はある空き教室にいた。すると、扉が開き一人の
教師が入ってきた。
「あ、なっちゃん」
「教師をちゃん付けで呼ぶな」
俺がそう言うと、入ってきた教師“南宮 那月”は俺の頭目掛けて扇を振り下ろしてきた。
俺はそれが読めていたので後ろに下がって躱した。
「チッ....躱しよって」
「そりゃ痛いのは嫌だからな」
「はぁ....まぁ良い。それで私に用とは何だ」
「....古城に獅子王機関からの監視がついた」
「....何?」
俺がそう言うとなっちゃんの表情は変わった。
「名前は姫柊 雪菜。この学校の中等部の生徒だ」
「どうして暁 古城の監視だとわかった」
「姫柊 雪菜は古城の事を第四真祖と言った。それに彼女が持っていた武器から獅子王機関の
反応があったとジョーカーが」
「そうか....面倒なことに」チッ
なっちゃんは忌々しそうに舌打ちをしてそう言った。
「お前の正体はバレてないのか?」
「バレてないと思う。というか俺が”黒輪の
「ふむ....それもそうか。それと、ちゃん付けで呼ぶな」
そう言ってなっちゃんは再び扇を振り下ろしてきた。俺はそれを再び避けた。
「はぁ....まぁ良い。とりあえずお前は無茶な真似をして正体がバレないように気をつけろ」
「了解」
「なら良い。話が終わりなら私は戻るぞ」
そう言ってなっちゃんは教室を出ていった。
〜〜〜〜
12時になり、俺は古城が追試を受けてる教室の前に来ていた。
「終わったか?」
「あぁ....頭いてぇ」
「自業自得だ。さて、中等部に財布渡して昼飯食いに行くぞ」
そう言って中等部の職員室に行ったのだが....
「まさか担任が休みとはな」
姫柊 雪菜のクラスの担任は休みだった。俺と古城は諦めて中等部の校舎を歩いていた。
「だな。なんか連絡先が分かる物でも入ってたらな」
そう言って古城は財布を開いて見ていた。すると古城は急に口元を押さえた。
「急にどうした?」
「い、いや、なんでも....」
すると、古城の足元に血が落ちた。
「....何で財布開いただけで吸血衝動が起きるんだよ」はぁ
「仕方ねぇだろ。上手く制御できないんだから」
古城が止血していると、後ろから声が聞こえてきた。
「女子のお財布の匂いを嗅いで興奮するなんて....あなたはやはり危険な人ですね」
「姫柊 雪菜....」
声の正体は、財布の持ち主である姫柊 雪菜だった。
「はい。何ですか?」
姫柊は蔑む視線でこちらを見ていた。
「な、何でここに?」
「それはこちらのセリフだと思いますけど? 暁先輩。ここは中等部の校舎ですよね?」
「う....」
古城の質問に姫柊は冷ややかに返した。そんな冷静な指摘に何も言い返せないでいる
古城を見て俺はため息をついた。
「それよりも、それって私のお財布ですよね」
「あ、あぁ。これを届けに来たんだが笹崎先生が休みでな....」
「それで匂いを嗅いで鼻血が出るほど興奮していたんですか」
「あながち間違いではないな....」
「おい終夜! 誤解を招くこと言うなよ!」
姫柊の目は更に冷たくなっていた。
「俺はただ昨日の姫柊を思い出して....」
古城がそう言うと、姫柊は一瞬硬直したかと思うと、顔を赤面させて
制服のスカートを抑えて後ずさった。
「き、昨日のことは忘れてください」
「いや、忘れろと言われても....」
「忘れてください」
姫柊にそう言われ、古城は黙って肩をすくめた。
「....お財布返してください。そのつもりでここに来たんですよね」
姫柊がそう言うと、何故か古城は財布を高く掲げた。
「返す前に話しを聞かせてもらいたいな。お前は一体何者で何で俺の正体を知っている」
「....わかりました。それは力づくでお財布を取り返せという意味でいいんですね」
そう言った姫柊はギターケースに手を伸ばして中身を取ろうとした。すると、急に姫柊の
腹が鳴った。
「えーと....もしかして腹減ってるのか?」
「察しろバカ」
「だ、だったら何だって言うんです?」
姫柊がそう言うと、古城は財布を姫柊の目の前に差し出した。
「な、何ですか....」
「昼飯、奢ってくれ。財布の拾い主にはそれくらいの要求をする権利があるだろ」
「年下に飯を奢らせるなよ....」
〜〜〜〜
「あ、あの、私の分までありがとうございます」
「気にすんな。こいつが迷惑をかけた迷惑料とでも思ってくれ」
俺達三人はハンバーガーショップに来ていた。そして、俺は姫柊と古城に昼飯を奢ってやった。
「姫柊もハンバーガーとか食べるんだな。なんかこういう店とは縁がなさそうな
イメージだったからな」
「高神の杜がある街は都会じゃありませんが、ハンバーガーぐらい売ってますよ。
よく食べには行きませんが、偶に仲の良い子達とは行きますよ」
古城の言葉に姫柊は少し拗ねたようにそう言った。
「高神の杜? 姫柊が前にいた場所か?」
「はい。表向きは神道系の女子校という事になっています」
「表向きってことは、裏があるのか?」
古城の言葉に姫柊は少し考えたようだが、すぐに答えた。
「....獅子王機関の養成所です。獅子王機関については知っていますか?」
「いや、知らん」
「えっ?」
古城の言葉に姫柊はどうしてといった表情で見ていた。
「古城....獅子王機関ってのは大規模な魔導災害や魔導テロを阻止する為の情報収集や
謀略工作を行う国家公安委員会に設置されている特務機関だ。....まぁ簡単に言うなら
公安警察みたいなもんだ」
「なるほど....」
「っ! よく知っていますね」
「まぁな」
俺の説明に姫柊は驚いていた。
「てことは姫柊は獅子王機関の関係者ってわけか」
「はい、そうですよ」
「だったら姫柊が俺をつけていたのはどうしてだ? 魔導災害やテロの対策なら
俺は関係ないだろ?」
「あの、暁先輩? ひょっとしてご存知ないんですか?」
「何をだ?」
古城の言葉に呆れながらも俺はこう言った。
「....真祖の力は一国の軍隊も同等、それ以上だ。だから、お前個人の力一つで
テロや災害に近い対応がされるんだよ。この事、お前に何回か言ったぞ」
「そ、そうだったか....?」
「はぁ....」
古城のど忘れ具合に呆れていると、姫柊は何かを思い出したかのように話しを続けた。
「ですが、もう一つその対応が適応される存在がいるんです」
「適応される存在? 誰だよそれ」
「....数年前、第四真祖を除く全ての真祖達を打ち倒し、真祖や真祖達の臣下の眷獣を
封印した存在————— "黒輪の
ごく稀に様々な国の魔導犯罪関連でその存在が確認され、剣士やロボット、龍の姿をした
存在だそうです。そして、この島に潜伏していると言われています」
「そんなヤベェ奴が野放しでこの島にいるのかよ....」
「お前が言えた立場じゃねぇだろ」
俺の言葉に古城はバツが悪そうな顔になった。
「ま、まぁ他の真祖達やその黒輪の
するつもりもねーし、支配する帝国なんてどこにもないからな」
「そうですね。それは私も聞きたいと思っていました。先輩はこの島で
一体何をするつもりなんですか?」
「何をって....」
「正体を隠して魔族特区に潜伏しているのは何か目的があるんじゃないですか?
例えば、絃神島を影から支配して登録魔族を自分たちの軍隊に加えようとしているとか。
あるいは自分の快楽のために彼らを虐殺しようとしているとか....なんて恐ろしい!」
「(想像力豊かだなぁ....)」
俺は一人、そんな呑気な事を考えていた。
「いや、だから待ってくれ! 姫柊は何か誤解してないか?」
「誤解?」
「潜伏するもなにも、俺は吸血鬼になる前からこの街に住んでいるんだが。俺がこの体質に
なったのは今年の春だ」
「....吸血鬼になる前から、ですか?」
姫柊は古城の言葉に、信じられないというふうに首を振った。
「そんなはずありません。第四真祖が人間だったなんて!」
「そんな事言われても事実なんだが....」
「普通の人間が途中で吸血鬼に変わることなどあり得ません。例え吸血鬼に血を吸われて
感染したとしてもそれは単なる"血の従者"——擬似吸血鬼です」
「と言われてもだなぁ....俺はただこの厄介な体質をあの馬鹿に押し付けられただけだ」
「押しつけられた? それに馬鹿っていうのは....」
「第四真祖だ。先代のな」
「先代の、第四真祖!?」
古城の言葉に姫柊は息を飲んだ。
「ほ、本物の“
選ぶんですか? そもそもなぜあの"
「いや、それは....」
「っ、古城! 思い出そうとするな!」
古城は顔を顰めて顔をテーブルに伏せた。
「せ、先輩!? ....伊吹先輩、これはどういう....?」
「....古城は先代の第四真祖から力を受け継いだ記憶がないんだよ。今みたいに思い出そうと
するとこうなるんだよ」
「そ、そうなんですか....伊吹先輩は何か知っているんですか?」
姫柊の問いは、かつて古城に聞かれた問いだった。
「....あぁ、知っている。だが言うことはできない。これに関しては古城の問題だ」
「....」
俺の答えに姫柊は何か言いたそうだったが、結局何も言ってこなかった。
それからしばらくして、古城が落ち着くと姫柊は話しを続けた。
「私、獅子王機関から先輩のことを監視するように命令されていたんですけど....
それから、先輩がもし危険な存在なら抹殺するようにとも」
「ま、抹殺....!?」
姫柊の言葉に古城は固まった。
「....何となくその理由がわかったような気がします。先輩は真祖としての自覚が足りません。
とても危うい感じがします。 なので、今日から私が先輩を監視しますから、くれぐれも
変なことはしないでくださいね。 まだ先輩を全面的に信用したわけではないですから」
「監視、ね....」
まぁいいか、といった様子で古城は肩の力を抜いた。
「....そういえば、伊吹先輩は一体何者なんですか? 素手で私の雪霞狼を掴みましたよね」
「俺か? 俺は一応魔術師みたいなもんだ。まぁ、滅多に魔術なんて使わないがな」
「そうなんですか....」
俺は昔、古城に言った嘘をそのまま姫柊に言った。
「そうだ姫柊。俺の妹の凪沙の事なんだが....」
「先輩のことは秘密にしておくので安心してください。その代わり、私のことも秘密に
しておいてください」
「助かる」
「....さて、話しも終わった事だし帰るか」
そう言って店を出て家に帰るのだが、姫柊は俺達のマンションまでついて来た。
そして、姫柊は俺とは反対側の古城の隣の部屋のドアに手をかけた。
「....家まで隣なのか?」
「はい。監視役ですから」
「....ご愁傷様だな、古城」