ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜 作:アイリエッタ・ゼロス
蒼き魔女の迷宮 Ⅰ
紗矢華side
「紗矢華、今回はありがとうございました。夏音の件では面倒をかけました」
私は今、ラ・ファリア王女の見送りのため空港にいた。
「いえ、王女のお役に立てたのなら何よりです」
「ふふふ、そうですか。ところで....波朧院フェスタとは何ですか?」
王女は私の後ろにある電光板を見ながらそう聞いてきた。
「あぁ....この時期に絃神島で行われる祭典で....って!?」
「まぁ! 年に一度のお祭りなのですね!」
王女は笑顔を浮かべながら携帯を取り出した。
「お、王女! 既に二度帰国を延期されております! これ以上はご家族も心配して....!」
「まぁ、楽しそうなお祭りですこと!」
「王女!」
王女は私の言葉に聞く耳持たずの状態で波朧院フェスタの写真を見ていた。
「(マ、マズい....このままだと王女は再び帰国を延期しかねない....!)」
そう思った私は王女の腕を掴んで飛行機の搭乗ゲートに向かって歩き出した。
「飛行機の前までお送りします!」
「....むぅ、分かっています。興味本位であなたの国に迷惑をかけるわけにはいきません」
王女は少し残念そうな表情をしながらも私に引っ張られていた。
そして、搭乗ゲートを通過した瞬間、私は謎の浮遊感を感じた。
「ですが、飛行機に辿り着けないのではどうしようもありませんね」
「えっ....?」
王女がそう言った瞬間、私は辺りを見渡した。私達はさっきまで空港の中にいたはずなのに、
何故か今、私達がいるのは以前ナラクヴェーラと戦った増設人工島だった。
「これは....! 一体何が!?」
「さすがは魔族特区。しばらくは退屈せずに済みそうですね」
私が焦っているのに対し、王女はどこか嬉しそうにしていた。
〜〜〜〜
終夜side
「....暑い」
「言うな古城....余計に暑くなるだけだ....」
「やっぱりこの時期は人が多いよね....」
学校に行くためのモノレールの中、俺、古城、凪沙ちゃんはそう言っていた。
「今日はいつもよりも混んでますね」
「波朧院フェスタが近いからね。島外からの観光客の人が多いんだよ雪菜ちゃん」
姫柊の疑問に、凪沙ちゃんはそう答えた。
「波朧院フェスタですか....中等部でも最近よく話題になってますけど、こんなに沢山の
観光客の人が来るお祭りなんですね」
「あぁ。島内の企業は殆ど休み。それに、この時期は絃神島への訪問許可が下りやすいからな。
企業との取り引き目的の人間には千載一遇のチャンスって言っても過言じゃないだろうな」
「そうなんですね。それに、ハロウィンがモデルですか....」
姫柊は電車の中のポスターを眺めてそう言った。
「まぁ時期的にハロウィンだから....」
凪沙ちゃんがそう言ったが瞬間、モノレールが減速を始めた。それに伴い、凪沙ちゃんと
姫柊はバランスを崩した。
「おっと....大丈夫か凪沙ちゃん」
「う、うん。ありがとうシュウ君....」///
凪沙ちゃんは俺が抱き留めたのだが、姫柊は古城が胸を揉みしだきながらも抱き留めていた。
「先輩....!」
「古城君....サイテー」
「....何をしてんだお前は」
「ま、待て! これは不可抗力だろ!」
俺と凪沙ちゃんの冷たい視線に古城は狼狽えていた。だが、姫柊の冷たい視線は古城に
向けられてはいなかった。
「そうじゃなくて! あの子....!」
姫柊が見ていたのは、混み合った通路にいる彩海学園の制服を着ている少女だった。
「高等部の生徒か? 何か危なっかしい感じだな....」
「(あの後ろ姿....)」
古城がそんな事を言っている時、俺はその少女の後ろ姿に見覚えがあるのを感じていた。
「はい。それよりも、あの子の後ろにいる男性....」
姫柊の視線の先には、どこか挙動不審な中年の男がいた。
「っ、痴漢か! 野郎!」
「ちょっ!? 先輩!」
古城は人混みを掻き分けながらその女の子に向かっていった。姫柊も、人混みを避けながら
古城の後を追っていた。
「はぁ....凪沙ちゃん。俺らも二人の後を追おう」
「う、うん」
そう言って、俺は凪沙ちゃんと手を繋いで二人の後を追うと、何故か古城が凪沙ちゃんの
担任である笹崎先生に捕まっていた。
「笹崎先生!?」
「どういう状況だよこれ....」
「ありゃ、暁ちゃんに....君は確か、暁ちゃんのお兄さんの親友君!」
笹崎先生は思い出したような表情をしながらそう言ってきた。
「あの、笹崎先生? 古城君の腕、離してあげてくれませんか?」
「笹崎先生! 暁先輩は痴漢じゃなくて、痴漢を捕まえようと....」
「あれ? そうなの?」
「本当の痴漢はコイツだ馬鹿犬」
すると、突然背後から聞き覚えのある声と男の恐怖に怯える声が聞こえた。俺達が声の方を
見ると、そこには彩海学園の制服を着て、片手に鎖を持ったなっちゃんがいた。
「えっ!?」
「「南宮先生!」」
「(どっかで見覚えがあると思ったら....やっぱりなっちゃんだったか)」
俺以外の三人は、なっちゃんの今の姿に驚いていた。
「那月ちゃん、何だよその格好は?」
「巡回だ。最近この車両で痴漢に遭う生徒が多くてな。無理を承知で変装して犯人を
あぶり出していたんだ。案の定、引っかかった馬鹿がいたがな」
そう言いながらなっちゃんは、鎖に縛られている男を睨みつけていた。
「無理どころか全然違和感ねぇぞ那月ちゃん。むしろ中等部の制服の方が似合ってたんじゃ....」
「ほらほら那月先輩。私の言った通りじゃないですか」
「やかましい....中等部の制服は残っていなかったんだから仕方ないだろう」
「南宮先生、彩海学園の卒業生だったんだ」
「みたいですね」
那月ちゃんの言葉に、凪沙ちゃんと姫柊は小さな声でそう話していた。
「残ってなかったって....それ、那月ちゃんの自前なのかよ」
「担任教師をちゃん付けで呼ぶな! だいたいどうしてそこの馬鹿犬が先生呼ばわりで
私だけ那月ちゃんなんだ」
「威厳と風格の差だったりして」
笹崎先生はそう言いながらなっちゃんの頭を撫でていた。
「撫でるなこの馬鹿犬!」
「....俺達、もう行って良いっすかね?」
古城は争っている二人にそう言いながら駅の改札の方に向かって歩いていった。俺達も
古城について行こうとしたその時....
「暁 古城、伊吹 終夜」
俺と古城は那月ちゃんに呼び止められた。
「はい?」
「何だよなっちゃん」
俺と古城がなっちゃんの方を見ると、なっちゃんはどこか不思議そうな表情を浮かべていた。
「もうすぐ波朧院フェスタだな」
「あぁ、そうっすね」
「それがどうかしたのか?」
「....週明けからは普通に授業を再開するからな。暁は遅れずにちゃんと来いよ。そして伊吹。
お前は波朧院フェスタで羽目を外しすぎるなよ」
それだけ言うと、那月ちゃんは笹崎先生とどこかに歩いていった。その時、俺は一人、
変な違和感を感じていた。