ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜   作:アイリエッタ・ゼロス

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聖者の右腕 Ⅳ

「ロタリンギアの殲教師に眷獣を宿した人口生命体(ホムンクルス)だと?」

「あぁ。その二人がこの魔族狩りの犯人だ」

 次の日の朝、朝一に学校に行った俺はなっちゃんの部屋に行って昨日の話しをしていた。

 

「奴等の目的は何かわかったか?」

「いや、そこまではわからなかった」

「そうか....」

 なっちゃんは扇を叩きながら考え込んでいた。

 

「それと、姫柊と古城が昨日の現場に来ていた」

「....あのバカは」

 なっちゃんは頭を抑えながら鬱陶しそうにそう言った。

 

「一応警告はしたけど、なっちゃんからも言っておいてくれないか? なっちゃんから

 言っておけば古城も少しはおとなしくするだろうし」

「どうだか....まぁ言うだけ言っておこう。それに、昨日の件もあるからな」

 なっちゃんは呆れながらも、悪い笑顔を浮かべてそう言った。その様子を見て、俺は古城と

 姫柊に心の中で謝った。

 

「じゃ、報告も終わったし俺は教室に戻るわ」

「あぁ、ご苦労だった」

 俺はそう言って部屋を出て教室に向かった。

 

 〜〜〜〜

 教室

 

「うっす古城、浅葱」

「終夜か。おはよう」

「おはよ終夜。アンタは古城と違って眠くなさそうね」

「まぁな。....逆にお前は眠そうだな」

 そう挨拶をしながら俺は自分の席に座った。そして、俺達三人は昨日の爆発事故の

 話しをしていた。何でも浅葱は、昨日の爆発のせいで災害用のシステムを一から

 作り直したそうで随分と睡眠時間が少なかったらしい。

 

「そりゃお疲れさん。そんな頑張った浅葱に後で何か奢ってくれるってさ、古城が」

 俺は古城の方を指差してそう言った。

 

「お、おい終夜! 何勝手な事を....」

「お前、浅葱からレポート貰うんだろ? それと合わせたお礼だと思って奢ってこい」

「お前、俺の財布事情知ってて言ってんのか!」

「もちろん」

「お前は鬼かっ!」

 そう言い合っていると、後ろの方で男どもが何か騒いでいた。男どもは携帯を見て

 何故か興奮状態になっていた。

 

「何の騒ぎだ?」

「さぁ? あ、ねぇお倫。男子共は何であんなに盛り上がってるわけ?」

 浅葱は近くに通りかかった築島 倫に聞いていた。

 

「あぁ....何か中等部に女の子の転校生が来たんだって」

「中等部....」

「女の転校生....」

 俺と古城は顔を見合わせて何となく察した。

 

「凄く可愛い子らしくてね。部活の後輩に命令して写真を送らせたみたい」

「へぇ」

「暁君と伊吹君は見に行かなくて良いの?」

「あぁ....てか、その転校生知ってるし。なぁ古城」

「あ、あぁ....」

 古城は少し顔を引きつらせながらそう言った。すると、後ろにいた男子共が

 こっちに近づいてきた。

 

「古城! お前の妹って3年C組だよな?」

「あぁ....それがどうかしたのか?」

「この子、紹介してもらえないか?」

 男の一人が写真を見せて古城にそう言った。画面に写っていたのは、案の定姫柊だった。

 

「あぁ....多分それは無理だと思うぞ」

 俺は写真を見ながら男共にそう言った。

 

「な、何でだよ伊吹!」

「その子、古城にしか興味ないから」

 俺がそう言った瞬間、男共は固まった。浅葱も浅葱で古城の方を睨んでいた。

 

「お、おい終夜! 誤解を招くこと言うな!」

「いや事実だろ」

 そう話していると....

 

「暁 古城、いるか?」

 教室の入り口からなっちゃんの声が聞こえてきた。

 

「何すか?」

「昼休みに生徒指導室に来い。....中等部の転校生も一緒にな」

「どうして姫柊も....」

「お前達が深夜のゲームセンターから逃げ出した後、朝まで二人で何をしていたか....

 きっちり説明してもらうからな」

 なっちゃんはそれだけ言うと去っていった。

 

「(あーあ....この絶妙なタイミングで)」

「暁君、浅葱がいるのにどういうつもりかしら?」

「どうって....俺と浅葱はただの連れ....って築島ぁ!?」

「浅葱ならあっちだよ」

 築島が言った方を見ると、浅葱はゴミ箱の前で何かを破っていた。

 

「あぁ! 世界史のレポート!」

「ふんっ!」

 浅葱は古城の方を睨みつけて自分の席に戻っていった。

 

「(恋する乙女も大変だな....)」

 俺は一人呑気にそんな事を考えていた。

 

 

 〜昼休み〜

 

 食堂から戻ってくると、古城は席にいなかった。

 

「(アイツどこに行った?)」

「なぁ浅葱。古城見てないか?」

 俺は何となく居場所を知ってそうな浅葱に聞いた。

 

「....アイツなら私にロタリンギアの企業について調べさせてどっかに行ったわよ」

 浅葱はもの凄く不機嫌そうにそう言ってきた。

 

「ロタリンギア....詳細はわかるか?」

「スヘルデ製薬の研究所。主な研究内容は人工生命体を利用した新薬実験。二年前に

 閉鎖して撤退済みって話をしたら教室を飛び出して行ったわ」

「(あのバカ....)」はぁ

 浅葱の言葉を聞いて俺は頭を押さえた。

 

「そうか....助かる」

 俺はそう言って教室から飛び出した。

 

「ちょ! アンタもどこに行くのよ!」

 後ろから浅葱の声が聞こえたが、俺は無視して職員室に走った。そして、ちょうど職員室に

 着いた時、なっちゃんが出てきた。

 

「何をしている伊吹。もう授業は始まるぞ」

「悪いなっちゃん。俺早退するわ」

「何?」

「あのバカ二人、犯人を捕まえに勝手に動いたみたいだ」

 俺がそう言うと、なっちゃんは頭を押さえながらため息をついていた。

 

「....そうか。わかった、早退を認めよう。あのバカどもには後で説教と言っておけ」

「了解」

 そう言って、俺は学校から出てスヘルデ製薬に向かった。

 

 

 〜〜〜〜

 スヘルデ製薬

 

 スヘルデ製薬の研究所に着くと、姫柊は地面に座り込んで古城の頭を抱えていた。

 そして、その近くには血だらけになった古城がいた。

 

「先輩....」

「はぁ....なっちゃんの言いつけ聞いてたのか二人とも」

 俺はそう言いながら二人に近づいた。

 

「伊吹先輩....暁先輩が、暁先輩が私を庇って....!」

 姫柊は今にも泣きそうな声で俺にそう言ってきた。

 

「安心しろ。そんぐらいじゃ古城は死なねぇよ」

「えっ....」

 俺がそう言うと、周りの血は古城の元に戻っていき傷は、全て綺麗になくなった。

 

「第四真祖は規格外の存在だからな。アレぐらいじゃ死ぬ事はない」

 俺はそう言いながら古城の頭を数発シバいた。すると、古城は目を覚ました。

 

「イッテ!」

「起きたかバカ古城」

 起きた古城に俺はもう二、三発頭をシバいた。

 

「お、お前どんだけシバくんだよ!」

「どんだけシバいても足らんわ。なっちゃんから言われたこと、もう忘れたのか?」

「な、何でお前がその事を....」

 古城は俺にシバかれたところをさすりながらそう聞いてきた。

 

「俺も朝なっちゃんから言われたんだよ。魔族狩りに気をつけろってな」

「そ、そうだったのか....」

「はぁ....ったく、戻ったらなっちゃんが説教だとよ。異論は認めないそうだ」

 そう言って、俺は来た道を戻ろうとした。すると姫柊が聞いてきた。

 

「どこに行くんですか....?」

「なっちゃんに報告しに行く。最低でも二時間はかかるだろうな」

「二時間って、ここから学校まではそんなに時間は....」

「かかる。どっかのバカはこれで終わるつもりは無いみたいだしなぁ....」

 俺は古城の方を向いてそう言った。

 

「そうだろ? 古城」

「終夜....お前」

「どうするかはお前の好きにしろ。俺がお前の選択を止める権利は無いからな」

「....」

「姫柊、魔族狩りの目的は何かわかったか?」

 俺は姫柊にそう聞いた。

 

「....目的は、要を取り返しこの島を沈める事らしいです」

「要を取り返し島を....わかった」

 そう言って、俺はスヘルデ製薬の研究所から出て近くの屋根に跳んだ。

 

「要を取り返し島を....となると、目的は要石。要石がある場所は....」

 俺が要石のあるキーストンゲートの方を見ると、キーストンゲートから小さな

 煙が上がっていた。

 

「急いだ方が良さそうだな....」

 俺は腕を横に振るい、自分の周りにカードを展開させた。その中の一枚を手に取り、

 地面に投げて叫んだ。

 

召喚(コール)、”黒門を開く者“」

 すると、魔法陣が展開され、そこから銀色の鎧とバイザーを纏った女が出てきた。

 

『お呼びでしょうか、我が先導者(マイ・ヴァンガード)

「キーストーンゲートの最下層まで頼めるか?」

『了解しました』

 そう言うと、黒門を開く者は俺の目の前に黒いゲートの様なもの創った。

 

『ご武運を、我が先導者(マイ・ヴァンガード)

 その言葉を背中に受け、俺はゲートの中に入った。

 

 〜〜〜〜

 

 俺がゲートをくぐり抜けると、そこはキーストーンゲートの最下層だった。

 そして、俺は固定されたアンカーの上にいた。

 

「奴らより早かったか....」

 そう思っていると、急に隔壁が破られて虹色に輝く眷獣を寄生させられた

 人口生命体(ホムンクルス)の少女と、ロタリンギアの殲教師が現れた。

 

「おぉ....おぉ....!」

 要石を見たロタリンギアの殲教師は涙を流しながら膝をつき、

 悲観と歓喜の声が漏れていた。

 

「ロタリンギアの聖堂より簒奪されし不朽体....我ら信徒の手に取り戻す日を

 待ちわびたぞ! アスタルテ! もはや我らの行く手を阻むものはなし! 

 あの忌まわしき楔を引き抜き、退廃の島に裁きを下しなさい!」

 殲教師の男は高らかな笑い声を上げながら少女に命令するが、少女は動かず

 俺がいるアンカーの方を見ていた。

 

命令認識(リシーブド)。ただし、前提条件に誤謬があります。故に命令の再選択を要求します」

「何?」

 殲教師の男は戦斧を握りしめて立ち上がった。それを見て、俺もアンカーから

 降りて要石の前に立ち塞がった。

 

「残念だったな。あんたの願いは叶えることができない....一生な」

「何者ですか、あなたは....」

「俺は....いや、この姿の方が良いか」

 そう言って、俺は腕を横に振って周りにカードを展開させた。そして、俺を中心に

 巨大な魔法陣が展開された。

 

「絶望と闇と、死の支配する世界を束ねる無情なる破滅の魂よ! 

 今ここに、その力を顕現せよ!」

 俺がそう叫んでいくと、一枚の真っ黒なカードが俺の上空に浮かび上がった。

 

「立ち上がれ、俺の分身! ライド・ザ・ヴァンガード!」

 すると、俺の身体は赤黒い竜巻に包まれた。そして、俺は姿が変わると右手に持った

 剣で竜巻を斬り裂いた。

 

「っ!? あなたは....!」

『”滅星輝兵(デススターベイダー) ブラスター・ジョーカー・根絶者(デリーター)“....それが俺の名だ』

 そう言って、俺は剣を殲教師に向けた。

 

 

 

 

 

 


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