ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜   作:アイリエッタ・ゼロス

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観測者たちの宴 Ⅴ

 浅葱side

 

「サナちゃん、絶対に私の手を離さないで!」

 そう言いながら私はサナちゃんの手を握り走っていた。何故私が走っているかというと、

 突然現れた変な装束を着て燃えているお爺ちゃんに追われていたからだ。

 

「ったく、あのお爺ちゃん誰なのよモグワイ!」

 私はサナちゃんの手を引きながらポケットから携帯を取り出して携帯にそう怒鳴った。

 

『そんなに怒鳴らなくても聞こえてるぜ嬢ちゃん』

「状況は!」

『全部分かってるぜ。あの爺さんの名前はキリカ・ギリカ。色々と内容は飛ばすが、

 六年前に絃神島でテロを起こそうとして監獄結界に送られた魔導犯罪者だ』

「監獄結界!? それって都市伝説じゃなかったの!?」

『残念ながらあるんだよ。あの爺さんが証人ってとこだ』

「っ....! とにかくモグワイ! 地下共同溝からキーストーンゲートまでルート計算! 

 あと隔壁のコントロールも!」

『了解。じゃあ次の角を曲がって右、地下街に降りる階段の踊り場に共同溝のハッチがある』

 モグワイの言葉を聞き、私は地下街に入り、サナちゃんを抱き抱えて階段を駆け下り

 共同溝のハッチを蹴り上げてハッチの中に入った。そしてしばらく走ると、

 私は地面に膝をついた。

 

「(流石に体力がキツいわね....もうちょっと運動しよ)」

「ママ、大丈夫?」

「....大丈夫よサナちゃん。ちょっと疲れただけだから」

「(しっかりしないと。今サナちゃんを守れるのは私だけなんだから....!)」

 そう思いながら、私は走って来た道を見た。走って来た道にはモグワイが遠隔で操作した

 分厚い隔壁が降りていたのだが、その分厚い隔壁が淡くオレンジ色に発光していた。

 

「(そううまくはいかないわよね....!)」

『まずいぜ嬢ちゃん。予想よりも隔壁の消耗が激しい』

「そんなの見たらわかるっての!」

『それともう一つ残念なお知らせだ。嬢ちゃんの背後から何かが接近してる』

「えっ?」

 モグワイがそう言ったので、私が背後を見ると、何か黒い細長い物が私達に向かって

 飛んできた。咄嗟の出来事に私は何もできなかったのだが、その飛んできた物は

 私とサナちゃんを躱して隔壁に突き刺さった。そして、隔壁の向こう側からは

 お爺ちゃんの叫び声が聞こえて来た。

 

『....対象を排除。同時に対象を発見』

 すると、背後から黒いバイザーをした銀色の鎧を纏った男が現れた。

 

「(な、何よこの人....見るからにヤバい気配してるじゃない....!)」

 その男からは、言葉では言い表せないような気配を私は肌で感じていた。そして、その男は

 ゆっくりと私達の方に近づいて来た。

 

『....南宮 那月を守護していたのか、藍羽 浅葱』

「っ! なんで私の名前を....」

『....俺の名はフリックヒッター。黒輪の根絶者(デリーター)様に仕える者の一人だ』

「黒輪の根絶者(デリーター)って....」

「(確か、ガルドシュって奴がそんな名前を....)」

 その名前に、私は聞き覚えがあった。

 

『嬢ちゃん....黒輪の根絶者(デリーター)ってのは最強最悪と言われてる謎の存在だ。噂では

 三人の真祖と真祖の臣下を倒したって言われてる』

「う、嘘でしょ!?」

『こんな時に冗談は言わねぇっての。....とりあえず、大人しく従った方が身のためだ』

 そう言って、モグワイは携帯の画面から一度消えた。

 

『....とりあえず、俺についてこい。俺の仲間が外にいる。そいつと合流して

 南宮 那月を守護する』

 そう言うと、男はやって来た方向に歩いて行った。

 

「(....このままついていっても大丈夫なの)」

『....安心しろ。俺はお前達には一切危害を加えない。加えたら我が主人から

 怒られるからな』

「っ!?」

 男は私の心を見透かしたのかそう言ってきた。

 

「ママ....あの人、怖くないと思う」

 すると、サナちゃんが男を見ながら私にそう言ってきた。

 

「サナちゃん....」

「(....サナちゃんがそう言うなら、今は信じてみるか)」

 そう思い、私はサナちゃんと手をつなぎ男の後ろについていった。

 

 ~~~~

 

 男についていくと、私達はキーストーンゲートのEエントランスに出た。

 すると、出口の近くにはアスタルテさんと白髪の女の人がいた。

 

『フリック』

『レディボンバー、対象を一人排除。同時に南宮 那月を発見した』

『そう。わざわざ悪いわね』

『別に構わん。それよりも、お前も南宮 那月を捜索していたのか。人工生命体(ホムンクルス)の娘』

「肯定。既にあなたが先に見つけたようですが....」

「(なんであんなに親しげに話してんの....?)」

 そう思っていると、突然私は背中からとてつもない寒気を感じた。すると、

 サナちゃんも何か感じ取ったのか私の足に手を回してきた。

 

「っ!?」

「へぇ、本当に子供になってるのね。空隙の魔女」

 私が寒気を感じた方向からはどこか妖艶な雰囲気の声が聞こえてきた。

 その方向を見ると、そこには露出度の高い服装の女がいた。

 

『これまた面倒なタイミングで現れたわね....』

 すると、さっきまで話していた三人が私達を守るように囲んで立っていた。

 

『ジリオラ・ギラルティ....』

 すると、白髪の女の人が女を見ながらそう呟いた。

 

「ジリオラって、クォラタス劇場の歌姫の....」

「あら、まだ私の事を覚えてくれている子がいたなんて嬉しいわ」

「なんで....なんであなたが絃神島に!?」

『....あの女はヒスパニアの魔族収容所で囚人や監獄を好き勝手やった。

 だが、被害を防ぐためにあの女は空隙の魔女によって監獄結界に封じ込まれていた。

 ....先程監獄結界が一時的に開いたことによって脱獄してきたがな』

 男は冷静な口調で私にそう説明してくれた。

 

「ま、そこの男の言う通りなの。とりあえず、その子を渡してくれたらあなたは

 見逃してあげるけど?」

「そんなの....はいそうですかって渡せるわけないでしょ....!」

「同意。後退してくださいミス藍羽。執行せよ(イクスキュート)、"薔薇の指先(ロドダクテュロス)"」

 そう言ってアスタルテさんは虹色の眷獣を召還した。すると、ジリオラはため息を

 つき自分の手に真紅の鞭を出現させた。そして、その鞭を地面にたたきつけた瞬間、

 私達に向かって周囲から拳銃の発砲音が聞こえてきた。だが、何故か拳銃の弾丸は

 私達に一切向かってこず、私達のいる少し離れた場所に落ちていった。

 

『いくら操って弾丸を撃とうが私がいる限りここには届かないわよ』

 すると、白髪の女の人がそう言った。その女の人の手には、何か黒くて渦を

 巻いている何かがあった。

 

『私の能力は磁気を操ること。鉄や鉛は全部私の領域に入ったら私の制御下よ。

 そして....』

 白髪の女の人は指を鳴らした。すると、女の人の周りには黒い球体が現れた。

 その黒い球体を自在に操りジリオラに向かって蹴り飛ばした。すると、蹴り飛ばした

 球体は大爆発を起こした。

 

『魔力を大爆発させる。これが私の能力よ』

「(な、なんて威力してんのよ....!?)」

 私は目の前で起きたことに言葉が出なかった。

 

『ま、この威力じゃ落ちないわよね』

「えっ?」

 そういった瞬間、爆発した所を包んでいた砂煙は払われた。

 

「よくもやってくれたわね....! もうただじゃおかないわよ!」

 ジリオラはそう叫びながらこちらを睨みつけていた。

 

「ちょ、ちょっと! あいつめちゃくちゃ怒ってるわよ!」

『大丈夫よ。フリック』

『あぁ』

 そう言って、男は両手に黒い鞭を出現させて自在に操っていた。だが、突然その鞭を

 私達の背後に向かって振るった。

 

「ちょっ! どこに向かって....!」

「おっと、危ないじゃないカ」

 すると、男が鞭を振るった所には白いスーツを纏った金髪の男の人がいた。

 

『....何故、貴様がここにいる。ディミトリエ・ヴァトラー』

「監獄結界の囚人を捕獲するためサ。それ以外に理由があると思うのかイ?」

『ならお前の出る幕はない。奴は俺が捕獲する』

「フフフ、そうカ! なら早い者勝ちダ! 娑伽羅(シャカラ)!」

 そういった瞬間、アルデアル公の背後には水でできた蛇が現れた。

 

「さァ、楽しもうじゃないか! 黒輪の根絶者(デリーター)の部下ヨ!」

『チッ! 二人とも、そこの二人を守っておけ!』

 そう言うと、男はアルデアル公とジリオラに向かって黒い鞭を振るいだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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