ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜 作:アイリエッタ・ゼロス
「驚きましたね....黒輪の
『人は見かけによらないって事だ。それよりも、ここから先は通行止めだ。
この島を沈められるのは、俺にとって少し困るんでな』
俺がそう言うと、殲教師は戦斧を構えた。
「そうですか....ですが、いくらあなたのような人間が道を拒もうと我らの悲願の
達成まで後少し! 邪魔立てするようならば排除するまで! アスタルテ!」
「....
少女の声には悲しみがこもっていたが、命令には逆らえず、虹色の眷獣の輝きは増し、
それに呼応するように魔力が勢いを増していた。
『....お前も悲しいんだな』
俺はそう呟いて剣を構えた。そして、飛んできた腕を躱して斬り裂いた。俺は連続で
斬り裂こうしたが、アンカーの上から魔力を感じてその場から飛び退いた。
そしてアンカーの方を見た。そこにいたのは....
『来たか....』
「悪いなオッサン! これ以上はやらせねぇよ」
銀の槍を構えた姫柊と古城がいた。
「っ! 黒輪の
姫柊は俺を見て怪しげにそう言ってきた。
『お前達と目的は同じだ』
そう言って俺は殲教師の男を見た。
「聖遺物....これがアンタの目的だったんだな」
古城は石柱にある“腕”を見ながらそう言った。
「....貴方たちが絃神島と呼ぶこの都市が設計されたのは、今から四十年以上も前のことです」
殲教師の男は、低く厳かな声でそう言った。そして、殲教師の男が語り出したのは
この島の創設時の事。
東洋で言う龍脈が通る海洋上に、人工の島を建設しようとしていた。だが、海洋を流れる
龍脈の力は人々の予想を遥かに超えていた。都市の設計者、絃神千羅は東西南北、四つに
分けた人工島を四神に見立て、龍脈を制御しようとした。そこで問題が発生した。
要石の強度だ。当時の技術では、その力に耐えられる強度の要石が作れなかった。
そして絃神千羅は忌々しい邪法に手を染めた。それが供犠建材、人柱だった。
「彼が都市を支える贄として選んだのは、我らが聖堂より簒奪した聖人の遺体。魔族どもが
跳梁する島の土台として、我らの信仰を踏みにじる所業....決して許せるものではありません。
ゆえに私は、実力を持って聖遺物を奪還します。立ち去るがいい、第四真祖、黒輪の
これは我らと、この都市との聖戦なのです。貴方方と云えども邪魔は許さぬ!」
「気持ちは分かるぜオッサン。絃神 千羅って男がやったことは確かに最低だ」
古城はそう言って殲教師の前に立ち塞がった。
「だからって、なにも知らずにこの島に暮らす五十六万人がその復讐の為に殺されて
良いのかよ? 無関係な人間を巻き込むんじゃねーよ!」
『それに関しては俺も同感だ』
「この街が購うべき罪の対価を思えば、その程度の犠牲、一顧だにする価値もなし!」
殲教師の男は冷酷にそう言った。
「もはや言葉は無用のようです。 これより我らは聖遺物を奪還する。 邪魔立てすると
いうならば、実力をもって排除するまで!」
「そうかよ....けど、忘れてねぇかオッサン。 オレはあんたに胴体をぶった斬られた
借りがあるんだぜ。 まずは、その決着からつけようか」
そう言った古城の目は赤くなり、唇の隙間から牙が見えた。
「さあ、始めようかオッサン....ここから先は、
雷光を纏った右手を掲げて、古城はそう叫んだ。
その隣で姫柊は銀の槍を構えて、悪戯っぽく微笑んだ。
「いいえ先輩....わたしたちの
『....暁 古城、姫柊 雪菜、殲教師はお前達に譲ろう。俺は
そう言って俺は
纏っており、俺の攻撃を防いだ。そして、その隙に巨大な腕で俺を攻撃してきた。
俺はそれを避けて少女から距離を取った。
『(....結界が邪魔だな)』
そう思っていると、古城の方から巨大な魔力を感じた。
「オッサンがその気ならこっちも遠慮なく使わせてもらうぜ。"
暁 古城が、汝の枷を放つ!
古城がそう言った瞬間、古城の近くには雷光の獅子が現れた。
『まず目覚めたのは五番目か....』
俺はそう呟きながら少女の眷獣に攻撃しようとしたが、少女は咄嗟に殲教師の男の前に
移動して古城の眷獣の攻撃を受け止めていた。そのせいで、周囲や俺の近くに古城の
眷獣の雷撃が弾かれた。
『....こっちまで来んのかよ』
俺はその雷撃を躱しながら少女の眷獣に近づいていった。そして、俺はもう一度眷獣に
向かって剣を振り下ろした。案の定結界に攻撃を止められたが、俺は結界に向かって
手を向けてこう叫んだ。
『”
すると、周りにある結界は黒く染まり始め、結界の全てが黒く染まると結界は消滅した。
『はぁぁ!』
俺は少女に当たらないように眷獣を斬り裂いた。俺の一撃で眷獣は消滅し、
少女は落ちてきたので俺は優しく受け止めた。
「アスタルテ!?」
少女が倒されたことによって、殲教師の男は動揺した。その隙を姫柊は見逃さず、殲教師の
男の懐に入り込んだ。
「
姫柊の掌打により殲教師の男は体制を崩した。
「終わりだオッサン!」
そして、古城の追い討ちの拳で殲教師の男は聖遺物に手を伸ばしながら力尽きて倒れた。
『終わったか....』
俺は殲教師の男を見てそう呟いた。
『さてと....』
俺は背中のマントを外してそこに
一枚を俺は手に取った。
『
俺がそう言うと魔法陣から金髪の少女が現れた。
『呼んだ?
『この子の治療と状態を確認してくれないか』
『わかった』
俺がそう言うと、レディヒーラーの両手から緑色の光が放出された。それが少女に当たると
傷は綺麗に消えた。そしてレディヒーラーが手を握って目をつぶった。
『....この子に宿る眷獣が寿命を喰べてる。このままだと一ヶ月も保たない』
目を開いたレディヒーラーは冷静にそう言った。
『そうか....』
『でも、これぐらいならどうにかできる。
『腕を?』
俺が腕を出すと、レディヒーラーは俺の腕に注射器を刺して血を抜いてきた。
『お、おい!』
そして、その血が入った注射器を少女に刺して血を流し始めた。
『今、この子の眷獣を
寿命じゃなくて
『エネルギーの供給先を無理矢理変更させたのかよ....』
『でも、これが最善策。
それに、この子の寿命も少しずつ伸びるかも』
『マジかよ....』はぁ
俺がそう呆れていると、古城達が近づいてきた。
『何か用か?』
「いえ....」
「その子、大丈夫なのか?」
『....あぁ。エネルギーの供給先が俺に変わったからこの子の生命力が取られることは
無いだろう』
「そうか....」
古城はどこか安心したような表情をしていた。
『では、俺をこの辺で失礼させてもらう。ここにもう用はないからな。
そう言って俺は黒門を開く者を召喚した。
『さらばだ暁 古城、姫柊 雪菜。このような場で出会わない事を祈っている』
そう言って、俺は
作ったゲートの中に入った。
〜〜〜〜
矢瀬side
「....かくして血の伴侶を得た暁 古城は眷獣を一体掌握。また一歩、完全なる第四真祖に
近づいた、というわけだ」
夜の彩海学園高等部。俺は一人そう呟いた。そして、俺が壁に寄りかかる隣には、
一羽の烏がいた。
「しかしわかんねぇな。あんな化け物を、なぜわざわざあんたらが目覚めさせようと
してんのか....」
『それが彼女達の目的なんでしょ』
「っ!」
俺がそう呟いた瞬間、教室の入り口から声が聞こえてきた。見ると、
そこにはこの学園の制服を着た女子がいた。
『初めましてと言っておくわ、第四真祖の真の監視者 矢瀬 基樹』
「あんた、一体何者だ....? その気配、明らかに人間の気配じゃないが....」
俺は女子生徒から感じる気配が明らかに人間とは異なるものとわかった。
『私は"重力井戸のレディバトラー"。黒輪の
女子生徒がそう言うと、姿は変わっていき、謎の鎧を纏った。
「黒輪の
女の言葉を聞いて、俺は身構えた。
『そう身構えなくて良いわよ。用があるのはそこの鳥よ』
そう言って女が指差したのは俺の横にいる鳥だった。
『また随分とコソコソした真似をしているようね、"
何が目的なのかしら?』
「....それは一体何のことでしょうか?」
『....あくまでシラを切るのね。まぁ良いわ。一つ、
女がそう言った瞬間、先程の様子からは想像ができないほどの殺気が放たれた。
『"何を考えてるのかは知らないが、あまりふざけた事をするなよ。もしも俺の周りの
人間を危機に晒すような事をした場合には....この世から消滅すると思え"、だそうよ』
「....肝に免じておこう」
少しの沈黙の後、鳥は一言そう言うと一枚の紙になって飛んで行った。
『....これで私の任務も終わりね』
女はそう呟くと、元の制服の姿に戻った。
『それじゃあさようなら』
女はそう言って教室から出て行った。
「お、おい! 待て....!?」
俺は追いかけて教室を出たが、既に女の姿は消えていた。
「....こいつは面倒な事になりそうだな」
〜〜〜〜
終夜side
「熱い....焼ける....焦げる....灰になる....つか、追々試ってなんだ! あのチビッ子担任、
絶対俺のこといたぶって遊んでやがるだろ!」
宿題漬けの週末を乗り越えた月曜日の放課後。俺の目の前で古城は学生食堂の端っこの、
テラス席に突っ伏していた。
「知るかよ。....それよりも、お前眷獣が覚醒したのか?」
「っ! 分かるのか!」
「まぁ、お前の魔力が高くなってる気がしたからな。それよりも、誰の血を吸った?」
「そ、それはだな....」
案の定、誰の血を吸ったのかは分かっているが俺はワザと聞いた。
「....姫柊か」
「っ!」びくっ
俺がそう言うと、古城は固まった。
「お前さぁ、吸って大丈夫だったのか?」
「そ、それは今日分かると思うんだが....」
「先輩。それに伊吹先輩も」
俺がそう聞いていると、ちょうど良いタイミングで姫柊がやって来た。
「姫柊。その、結果は....?」
古城は心配そうに聞くと、姫柊は頷いた。
「検査結果は
「そ、そうか。良かったよ。痛い思いをさせたし、姫柊を俺の血の従者に
しちまったかと気が気じゃなかったんだ」
「少し血が出ただけで済みましたし、あの日なら比較的安全ってわかってましたから。
それに先輩に吸われた痕はもう消えていますし」
「おいお前ら....話すのは良いがここでするなよ。周りからは勘違いされかね....っ!?」
俺は二人の会話を止めようとしたが、突如背後から感じた寒気に身体が固まった。
恐る恐る背後を見ると、ゾンビのように立ち上がってこっちに来る少女がいた。
「(あ、俺は何も見てないっと....)」
俺はすぐさま現実逃避をした。
「ふーん....痛い思いをさせて、血が出て検査して、安全日で陰性なのね?」
「古城君のドスケベ! 変態! エロ!」
「浅葱!? それに凪沙まで!」
浅葱は古城を睨みつけると、今度は姫柊に詰め寄った。
「あなたが姫柊さんね。いい機会だからはっきりさせておきたいんだけど、
古城とどういう関係なの?」
「私は暁先輩の監視役です」
姫柊は冷静にそう言い返した。
「監視役? ストーカーってこと?」
「違います。私は先輩が悪事を働かないようにと思って....」
「そのあんたがこのバカを誘惑してどうするのよ!」
「そ、それは....そうですけど....」
「違うだろ姫柊! そこは否定しろ!」
古城は納得してしまいそうな姫柊にそう叫んだ。それを浅葱は冷ややかな目で見ていた。
「誰かー! ここに淫魔が! 妹のクラスメイトに手を出す淫魔がいますよー!」
「やめろ凪沙! 終夜も止めてくれ!」
「あぁ....悪いな古城。俺なっちゃんに呼ばれたの忘れてたわ」
俺はそう言って急いでその場から離れた。
「お、おい終夜!?」
古城の声は切羽詰まっていたが、俺はそれを無視して急いで逃げた。
「(はぁ、おっかねぇ....)」
俺は少し離れた所から古城を見た。
「さて、動き出した歯車は止まらない。この先お前はどう生きるんだろうな、古城」