ストライク・ザ・ブラッド~黒輪の根絶者〜 作:アイリエッタ・ゼロス
「サボりか古城」
放課後、球技大会の練習の休憩時間に俺は自販機に飲み物を買いに行くと、
ちょうど古城が自販機で炭酸を買っていた。
「ちげぇよ。浅葱はまだ来てなかったし、バドミントンの練習してるあの空間に
居づらいから逃げて来たんだよ」
「....あっそ」
俺はそう言って自販機の前に立って飲み物を買おうとした。だが、突如背後から
何かの殺気を感じた。その殺気は古城に向いているものだった。
「っ! 古城!」
俺は咄嗟に古城の体操服の襟首を掴んで引っ張った。
「うおっ!?」
古城がいた所には水色の針の様なものが刺さっていた。
「な、何だよ急に!」
「っ、言ってる場合か! 避けるぞ!」
そう言っている間にも、針の様なものは俺達に向かって飛んできた。俺と古城は
それを避けながら近くの草むらに隠れた。
「な、何なんだよ今のは!」
「俺が知るわけないだろ! ....ともかく、今はコイツらだ」
そう言うと、俺達の目の前に金色のライオンと銀色の狼がいた。
「コイツらが、俺達を狙ってきたのか!」
「正確にはお前だけどな....俺はただ巻き添え食らっただけだ」
「そ、それはすまん....それよりもどうするんだよ。流石に学校で俺は眷獣を使えねぇぞ」
「....一応、少しは自分の力の危険性が分かってて安心したわ」ふぅ
古城の言葉を聞いて、俺は安心した。
「仕方ねぇ。ここは俺がどうにかするか」
「どうにかって、どうやって....?」
「お前には初めて見せるな、俺の魔術は」
そう言って俺はライオンと狼の方に手を向けた。
「我等を守護せよ! "アステロイド・ウルフ"!」
俺がそう叫ぶと、目の前には緑色の魔法陣が現れ、そこから二体よりも
少し巨大な銀色のメカメカしい狼が現れた。
「校舎に被害がいかないように奴等を蹴散らせ!」
そう命令すると、アステロイド・ウルフは高速で動き、銀色の狼を腕で叩き潰した。
それを見て、金色のライオンはアステロイド・ウルフに嚙みつこうとしたが、
アステロイド・ウルフはそれを躱して逆にライオンの首元に噛みついた。
ライオンはアステロイド・ウルフに首を引き裂かれて消滅した。
「....思ったより呆気なかったな」
「というかお前の召喚した狼強過ぎるだろ!」
古城は今の惨劇を見てそう叫んだ。
「そうか?」
「先輩! 無事ですか!」
そう話していると、雪霞狼を持ったチア姿の姫柊がやって来た。
「姫柊か」
「伊吹先輩? それに、そこにいる狼は....」
姫柊はアステロイド・ウルフを警戒しながら見ていた。
「あぁ....コイツは俺の魔術で召喚した奴だ」
「召喚って....伊吹先輩、召喚術なんて使えるんですか!?」
俺の言葉に姫柊は目を見開いて驚いていた。
「まぁな。戻っていいぞ、アステロイド・ウルフ」
俺はアステロイド・ウルフの方を見てそう言うと、アステロイド・ウルフは
魔法陣の中に帰って行った。
「それよりも、姫柊はどうしてここに?」
「暁先輩を監視していた私の式神が、攻撃的な呪力の存在を知らせてきたので、
気になって来てみたのですが....」
姫柊がそう言うと、青白い蝶が姫柊の指に止まった。
「あぁ....悪いな、俺が先に倒しちまった」
「そうだったんですね」
「おい姫柊。監視していた式神ってどういうことだ?」
姫柊の言葉に疑問を持ったのか、古城が姫柊にそう聞くと、姫柊はあからさまに肩を
ふるわした。
それを無言で古城が見つめると、姫柊はわざと咳払いをして開き直ったように胸を張った。
「....任務ですから!」
「ちょっと待て! もしかして、これまでずっとそうやってオレのこと見張ってたのか!?」
「あ、安心してください。先輩のプライバシーは守りますから」
「安心できるか!」
そう言って古城が怒鳴っている間に、俺はライオンが落としたと思われる破片を拾った。
「アルミ箔か....」
「伊吹先輩、それも式神の一つです。本来は、遠方にいる相手に書状などを送り届ける為の
もので、攻撃的な術ではないはずなんですけど....」
俺がアルミ箔を見ていると、後ろから姫柊がそう言ってきた。すると、急に姫柊は
雪霞狼を握りしめた。姫柊の視線の先には二人組の女子生徒がいた。
「すいません先輩。 雪霞狼を見られました。 すぐに捕まえて記憶の消去を....」
「待て待て姫柊!」
すぐにでも飛び出しそうな姫柊を古城は止めた。
「そんなことをしなくても大丈夫だから! 心配要らないって!」
「どうしてそんな事が言えるんですか!」
「どう見ても痛いコスプレ少女だよ。今の姫柊は」
「っ! ジ、ジロジロ見ないでください!」
姫柊はスカートを押さえて後ずさった。
「いや、でもスパッツ履いてるだろ」
「そう言う問題じゃねぇだろ」バシンッ
「イッテェ!」
俺は古城の頭を結構な威力で叩いた。古城はその場でうずくまった。
「はぁ、このアホは....」
「伊吹先輩も苦労してるんですね....」
姫柊は哀れむような目で俺を見ていた。すると、古城が何かを持って立ち上がった。
「なぁ姫柊。さっきの式神が書状を届ける術なら、こいつは俺宛ってことでいいのか?」
古城の手には黒い封筒に金色の装飾が施され銀色の封蝋された手紙があった。
俺はそれを見て頭が痛くなった。隣にいる姫柊も驚いた表情をしていた。
「その刻印....まさか....」
「姫柊?」
古城が姫柊に何かを聞こうとしたその時....
「....古城?」
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。背後にいたのはバドミントンのユニフォームを
着た浅葱がいた。
「こんな所でなに騒いでんのよ。 あんたがいつまでも練習に来ないから、捜しに来て
やったのよ。 まったく、私をあんなカップル空間に置き去りにするとはいい度胸....」
すると。浅葱は古城の持っている手紙をじっと見ていた。
「....その手紙、何?」
「えっ?」
浅葱の言葉を聞いて俺はこの状況に気づいた。
放課後の体育館裏に男子二人に女子一人。古城の手には手紙があり、正面には姫柊が。
俺はその光景を少し離れた所で見ている。どう見ても俺がこの場をセッティングしたと
思われる。これは明らかに告白の現場だ。
「もしかして、邪魔しちゃった?」
「いや違う。俺が姫柊とここで会ったのは予期せぬ事故というか緊急事態というか、
決してこの手紙を俺たちが渡したり受け取ったりしてたわけじゃなくてだな....」
「そ、そうですよ!」
古城と姫柊はどうにか説得をしようとするが、あまりにも二人の息が合い過ぎる為、
説得力が皆無だった。
「(よくここまで合わせられるな....)」
俺は、別に二人が口裏を合わせてないのに息が合い過ぎている事に驚いていた。
「はぁ....もういいわよ。私には関係ないことだしさ」
浅葱はにこやかに笑ったが、どうにも浅葱らしくない笑顔だった。古城も恐らく
分かっているだろうが、明らかにショックを受けていた。
「私、帰る」
浅葱はそれだけ言うと、背中を向けてこの場から走って行った。
「あ、浅葱....」
「....これはやっちまったな」
俺は空を見上げながらそう呟いた。