召喚した絶剣が世界最強   作:焼肉定食

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ベヒモス

クラスは混乱状態に陥り統率は取れていない中和人は冷静に状況を判断しようとしていた。

 

どうすれば最小限の犠牲でこの状況を抜けられるかと。

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

「ッ!?」

 

 その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

 

「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」

「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

それは知っていた。ベヒモスという魔物は知っている中で最強と言わしめる魔物であると。

どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。

そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟!!」」」

 

 二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐのを和人はずっとその様子を見ていた。

突進を障壁にぶつけ赤熱化の自慢のつので障壁をどんどん傷つけていく。

あれ?こいつもしかして。

 

さっきから突っ込んでくるか赤熱化しながらの突進しかしてこない。全て突進してくるとなると。

 

回避くらいの時間稼ぎならできるかもしれない。

 

「……」

 

でもその後どうするか。

 

確実に鈴や恵里をを逃すには。

 

「……」

 

一つの方法を思いつく。そうたった一つの救う方法であり。たった一人の犠牲で済む作戦を。

 

「……」

 

痛いだろうな。

 

和人は一瞬崖の下を見る。真っ暗で落ちたら即死。

でも和人と数人だけは生きている可能性がある。精霊化の飛翔は迷宮では少ししか飛べず高度を保つことしかできないのは気づいていた。

雫はその一瞬の和人の変化に気づいた。どこか覚悟を決めたようなその表情をつい見てしまったのだ

 

「……上田くん?」

「八重樫。天之河たちを説得して引かせてくれないか?」

「……えっ?」

「あいつをなんとかする方法を思いついた。でも確証はないから一人でやる。」

 

和人の変化に気付かないはずがない。今まで散々無茶をした和人なのだ。その不安をつい口にしてしまう

 

「死なないわよね。」

 

どこか不安そうな声。和人は少し答えをためらって。そして笑った。

 

「あぁ。あいつらを置いて死ぬかよ。」

 

和人はそういうとベヒモスの方に走っていく。雫はおそらくその一言が嘘であるのを気づいてしまう

するとハジメがメルドさんの方向に走っていくのが見えた。ギリギリまで和人はタイミングを見計らう。観察をし成功力をあげようとしていた。

 

そして障壁がついに限界を迎え砕け散った瞬間ベヒモスに向かって一つの閃光が貫く。

 

片手剣の派生技能である細剣ソードスキル基本であるリニアー。

 

もちろん使ったのは和人である。

すると和人とベヒモスの目が合うと大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

「さっさとこいよ。トリケラ野郎。」

 

それは宣戦布告と殆ど同じことだった標的を和人に変え突っ込んでくる。クラスメイトから逃げてと言う声が上がるが和人はギリギリまで引き付けるそして瞬時にサイドステップでベヒモスのツノから離れる。

 

「えっ?」

 

クラスメイトの驚いたような声が聞こえる。カイトがいとも簡単にベヒモスの攻撃を避けたのだ。

和人の精霊化のステータスが俊敏が高いことはしっている。それでもメルド団長たちがさっきまで苦戦していた攻撃をあっさり避けるなんて思いもしてなかった。

 

「…ほらこっちだぞ。」

「グラァァァアァアアアア!!」

 

言葉は通じていないはずなのに挑発しているってわかったのだろうか。もはやベヒモスはもはやクラスメイトは目にもくれず和人の方を狙い突進を繰り返す。

 

ユウキの特訓により回避はかなり上達し一つ一つの回避を少しの身体強化と飛翔を使いながら和人は突進と衝撃波から避け続けていく。ガンガンという音が橋に直撃し徐々に不安定になっていく。

……もうちょっと時間がかかるか。

 

和人は一瞬の隙をつきベヒモスを道に叩き付け、スケルトンの方を見る。どうやらまだ時間はかかるだろうって思った矢先だった

 

「錬成。」

 

とベヒモスの動きが固まる。叩きつけたことで復帰しようと思った矢先地面が隆起しベヒモスを押さえ込んだ。

 

「はっ?」

 

和人は少し後ろを見るとそこにいたのはノーム姿のハジメと香織と雫、そしてユウキだった。

 

「和人くん。助けに来たよ!!」

「なっ!」

「ちょっとカズ置いていくなんてずるい!!」

 

少し動揺する和人。ユウキはすぐにスケルトンの方に向かっていたのは知っていたのだがまさかこっちに来ていたと思わなかった。

と言うよりも今の惨状だ。

 

「なんで来たんだよ。死ぬぞ。」

「……その死に場にあなたはいるわけなんだけど。」

「まぁ確実にベヒモスを殺す方法があったからな。」

「……それは私たちに堂々と言える方法なの?」

 

言葉に詰まる。和人がやろうとしたベヒモスを確実に殺せる作戦

 

自分と一緒にベヒモスを奈落に落とすこと。

 

さっきからベヒモスは攻撃が当たらないことでどんどん攻撃は雑になりベヒモスに反撃することもできた。

だから自分の命を犠牲にして友達を守れたらそれでよかったのだ。

 

「……あなた私のことを守りたいって言ったわよね?それなのにあなたが死んだら元も子もないでしょ。」

「……そうだな。」

「ボクも和人が死んだらどうなるかわからないしね。ボクもみんなに嫌われちゃったからここに入れる可能性は低いし。それに一緒に大迷宮の攻略をする約束忘れたの?ボクも和人の世界に連れていってくれるんだよね?」

「私たちの結婚式の友人代表としてスピーチしてくれるんだよね?」

「……覚えてる。」

 

全部覚えている。冗談でハジメと白崎のことをからかったことも、八重樫を守りたいって言ったのも。そしてユウキと大迷宮を攻略しようってことも。

ハジメは錬成を唱えもう一度ベヒモスを固める

 

「だからみんなで生きて地上にあがろう。ハジメくんが錬成でベヒモスを足止めするから。」

「……了解。」

「…それと鈴が怒っているわよ。もちろん恵里も。」

「カズはもうちょっと自分のことを大切にした方がいいと思うよ。」

「……善処する。」

「それしないやつだよね。」

 

軽く苦笑しているうちに避難が完了したのが見えた

 

「ハジメ壁作るから少し早めに」

「うん最後の錬成行くよ」

 

そしてハジメは一息いれ

 

「錬成」

 

最後の錬成でベヒモスを拘束する。同時に、一気に駆け出した。ハジメが通り過ぎた後今度は和人の魔力4割の力を振り絞る

 

「錬成。」

 

すると少しだけ壁が地面から壁を作る。少しの足止めでいいのでこれで和人も走り出した

 

その3秒後地面が破裂するように粉砕されベヒモスが咆哮と共に起き上がる。

そして最後尾である和人を捉える。ここまではいい。和人とユウキなら普通に逃げられる速さだからだ。

 

怒りの咆哮を上げるベヒモス。和人を追いかけようとした瞬間、あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。

それをクラスメイトの攻撃だと分かると和人はそれを気にしないで突っ切る。他の全員も余裕がありそして誰もが助かると思ったその時

 

視線を感じた。その視線の方を見る

そこには檜山がいた。和人は余計に悪寒がする。

そうしてニヤリと悪意に満ちた笑顔をハジメと白崎に向けた

 

「ハジメ。飛べ!!!」

「えっ?」

 

無数に飛び交う魔法の中で、複数の火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。

ハジメの方に向かって

 

「何で!?」

「チッ。あ〜クソ。」

 

和人も間に合わないと判断する視線をする方に集中していたのでスピードを落としていたのだ。

 咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑るハジメの眼前に、その火球は突き刺さった。着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。その先を予測してダメージを減らそうと和人がいてハジメを受け止める。少し下がったものの

 

 

「ハジメくん。」

「南雲くん!?」

「チッ。これ間に合わねぇ。白崎ハジメ担いで逃げられるか。時間を稼ぐから…転々いやここで殺すしかないか。」

 

和人はハジメを投げベヒモスの方に向き直す

 

「やるしかねぇか。」

 

和人は接敵する。さっきのやり方以外で殺すしかない。

生憎赤熱化ではない防ぐことは可能だ。だから最初の攻撃を弾ければ

 

そう思っていたが現実はそう甘くはなかった

 

ベヒモスの赤熱化した頭部を盾のようにかざしながら突進してくる。

 

やるっきゃねぇ。

 

和人は全身から光の尾を発しながら突進していく。威力、貫通力、速度に全てにおいて細剣技能最上位のソードスキル。フラッシング・ペネトレイターである。

 

赤色の光と純白に光が互いに衝突する前に和人の速度が上回った

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

細剣が突進をするまでにベヒモスに突き刺さる。助走距離はかなり広かったのでかなり効いているらしい。

しかし、その代償は硬直時間というもので和人に襲いかかる。すでにこっちに向かってきそうなベヒモスだが硬直時間が抜けきっていない。

 

動け。動いてくれ。

 

そう思っていると

 

「スイッチ。」

 

そんな声が聞こえてくる。突進してくるベヒモスを和人はギリギリになり硬直時間が切れたのですぐに単発重攻撃技であるスリトークを放つとすぐにバックステップをとる

 

「やぁぁぁああああ!!!」

 

紫色の閃光がベヒモスに突き刺さっていく。俺が弾いた顔面ではなく柔らかそうな腹に向かってユウキのOSSマザーズ・ロザリオが炸裂する。

 

「スイッチ。」

 

すると雫が今度は突っ込んでくる。ソードスキルは無いものの八重樫流流水之太刀を放つ

連携術は正直なところあまりやったことはない。でも今はなぜか息が合う

ベヒモスのドスンと尻餅をついた音が聞こえる。雫がラストアタックだったので硬直はないはず

回復をかけてもらったハジメが錬成をかけようとベヒモスに近づこうとした時だった。

 

メキメキと橋が音を立て始めた。ただでさえ和人が逃げ回っていたせいで橋は耐久がギリギリだったのだ。

 度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超え崩壊を始める

 

 

雫は自分の身が助からないことに気づいていた。

雫は正直自分が何でこっちに来たのか分からない。実は俊敏に差があっただけなのだがユウキよりも先に動き始めていたのだ。

いや、気づいていた。その気持ちを知った時もう遅いと思いたくなかった

私和人のことが好き。

怖かった。それが原因で自然と体が動いていたのだ。

和人に死んでほしくなかったから。香織とユウキ、南雲くんを巻き込んで和人の案をやめさせようとしていた。

初めて香織に頼んだお願いごとだろう。香織自身少し驚いていたが頷いて、ハジメも協力を頼んでくれた。

だからその罰だろう。親友とその友達を利用した罰を受けているのだと

……ごめんなさい。香織。あなたは幸せに。

そう思った矢先一つの羽音が聞こえ真っ先に雫の方に飛んできていた。

 

「八重樫!!」

 

和人は羽に精一杯力を入れ八重樫に追いつけるようにスピードをあげる。

 

「何で?」

 

真っ先に和人は飛んで来ている。それはすでに生きることを諦めていた雫にとって驚きが隠せなかった

 

橋が崩壊する直前まで時は遡る

雫は飛べるはずもないこと、また崩落地点から一番近いことに和人は気づいていた。

だから和人がすぐに助けようと飛翔を使い助けようとしたのだが間に合わず落下を始まった。

助けないなんて考えはなかった。

一瞬奥にいた鈴と恵里の二人と目があった。それはほんの数秒だったけど二人は笑っていた

 

雫を助けてあげて。生きて帰らないと絶対に許さないから。

助けにいくんだよね。いってらっしゃい。

 

そんな声が聞こえたような気がした。和人は軽く頷きそして笑顔を二人に向け羽を広げ雫の後を追いかけた。

迷宮内では精霊化は飛翔できないようになっている。これは恐らくALOのシステムを再現したのであると考えておりユウキのインプ以外は浮遊といったほうがいいだろう。

 

そして身体強化も使ってどんどん加速していく。そして雫を見つけた後大きな声で叫んだ

 

「八重樫!!」

 

どんどん加速し和人は雫を追いかける。

そして和人が雫の手を掴むと思いっきり抱き寄せる

 

「何で来たの?」

 

雫が涙目で和人の方を見る。

来て欲しくなかった。でもどこか来てくれるんじゃないかと思っていた。

だから嬉しさ半分怒り半分そんな気持ちで和人に問いただす。

 

「分からん。来たかったから来た。それだけだ。」

 

和人はブレーキを効かせながらゆっくり高度を戻そうとする。しかし元々洞窟内では効果が低い精霊化にはそんな力はない。

和人は軽く舌打ちをする。和人自身今雫を抱き寄せているので手が使えない。

和人の飛行技術はそこまで上手いわけではない。元々人間には無い機能を使っているのだ。雫に追いついたのも奇跡的だった。

どうしようかと考えた矢先後ろから衝撃があった。

すると急に息苦しくなることと気泡が見えたことから水の中だと分かる

気づいた後にはどこか流されていく。

……そして流れに任されるまま和人と雫、後ろから来た三つの人影が和人の後を追いかけてくるのに気づかずに


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