IS《インフィニット・ストラトス》~やまやの弟~   作:+ゆうき+

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お久しぶりです。
ゆうきです。

某サイトの閉鎖につき、ハーメルン様にて再開させていただきます。

拙い作品ですが、暇つぶしにでも読んでやって下さい。


1話 彼は…

山田真耶の弟、山田真琴(やまだまこと)には精神疾患がある。

 

ものごころついた頃に高熱を出し、三日三晩生死の境を彷徨ったのが原因だ。

 

 

 

ちなみに何故男なのに真琴という女の子っぽい名前かというと、どうやら生みの親は二人目も女の子だと信じあらかじめこの名前を準備していたらしい。しかし実際に生まれてきたのは男の子。しかし両親は読み方が「まこと」ということで、この漢字で良いだろう的な流れで決めてしまった。

 

真琴は小さい頃はやんちゃ坊主の一言に尽きる。はいはいが出来るようになるや否やあっちこっち這いずり回り、気づいたら家族の前から消えていた。なんてことはザラである。

 

しかし高熱を出してからはまるで熱で脳細胞が死んでしまったのではないかというくらい聞きわけが良くなった。言うまでもない。心の病を患ってしまったのだから。

 

 真耶と真琴の年は10歳離れている。つまり、真琴が生まれた時真耶は10歳ということになる。両親は共働きだったため真琴の世話はほぼ真耶がしていた。これは真耶がIS学園の代表候補生となり、そして教員になってからも変わらなかった。

 

 つまりどういうことかというと。ブラコンとシスコンの一丁上がりという訳だ。真耶は学校が終わるとすぐに家に帰宅。そして真琴と遊び始める。代表候補生ということもありそれなりに忙しかったが、目に入れても痛くないと豪語しただけはある、本人は一度もつらいと言いださなかった。むしろ、もっと弟と一緒に居たいとおもっていた。

 

 しかし真琴が5歳、つまり真耶が15歳になった時に事件は起きた。そう、真琴が高熱を出して倒れた時の話である。弟がIS学園に連絡をしてきたのである。か細く、今にも消えそうな声を聞いた真耶は、その日の授業を全て放り出し家に帰宅した。そこで見たのは誰にも看護されず、一人で高熱にうなされる弟の姿だった。親が共働きなため誰にも助けてもらえず、やっとの思いで電話まで這いずったのだろう、弟は電話の前で倒れていた。

 

 これを見た真耶は発狂しかけたが、急いで真琴に駆け寄り状態を確認、すぐに応急処置を始めた。さすが代表候補生。発狂しかけていても的確に看護できるあたり、優秀さが伺える。

 

それから三日間、真琴の熱は下がることはなく、医者に見せても診断結果は原因不明。結局解熱剤を処方されただけだった。40度という高熱の中生死の境をさまよい、朦朧とした意識の中うわ言の様に「ごめんね、お姉ちゃん」と繰り返す真琴を見て、どうしてもっと早く体調の異変に気付いてやれなかったのだろうと悔いた。

 

 ここから更に真耶のブラコンっぷりは指数関数的に加速していくことになる。真耶に似た外見をもつ真琴。ふっくらとした唇、ぱっちりとした目、庇護欲をかきたてる鈴を鳴らしたような声、どれをとっても一級品である。真耶と一緒に商店街に買い物に行けばご近所の奥さんから次々にお菓子を貰い、店に買い物に行けばおまけを次々に貰う。重くなりすぎたエコバッグを両手で前に抱え必死に歩く姿は悶絶物である。これぞショタっ子パワー一万馬力! さぁこっちを向いて笑って! ハリーハリーハリー!

 

 ……失礼、取り乱した。つまりどういうことかというと、近所の商店街では山田姉弟は癒し系のマスコットキャラとしてちょっとした有名人だったのである。

 

 熱を出してから一年、真琴は6歳になっていた。まるで火が消えた様に大人しくなった弟を見て、真耶は悲しげな笑顔を浮かべていた。負い目があるのだろう。いくら学校にいっていたとはいえ、弟の体調の異変に気付けなかったのだから。

 

 IS学園から帰宅し、いつもの様に真琴と遊ぼうと彼の部屋に行った時、そこで見たものはIS学園の参考書を見ながら何か呟いている弟の姿だった。今思えば、高熱を出した後真琴は新聞を読むようになった。初めは背伸びをして親の真似ごとをしているのだろうと思っていたのだが、彼が新聞を読む時の姿勢を見て徐々に異変にきづいてはいた。何せ真琴が新聞を読み始めると、話しかけても反応が全くと言っていい程無かったのだから。

 

 真耶は弟に「何を見てるの?」と尋ねたが、返事がない。揺さぶってみたが、一向に気づく気配がなかった。またこのパターンかと、真耶は台所に向かった。

 

そして、棚からストックしてあるドーナツを取り出すと、彼の顔の横に静かに差し出す。するとどうだ、今まで全く反応しなかった真琴がピクりと動いたかと思うと、辺りをキョロキョロと見回し始めた。

 

そして姉を見つけると、静かに微笑むのであった。

 

「ねぇ、まーくん。何を見てたの?」

 

「えっとね、ここおかしくない?」

 

「どれどれ、ちょっとお姉ちゃんに見せてね」

 

 

 弟は勤勉だなーとか思いながらその箇所をみると、IS学園の特記事項についてだった。何がおかしいのかと尋ねると、3つの特記事項についての矛盾点を指摘してきた。これをきいて真耶はびっくり仰天、メガネがずり落ちるのもかまわず3つの事項を食い入る様に見た。しかし何がおかしいのか真耶には分からない。そこで真琴に尋ねると、真耶にも分かりやすい様に解説し、矛盾を解消するにはこうしたらいいんじゃないかと提案してきた。

 

 正に目からウロコだった。まさか6歳の弟にこんな難しい事が分かるのかと、半ば信じられなかった。真耶は翌日登校するとすぐにこの矛盾点について教師に駄目もとで尋ねてみた。すると初めは教師は笑顔で対応していたのだが、矛盾点を指摘し始めたあたりから顔が徐々に青くなっていき、解説を始めた辺りで足早に立ち去って行った。ちなみに、その日の午前中の授業は自習になったそうな。恐るべし6歳児。

 

 放課後になり、真耶は愛しき弟にいち早く合うために帰宅の準備をし、家へと歩を進める。すると、校門を出たところで学園の担任と教頭に呼びとめられた。なんでも、この矛盾点は学園の穴をついた物であり、下手をすると海外からの干渉を受けてしまうような内容だったらしい。教師一同から頭を下げられてしまった。これに気付いたのは自分ではないと伝えると、本人に会ってお礼をしたいと言われてしまった。しかたなく真耶は事実を伝えた。するとどうだ、皆唖然とし、是非会いたいと懇願されてしまったのだ。今思うと、6歳でこの知力。ツバを付けといて損はないと踏んだのだろう。

 

 その日真耶は10人は乗れるんじゃないかというリムジンに乗せられて、IS学園の重役と一緒に帰宅することになった。

 

 その後も出るわ出るわ教科書の矛盾点や間違った解釈。その都度教師が真耶と一緒に帰宅し、ペコペコと真琴に頭を下げるという、なんともシュールな事態に陥っていた。結局IS学園で採用していた参考書の実に4割が改訂、もしくは一新された。真琴には感謝状が贈られ、将来IS学園の教師にならないかとスカウトされていた。それもそのはず。真琴は教科書を的確に理解し、解説をしながら矛盾点を指摘したのである。教師顔負けの理解度はとても6歳児の物とは思えず、周りから神童とと呼ばれるようになった。IS学園は物は試しと真琴にIQテストを受けさせたのだが、結果はなんと測定上限限界。反重力力翼や流動波干渉といった、ISの飛行に関する定義を生み出した博士よりも遥かに高いだろうという結果を叩きだしたのである。

 

 そしていつも通り、真琴はIS学園の教師と教科書の矛盾点について話していたのだが、教師から現状のISの不満点を聞き、構造についての参考書を見ている内に、ISの画期的なシステムの基本構造を作り出していた。

 

 このシステムを持ち帰った教師は、早速学園に所属している研究者にこの基本構造の論文を見せると、研究者は狂喜乱舞。これで汎用機の能力が底上げ出来る!と歓喜にうち震えていた。

 

 この結果を見てIS学園は真琴が将来教師ではなく、優秀な研究者になると考えた。6歳でこれである。末恐ろしい才能だ。

 

 この世界にはIS(インフィニット・ストラトス)というマルチフォーム・スーツが存在する。

 

 篠ノ之 束という科学者が発明したそれは、とある事件により世界的に知られる事となり、始めは宇宙空間での活動を想定していたのだが、マルチフォーム・スーツというより、パワード・スーツとしての価値が見出されて軍事転用されたのだ。

 

 IS学園とは、そのIS操縦者専用の高等学校である。かなり特殊な立ち位置にある学園(学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約がある)だが、ISを操縦するという項目を除いたら、国際的なハイスクールという扱いになる。

 

 そして2年後、真琴が8歳の時である。ついに学園から、現物を見て欲しいと依頼がきたのだ。世間的に見ると驚異的な事である。世界のパワーバランスを崩した兵器を僅か8歳の子供に見せるなど通常では到底考えられない。

 

 しかしまぁ、真琴は初めこれを渋った。何故かと言うと、忙しくなって真耶に会う時間が減るからである。大人からみたらなんとも子供っぽい理由だと一蹴されそうだが、そこはほら、天才っていうのは凡人には理解されないわけで。

 

 予想外の事態に学園はちょっとだけ焦った。ちょっとだけ。初めこそ真琴が拒否した事実に焦ったが、理由を聞いて安心した。なんてことはない。真耶をIS学園の教師として雇ってしまえばいいのである。幸い真耶は代表候補生まで上り詰めた腕前である。教師として活動してもなんら問題はないだろう。

 

 真琴はその事実を聞いて喜んだ。姉の人生が勝手に決まってしまったのは心が痛むが、学園でずっと一緒に居られるのである。渡りに船とはこのことだろう。真耶にこの事を伝えると彼女はとても喜んだ。「これでいつでも一緒にいられるね!」と満面の笑みで真琴を抱きしめていた。その豊満な体で抱きしめられた真琴は顔を赤くしていたが、抱きしめていた真耶は気づいていなかった。

 

 

 

 

―――そして、場面はIS学園に移る―――

 

 あ、お早うございます、山田真琴です。いきなりなんですが、僕は今日からIS学園で働くことになったみたいです。……学校、もうちょっと行きたかったなぁ。お願いしてみようかな、僕も授業に出られないか。

 

 

 

 

「まーくん緊張してるの? 大丈夫だよ、おねえちゃんが一緒だからね」

 

でも……お姉ちゃんといつも一緒に居られるなら、それもいいかなぁ。

 

「うん……」

 

 

 

「どんな状況になってもお姉ちゃんはまーくんの味方だからね?大丈夫だよ」

 

「うん、ありがとうお姉ちゃん」

 

 どんな所に行っても、お姉ちゃんが一緒なら大丈夫。うん、きっと大丈夫だと思う。大丈夫だといいなぁ。

 

「それにしてもまーくんが研究者、かぁ。なんだか嘘みたいだね」

 

「ぼくもびっくりしてる」

 

「でもね? それだけまーくんは頭がいいってことなんだよ。普通は一杯勉強して立派な大人にならないとこういう所にはこれないんだから」

 

「ぼくがいってもいいのかな……?」

 

「大丈夫よ。学校の方からお願いされたんだから。自信をもって !ね?」

 

「うん!」

 

 

なんか、運転手さんの視線が生暖かいです。なんでだろう?4




―――まーくん、どうしたの?

―――……トイレ。

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