藤原千花を独占したい   作:ヒラメもち

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第15話 第4回恋バナ@屋外

 喧嘩、諍い、すれ違い

 

 ある程度親しい間柄であってもそれは起きる。喧嘩するほど仲が良いと言われるということは、喧嘩することが親しいということなのだろう。そう考えると、喧嘩なんてしたことない俺には、実は親しい人物なんていなかったのではないか。

 

「……どう思うよ、石上」

「先輩も結構ボッチだったんですね。」

 

 ボッチに結構ボッチって言われた。

 

「最近思うところがあったんだ。そろそろモテたいっていうかさ」

「あー、だから、口調と雰囲気がどこか変わったんですね。僕はお堅い感じがかなり抜けていいと思いますよ」

 

 え、まじ?

 

「ホント?

 俺って彼女ゲットできる?

 やっと童貞卒業できる?」

 

「そこまでは知りません。ていうか、先輩って普段からそんなことばかり考えていたんですね」

 

 そうだよ。

 

 生徒会男子メンバー3人は生徒会室から避難し、人気の少ない学園の敷地で3人寝転がって黄昏ていた。心地よい日差しや澄みきった風は、俺たちのドヨーンした空気を浄化してくれることはない。

 

「で、誰と喧嘩したんですか。惚気話は勘弁してくださいよ?」

「異性だな」

「異性だよ」

 

 うっわ、とすでに嫌な声を浴びせかけられた。

 

「それで、僕に恋愛相談っすか」

 

 もう相談できる相手が後輩しかいないのだ。

 田沼翼くんとか、絶対惚気話をしてくるし。

 

「まあ、任せてくださいよ。僕、恋愛マスターなんで」

「えっマジで?」

「すごいな。俺らとかまだマサラタウンから出ていないし、最初のポケモンをもらえていないんだが」

 

 冗談です、と石上が告げてきた。 

 口癖をパクるな。

 

「あれだな。恋愛マスター(笑)に頼るくらい、藁にも縋る気持ちだ」

「急にどうしたんすか。よほど深刻な問題なのか、川田先輩のキャラが崩壊していませんか。まあ、僕、これでもラブコメはめっちゃ読んでますから任せてください」

 

「んーならいいか」

 

 まず、会長から恋愛相談することになった。

 友達の話らしいけど。

 

「俺の友達の、その友達の女子が風邪を引いたらしくてな。友達の男子は友達の女子のお見舞いに行ったわけだ」

「紛らわしいんで、もう男子と女子で良いですから」

 

 友達の話にさせてあげて。

 

「……で、だ。その女子は結構熱あって、意識が朦朧としていた。それはもう記憶が飛んでいるくらい。」

「そんなにひどかったんだな、御行会長の友達のその友達の女子」

 

 常に睡眠不足でカフェイン中毒のこの人、よく風邪を移されなかったな。

 

「そのようだな。それで、添い寝してほしいと頼まれたわけだ。ただし、その女子は憶えていないらしい」

「なるほど。風邪がよくなって起きてみたら、隣に友達の男子が一緒に寝ていて、そこで『To LOVEる』が起きたと」

 

 もし白じゃないなら、責任取れよ。

 

「なんだかイントネーション独特だったな。まあ、その友達は決して手は出していないと主張したんだが、どうにも納得してもらえなくてな」

「はぁーー? なんすかそのクソ女」

 

 石上は件の女子が誰かを知らないとはいえ、もし聞かれたら社会的に消されるぞ。

 

クソオブクソじゃないっすか。自分から誘っておいてよくもまあ。モラルってのが無いんですかね。付き合ったら絶対めんどくさいですよ、その女。黒髪貧乳にありがちなタイプっすね。いくら意識が朦朧としていても男をベッドに引っ張り込むなんて、その女絶対ド淫乱っすよ。どうせ男が帰った後も

「石上OKブレーキ」

 

 御行会長が静止させた。

 まだまだ語りつくせないだろう。

 

「まあ、なんだ。その男も流されるべきではなかったんだと思う。断ればいいし、その女子の家族に任せればいい話だ。でも、彼はそうしたくなかったんだろうな……」

「愛してくれる家族がいるのだろうか、会長の友達のその友達の女子」

 

 さあな、と御行会長は呟いた。

 

 彼は、彼女を取り巻く環境をよく知らない。

 それを知ることは覚悟が必要になってくる。

 

「で、まだ仲直りしてないんですか?」

「んー、その男子は精一杯謝ったし、何も手を出してないことを伝えた。だが、どうにもその女子は納得しないらしい。不機嫌だし、どうすれば許してくれるかもわからない」

「乙女心は複雑ということか」

 

 まだ夏にもなってないけれど。

 

「その女子は責任取ってほしい、とか?」

「何言ってるんですか、川田先輩。その男子はちゃんと謝ったし、未遂に終わったんでしょ? 僕からすれば、その状況で手を出さなかったことを褒めてやりたいくらいです」

「そ、そうか」

 

 御行会長は照れている。

 まあ、童貞の思春期男子としても賞賛すべき。

 

 石上は、がばっと起き上がった。

 

「その女は何引きずってるんだって感じです! 僕からビシッと文句言ってやりましょうか!」

 

「先日、その女子は暗殺者って聞いたな」

「冗談だろ、筑紫。まあ、俺もそういう話をこの前聞いたが」

 

 何も言わなくなった石上は、再び黄昏る。

 暗殺者に喧嘩を売らない臆病さは賞賛すべき。

 

「これはあくまで友達のその友達の女子なんですが……」

「ほう」

 

 まあ、ここにいる3人とも知っている人だけど。

 

「その女子は実は結構襲われたいって思っているんだ。だから、会長が言っているその女子も、ケダモノから手を出されなかったことは理解している反面、自分に女としての魅力がないのではと思っているのでは。石上曰く、黒髪貧乳だし」

「はぁーー? なんすかそのクソ女たち」

 

 石上は件の女子が誰かを知らないとはいえ、もしそれ以上言うなら口を縫い合わすぞ。

 

川田先輩の言う女子も結構クソ女っすね。そういう女に限って、自分の魅力でどんどん誘惑するんすよ。付き合ったら絶対めんどくさいですよ。髪染めてて巨乳にありがちなタイプっすね。自分から誘っておいて、ちょっとでも手を出した男には責任取らせて貢がせた後は、そのまま『ポイッ』ですよ。どうせいつも携帯で寝る前に画像見ながら

「石上OKブレーキ」

 

 いいとこで止められてしまったな。

 どうしてやろうかと悩んでいたんだが。

 

「さて。ここからは俺の相談に入るんだが、友達のその友達の女子ってかなりゲームが好きなんだ」

「紛らわしいんで、もう男子と女子で良いですから」

 

友達の話にさせて。

 

「……で、普段はすごくいい子なんだけど、ゲームになったら姑息でちょっとずるいところがあるらしい。意外と、その男子もちょっとずるいところがあるのだけれど。あー、もちろん俺は違うけどさ」

「いや、川田先輩はひどく姑息で鬼畜でしたよ。先日よくわかりました」

「俺もよくわかったからな」

 

 それは身内のゲームだからだ。

 たぶん。

 

「それで。女子が挑戦してきたゲームで尽く打ち負かしたらしいのだけど、どうやらそれがお気に召さなかったらしい」

「うっわ、子どもっすか。たった1度のゲームで負けたくらいで女々しいことですね。最近無駄に増えているんすよ、ちやほやされたいためにゲームやるっていうかさ。それなら、ゲーム1人でやってろって感じです」

「へぇ、今はそういうものなんだな」

 

 あくまで個人的見解ね。

 ていうか、デジタルゲームだと勘違いされているらしい。

 

「いや、まあ、件の女子はみんなで楽しめるゲームが好きなんだろう。そりゃあ姑息な手を使ってくるけど、誰よりも自分が1番楽しんでいることが伝わってくる、らしい。自分が感じる楽しさをみんなと分かち合いたいっていうか」

「なんか、俺も分かるぞ」

 

 『氷のかぐや様』だった頃の四宮かぐやから、ただ1人、千花さんは友達でいることを諦めなかった。

 

「で、まだ仲直りしてないんですか?」

「謝ったけど、『あっかんベー』されたらしい。なにかコソコソやっているみたいだが、声をかけると頬を膨らませて威嚇してくる、らしい。あくまでその友達曰くね」

 

 お可愛いことだ。

 でも、会話できないのは死活問題。

 

「まあ、そんな感じで彼女と話せない時間が続いている、らしい」

 

 石上が、がばっと起き上がった。

 

「いやいや、ゲームエンジョイ勢なら皆に合わせろよって感じっす。自分が楽しむために姑息な手を使うとか、自己中心的っていうかですね。対人対戦でチートは撲滅すべきです!」

 

 あくまで個人的見解ね。

 

 ていうか、千花さんは献身と慈愛に溢れているからな。それは多くの男女が嫁にしたいのだと願うくらいだ。ソースは先日行ったアンケート。だが俺は彼女をいつか独占してみせる。

 

「そのクソ女は子どもかって感じです! 僕からビシッと言ってやりましょうか!」」

 

「先日、その女子の親友は暗殺者って聞いたな」

「それも冗談だろ、筑紫。まあ、俺も聞いたが」

 

 何も言わなくなった石上は、再び黄昏る。

 彼は虎の尾を踏むことはできるだけ避けるらしい。

 

 

「で、どうすれば俺たち仲直りできると思う?」

「右に同じく」

 

「結局、ほとぼりが冷めるのを待った方がいいですよ」

 

 現状維持、それはかなりきついことだ。

 

「待つ、ねぇ……」

「だって、男側にやましい事が無いなら、別に謝る必要もないでしょう。男が女のすべてを理解しようとするなんて、傲慢なんですよ」

 

 そういうものなのだろうか。

 誰とも喧嘩したことないから、よくわからない。

 

 

 

****

 

 

 生徒会庶務として、日課となっている仕事をしている。

 

 今日もポケモンGOでただひたすらポッポを捕まえ続けていた。だから俺のアカウントは、今もなおジムに君臨していた。たとえタイプ相性を考慮されたとしても、進化もできていないポケモンたちとはレベルがまるで違う。捕まえたばかりの校長のピカチュウでは、効率的に育て上げたピジョットの足元にも及ばない。

 まあ、勝つことはできているけれど、楽しめているのだとは言い難いけれど。

 

 

「やっと見つけた!」

「ああ、千花さんか」

 

 俺が学園内のポケストップをあちこち往復していたおかげで、上手く見つけられなかったのだろう。

 

「神経衰弱のリベンジをさせてもらいます!」

 

 肩で息をしながら、トランプのパッケージを掲げてきた。

 

「ドーンだYO!」

「なななななんのこと!?」

 

 明らかに動揺を隠していない彼女の手からトランプを受け取り、模様が一部欠けていることを指摘した。左からどの位置の菱形が抜けているかで、1~13の数字が分かり、しかもマークすらわかるようになっている。

 

「あれから気になって、どういうイカサマトランプが市販されているか調べたからな。パッケージでわかる」

「ぐぬぬ、調べたんだ……でもイカサマがバレた際のペナルティはまだ言ってないから!」

 

 そう言えばそうだな。

 もう少し黙っていた方がよかったか。

 

「確かにそうだ。しかし、このトランプなしで勝てるとでも?」

「部の方で秘密特訓をしてきたもんね~」

 

 俺の腕を取って、自分に有利な場所であるテーブルゲーム部室に連れて行かれる。本来の最善手はこちらが用意した人員と場所とトランプを用いてゲームを行うことなのだが、すぐに用意できるわけではない。

 だから今は、策に乗せられるしかない。

 

「ふふ~ん、私が勝ったらなんでも言うことを聞いてもらうからね~?」

「なんでも、ねぇ……」

 

 ほんと、毎日が楽しそうで何よりだ。

 こんな生活、手離せるわけがないだろう。

 

 

 

 

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  • いくつかはプレイしたことがある
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  • 知らないことの方が多い
  • まったく知らない
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