藤原千花を独占したい   作:ヒラメもち

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第16話 夏の予定の聞き方

 1学期が終わりに近づくと、夏休みのことを意識するようになる。

 

 定期試験が終わり、この秀知院学園でもそういうムードになっていた。最終日に全て仕事を終わらせることができた生徒会も夏休み中の活動はなく、各々が自由に過ごすらしい。

 いざ1ヶ月以上このメンバーが集まらないとなると、なんだか寂しいな。

 

「夏休み、お前たちは何か予定あるのか?」

 

 世間話かのように思えるが、堂々と四宮かぐやの夏休みの予定を確認しに来た。俺としても、千花さんの夏休みの予定を確認したいからありがたい。

 

「私はですね~家族と明日から1週間ほどハワイ行ってきますよ~」

 

 明日から!?

 全くそんな会話はしていなかった。

 

「アロハでホノルるっちゃいますよ~」

「金持ちは違いますね。僕なんて、せいぜいイベントで東京行くくらいです」

 

 そういう石上も玩具メーカー社長の次男なので、わりと金持ちである。

 

「旅行なぁ。俺はあまり縁がないが、やっぱり都会の喧騒から解放される瞬間ってのは必要だな。藤原書記が戻ってきたら」

「ハワイの後はですね~ カリフォルニア行って~ ドバイ行って~」

 

 さすが元外交官の次女さん!?

 

 御行会長は生徒会で旅行に行くことを提案したかった。ここで生徒会の構成メンバーは男3女2である。千花さんが抜けた以上、残る女性メンバーはたった1人だ。その場合、思春期男子としては誘えるはずがない。早坂愛と四宮かぐやが親しいことを、会長は知らないこともある。

 

 まあ、一般の高校生が企画した旅行なんて、四宮グループのご令嬢が参加できるはずがない。どうにかして、手を打たないとな。

 

「家のことで、四宮さんは予定あるのか?」

「……ええ、特にはないですね」

 

 いつも通りの微笑みを浮かべて、そう告げる。

 昔の維織様並みの生活だな、これは。

 

「それで、川田先輩はどうなんっすか?」

「具体的には決まっていない。草野球に誘われたくらいだな」

「へぇ~ つくしくんって野球できるんですね~」

 

 まあな、と返しておいた。

 もちろん同年代の野球部にすら敵わないけれど。

 

「俺もバイトのシフトあまり入れていないから、藤原書記以外は予定が空いているのか」

「一度くらいは何か思い出作りしたいですよね。会長たち2年だから、来年は受験勉強でそれどころじゃなさそうですので」

 

 会長の言葉を継ぐように、石上がボソッと呟いた。彼も生徒会に入ってからずいぶんと変われたようだ。人間はそう変わることはないと思っていたけれど、四宮かぐやも俺も含めて、意外と変われるものだ。

 

「夏の終わりにこの近くで大きな祭りがある。みんなで行こうぜ」

「おお~良いですね~! 行きましょう!!」

 

 綿あめ~射的~花火~と歌うように、千花さんはうきうきしている。そして、四宮かぐやもかなり行きたがっているが、許可されるのかどうかだ。手を回すにしても、あまり四宮グループにちょっかいをかけるのもなぁ。

 

 どうしたものか。

 

 千花さんはお可愛いスケジュール帳をパラパラと捲っている。今のところ、とにかく彼女の夏休みは海外旅行で埋まっているのは確かだが、空いている日の確認のために、どうにかしてその中身が見れないものか。

 

「あ……そのあたりスペインでトマト祭りでした」

 

 海外旅行好きだね。

 もっと日本の伝統文化を楽しんで!?

 

 ちなみにトマト祭りは8月末に行われる収穫祭だ。街の人だけでなく観光客も世界中から参加し、熟したトマトを軽く潰してぶつけ合う。個人的に、雪合戦をトマトでやるイメージを持っているが、トマトが勿体ないと思うのは、貧乏性なのだろうか。

 

「えっまさか行っちゃうんですか!

 私だけ除け者にして行くんですか!?」

 

「普通に行きますよ。だって、藤原先輩もトマト祭りじゃないですかぁーそっちは楽しんでくるのに僕らは祭りに行けないなんてあんまりですよぉー」

 

 煽りおる。

 千花さんは瞳をうるうるさせている。

 

「ひどいです……冷血人間です……ぐすっ」

 

「ふと思ったんだが、千花さんってトマト嫌いじゃなかったか?」

 

 泣き止んだ。

 あわわわと震え始めた。

 

「お祭りまでに日本に帰ってきます! 私はみんなとジャパニーズフェスティバルに行くんです!!」

 

 ぜひ頑張ってくれ。

 

 

 

****

(番外編)俺が中学生だった頃の話だ。

 

 その年の甲子園では奇跡が起こった。

 

 混黒高校の複数ある分校の1つが甲子園優勝を果たした。厳密には今年度から独立を果たした高校であるが、決して強豪校とは言えない。むしろ部員数がギリギリという悲惨さであった。

 

 ヒットを繋ぎながらも勝ち点をもぎ取ったその決勝戦は、俺は忘れられないだろう。いや、まあ、決勝戦の対戦相手が全員ホッケーマスク被っていたので、無駄に印象的だったし。

 

「いつも、うちの姉がお世話しているようで」

「ご丁寧にどうも………ん?」

 

 主力ピッチャーはたった2人しかいなくて、男子も天才投手ではなく、残り1人も女子だった、らしい。さらにはホームランを打てるほどの強打者と呼べる人が、キャプテン及び4番を担っているキャッチャーが1人、らしい。

 

「麻美さんのドジを、お二人が食い止めていると聞きました」

「やっぱり、君はゆらりの弟か!? 麻美が年下からもいじられるって言ってたのはホントか!?」

 

 すげぇイケメンだな、この人。

 狙ってる女子が多そう。麻美って呼び捨てだし。

 

「よくわかりましたね。さすが高校生日本一になったキャッチャーです。褒めてあげます」

「こんなことで褒められるのか、俺……」

 

 この人、麻美さん並みに面白い人だな。姉さんが好きになるのもわかる。

 こんな生意気なガキに貴重な時間を使ってくれるのだし。

 

「ところで。うちの姉が珍しく朝帰りしたのですが」「

「……それで?」

 

 見るからに動揺したな。

 

「初めは麻美さんの家だと思っていました。ですが、さりげなく麻美さんに聞いてみると、その日はお泊まり会などしていないと。まあ、口封じされていない麻美さんなんて口軽いですから」

「麻美ェ…‥」

 

 この人、感情が表情に出やすいな。

 

「これで7月以降、朝帰りしたことが先日で3度目になりまして。それが甲子園前に1度、甲子園後に2度、なんだか気になりました。きちゃった(はーと)」

「ゆらりだ。この子、絶対ゆらりの弟だ……」

 

 どう見ても弟だろう。

 姉弟で似ている、母譲りの茶髪と容姿とか。

 

「ああ、大丈夫です。たとえキスして子どもができていたとしても、全ての人脈を使ってでも責任を取らせるので」

「NOZAKIってそんなに恐ろしいところなの!?………ん?キス?」

 

 姉さん、維織様との関係まで話しているのか。麻美さんにも黙っていたくらいだから、かなりこの彼氏さんに入れ込んでいるな。

 

「えっとさ、子どもができているって……まじ?」

「馬鹿にしないでください。そう簡単に子どもはできないですよ。中学生の俺でも、コウノトリが運んでくるものでも、桃から生まれてくるものでもないと知っています。いやはや、姉さんには危うく騙されるところでした」

 

 経験豊富な年上だからって失礼だな。

 

「複数人にきちんと聞いています。満月の夜にキスすれば、竹から生まれるのでしょう?」

「それかぐや姫だから!? みんなに騙されているから!?」

 

 姉さんには何度も本当かどうか確認したし、天才研究者の高坂茜さんも、情報屋のお姉様も正しいと言ってくれた。

 

「調査通りなら、満月の夜は避けていますよ。あなたと姉さんの子どもは生まれていません」

「いや、なんで満月かどうかはしっかり調べてきたの。そろそろ『冗談です』って言ってくれよ……」

 

 『もしかして素か?』と頭を抱えている。

 この程度で動揺するなど、片腹痛い。

 

「とにかく。姉さんとはできちゃった結婚は認めません。20歳になったらお二人の合意の下に、幸せな結婚をしてください。だから今は、川田家の唯一の男児として、勝負を挑みます」

「お、おう、そうか。20歳超えたらいいのか……」

 

「こう見えて結構鍛えています。だから、あなたの得意な野球でいいでしょう。ルールは、あれです、えーと、ホームランが多い方が勝ちです」

「いや、それなら助かるけどさ……おーい、ツメイ!」

 

 見覚えがある。

 たしか、甲子園決勝で初めに投げていた投手だ。

 

「……1vs2とは卑怯じゃないですか?」

「野球やったことないのかよ!?」

 

 その後完敗して、涙を浮かべて逃げ帰った。

 

 

 

 これ以降。

 度々挑戦を挑んでいるが、勝てた試しはない。もちろん今となっては、姉さんとの交際は応援しているし、子どものつくり方も熟知している。

 

 彼含め男性陣と関わることで、彼ら独特の砕けた口調について最近影響されている気がする。

 

 

 

 

 

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