藤原千花を独占したい   作:ヒラメもち

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2年1学期
第1話 映画の誘い方


友情、それは味方のために尽くすこと

努力、それは目標に向かって続けること

勝利、それは結果が得られること

 

 友情すら捨て、努力を続けて、それでも結果を残せなかった。それは初めての挫折。

 

 そこで彼は諦めなかった。見捨てられないために強くなろうと、あがいて這い上がろうと、友情と努力を諦めない。生きる世界が違うはずの女性に一目惚れし、その隣に立ちたいのだと恋い焦がれている。常に何かと戦い続ける彼は報われて然るべきだと思う。

 

 俺は王道が好きなのだ。

 

 

****

 

 俺たちの通う私立秀知院学園、貴族や士族のための教育機関として創立された名門校だ。貴族制が廃止された今でも富豪や名家の一族が通っていることで全国的にもトップクラスで、エスカレーター式であるし、お坊ちゃま・お嬢様学校みたいなものだ。

 

 以前まで分校から搾取していたあの高校と違って資金のやり繰りは、国を背負っているOBによって十分に成り立っている。だから、受験に受かることができれば、外部から庶民であっても入学することができる。

 

 まあ、時の流れで格式高い校則も緩和されたらしいし、あくまで思春期男女が通っている高校の1つであり、青春ラブコメが繰り広げられている場面はよく目にする。男女問わず、奥手な生徒が多いこともあり、恋バナはむしろ盛んであるかもしれない。

 

 だからなのか。

 今日のお昼も生徒会室で。

 

「誰かと交際しているのかどうか、今日も質問されたのですけど」

 

 まるで世間話かのように、四宮かぐやが告げる。

 

 いつも通り長い黒髪を赤いリボンで1つに結っている、四宮かぐやは世界的な『財閥』の四宮グループのご令嬢であり、ネットで少し調べれば音楽や武芸の賞ですぐにその名前と画像が出てくる。さすがに全国的な知名度とまではいかないが、この学園で最も有名なのは彼女だろう。

 

「予想はつくが、どう答えたんだ?」

 

 四宮かぐやは生徒会副会長であり、学園模試では常に2位、それなら1位は誰なのかと問われるだろう。努力でその座を不動のものにしているのは、我らが生徒会長である白銀御行。

 

「……もちろん。誰ともお付き合いしていないと答えましたよ」

「まあ、そうだろうな」

 

 紅茶に口をつけながら、彼はフッと笑みを零した。

 

 生徒会長に代々受け継がれる純金飾緒を学ランに身に着けており、彼持ち前の黄金のオーラによって髪色含めて全身が輝いているかのような幻想を抱かせる。その目つきの鋭さからは、常に何かを思案しているかのような知的さを感じさせる。

 

「え~期待したのに~」

 

 ワクワクと四宮かぐやの恋バナを期待していたのは藤原千花さんだ。

 

 セミロングのウェーブのかかった髪に、黒いリボンをアクセサリーとして付けている。ぽわぽわした桃色のオーラによって髪色含めてピンクにぽわぽわしているかのような幻想を抱かせる。あと巨乳

 

「会長も副会長さんも藤原さんも、異性から引く手あまたでしょうね」

 

 まあ、母譲りの茶髪と整った顔を持つ俺も、美男美女の揃う生徒会でも見劣りはしないだろう。こういう長所は周囲の人々からの印象が良くなるので、何かと役立っている。作り笑顔をすることが苦手なのが、減点ものだろうけど。

 

「先程のような話を聞かれるほど、特に副会長は大人気のようですね。実は俺もその1人だったり……」

「……ほう?」

 

 0.1mmくらい会長の目が見開いたことに、俺は内心ほくそ笑む。

 

 

「冗談です」

 

 ほんの少しほっとしたような表情をするまでがデフォルトである。副会長さんに片想いな彼は、いまだその想いを告げられていない。むしろ告られることを待っているヘタレ同士である。

 

 

「あ~そういえばですね~」

 

ごそごそと藤原さんがポーチから取り出したのは、見覚えのない2枚のチケット。

 

―――あり得ない。なぜだ。

 

 内心焦っている俺は、四宮かぐやの口元が0.1mmくらい緩んでいることに気づく。

 四宮かぐや、貴様か。

 

「懸賞で映画のペアチケットが当たったのですが、わたし家の方針でこういったものを見るのは禁止されてまして。今週末が期限なので、どなたかにお譲りしようかなと……」

 

 藤原さんの父親によって恋愛映画を見ることを止められるのは、調査済みだ。だからこそ、俺は別のジャンルの映画をチョイスした。ポスト前で怪しい人物に出会ったことは誤算だったが、まさかそれが四宮かぐやであり、同じような策略を同じ人物に仕掛けるなんて。

 

 藤原さんがこの生徒会室で映画チケットの懸賞の応募用紙を書いていた姿を見て、それがきっかけになったのだろう。やはり、四宮かぐやはライバルである。

 

―――ていうか、会長に直接仕掛けろよ

 

「俺はその映画はいいかなぁと思いまして。会長たちで行ったらどうです?」

 

 ここは四宮かぐやの策略に乗ってやろう。

 それが会長のためにもなる。

 

「……四宮、俺たちで」

「なんでも!この映画を男女で見に行くと2人は結ばれるジンクスがあるとか!」

 

 会長が何気なく誘うことが遮られてしまった。『すてきですよね~』と暢気に藤原さんは身体をくねくねさせている。

 

「あら会長、私のことを誘いましたか……?」

 

 あらあらまあまあお可愛いこと、と言わんばかりに四宮かぐやの口元を三日月に歪めている。

 

 その映画をカップルで見ることのジンクスをあらかじめ知っていてなお、藤原さんを出汁にして会長から誘ってもらえるよう画策したのだろう。もし、会長がその本心をさらけ出して誘ったとするならば、ジンクスを踏まえた上での誘い、つまり『告白』である。

 

 四宮かぐやは会長に告らせたい。

 

 

「……俺はそういった噂など気にせんが、お前はそうみたいだな」

 

 だが、このヘタレはまだ抵抗する。伊達に半年間片想いしているわけではない。

 

「四宮、お前は俺とこの映画を観に行きたいのか?」

「……そうですね」

 

 ほんの少し俯き、凛としていた風格が一気にしおらしくなる。世の思春期男子からすれば、守ってあげたい系女子の中で『お前がNo.1だ』と言いたくなるだろう。よほど相手するのに慣れてないと胸キュンだろう。

 

「やはりこういったお話は信じてしまうもので……もし行くならせめてもっと情熱的にお誘いいただきたいです……」

 

 そういうあざとさには、あの姉のような人のおかげで慣れている。まあ、ともかく、これで会長と副会長が『映画館デート』することは確実だろう。つまり、俺の仕掛けた策略は完遂するということだ。

 

「そうそう!」

 

 人差し指を顎に当てて、やがて藤原さんは思いついたような顔をした。

 

「もう1つ懸賞に当たったのがありまして『とっとり鳥の助』です!」

 

 藤原さんは、目の前で繰り広げられる『無自覚系両片想い』に気づいてはいない。だからって、2人の決断が遅い理由を精一杯考えて、映画のジャンルに問題があるのだと判断づけたのだろう。それはまちがっている。

 

「これ、面白そうなんですよね~、だからオススメです!」

 

 俺が極限までに現在放映している中から、彼女のお家事情を鑑みて、その好みから厳選したのだ。彼女が見たくないはずはない。

 

 

「「とっとりとり……?」」

 

 会長は呆然としているだけだが、四宮かぐやは顎に手を当てて何かを思案している。普段は黒いはずだが、冷酷な赤い瞳がこちらを向いたような気がした。

 まずい!俺は社会的に消される!!

 

「その映画はなんだか気になりますね、俺」

 

 慌てて、フォローに入る。

 冷静沈着に、初耳の映画なのだと。

 

「つくしくんもそう思う~?じゃあ、今度観にいこうよ」

「藤原さんがよければ、ぜひ。」

 

 これが戦い方のお手本だ、四宮かぐや

 

 

「「それなら……」」

 

 そこでチャイムが鳴り。

 会長たちの嫉妬の視線を、背中に受けながら教室に戻った。

 

 

 

 まあ、週末の映画デートによって、俺の青春ラブコメには何の進歩も得られなかった。―――藤原千花は自分自身の恋愛についても鈍感である。

 

 

 

 

 

 

 




川田筑紫(かわたつくし)
オリ主。秀知院学園高等部2年、生徒会庶務。身体的特徴:無表情
学園内では少数派の『混院』と呼ばれる外部入学者である。整った容姿とミステリアスな雰囲気を持つ。中学時代、白銀御行の生き様に触れることで、密かに盲信するようになる。四宮かぐやは畏怖の対象であり、策士としてライバル。

万人受けする美少女の藤原千花に一目惚れし、日々独占欲が高まっているが、彼女の天然ぶりに振り回される。

※パワポケ13,14で登場した川田由良里の弟
つまりIT企業の社長の腹違いの弟(前社長の隠し子)
彼も小学校のころまで不祥事を警戒した企業の監視下に生活がおかれていた。その身体能力は、シスコン情報屋からも『筋が良い』と言われている。すでに14以降の時間軸なのでパワポケ要素についてがっつりは関わってきません。
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