我らが生徒会長、白銀御行は天才である。
彼はあくまで努力の天才であって、彼の裏の顔を知る人はそう多くはない。一般家庭の生まれであるし、天才であることを保つ義務を強いられているわけではない。期待に応えたい、かっこよくありたい、見放されたくないという欲望から、見られていないところで努力している。
中学の頃、初めて出会った時もそうだった。
「……どうだった?」
「見事に溺れていたな」
「会長も不得意なことあったんですね」
見栄を張って隠しているけれど、いっぱいあるよ。
御行会長の腕を、俺たちは肩に回して海から引き上げた。人命救助した気分だ。
「まあ、俺もできるのは平泳ぎくらいだけど。石上は?」
「僕はそれなりに」
夏休みがもう終わりそうな頃。
俺たち生徒会メンバー+αはプライベートビーチへ日帰りで来ていた。急な予定だったとはいえ、大神グループ直々のお誘いであるから、四宮家のご令嬢とその従者の1人も参加することができている。
「こんなことなら、泳ぎの特訓をしておけばよかった。このままでは四宮に『お可愛いこと』と言われてしまう!」
「別にいいんじゃないですか。四宮先輩って結構面倒見がいいし」
石上は一時期不登校だったこともあって、成績が良いわけではない。俺たちが弱点克服の秘密特訓をしているように、定期テスト前には、石上もかぐやさん直々の教育を受けている。
「足にぬちゃっとした!?
ここ、サメいないよな!?」
「世界一の殺し屋……もといハンターがいるから大丈夫だろう」
「なんだか、独特なメンバーいますよね」
もちろん見た目は普通の人たちもいる。
ただし、一般人はほとんどいない。そして、バッタ怪人やカニ怪人、ピエロ、パソコン、ゆるきゃらのようなロボットが呑気に遊んでいた。このメンバー相手にたとえ情報収集であってもちょっかいをかけてくるのは、よほど死にたいらしい反大神勢力だろう。
オフ会のようなものに、俺たちは飛び入り参加したことになっている。
「みんなお待たせ~!」
でけぇぇぇ!
緑色のビキニで ぷるんぷるん!
覚悟及び期待していたとはいえ、実際に千花さんの水着姿を目の当たりにしてしまうと鼻血が出そうだ。思春期男子を悩殺してくること間違いなしだ。
やばい、弾道上がりそう(※パワポケ特有の表現)
「ほらほら、かぐや様も!」
『スミシー・A・ハーサカ』モードの早坂愛は、大人な雰囲気の黒のビキニであり、ハーフで金髪だから、どこの美人モデルかと思うほどだ。彼女の背中にはかぐやさんが小さく縮こまって隠れていた。
「わっ、ちょっとハーサカ!」
「綺麗だ」
御行会長はありのままに感想を呟いた。髪型はいつもと違って、黒髪ツインテールにしていた。同年代と比べて、胸の大きさは控えめであるけれど、赤いビキニ姿の彼女のスタイルはいい。むしろそれを気にしてもじもじとする姿は、思春期男子の心をくすぶってくるだろう。
「兄さん、ちょっと四宮先輩を見すぎじゃない?」
君は本当に中学2年なのだろうか。御行会長の妹である白銀圭さんは、年相応に胸の大きさは控えめだけれど、そのスタイルは高校2年に負けていない。そして、学校指定のスク水という、悪魔的な選択だ。
ともかく、ここは褒めないと
バシャァンという音を立てて、男子3人とかぐやさんが海に潜りこんだ。
異常に火照った熱を冷ますためだ。
その後、海に潜り込んだとはいえ、じたばたと溺れている兄に呆れて、圭さんは大神灰里を捜しに行った。所在を聞かれて、俺が警備をしているだろうと伝えると、『私怒ってます』という感じで歩いていった。
そして、あまり誰かと遊ぶ機会のなかった石上は、海に来てからどこか遠慮がちだったが、オタクたちに混じってからは生き生きとしている。美女たちの水着が見たいからという不純な動機で来ている大人たちだが、根はいい人だ。『キィィィィボォォォォドォォォォ』の人にあまり影響されないことを祈るばかり。
「顔は水につけなくて構いませんから」
「お、おう……」
浮き輪から身体を出す御行会長の両手を、顔を真っ赤にしたかぐやさんが握っている。プカプカと浮き輪で浮かんでいる姿からは普段にはない頼りなさを感じ、むしろ溺れる危機感からかしっかりと握り返している。
かぐやさん的には、今の会長はとにかくお可愛いことだった。
「ハーサカぁ……」
「かぐや様、次のステップにいかないとでぇす」
「そ、そうよね。会長、バタ足をまずはやってみてください」
「バタバタすればいいんだろう?」
「ほんとにこの人、カナヅチなんだなぁ……」
御行は足で闇雲に水を叩き始めたらしく、ドボンドボンという音から分かるが、力が必要以上に入ってしまっている。水着女子2人に囲まれ、みっともない姿を見せている思春期男子からすれば、冷静でいられるはずはない。
俺も含めて。
「ちゃんと足そろえて、太ももから動かすんですよ」
目の前に『たわわ』がある。
冷静でいられるはずがない。
遠くから実の姉とその親友が双眼鏡でこっちを観察していると思う。他にも、『グフフ、いやらしいですな』とか考えながら、最先端技術で覗いているサイボーグもいるだろう。
「もっと肩の力を抜いていいですよ~」
「……おう」
少しでも油断すれば、ヌいてしまうのだけれど。
御行会長が泳げないことを知って、千花さんが『教えてあげます』と言った。このままでは巨乳に誘惑されてしまうと、焦ったかぐやさんが珍しく指導役に自ら立候補した。今は、早坂愛と共に、『大きいのも小さいのもみんな同じ』なのだと刷り込みをかけている。
だから、手持ち無沙汰になった千花さんが俺に水泳勝負をしかけてきた。自由形で圧勝したので、クロールやバタフライなら勝てるかもと指定されてしまったということだ。おかげで、また弱点がバレた。
「つくしくんって運動神経はいいよね~ もう上手くなってきているもん」
まるで音痴については、どうにかしてほしいと思われているかのような言い方だ。やはり天才ピアニストさん的には、やはり交際相手の条件は音楽の秀才が入っているのだろうか。
「あはは、かた~い!」
手を放され、水中で身体をまさぐってくる。
遠くからは何をしているかわからないだろう。
「待て待て、誰かが勘違いしちゃうからな」
特に俺が。
「勘違い……勘違いか~ えへへ」
「そんなに触るなら、こっちも触るぞ」
こちらも触らねば、無作法というもの。
「……えっち」
「冗談だよ。ちょっと泳いでくる」
熱冷ましついでに海中へ潜った。
水面まで浮いた後は、両足を交互に動かして推進力を得る。
これでもかなり泳いだ気がするが、まだずっと遠くまで競争している世界最強たちがいる。数年前にガチで殺し合った仲らしいから、それと比べればずいぶんと平和な戦いだ。あの人たちなら、その気になれば、能力なしで太平洋横断しそうではある。
「……ふぅ、なかなか疲れるな」
極めれば平泳ぎより速くなるだろうが、まだまだ無駄な動きが多くて余分に体力を消費してしまう。大得意な平泳ぎは、情報屋のお姉さまに最低限のやり方を教えられた後、着衣のまま海の真ん中に放置されて身に着けた。
俺ってよくトラウマにならなかったな。
「おいつい、たっ!」
首筋に腕を回される。
それはさすがにやばいって。
「さあ、海岸までレッツゴー!」
楽しそうで何よりだ。
少しは動揺してほしいものだけれど。
「はいはい」
「わ~い」
生徒会メンバーが帰った後、2次会でみんなに揶揄われるのだろう。
ヘタレって言われるだろうけれど、大切なものほど宝箱に入れておきたくなってしまう。またいつか、裏の世界に巻き込まれてしまうかもしれないと思うと、どうしようもなく不安になる。
俺もだいぶ歪んでいるな。
次回から、絶賛放送中のアニメ2期部分ですね。よければ、匿名回答できるアンケートに答えてください。すでに、定めているのですが、なかなか意見が割れそうだなと思ってまして。
場合によっては注意書きの必要性が出てくるため、石上優のヒロインとしては誰派ですか?(この二次作品においては個人的にすでに決めさせていただいています。多数決というわけではありません)
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伊井野ミコ
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子安つばめ
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小野寺麗
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四条眞妃
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藤原千花