第20話 選択授業のやり方&第5回恋バナ@生徒会室
2学期が始まり、再び生徒会は始動。
結局、夏休み中に全員が集まることとなったのはたった2日のことであった。それでも、1人1人がその胸に思い出として刻み込んでいる。かぐやさんや御行会長に至っては、思春期の男女らしく、目も合わせられないほどだ。
「そうそう! 選択授業を決めなきゃでした!」
対して、千花さんはいつも通りだった。
ドキドキの夏はとっくに思い出なのだろうか。
「ああ。そう言えば、希望シートを配られたな。A組もなのか?」
「そうだな」
石上が新作ゲームのために生徒会へ来ていないから、今ここにいるのは高校2年だけだ。ちなみに、クラス分けについては、俺とかぐやさんがA組であり、御行会長や千花さんがB組となっている。
A組とB組が選択授業について合同で行うとはいえ、4月のクラス分け発表では何の嫌がらせかと思った。ロミオとジュリエットされた気分だった。
「私はみんなと同じのが良いです! 普段クラス違いますから!」
百合百合しいな。
もちろん、俺もそれを狙っていたんだが。
「おいおい、そんな不純な動機で選んでどうする」
「そうですね。そんな不純な動機で選んではいけません」
御行会長やかぐやさんがそんな『でまかせ』を言って、ありのままに千花さんは信じてしまう。心の中では『不純な動機』しかないだろう。夏休み前と変わらず、この2人は駆け引きを行っていた。
「たしか。前半、2人は音楽だったよな?」
「うん、そうだよ~ いっしょに授業受けるの楽しかったんだけどな~」
見ていて面白いので、かき乱しに行くことにする。どっちが勝っても、同じ結果を及ぼすことに変わりはないから、同時に俺の目的を果たす。
「会長、今の俺たちなら音楽選べますよ」
「んー? まあ、それもありだな」
「いやいや、ダメですから!」
ちなみに、俺と会長は2年前半で『音楽』を選ぶことを断念した。せっかく同じ授業を受けられる機会だったが、残念だ。もちろん音痴だからだ。校歌は1週間で普通に歌えるようになったが、あれは無理やり身体で憶えたというレベル。
「校歌1つでアレだったんですよ?
あと半年あれに付き合えって言うんですか?
私どうなっちゃうんですか?」
言葉に重みがあるな。
「付き合って、くれないのか……」
藤原千花は頼られると弱い。
この1年でよくわかったことだ。
「ま、また! また校歌の特訓には付き合いますから! 毎回の授業には間に合いませんから!」
「まあ、そこまで言うなら」
かぐやさんがこっちを『あの藤原さん相手に凄い!』という視線が向けられる。千花さんを制御できないことがあった時には、たまに無の境地に至ることがある。
まあ、俺だって伊達に、ド天然な美少女の攻略を1年弱やっているわけではないということだ。
さて、残りは美術か情報か。
自分の意志で選ぶなら情報で確定なんだけど。
「書道はもう2回選んだからなー」
「そうですねー」
「情報は悪くないよなー。最近書類作成はほとんどPCで行うから、実社会では一番役に立つだろう」
「そうですねー」
「美術も悪くない。自分がその道に進まないとしてもデザイナーとしてのセンスは役立ってくる。多少でも教養があるといいだろうな」
「そうですねー」
「音楽は、まあ、置いておこう」
「そうですねー」
御行会長はそれぞれのメリットを語りつつ、かぐやさんの反応の確認を行ったようだ。彼女は機械音痴でパソコンが苦手とはいえ、苦手な情報の授業を避けるタイプでもないだろう。
結果としては、上手く躱された。
「かぐやさんは決まりましたか~?」
「せっかくの学ぶ機会ですよ。自分の希望を選ばないと」
う~って千花さんは唸っている。
授業を一緒に受ける唯一の機会だからな。
「……俺なら美術かな。重要なのは、『自分が何を選びたいか』だ」
何か思うようなことがあったらしい。
自分が何を選びたいか、か。
「う~んう~ん 情報かー、美術かー」
好きな人と授業を受けること、それを選ぶ。
この青春は有限だ。
「それなら、私は美術にしますよ」
「私も美術にする! あまりやったことないから!」
かぐやさんからは私利私欲を感じた。まあ、自分の隣に立とうと必死に頑張っている、会長の選択肢を狭めるわけにはいかないこともあったのかもしれない。
「俺も、得意じゃないから美術にするか」
「なんだかんだ全員一緒なんだな」
そうまとめた御行だが、俺を心配そうに見てきた。
「千花さん」
「えっ、なんですか?」
「会長はともかく、俺って絵がちょっと下手というか。だから、教え方の上手な千花さんに教えてもらいたくて」
まあ、ちょっと下手なだけだからなんとかなるだろう。ちょっとだし。
「わかりました!
美術の授業では私に任せてください!」
秘密特訓フラグがたった。
「あっ(察し)」
御行は気づいたようだ。
****
(第5回恋バナ@生徒会室)
女三人寄れば姦しい、と言われるように女子が3人も集まればキャッキャウフフである。それは男子高校生4人にあてはまる場合もあり、たまには恋バナというものをするのである。
生徒の悩みを解決するべく、生徒会長は今日も相談を受けつける。
「どうぞ」
「あざっす!」
女子メンバーが席を外しているから、お茶請けは俺の担当だ。さっき買ってきた缶コーヒーを手渡す。
同学年の田沼翼は少し中性的な容姿をしている男子で、どこか頼りなさがある。そんな大人しい優等生だった。そんな彼が、髪を明るく染めて、ピアスまでしている。ここまでチャラくはなかったはず。
その動揺を隠すべく、一度退出して自動販売機まで走った。
「さて、今回も恋愛相談ということだが……」
会長も恋愛経験ゼロのヘタレ童貞に過ぎない。恋愛百戦錬磨という学園生徒からの評価とは真逆。一目惚れした女性に半年間片想いし続け、今まで数々の『ときめきメモリアル』をしたが、いまだかぐやさんと付き合ってはいない。
そこまで考えて、ブーメランすぎて泣けてくる。
「僕は席を外した方がいいですか?」
「気にしないで! 相談つっても全然軽いし。むしろキミも聞いてってよ」
発言とか考え方とか、フットワークとか、いろいろと軽くなっている。告白することや手を繋ぐことについて相談しに来て、会長に騙されるくらい初心な田沼翼くんは一体どこへ行ったのだろう。
恋した人間って変わるものだと実感した。
「夏休み、何か上手くいかなかったのか?」
「ん~ まあまあっすね」
もう、俺たち(※非リア充)に恋愛相談してはいけない段階(※リア充)だ。
「夏ちょっとアゲすぎちゃったし、夏休み明けもこのテンションでいかないといけないっていうか」
石上から『なんなんですか、この人』みたいな目を向けられる。俺だって、このTUBASAはすぐにでも愛する彼女のところへお帰り願いたい。
「こんなにラブラブでこの先どうしたらいいっすかね! それが相談っす」
キラッとウィンクまでしやがった。
羽ばたきすぎだろう。
「OK石上ブレーキ」
「……ブレーキOK」
石上が殺意に目覚めそうだった。
「つまり、なんだ、次のステップに進むためにきっかけが欲しいということか?」
「んー、まあ、そんな感じっすけど……」
少し視線は上を向いている。
そして、前髪を整えるような仕草。
「いやー夏休みって最高でしたよねっ!ねっ!?」
何かを隠していることは明白。
いや、惚気は聞きたくないけれど。
「会長こそ、夏休みエンジョイしたんですかー? 聞かせてくださいよー」
新学期早々の話題としてはありふれたものだ。だからといって、リア充が、非リア充の男3人組に聞いていいものではない。同学年の思春期男子として、何を言っても勝ち目が無いことは明白である。
「俺はひたすら勉強とバイトの毎日で、1度生徒会全員で花火と海に行ったくらいで……まあ、そんな感じ」
「えー?
それだけなんすねー?
じゃ、他の2人は?」
「家の仕事の手伝いをいろいろとして、お盆は墓参りして、あと生徒会で」
「ほとんど家でゲームでした、あと生徒会で」
ほら、見ろ。
この圧倒的な格差。
「うっへー! なんかスンマセン!」
「ははは、気にするな」
「楽しかったようで何より」
「……けっ」
非リア充男子3人、膝の上に置いた拳に力を入れ、歯を食いしばった。
「あっ、ここにいたんだ」
「おー、渚も生徒会に用事?」
新たな来客は、柏木渚さんだった。
「うん。かぐやさんにちょっと、ね?」
1学期に出会った彼女は『壁ダァン』を受けて、思わず告白をオーケーしてしまうほど初心だったはずだ。真面目で、恋愛経験が無くて、田沼翼くん相手にドギマギしていた姿が校内で見受けられた。だが、今の彼女は大人の女性っぽさがある。
俺たち非リア充は顔を見合わせた。
確かめるか、と。
「ちょっと俺たち、用事で出るからな」
「30分もすれば戻ってくるから、適当に寛いでいてくれ」
少なく見積もって25分は与えてやった。
生徒会室に2人きりで、何も起きないはずはない。
俺たちは何も起きたことないけれど。
「では、監視カメラ映像を見ようか」
「準備がいいですね、先輩」
「いや、いつ仕掛けたんだ?」
携帯に生徒会室を俯瞰した映像が映し出された。
「これは!『恋人繋ぎ』!?」
お互いの指と指を絡ませており、手を繋ぐことの最上位に位置する技だ。ソファで隣り合って座っており、翼と渚の肩が密接に触れ合っている。安らいでいる表情は容易に想像できる。
オキシトシンとかいろいろ出ちゃってるから。
「恋バナの匂いがします!」
千花さんとかぐやさんが生徒会室に戻ってきたようだ。生徒会室の前で男3人が1つのスマホの画面を見ているとなると、2人が興味津々に話しかけることは当たり前だろう。
「今、いいところなんだ」
「3人は何を見ているのですか?」
「今、生徒会室で先輩たちが神ってるんですよ」
「柏木さんとTSUBASAだ」
「はわわわ あの2人そこまで!?
やっぱり高校生の3人に1人!?」
あれ以来、少女漫画をこっそり読むようになった千花さんは察しが良いようだ。『神ってる』で伝わった。鋭いところがあったり、鈍いところがあったりするから、ド天然の攻略は難しい。
ただ、かぐやさんはまだ何のことかわかっていないようだ。
「ごにょごにょ」
「セェッ……!?」
千花さんがごにょごにょすれば、頬は真っ赤に染まる。千花さんも恥ずかしそうに両手で顔を抑えた。2人ともまだまだ、えっちぃことには初心な反応を見せている。
夏休み期間に初体験していないようで何よりだ。とある雑誌のサンプル・セレクションされているアンケートでは、高校生の1/3がヤっているらしいけれど。
「恋人繋ぎしていましたよ。会長、これは神ってるのでは?」
「いや、これはデート2回目の中盤でやるものだ」
「(会長、2回目のデートでやってくれるの!?)」
「私にも!見せてください!」
「おも……軽い! 超軽いから!」
俺の背中に乗って覗き込んでくる。
柔らかい感触ががががが
「首筋にキスしてますよ! マーク付けてますよ!」
「TUBASA、夏休みでぶっ飛んだな!」
「会長、これは神ってますって!」
「いや、デート4回目の別れ際にするものだ!」
「(会長、デート4回でやってくれるの!?)」
「じゃあ何回目でヤるんですか!!」
「そうです! 何回デートしたらいいんですか!!」
「5回目だよ!」
「意外と早いな、御行!」
「(会長、5回ぃ!?!?)」
「かぐやさん!?」
「どうした四宮!?
医者ぁー!!」
「ただの気絶ですよ」
「そろそろ、こっちに来るぞ」
すぐにスマホを片付け、何事もなかったかのように談話を始める。限界に達して、気を失ったかぐやさんは会長に背負われている。
「おっ、用事は終わったんすか?」
「ああ。悪いが、この後生徒会で仕事があってな」
「それなら、私たちはまた後日来ますね」
それと、と柏木さんは呟いた。
「覗き見は『メッ』ですよ」
去り際に柏木さんは、人差し指を唇に当てて、ウィンクを残した。田沼翼はチャラくなっているし、柏木さんは色っぽくなっているし、俺たちの見ていないところで、夏に2人は青春ラブコメを満喫したのだろう。
雑談にも夏休みの話題が上がるだろうが、2人は自信を持って充実した夏休みを過ごせたと言えるだろう。
「渚ちゃん、いいな~」
「完敗だな」
「あの人たち、また惚気話に来るんですか?」
「...そうだろうな」
生徒会メンバー全員、思春期男子女子的には、夏休みに大きく差をつけられた。まあ、たった2日会えただけとはいえ、この夏休みに後悔はないけれど。
俺たちのペースで青春ラブコメは続いていく。
場合によっては注意書きの必要性が出てくるため、石上優のヒロインとしては誰派ですか?(この二次作品においては個人的にすでに決めさせていただいています。多数決というわけではありません)
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