9月が始まってから数日が過ぎた。
だから、御行の誕生日が近いことを感じてくる。9月9日であるため、毎年9月に入ると何を渡そうかと考え始める。ただ、決して裕福な家庭ではない彼は、誕生日というものは特に記念日ではないらしい。
妹さんの誕生日には、勝手に財布に1000円入れるらしい。
結局のところ、中学の頃は500円分、高校に入ってからは1000円分の図書カードを手渡している。御行は子どもの頃からお小遣いは少なくて、むしろ家計のためにアルバイトするくらいだ。だから、本を買うために気兼ねなく使うことができる図書カードは、かなり喜んでくれている。
そう言えば、一度も御行の家に遊びに行ったことはない。だから、高校にいる間に一度は、御行と石上とで、男子会をしてみたいとふと思った。千花さんもよく女子会をしているらしいから。
「かぐやさん、何か悩み事ですか?
相談してくれていいんですよ?」
う~う~唸っているかぐやさんに、親友が声をかけないはずはない。ただ、混沌とした方向に進むことが多いので、千花さんに相談していいものか不安だ。そのことについても、う~う~唸っているようだ。
ここ1年でずいぶんと乙女になったなと、しみじみ思う。
「では! このフォーチュンテラーチカがかぐやさんを占ってしんぜます!」
そして、演劇部からかりっぱなしの魔女の帽子を被った。役作りのためには形から入るらしく、千花さんは被り物が好きである。最も気に入っているのはラブ探偵チカの探偵帽だ。
まあ、本人は演じているつもりでも、いつもの千花さんに変わりはない。
「へぇー、藤原先輩って占いできるんですね」
「そうですよ~ このサイトに性別と誕生日を打ち込むだけですから!」
水晶玉の代わりに、ニコニコと自分のスマホの画面を見せた。
「私の悩み事はその程度のものなのですか……」
それならむしろ、2人きりでガールズトークした方がマシだろう。解決するかどうかはともかく。
「占いねぇ……そのサイト当たるんですか?」
「よく当たるって書いてますから、当たるかどうかはハッケMeです!」
「当たるも八卦当たらぬも八卦、か」
上手い言い逃れだと思う。
「まあ、まずはやってみましょう! かぐやさんは1月1日だから~」
アレキサンドライトのような人間、王の名を冠する宝石のように高貴でプライドが高い。また環境に応じて赤くも青くもなる珍しく特性があり、天使にも悪魔にもなるだろう。
「プライドを捨て、素直になれば、幸せは訪れます、ですって~」
めちゃくちゃよく当たってるな。
解決策まで提示されたじゃないか。
「プライドが高い……悪魔……でも天使?」
「あら、石上君、どうかしましたか?」
いえ、と石上は押し黙った。
かぐやさんは微笑みを浮かべているだけだ。
「私もやってみよ~」
もう本来の目的を忘れたようだ。自分の誕生日を、キャッキャッして打ち込んでいる。
「私の誕生日3月3日なんですよね~ かわいいでしょ~」
「それな」
蠟燭の火のような人間、周囲を照らしささやかな熱は少しずつ氷を溶かす。蠟燭は光を与えると同時に自分を燃やし続けるため、献身や慈愛の象徴とも言える。
「これからも、惜しまぬ愛を注ぎ続ければ、願いは叶います、ですって~」
めちゃくちゃよく当たってるな。
愛をもっとください。
「そのサイト、よく当たるみたいだな」
「そうかな~」
褒められると弱い千花さんは、身体をくねくねさせて喜んだ。
石上やかぐやさん、そして聞き耳を立てている御行は『は?』という視線が向けられた。まるで、千花さんは献身も慈愛もない人みたいじゃないか。
「それって性別は設定するんですよね? 僕も3月3日なんですけど」
「なんてことするんですかぁ!?」
石上は突然先輩から怒られ、困惑するしかない。
本人は占ってほしかっただけなのに。
「だって! 誕生日が同じだと、祝ってもらうの絶対に同時じゃないですか!!」
去年度はお菓子パーティーをやってみたいという彼女の希望に従った。家の教育からは『はしたない』ことだが、だからこそちょっと冒険してみたい気持ちがあったらしい。
まあ、今年は2人きりの時に渡してみせる。
「誕生日は私だけを特別扱いしてほしいのにぃ~!
ぼっけなす~!」
「オーケー千花さんブレーキ」
握り拳を作って、両腕を掲げて、後輩を『ぎゃいぎゃい』と威嚇し始めた。だから、ブレーキをかけた。お可愛いことなのだけれど。
仕方ない、俺が石上を占ってしんぜよう。
「石上の場合、金糸雀という鳥らしいな。俺はそう思わないが、不運や犠牲の象徴らしい。失言に注意……あー、つまり、えっとー、石上も献身的だからな。いつかいいことあるさ」
「とってつけたようなフォローありがとうございます……」
めちゃくちゃよく当たってるな。
親切が報われないところとか。
「ぶ~ じゃあ次はつくしくんを占いますから」
「俺より御行を占ったらどうだ?」
「俺はやらんぞ」
「えぇ!?」
そんなにかぐやさんは会長を占いたかったのだろうか。
「占いなんて思わせぶりな事を言って、受け手が強くするバーナム効果でしかないだろう」
「占いはえっと……例えば、風水は建築学や統計の要素にも含まれていて」
いつもの痴話喧嘩を横目に、9月9日男性を調べる。
『優しく慈悲深い奉仕の人、しかし繊細である。たまに見せる頑固さや意志の正義や理想のために努力できるため、仕事でもプライベートでもストイックに努力でき、夢を叶えていける。繊細なところについては、特にお金に関して不安が強い。自分に自信を持ち他者を信頼することで、もっと大きな安らぎと人生の成功に満たされていく。恋愛では臆病で慎重、ただし交際を始めると独占欲が強くなる。積極的にアプローチができないため、恋愛を応援したくなるような協力者を得るべきだ。グループ交際で自然と距離が縮まっていく。』
などなどずいぶん長いから要約したけれど。
めちゃくちゃよく当たってるな。
(参考サイト:ウラソエ「誕生日占い」)
「菊花石、これは菊の模様がある特殊な玄武岩で、鑑賞石の中でも最高峰らしく」
「待て待て、何を調べている」
ここからが良いところなのに。
「え~ このサイトって相性占いだってできるんですよ~ 誕生日占いしましょうよ~」
「絶対にやらない」
下ページを読み進めていくと、相性占いに1月1日の相手がいない。だから、御行は相性占いにがっつり影響された可能性がある。占いの通り、頑固で繊細な9月9日生まれの男の子だな。
「会長なぜそこまで……はっ!」
かぐやは何か思いついたようだ。
まるで天使のようなニコニコを始めた。
「ぶ~ぶ~ いいですもん。つくしくん占いますから」
「そう言えば、川田先輩の誕生日っていつですか? LINEにも設定してないですよね?」
12月25日。
それは言葉にすれば一言だけれど。
「……占いは当たるかどうかわからないし、信じすぎるのも問題だな。俺もいい」
「まあ、無理して、会長と川田先輩を占うまでもないですよね。占われることが嫌いな人もいますから」
「えぇ~ じゃあ、マッキー先ハイとギガ子を占ってきますから!」
テーブルゲーム部の1年と3年の女子か。
というか、かぐやさんの悩み事相談はすっかり忘れられているようだ。かぐやさん本人も、頬が緩みきっているから、自己解決したのだろう。その解決が正しいかどうかはともかく。
石上は俺をちらりと見た後、ヘッドホンで耳を塞いだ。ほんと察しがいいし、お前はいいやつだよ。
『冷静でクールなイメージだが、心の内では激しく感情が渦巻いている。集団行動よりは単独行動を好み、他人の助けを借りないタイプ。本心、悩み事、不安を人に打ち明けることはめったにない。少人数でもいいので、そういった複雑な心を理解してくれる友人を持つことが重要となってくる。近寄りがたい雰囲気だが、実際に接した人は、その人柄の温かみ・親切さ・思いやりに心を打たれる。しかし、親切がおせっかいに変化することがあるので注意。恋人やパートナーを見つければ、極力相手のぺ-ス・好みに合わせようと努力する。ただし相手が自分の一定の領域に足を踏み入れることまでは嫌う』
などなどずいぶん長いから要約したけれど。
このサイト、めちゃくちゃよく当たってるな。キャストライトという守護石としては、役不足だろうけれど。
今でも、あいつのクリスマスソングは悪夢として耳に残っている。
原作のモチーフにされていますね。皆さんは竹取物語(古文)もしくは、かぐや姫(絵本など)について、どのような印象を抱いていますか?
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