藤原千花を独占したい   作:ヒラメもち

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第23話 心理テストのやり方

 今日は9月10日、つまりすでに御行会長の誕生日は過ぎた。

 

 その日が近づくにつれて、かぐやさんがどんどんアホっぽく子どもっぽくなっていったため、心待ちにしていることはよく伝わってきた。対して、同じクラスの早坂愛は、死んだ魚の目をしていた。

 

 会長にはちょっとした誕生日プレゼントを俺と石上は休み時間中に渡しておいた。そして、千花さんに場を混沌化されないために、彼女を連れ出して生徒会室からいつもより早めに帰宅した。

 

 その後は、生徒会室で2人きりで誕生日を祝うことができただろう。

 

「筑紫、石上、まだまだ熱いよな」

「そうっすねー」

「御行はわざわざ学ラン着こんでいるしな」

 

「あ~ 心地いい風だ~」

「いいなー(棒)」

 

 ありふれた白い扇子には、かぐやさん直筆の四字熟語とサインがある。『磨穿鉄硯』の意味は、いわゆる死ぬほど勉学するということなのだが、朝から死ぬほど意味を聞かされた。つまり、自慢である。

 

 まるで白銀家の家宝かのように、扇子が扱われている。

 

「こんにちは」

「こんにちは~」

「授業お疲れ」

「本日もご苦労」

「こんちはっす」

 

 御行は、扇子を閉じて顎に押し当てた。目つきの悪さも相まって、まるで悪代官みたいだな。

 かぐやさんはあからさまに頬を赤く染めて、背中を向けた。まさに乙女だ。

 

「いつもよりリボン、ちょっと傾けているな」

「あっ、わかる~?」

 

 ちなみに、極黒リボンは湿度によって大きさが変わる。たぶんオカルトの要素だと思っている。

 

「私のようにちょっとした変化に気づけるなんて、つくしくんもポイント高いですよ!」

 

 なんだか、褒められた。

 

「今日はですね~ みなさんのお悩みを解決するべく、心理テストをやります」

「私はもう解決しましたが」

「俺も特にないな」

「僕もです」

 

 携帯を操作していた手が止まった。

 でも、にぱーってする。

 

「やります♪」

「藤原書記がやりたいだけなんだな……」

 

 今回は帽子がないとはいえ、さしずめ、心理学者のサイコロジストチカといったところか。先日と同じように、スマホの画面をこちらに見せてきた。

 

「質問に答えるだけで、みなさんの深層心理がバッチリくっきりわかっちゃうんですよっ!」

「バッチリくっきりねぇ……」

 

 御行も半信半疑だ。

 

 先日の誕生日占いと同じく、バーナム効果を利用した心理テストは多い。当たったものが特に印象深くなる傾向がある。最近はSNS上でもリンクが貼られることが多く、その結果に一喜一憂するフレンズは多いのではないか。

 

「例えばですねー、会長の前に動物用の檻があります。その中に何の動物が何匹入っていますか?」

「んー 仔猫が9匹くらいかな」

 

 結構大きめのケージをイメージしているのだろう。

 にぎやかだな。

 

「これはですね~ あなたが欲しい子どもの数を表しています、ですって~」

「9人!?」

 

 野球チーム作れるくらいか。

 かぐやさんは頑張らないといけない。

 

「その顔、どうやら図星みたいですね」

「仔猫に似た子どもが9人かー へぇー」

「……なかなかやるじゃないか、心理テスト」

 

「それじゃあ、ここからは私もやりたいので、なんとなく見つけたものにします」

 

 千花さんがこっちを見てニマニマしているから、警戒しないといけない。今度は何を企んで、どうやって嵌められるかを考える必要がある。

 

「捨て猫がいたので、あなたは持っていたパンをあげました。すると猫が何か言いたげに鳴きました」

 

 1.ありがとうございます

 2.連れて帰ってください

 3.捨てないでください

 4.里親に出してください

 

白銀「その選択肢だと、1だろうな」

藤原「私はその猫を飼いたいですから、2ですね~」

かぐや「私は3でしょうか」

石上「僕は、まあ、4にしておきます」

 

 何がどう繋がってくるかさっぱりわからない。今の雰囲気だと、バーナム効果に惑わされる。そして、深層心理について、誤解を招くか、ありのままの心理を暴露してしまう。

 

 だから、どっちつかずの答えを選ばないといけない。

 

藤原「つくしくん、こういうのは素直に答えないとだよ~?」

川田「……1で」

 

 

「それじゃあ、回答を読み上げますね!」

 

 1.相手好みであろうとすることで、自分が捨てられないように振る舞っている

 2.ノリと勢いに任せて、自分のペースに相手を巻き込む

 3.悲劇の主人公を演じるのが上手く、相手の関心を自分に向けることで安心する

 4.あえて冷たくすることで、相手をじれじれさせることが得意

 

「ですって~」

 

「いや、それ、なんだか書き方が個人サイトっぽくありませんか?」

「そうですね。信憑性に欠けますね」

「いやはや、心理テストというのは当たらないものだな!」

「そうみたいだな」

 

 俺以外めちゃくちゃよく当たっている気がするが、これもバーナム効果だろう。

 

「え~ だって、一番上に出てましたもん!」

「あくまで心理テストの1つだから、鵜吞みにすることもないだろう。当たることもあれば、当たらないこともある」

 

「そ、そうよね!」

「そ、そうだな!」

 

 会長もかぐやさんも、占いとか心理テストをそれなりに気にしちゃうタイプだからな。

 

「あれ~ 会長って扇子持ってましたっけ」

「んー ああ。昨日は誕生日だったからな。これは、まあ、四宮からのプレゼントで」

 

 千花さんは、ぷるぷると震えはじめた。

 

「会長、昨日誕生日!?

 かぐやさんは知っていたんですか!?」

「ええ。会長からお聞きしましたよ」

 

 やばい、素で忘れていた。

 

 当日に2人きりにするためとはいえ、千花さんを生徒会室から連れ出したため、誕生日だと知る機会がなかったらしい。会長はまだLINEにも設定していないし、誕生日占いは有耶無耶にしてしまったこともある。

 

 俺のせいじゃないか。

 

「……いや、まあ、基本的に男子って誕生日祝うことはないから」

「確かに、男同士だと、誕生日にプレゼント渡すのが珍しいくらいですよね」

 

 石上ナイスフォロー。

 

「つくしくんも石上くんも、知ってたの……?」

 

「そういえば。会長、万年筆使ってくれているんですね」

「ああ。使ってみると、なかなか書き心地が良くてな」

 

 これはまずい状況だ。

 千花さんの目がうるうるしてきている。

 

「つくしくんは何かプレゼントしたの!?」

「……いつも通り図書カードを」

「毎年のことだが、ありがたい。今からどの本を買うか迷っていてな」

 

 渡した1000円分の図書カードを財布から出して見せてくる。その金額については、最後まで迷った。

 

「えっ、藤原先輩もしかして知らなかったんですか!?」

「……うぅ~」

 

 石上の素直な発言だ。

 だが、とどめをさされたな。

 

「ごめ゛ん゛な゛ざい゛~!

 なにがぶれぜんどみづげでぎまずがら!」

 

 顔を片腕で抑えながら、ドタドタと生徒会室から外へ走っていく。

 

「俺、追いかけてきます」

 

 追い越すことは簡単だ。

 だが、どう声をかければいい。

 

 生徒会室に続く一直線の廊下の角を曲がろうとして、千花さんの身体がよろけるのが見えて。

 

 飛び込んだ。

 

「……セーフ」

「ひっぐ……ひっぐ……」

 

 朝ぶつかりそうになった時、こうして庇ったことがあった。でも、このままでは、精神的に救えたということにはならないだろう。なぜ泣いているかはわかっている。そして、そういった相手の心理を踏まえて、最善の対処方法を考えているうちに、俺はいつも遅れる。

 

「その……」

 

 いつまでもこの態勢でいるわけにもいかない。

 誰かに見られると、千花さんに迷惑がかかる。

 

「本当にごめん。

 仲間外れにしてごめん。

 えーと、なんか、ごめん……」

 

 だから泣き止んでほしい。

 その言葉があと少しのところで、出てこない。

 

「迷惑かけて、ごめんなさい」

「俺は迷惑だなんて思っていない。俺は千花さんのそういう裏表が無いところに助けられている。かぐやさんもそう言っていただろう」

 

 もう数ヶ月前のことだが。

 

「ほんと?」

「……信じてもらうしかない」

 

 もぞもぞと動いて、ゆっくりと立ち上がった。

 目元はまだ赤い。

 

「歩けそうか? 捻挫とかしていないか?」

「平気だよ……ほんとやさしいね」

 

 女子を泣かせるやつなんて、思春期男子としてはどうかと思うけれど。

 

「……会長のプレゼント探しに行くから、手伝ってください」

 

 そう言いながら、腕に抱きついてきた。

 

 こういうスキンシップするから、勘違いする男子が出てくる。ちょっと襲われたい願望があるなら尚更だろうに。

 

「このまま歩くと、見られるぞ」

「いいもん! つくしくんが迷惑じゃないなら、私はいいもん」

 

 超役得です。

 欲望は、素直に口に出すことはないけれど。

 

「……私だってここまでするのは、男子だと つくしくんくらいなんだから」

 

 ほんと、ぐいぐいくる。

 それはもう、深層心理に触れてくるくらい。

 

「……俺も去年まで、誰にもここまでは近づかせなかったんだけどな」

 

 今は、一緒に肩を並べて歩いている。

 

 

****

 

 

 その後、すっかり機嫌が良くなった千花さんといっしょに生徒会室に戻った。

 

「これ、誰からのプレゼントですか?

 会長、結婚するんですか?」

 

「いや、その、みなさんとケーキを食べてみたくてですね。会長の誕生日とは関係ありませんから!」

 

 かぐやさんが用意したらしい。

 

 ウェディングケーキかと思うくらい、巨大なケーキ。

 生クリームとイチゴとスポンジケーキの暴力。

 

「あの、会長、1日遅れのプレゼントなんですけど……」

 

 千花さんは緑色の葉っぱをそっと差し出した。

 

「あー、クローバ―か……これ四つ葉か!?」

「この短時間でですか、先輩たち!?」

 

 千花さんの持ち前の運には驚かされる。

 急にしゃがみ込んだと思ったら、摘んでいた。

 

「栞にでもしてみるか。ありがとう、藤原書記」

「いえ、喜んでくれてよかったです!」

 

 タダでは転ばないよな、千花さん。

 

「藤原先輩、戻ってきて早速なんだが、コーヒーをお願いしたい」

「僕、とびっきりブラックのやつでお願いします」

「はい! 任せてくださいっ!」

 

 鼻歌混じりにコーヒーミルを準備し始めた。千花さんにはやはり笑顔が一番似合う、そんなクサいことを考えてしまう。まあ、是非もないよね。

 

 そんな俺の視線に気づいたのか、にこりと微笑んだ。

 

「川田さん、切り分けるの手伝ってもらえますか?」

「いいけど。しかしこれはまたずいぶんと大きいな。一体、何日分あるのか」

 

 御行への愛が大きい証拠なのだろう。

 負けていられないな。

 

 

 

 

 




原作のモチーフにされていますね。皆さんは竹取物語(古文)もしくは、かぐや姫(絵本など)について、どのような印象を抱いていますか?

  • かぐや姫がかわいそう
  • かぐや姫はいじわる
  • 5人の求婚者はいわゆる『ざまぁ』
  • ユーモアを感じるストーリー
  • 社会風刺的な文章,男尊女卑アンチ
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