藤原千花を独占したい   作:ヒラメもち

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第31話 第6回恋バナ@生徒会室

 女三人寄れば姦しい、と言われるように女子が3人も集まればキャッキャウフフである。それは男子高校生4人にあてはまる場合もあり、たまには恋バナというものをするのである。

 

 生徒の悩みを解決するべく、生徒会長は今日も相談を受けつける。

 

「どうぞ」

「……ありがとうございます」

 

 女子メンバーが席を外していないが、お茶請けは俺の担当にさせてもらった。落ち込んでいる彼には、優しい味がいいと思って白湯を出した。わざわざ一度お湯を沸かして、冷ます工程までやってあげた。

 

「さて、今回も恋愛相談ということだが……」

 

 会長も恋愛経験ゼロのヘタレ童貞に過ぎない。恋愛百戦錬磨という学園生徒からの評価とは真逆。一目惚れした女性に半年間片想いし続け、2学期からも数々の『ときめきメモリアル』をしたが、いまだかぐやさんと付き合ってはいない。

 

「俺、彼女と喧嘩しちゃって」

 

 田沼翼くんは、今は夏休み明けの輝きを失っていた。『壁ダァン』をする前よりも自信を失っている。それにしても『友達の話』にしないとは、さては貴様もう童貞じゃないな。

 

「っしゃオラ ざまぁみろ」

「OK石上ブレーキ」

 

「石上、最低」

「石上くん、さいて~」

 

 一早く石上が『ざまぁ』してしまったため、女性陣に引かれたので、部屋の隅で一度膝を抱えた。

 

「もう少し事情を聴こう」

「喧嘩の原因は、何なのでしょうか?」

「いや、それが分からないんですよ。聞いても、『どうして怒ってるかわかる』って」

 

 きついな。

 それはきつい。

 

 男としてはあらかじめその理由を考えた上で、可能な限り修正し、そして謝る。もし、その期間が伸びれば伸びるほど、状況は悪化していくものだ。しかも、男では簡単に理解してあげられないことの可能性だってある。

 

「ここは、ラブ探偵団の出番ですね!」

「うぅ、またこの帽子を……」

「これ、いつもやっているんですか……」

 

 どうやら、今回から新規メンバーが加入したらしい。

 

「さあ、1つ1つ話してみてください!」

「じゃあ……」

 

 先日、田沼翼くんはラインのアイコンを、気分転換に猫の画像に変えたらしい。渋々納得してくれたとはいえ、あからさまに『激おこぷんぷん丸』ほどではないが、『おこ』だったらしい。

 

「先輩の彼女、猫が嫌いなんですか?」

「猫いいだろ、だって猫だぞ?」

「犬がよかったのでしょうか?」

「ウサギがよかったとかは?」

 

「いや、そんなことはないと思います」

 

 御行とかぐやさんは、お互いに好きな動物を言っているだけだろう。だから、俺もあえてウサギを出してみた。

 

「ふむふむ。恐ろしいほど束縛が強い人なのでしょうか。勝手に行動したこと自体に怒ってるとか?」

「束縛は結構きついですけど、そこまで無意味には怒りませんよ」

 

 柏木さんとは気が合いそうだ。

 

「前のアイコン、彼女との2ショットじゃありませんでした?」

「まあ、うん。渚と撮ったプリだった」

 

「原因は2人の『ラブラブアイコン』を外されたから、彼女がいるって周りに隠しているんじゃないのっていう『おこ』ですね」

「そ、それだぁ!!」

 

 急いで、スマホを操作しながら田沼翼くんはLINEのアイコンを変えているようだ。それにしても、男としては入りづらいプリクラをしてくるだなんて、さては貴様もう童貞じゃないな。

 

「う~ くやしー」

「この私が、石上に後れを取るなんて」

 

 もしかして俺と石上以外、素で気づいていなかったのだろうか。

 

「じゃあ!」

 

 先日、田沼翼くんは、風邪で休んだ柏木さんのお見舞いに行ったらしい。もちろん授業を受けて、放課後にコンビニに寄って、家に向かった。だが、『門前払い』を受けることになる。彼としても風邪をうつされることは気にしないことを伝えたはずらしい。

 

「風邪……お見舞い……」

 

 かぐやさんはルーティンを使う間もなく、脳がショートしている。1学期にお見舞いに行ったエピソードを、御行から聞いたが、その時の記憶がないとはいえ添い寝したらしいから。羨ましい。

 

「他の男を連れ込んでいたとかどうです!?」

「いえお義母さんもいましたし、さすがにそれはないかと」

 

 千花さんの案は外れたか。

 まあ、束縛欲の強い柏木さんが自ら浮気はしないだろう。常に異性との関係は気にしてしまうものだ。むしろ、探偵か誰かに、浮気調査を頼むまである。

 

「これは決まりだろう。

 妊娠だな」

 

「つくしくん!?」

「筑紫もそう思ったか」

「セェッ!? みみみ未成年ですよ!?」

「おおおおちついてください、四宮先輩」

「まず伊井野が落ち着け」

 

 いつかはこの日が来ると思っていた。

 それは、田沼家の血の宿命だ。

 

「いやいや、大丈夫ですよ。

 僕たちはちゃんとシてるんで」

 

「で、ですよね~」

「そうね。まだ未成年だものね」

「ほっ……不純異性交遊をしていないようで何よりです」

 

 箱入り娘たちはすっかり騙されたようだ。

 

「先輩、いつも彼女の部屋に入る時、少し待たされたりしませんか?」

「あー、5分くらいは」

 

 よく柏木さんの部屋に行っているらしい。もうお互いの家族公認の関係までいっていて、『できちゃった婚』する可能性がでてきた。それが田沼一族のジンクスとなっている。

 

「柏木さんの部屋、どんな感じなんだ?」

「えっと、少し物が多いけど、綺麗ですよ」

 

「柏木さんは普段から綺麗にしてそうだが、石上はどう思う?」

「いやいや、彼氏が来る時こそ、いつもより入念に掃除するんですよ。化粧もするかもしれません。でも、その日は、風邪で片付ける元気がなかった」

「そ、それだぁ!!」

 

 田沼翼くんより、石上が恋愛マスターっぽい。

 なお童貞。

 

「おそらく、きっと、入念に掃除していました!」

「石上、お前すげーな!」

 

「……石上のくせに」

「……一言余計だ」

 

 伊井野と石上は相変わらず犬猿の仲だ。そして、千花はその探偵帽を脱いで、石上へ震えながら差し出した。

 

「こっ、これ、あげます……」

「いりませんよ。そんなアホと思われる呪いのアイテム」

「誰がアホですって!?」

「そうです。私はアホではありません!」

 

「まあ、落ち着け。2人とも」

 

 ぎゃいぎゃいを始めた石上と伊井野を御行が押しとどめる。

 あとかぐやさん、ひどいな。

 

「それだと、極黒リボンごと渡すことになるだろうに」

「わぁ!?」

 

 再び、探偵帽を千花の頭に被せておく。

 髪が乱れたのを気にしているのか、くしくししている。

 

「じゃあさ! 渚がファッション誌を読んでて、この中だったらどの子が好みって言われて、答えたんだけど!」

「他の女を褒めたからでしょう。この場合の正解は、みんなタイプじゃないって伝えるだけです」

「それか、君は大人になったらどんな美人になるのだろう、とかな」

「なんだかそれアリです、川田先輩!」

 

 真の天才を含む人たちから、俺たちに『天才か?』という視線が向けられている。強いて言うなら、石上と俺以外は、一度恋愛シミュレーションゲームをやった方がいいと思う。

 

「じゃあ、これ昨日の話なんだけど、ゲーセンでカッコいいところ見せようとして、全力出したんだけど!」

 

「ボコボコにしたからに決まってんだろ!!

 しかも昨日って、それが原因ですよ!!」

「石上落ち着けぇ!」

 

 今にも掴みかかりそうな石上のブレーキを、伊井野に任せておいて。

 

「田沼は優しいから。柏木さんも甘えてしまって、どうしても我儘を言ってしまうということもありそうだ。だから、たまには、本音で不満をぶつけ合ってみるとか」

 

 そこで、提案する。

 

「ここは初心に戻って『壁ダァン』をしてみたらどうだ?」

 

「……俺、壁ドンしてきます!

 ありがとうございました!!」

 

 彼は自信を取り戻して、駆けて行った。

 またこれから数日、学校中でイチャイチャしそうだ。

 

 

「俺は『壁ダァン』の野次馬をしてくるが。

 どうする、ラブ探偵団?」

 

「もちろん、行きますよっ!」

「不純異性交遊は止めないと!」

 

「会長、私たちもいきましょうか」

 

 走り出した俺たちの後ろを、残りの3人もやれやれ顔で追いかけてきた。

 

 

 

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