ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
先に言っておきますが、SAOIFのエルフ関連のストーリーは簡単に済ませる予定ですので、この話でも、文章だけで済ましてます。エルフクエストのことを詳しく知りたければ、ぜひSAOIFをプレイしてみてください
マテルと別れた後、二人は更に奥へと進んだ。
その途中、一体のファールンエルフに襲われ、そのファールンエルフは一度倒したと思われたが、急に立ち上がり、もう一度襲い掛かった。
しかし、キズメルの助太刀もあり、何とか撃退に成功する。
その後、キズメルから先程のファールンエルフの不死の謎が《地下墓地》にあることを聞いたハルト達は、幽霊の謎を兼ねて、エルフクエストを攻略するべく、キズメルと共に行動した。
更に奥深く進んだ三人は、先程戦ったエルフともう一体のエルフが会話をしている所を見た。
彼らの話によれば、《地下墓地》の各場所に爆弾を仕掛けおり、爆弾で遺跡を破壊してキズメル達の拠点を崩すという計画を立てているとのこと。
それを知ったハルト達は彼らの計画を阻止するべく行動した。
キズメルや彼女の仲間の協力もあり、ハルト達は不死の謎を解いて、無事二体のファールンエルフを倒した、
計画を阻止したハルトとコハルは、《地下墓地》から出て、キズメルから第五層のボスの特徴について教えてもらった。
第五層のボスは生きる石像であり、まともに攻撃を食らえば危険だから、防御と回避に専念しろと。
一通り説明をし終えたら、キズメルは仲間と共に去っていった。
エルフクエストはクリアしたが、まだ幽霊の謎を解いてないため、もう一度《地下墓地》に行こうとしたところにアルゴからメールが届いた。
内容は『幽霊の正体が分かったから転移門まで来てくれ』とのこと。
現在二人はアルゴ達と合流するべく、フィールドを歩いている最中であった。
「幽霊さん、どんな人なんだろう?」
「凄腕のソロプレイヤーかもしれないし、或いは・・・どちらにせよ、行ってみないと分からないね」
そんな何気ない会話をしながら、二人は転移門へ向かう。
転移門にたどり着くと、ハルト達とは別々に調査をしていたアルゴとクラインがいた。
「オ、来たナ」
「よぉ!待ってたぜ。そっちもなんかあった的な顔をしてるな。まずはそっちの話を聞かせてくれないか?」
「あ、はい。実は・・・」
クラインの質問に答えるべく、ハルトは《地下墓地》で起きた出来事について話した。
一通り話すと、アルゴは顎に手を当てながら喋る。
「成程ナ。五層のボスが生きる石像なのは、βテストと同じだナ。第五層のボスは巨大ゴーレムだヨ。とにかくでかい上、防御力がやたら高くて、βテストだと百人近くのプレイヤーが参加して、ようやく倒したんダ」
百人という凄まじい数に、三人の表情が険しくなる。
「マジかよ。百人で戦ったってことは、その分死んだ数も多いってことじゃねぇか。今のSAOじゃ相当の強敵だぜ」
「そうだね。攻撃を回避するだけじゃない。防御を担当するタンクの役割りも重要になるだろうし」
「それに、これらは全てβテストの情報ダ。向こうの攻撃パターンや出現する敵とか、βテストとどう変わっているかは、今のところ直接見ないと分からないナ」
「ALSとDKBの人たちにも、この情報を伝えないといけませんね」
各々が、ボス攻略について喋る中、コハルの言葉にアルゴが反応する。
「そのことなんだけどサ。幽霊から直接、話を聞いた方がいいだろうナ」
「「えぇ!?」」
幽霊から話を聞くということに、疑問の声が上がるハルトとコハル。
どういうことか聞こうと思ったその時
「まだ幽霊じゃないよ。君たちにとっては似たようなものかもしれないけどな」
突然爽やかな男の声が聞こえ、声が聞こえた方に振り向く。そこにいたのは・・・
「久しぶりだね。ハルト、コハル」
「「ディアベルさん!」」
かつて攻略組のリーダーを務めており、自身の身勝手な行動で周りを危険にさらしてしまった責任をとるためにリーダーを降りた青年、ディアベルがいた。
久しぶりの再会にハルトとコハルはディアベルの方に詰め寄る。
「久しぶりです!あの後、どこに行ってたんですか!?それに幽霊の正体ってディアベルさんなんですか!?」
「お、落ち着いてコハル。ディアベルさんも困ってるから・・・積もる話もいっぱいあるけど、きちんと説明してくれますよね?」
「あぁ、もちろんだ」
ハルトの問いに真剣な表情で答えたディアベルは、二人を見ながら話し始める。
「あの後、俺は第一層に留まっていたんだ。その間に君たちの活躍を聞いたよ。決して楽な道ではなかったこともね」
「・・・それを知っていて、なんで戻ろうとしなかったんだ?」
ディアベルの言葉にクラインが若干怒りが含まれている表情で言う。
「あんたが抜けた後、攻略組は二つに分かれちまった。しかも、互いに攻略の主導権を握ろうとし合っていて、仲が悪いって聞いている。キリトやハルト達が支えているおかげで、何とか攻略が進んでいるけど、いつ取り返しのつかないことが起こるか分かったもんじゃないぜ」
「・・・分かっている。だからこそ、こうして前線に戻ってきたんだ」
クラインの目をきちんと見ながら、真剣な表情でディアベルは言った。
そんなディアベルに対して、アルゴが質問する。
「それなら、なんでコソコソとしてたんダ?」
確かにその通りである。前線に戻るつもりなら、わざわざ幽霊の噂を作らなくても、堂々と攻略組に復帰するっと宣言すればいいもの、何故ディアベルは攻略組には戻らず、未だに一人でいるのか。
ハルトがそんなことを考えている中、ディアベルがアルゴの質問に答える。
「・・・今から言うことは、俺の仲間から聞いたことだ。彼はALSに所属していて、ある一つの情報。それも、幹部しか知らない情報を俺に教えてくれたんだ。けれども、その情報はとんでもないものだったんだ。もし、漏れてしまうと、必ず二つのギルドは争い合ってしまうほどのね」
ディアベルの言葉に驚愕する四人。
ギルド同士が争い合ってしまうほどの事態。そんなどんでもないようなことを起こしてしまうほどの何かが、この五層にあるということだ。
「だから、俺に情報が渡ったということを知られないために、今日まで姿を隠していたんだけど、まさか幽霊なんて噂になっていたとはね」
最後は少し笑みを浮かべながら喋ったものの、途中の話のインパクトが強すぎて、未だ呆然としている四人。
いち早く我に返ったアルゴが、一旦話題を変えるべく、ある事について聞いた。
「一つ聞きたいんだけど、身を隠してた時に何か姿を消すアイテムとか持っていなかったのカ?」
「まさか、そんな便利なアイテムがあれば、人目を避ける必要がないよ」
どうやら、エルフみたいに姿を消すアイテムを持っていなかったようだ。
一通り落ち着いたところでハルトが、どんでもない情報について聞く。
「それで、そのとんでもない情報って何なんですか?」
「詳しくは言えないけど、それは第五層のボスを倒せば手に入るものなんだ。ただし、ALSとDKBどちらが先に倒しても、二つのギルドの仲が修復不可能になるだろう。最悪の場合、戦争になるかもしれない・・・」
戦争という言葉にまたもや驚愕する四人。
「戦争って、んな馬鹿な・・・」
「ありえなくはないな。ここはもうオレッチ達にとってもう一つの現実ダ。モンスターとの戦いが日常になる分、いつ不満が爆発するか分からないからナ」
「実際に第二層のボス攻略の時も、あるギルドの人たちを殺そうとしたプレイヤー達もいたからね」
「マジかよ・・・」
プレイヤーがプレイヤーを殺そうとしたっという事実に驚くクライン。
あの時、ザントとリンドの機転が利いた行動がなければ、ネズハ達「レジェンド・ブレイブス」の面々は、あの場で処刑されてたかもしれない。
ただでさえ、仲が悪いというのに、もしプレイヤー達の不満や怒りが爆発するような出来事が起これば、最悪戦争になり、多くの命が失われてしまうだろう。
「だからこそ、最悪の事態を避けるために、俺と一緒に五層のボスを攻略してほしい」
ディアベルが頭を下げながら、ハルト達に頼む。
「待てよ!βテストだと百人掛かりでようやく倒したボスなんだろ。それをたった五人ぽっちで倒せるわけないだろ!」
クラインが反論するが、ディアベルは首を横に振りながら、クラインをしっかり見据えて言う。
「流石に五人だけで戦わないよ。何人か助っ人を頼むつもりだ」
そんなディアベルに対して、クラインはため息を吐きながら喋る。
「分かったよ。攻略組が戦争なんて事になったら、大変だからな」
「ありがとう。早速で悪いけど、迷宮区に行くためには、巨大な迷路を突破しないといけないけど、あるクエストをクリアすれば、NPCが迷宮区まで案内してくれるんだ。クラインさんは俺と一緒に行動してそのクエストを攻略するのを手伝ってほしい」
ディアベルの言葉に頷くクライン。
それを見たディアベルは、今度はハルト達の方を向いた。
「ハルトとコハルには《崩塔の遺跡群》に行って、あるアイテムを入手してきてほしい。このコインを《崩塔の遺跡群》にある噴水に投げ込むと手に入るはずだから」
そう言いながら、ディアベルは一枚のコインをハルトに渡す。
「アルゴさんはボスの事やボスを倒した時に手に入るアイテムについて調査をしてくれないかな。それと、一緒に戦ってくれる人たちも探してくれたらありがたいんだけど・・・」
「任せロ。ボスの詳しい情報や手に入るアイテム。攻略組以外でボス攻略に参加してくれる奴を探してくるヨ」
アルゴの言葉を聞いて、ディアベルは笑みを浮かべながら喋る。
「それじゃあ、一旦ここで別れよう。クエストをクリアすれば、また連絡するよ」
その言葉を最後にハルト達は、それぞれの役割を果たすべく別れた。
数日後、ハルト達はディアベルの言われた通りにコインを泉に投げ込むと、その瞬間、複数のエネミーに襲われたが、無事倒し、アイテムを入手することができた。
その後、ディアベルからメッセージが届き、巨大迷路前まで来てほしいと指示された。
その指示に従い、ハルト達は巨大迷路前にたどり着くと、ディアベルとクラインがいた。
「やぁ、待ってたよ。それで、アイテムは無事ゲットできたかい?」
ハルトはディアベルにゲットしたアイテムを渡す。
「ありがとう。俺はこれをNPCに渡してくるよ」
そう言うと、ディアベルは向こう側にいるNPCの方に向かった。
その背中を見ながら、クラインがポツリと吐く。
「あいつスゲーよな。指示がテキパキしてて、戦い方もうめぇ。レベルも五層のレベルに通用するくらいあったし、とてもじゃねぇけど、噂されてた『ボス攻略で死にかけたから、ビビッちまって攻略組から逃げ出した奴』とは思えねぇんだ」
「待って、何その噂は?」
クラインから発せられたディアベルの噂について、ハルトは少し驚きながらも聞いた。
「正確には攻略組の端っこにいる奴らが言ってたんだ。『責任を取るって言っておきながら、ホントはただ逃げただけだろ』って」
「・・・あの人の苦労も知らないで、よくもまぁ・・・」
ディアベルのあんまりな評価に、ハルトが怒りを露わにしていると、戻ってきたディアベルから声を掛けられた。
「彼らは正しいよ。現に俺は責任を取るって言いながら、それを言い訳にして、ずっと、下の層に居続けていたんだから」
「ディアベルさん・・・」
ディアベルの言葉を聞き、コハルが心配そうに声を掛ける。
そんなコハルに対して、ディアベルは笑みを浮かべると、続きを話した。
「あの後、俺は低層のプレイヤー達に効率のいい狩り場やクエストを教えたり、レベル上げを手伝ったりしてたんだ。教えてからしばらくすると、彼らは攻略組に憧れていて、『いつか攻略組の一員になるんだ』って意気込んでいたよ。俺はそこから逃げ出したプレイヤーなのに・・・」
「それの何が悪いんですか?」
「コハル?」
コハルが自身のことを肯定したことに目を丸くするディアベル。
「私だって、もしハルトと出会っていなければ、何を目標にして頑張っていけばいいのか分からず、今でも《はじまりの街》に籠ってたかもしれません。ディアベルさんが教えてた低層プレイヤーの人たちも、ディアベルさんに教えられて、攻略組という目標が見つかって嬉しかったはずです」
コハルの言葉を笑みを浮かべながら聞くハルト。
彼女の言う通り、デスゲームが始まった当時、二人は生き残ることだけを考えながら、行動していた。
しかし、この世界で生きていくうちに、大切なパートナー、友達や信頼できる仲間がたくさんでき、この人たちと一緒に生きていたい、負けたくないという目標が、この世界で生きるための原動力となっていた。
コハルの言葉にディアベルは呆然としていると、クラインが話しかける。
「あんたは前線を離れている間も、ゲームクリアのために自分を強化してたんだろ。もし、ホントに逃げ出したなら、ここに戻ってこねぇ。そうだろ?」
クラインの言葉にディアベルは笑みを浮かべる。
「そうだな。このゲームをクリアするためにも、ギルド同士の衝突を避けなければならない。そのためにも、五層の初回クリアボーナスアイテムを獲得しなければいけない」
「「「初回クリアボーナスアイテム?」」」
ディアベルの言葉に首をかしげる三人。
どういうことか聞こうと思った時、アルゴが現れた。
「そのアイテム、ギルドフラッグだろ?」
「ギルドフラッグ?なんだそりゃ?旗か?」
クラインが疑問の声を上げる。
一方でディアベルは驚きながらも、冷静になりながらアルゴに問う。
「驚いたな。どこでその情報を知ったんだい?」
「なに、この件の協力者候補からだヨ」
「協力者・・・成程、彼か・・・」
納得したかのように頷くディアベル。
一方、状況を理解出来てないクラインがディアベルに問う。
「おいおい、二人だけで納得しないで、俺たちにも教えてくれ」
「あぁ、すまない。まずはギルドフラッグについて説明しよう。それはβテストの時に五層のボスからドロップしたアイテムで、攻撃力は低いけど、それを地面に突き立てると、半径十五メートル以内にいるギルドメンバー全員にステータスを上昇させるバフがかかるんだ」
「なんだと!?全員にバフだと!?ヤバすぎるだろ!」
クラインが目を見開き、大声で叫ぶ。
「しかも、人数制限がないから、範囲内にいるギルドメンバー全員にバフが付く激ヤバアイテムだナ。更に最悪な事にそいつの情報を手に入れたALSが、DKBにフラッグを取られまいために、ボス攻略の準備を急いでいるって話ダ。おそらく、今日の夜にでもボス攻略に挑むつもりダ」
「アルゴさんの言う通りだ。俺にこのことを教えてくれたALSの幹部は『自分じゃキバオウさんを止めることはできない』って言ってたよ」
「おいおい、ALSのリーダーは、ALSがギルドフラッグを手に入れることの意味を分かってんのか?」
「・・・彼も迷っていたんだ。ギルドフラッグは今は互角のALSとDKBのバランスを確実に崩すからね」
ディアベルは一瞬俯いたが、顔を上げると静かに話す。
「ALSは全プレイヤーに情報やアイテムを公平に分配すべし。という理想を掲げている。それに対して、DKBはトッププレイヤー達が、後に続く者たちの希望の象徴になるべし。の理念を掲げている・・・どちらも、俺が掲げていた理想だ。それがこうも分裂するなんて思ってなかったよ・・・」
「だから」と、ディアベルは真剣な表情になり
「俺がまいた種だ。共倒れになんか絶対にさせない」
自身のするべきことをはっきりと言った。
ディアベルの決意を聞き、クラインは笑みを浮かべながら言う。
「ギルドフラッグをあんたが手に入れたら、あんたが二つのギルドを融合することに反対する奴はいねぇだろうな」
クラインがそう言うと、ディアベルは手を叩いた。
「それじゃ、先に迷宮区に向かおう。協力者のこととかは、着いてから話すよ」
NPCに案内され、迷宮区前へたどり着いたハルト達は、五層のボスについて話し合っていた。
「五層のボスは巨大ゴーレムだ。ボスは主にパンチや踏み付けなどの物理攻撃を行うんだ」
「一発が凄く強烈だからナ。モーションを見て、しっかり回避。或いは防御しないとナ。何人かタンク役が欲しいけど・・・まぁ、そこら辺は助っ人に期待だナ」
ディアベルとアルゴがボスの説明をする中、コハルが助っ人のことについて聞く。
「助っ人の人たちは、まだ来てないみたいですね」
「安心しろ。そろそろだと思うんだが・・・お、来たナ」
アルゴがそう言うと、二人の男女がこちらに向かって歩いて来た。
その人物はキリトとアスナ。その後ろにはエギル軍団。更にリーテンと一人の男もいた。
「良かった。間に合ったみたいね」
「あんたは絶対に戻ってくると思ってたよ、ディアベル」
「明日には、あんたが再起したってニュースが攻略組に広まるだろうな」
キリトとアスナ、エギルが四人に話しかけた。
そんな中、クラインがキリトを見て、話しかける。
「よぉ!キリト!久しぶりだな!ビーターの悪名は聞いてるぜ」
「あ、あぁ・・・」
話しかけてきたクラインに対して、キリトは複雑そうな様子で返す。
この二人はデスゲームが開始してすぐ、キリトはクラインを連れて行こうとしたが、クラインは仲間たちを置いていけないっという理由で拒否。結果、キリトは初心者であるクラインを置いて行ってしまった。
そのことをキリトは後悔していたため、こうして再会しても、ぎこちない気持ちであった。
「クライン、その・・・」
「いやー俺もイカス二つ名の一つや二つ考えとけば良かったぜ。例えば、クリムゾンブレイバークライン!とか、紅蓮のサムライ!とか・・・」
「ダサいナ」
「すみません。凄くかっこ悪いです」
「そりゃないぜ、女性陣・・・」
アルゴとコハルのあんまりな評価に落ち込むクライン。
そんなクラインなりの気遣いを見て、キリトは大声で笑った。
「ハハハ!お前は変わらないなクライン」
キリト達がそんなやり取りをしている中、ハルトはリーテンと隣にいる男性プレイヤーに話しかける。
「リーテンさん。ALSのあなたがなんでここに?それに隣の人は?」
「ディアベルさんがボスに挑もうとしていることは、キリトさんとアスナさんに聞いたんだ。私も攻略組同士の争いは避けたい。だからこそ、こうして参加しに来たんだ。無論、隣にいる彼も同じ気持ちだよ」
そう言いながら、リーテンは隣にいる男性プレイヤーを見る。
男性はリーテンの目線を見て頷きながら、ハルトの前に出た。
「まぁ、ボス攻略で何度もあってるけど、改めて・・・俺の名前はシヴァタ。DKBの幹部プレイヤーだ。お前たちのことは、りっ・・・リーテンから聞いている。よろしくなハルト」
そう言いながら、握手を求めてきたシヴァタの手をハルトは握り返した。
「ところで、マテルはどうなったんだ?あなた達に押し付ける形で別れてしまって、本当に申し訳なかった」
リーテンがマテルについて聞くと、いつの間にかハルトの横に立っていたコハルがあの後の出来事を話す。
「マテルちゃんがどうなったか、私たちにも分からないです。でも、無事に脱出できたと思います」
「それなら良かった。あれからどうなったのか、ずっと気掛かりだったの・・・」
「え?」
突然リーテンから吐かれた女性口調に戸惑うコハル。
対するリーテンは慌てながらも、誤魔化そうとしたが、そこにアスナが割り込んできた。
「大丈夫よリーテンさん。この人たちはあなたが何者でも、あなたの実力をしっかり見てくれるわ」
「・・・そうですね」
そう言うと、リーテンは被っていたメットを脱いだ。
その中からは、オレンジ色の髪をした少女の顔が現れた。
「改めて、リーテンです。よろしくお願いします」
先程までの低い声と違って、可愛らしい声でリーテンは喋った。
「お、女の子だったんだ・・・ごめん、男だと思ってた」
「すみません。全然気づきませんでした」
すっかり男だと思っていたハルトとコハルは、慌ててリーテンに謝った。
「謝らないでください。隠してたのは私ですし・・・私、VRMMOは始めてだったんですけど、他のゲームでもタンク役をしてたから、SAOでもタンク役で行こうと思ってたんです。けれども、女の子のタンクは信用できないって言われて、中々パーティーに入れてもらえなかったんです」
「ホント、性別なんて戦闘能力には何も関係ないのにね」
アスナが少し呆れたように言った。
そんなアスナの様子に苦笑いしながらも、リーテンは言葉を続ける。
「友達の力を借りて、何とか装備を整えた私は、ALSにスカウトされてからも、こうして性別を隠しているんです」
苦笑しながらも自身の経歴を説明し終えたリーテン。
すると、シヴァタが険しい表情でハルト達に向かって喋る。
「このことは誰にも言うなよ。もし、りっちゃんの秘密がバレたら、ALSに居られなくなるかもしれないからな」
低い声で念押しするシヴァタ。一方、ハルトとコハルはシヴァタから発せられたある言葉が気になった。
「「りっちゃん?」」
ハルトとコハルが首を傾げる中、シヴァタはしまったという表情をする。隣にいるリーテンも心なしか少し慌てている様子。
「二人共、こっち」
アスナが二人を少し離れた場所に誘導すると、リーテンとシヴァタに聞こえないよう小声で喋る。
「あの二人はね、そういう関係なのよ」
「あぁ、成程・・・」
「羨ましいですね・・・」
アスナからリーテンとシヴァタの秘密を聞いた二人は、温かい目でリーテンとシヴァタを見守った。
「おい!お前ら!なんだその目は!?絶対に誰にも言うなよ!」
シヴァタは未だにこちらを見守っている二人に対して、思いっきり叫んだ。
一方、リーテンの存在に気付いたクラインが、リーテンがシヴァタといい感じの雰囲気になっているのを見て、キリトに話しかける。
「なぁ、キリト。あの二人なんかいい感じなんだけど、もしかして・・・」
「あぁ、お前の言う通りだよ」
キリトが少し笑みを浮かべながら言うと、クラインは急に叫び出した。
「なんだよ!つまりリア充じゃねぇか!なんで、俺の周りにはリア充が集まるんだ!?」
「知らねぇよ。お前、ホントめんどくさいな・・・」
クラインが悔しそうに叫び、キリトが呆れたように言う。
そんな二人のやり取りを聞いてたリーテンとシヴァタは、顔を赤くしていた。
その様子を見ていたディアベルは、手を叩きながらハルト達に向かって喋る。
「よし、一通り助っ人の方も揃ったし、そろそろ・・・」
「待ってくれ。まだ、助っ人はいっぱいいるぞ」
キリトがそう言うと同時に、向こうから声が聞こえた。
「おーい、皆さん!」
「久しぶりであるな!戦友たちよ!」
そこに現れたのは、第二層ボス攻略以降、攻略組から外れたはずのネズハと「レジェンド・ブレイブス」の五人。いや、六人がこっちに向かってきた。
「久しぶり、ネズハ!・・・じゃなくて、ナーザ」
「ネズハでいいですよ。お久しぶりです、ハルトさん。また、一緒に戦えて嬉しいです」
互いに握手するハルトとネズハ。
握手をし終えたら、今度はオルランドの方を向く。
「オルランドさんもお久しぶりです。それと、今回のボス攻略に参加してくれてありがとうございます」
「なに、ハルト殿たちには恩がある。それを返しに来たまでである」
そう言うと、今度はディアベルの方を向き、右手を差し出す。
「今回のボス攻略。聞けば、貴殿が計画したと聞いている。微力ではあるが、力添え致す」
「感謝する。オルランドさん」
オルランドから差し出された手を握り返したディアベル。
そんなやり取りをしていると
「どうやら、間に合ったようだな」
「トウガ!・・・ん?そっち二人は・・・?」
聞き覚えのある声が聞こえて、振り向くとトウガを始めとする「紅の狼」の面々がいた。
だが、いつもと違って、ソウゴとコノハの他に見慣れない二人がいることにハルト達は疑問に思った。
「紹介がまだだったな。この二人は今まで戦いに慣れてなくて、ボス攻略には参加させてなかったが、大分形になったし、この状況だから戦力は少しでもあった方がいいと思って、参加させることにしたんだ」
トウガがそう言うと、見慣れない二人が前に出て喋る。
「よっ、初めまして!俺の名はカズヤだ!まぁ、一緒に頑張ろうぜ!」
カズヤがテンション高く自己紹介すると、今度は隣にいた他のメンバーより少し背が小さい少年が喋る。
「は、初めましてっす。お、俺の名前はレイスっす。他の皆さんと一歳年下だけど、精一杯頑張るっす!」
緊張気味ではあるが、しっかり自己紹介をするレイス。
そんな感じで、「紅の狼」の面々と話していると、またもや、聞き覚えのある声が聞こえた。
「なんだよ、もう結構集まってんじゃねぇか」
こちらも聞き覚えのある声だが、トウガと違って、二層のボス攻略以降、聞いていない口調が悪い声。
声が聞こえた方を振り向くと、第二層のボス攻略以降、一切姿を見ていない人物、ザントがいた。
こちらに近づくザントに、キリトが声を掛ける。
「久しぶりだな、ザント。この様子だと、カーソルはグリーンに戻ったようだな。おまけに、背中にやばそうな両手剣も担いでるし」
「久しぶりだなぁ。テメェからフラッグの事やボス攻略の話を聞いた時は、正気を疑ったが、この様子だと、どうやらマジ見てぇだな」
ザントは辺りを見渡しながらキリトに話しかけた。
一方、二人のやり取りを見ていたクラインがハルトに小さく呟く。
「おい、ハルト!あいつも攻略組なのか!?めちゃくちゃ悪人ずらだぞ!」
「ハハハ・・・大丈夫ですよ。見た目は悪人ですけど、いい人ですから・・・」
「おいゴラァ!!そこ聞こえてっぞ!!」
「「す、すいませんでした!!」」
ザントの怒り声にビビり、慌てて謝罪したハルトとクライン。その様子を周りは苦笑いしながら見ていた。
そんな中、ただ一人黙っていたアルゴが全員に話しかける。
「盛り上がっているところ悪いけど、早く出発しないとALSに追いつかれるゾ」
「そうだな。それじゃあ、一発頼むぜリーダー」
クラインの言葉にディアベルが頷くと、咳払いしながら喋る。
「まずは、ありがとう。こんな無茶な作戦に参加してくれて。相手は巨大ゴーレム。こんな少数の部隊で万全の体制とはいえない。それでも、目的を同じくして集まってくれた仲間たちとなら、必ず勝てる!ギルドフラッグを争いの火種にさせないために。今も下で待ってくれている大勢のプレイヤー達のために・・・」
ディアベルは辺りを見渡すと、大きく息を吸い、叫んだ。
「勝とうぜ!!」
『おぉっ!!』
全員がディアベルの叫びに応えた。
そして、今回限りの攻略組は、ボスが待ち構えている迷宮区へ突入した。
・再登場、ディアベル
この再登場のシーンを見て、思わず「うおーー!」と声を上げました。
・シヴァタ
プログレッシブのキャラ。SAOIFだと、大分後に登場しますが、この小説では、リーテンと共にボス攻略に参戦します。
・リーテンの正体
男かと思いきや、実は女だったと。ただ、所々に女性口調が入ってたから、プログレッシブ知らない人でも、初見時に女性だと気づいた人も少なくない。
・キリト&アスナ
二人の行動についてはプログレッシブ本編で
・「レジェンド・ブレイブス」
まさかの、五層で再登場。ネズハに加えて彼らもボス攻略に参戦します。
・カズヤ
オリキャラの一人。イメージは見た目は「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」のカザミのリアルの姿みたいな感じ。CVは小林裕介。豪快な性格だが、情に厚く「紅の狼」のメンバーや親しい人のことを大切に思っている。
・レイス
オリキャラの一人。イメージは「約束のネバーランド」のエマの性別を男にして、髪を黒くした感じ。CVは伊勢茉莉也。語尾に「っす」を付けており、他のメンバーより一つ年下で、幼馴染であると同時に弟分として可愛がられている。
メンバー:SAOIF主人公(ハルト)、コハル、キリト、アスナ、アルゴ、ディアベル、クライン、リーテン、シヴァタ、ザント、エギル軍団(四人)、「レジェンド・ブレイブス(六人)」、「紅の狼(五人)」計25人
うん、勝ったな。
次回、ボス攻略です。
原作やSAOIFよりも多い人数でどう戦うのか、お楽しみに。