ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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番外編です。
内容としてはキャラクエストの内容となっています。


迷子の黒猫と内気な木ノ葉

「ハッ!ハッ!ハッ!」

 

第五層《荒廃の遺跡群》。

今現在、このフィールドで一人の少女が走り回っていた。

立ち止まり、辺りにエネミーがいないことを確認すると少女、サチはその場に座り込んだ。

 

「どうしてこんなことに・・・」

 

座り込んだままサチは、弱々しく呟いた。

きっかけは、第五層がほとんど攻略されたと聞いたこと。

それを聞いた「月夜の黒猫団」は、探索してみようという話になり、第五層に来たのはいいが、第五層の薄暗い雰囲気にサチは慣れず、先を行く他の仲間たちの姿がだんだん見えなくなり、気付いたらサチ一人になっていた。

 

「とにかく、一旦落ち着こう・・・」

 

フィールドの端っこに座り、休憩しようと思ったサチだったが

 

「オォーーー・・・」

 

「ひっ!?」

 

いつの間にか、前方にゾンビ系のエネミーが立っていた。

突然現れたエネミーにサチは、槍を持つことも忘れて、震えていた。

 

「嫌・・・来ないで・・・」

 

必死に願うものの、エネミーはそんなサチの願いも虚しくどんどん近づいてき、遂に攻撃範囲内にまで迫ってきた。

 

「(ああ・・・私、ここで死ぬんだ・・・)」

 

己の死を覚悟し、虚ろな目で自身を攻撃しようとしているエネミーを見るサチ。

エネミーがサチに向かって、手を振り下ろしたその時

 

「オォ!?」

 

「・・・え?」

 

自身の前に立っていたエネミーが、突然驚きの声を上げ、体をポリゴン状に四散させた。

それと同時に、エネミーが立っていた場所に短剣を持った一人の男の子の姿があった。

その子は、自身と同じくらいの年齢っぽい感じで、穏やかな雰囲気に若干子供っぽさを感じるような少年だった。

未だに呆然としているサチに少年は、短剣を腰にある鞘に仕舞いサチの方に歩み寄ると

 

「あ、あのー・・・大丈夫・・・ですか?・・・」

 

少しおどおどしながら、サチに声を掛けた。

 

 

 

 

「紅の狼」は現在、五層のフィールドを攻略していた。

その最中、とあるクエストを受けて、そのクエストは各エネミーからドロップする三つのアイテムを集めるクエストだったが、それらのエネミーが別々の場所にいることが判明。

そこで、「紅の狼」はそれぞれ、トウガ・カズヤペア、ソウゴ・レイスペア、そして、コノハ一人の三組に分けてアイテムを集めることにした。

普段から戦い慣れているコノハは、特に苦戦することなく、アイテムを集め終えて、集合場所に戻ろうとしていたが、その途中、ゾンビ系のエネミーに襲われそうになっている少女を見つけた。

そして、その少女を助け、今に至る。

 

「あ、あのー・・・大丈夫・・・ですか?・・・」

 

元々コミュ障であり、普段からメンバー以外とは話慣れておらず知らない人、ましてや自分と同い年くらいの女子と話すことは、コノハにとって至難の業であった。

そんなコノハの内心を知らず、サチは

 

「は、はい・・・助けてくれてありがとうございます・・・」

 

コノハにお礼を言いながら、立ち上がった。

ある程度落ち着きを取り戻したサチは、コノハの顔を見る。

ショートヘアーの黒髪にどこか可愛らしさを感じる。そんな印象だった。

サチがそんな風に思っていると、コノハが話しかけた。

 

「突然すみません・・・あなたはどうしてこんなところにいたんですか?」

 

「あ、はい。実は・・・」

 

コノハの質問にサチは、ゆっくりと答え始める。

ギルドのみんなと一緒に来たけど、途中ではぐれてしまったこと。仲間たちが中々見つからず、一人フィールドを走り回っていたこと。

ある程度のことを話すとコノハは、「そう・・・」っと言いながら、顎に手を当てていたが

 

「そのギルドの人達と、連絡は取れているの?」

 

「ううん。メッセージをさっき送ったんだけど反応がないの・・・もしかしたら、みんなも同じように迷ってて、メッセージに気付いてないのかも」

 

下に俯きながら話していたサチだが、顔を上げてコノハの方を見ると

 

「あの・・・出会っていきなりで申し訳ないんですけど、私を転移門の近くまで送ってくれませんか?・・・その・・・私、あまり戦えなくて・・・このフィールドのモンスター、みんな幽霊ばっかりだから・・・怖くて・・・」

 

必死そうに頼むサチにコノハは、顎に手を当てながら考える。

自分も今、待ち合わせの最中だ。長くなれば、みんな心配するだろう。

けれども、困っている人を見過ごすことはできないし、先程の光景を見ていて、如何に彼女が戦い慣れておらず、五層のエネミーが苦手であることが分かる。

もし、彼女の頼みを断れば、彼女はまた危険な目に合うかもしれない。

トウガ達には遅くなるっとメッセージを送ろう。そう考えたコノハはサチの方を見て、笑みを浮かべながら喋り始める。

 

「いいですよ。少し待ってください。今、仲間たちにメッセージを送りますから」

 

コノハの言葉にサチが笑顔になる中、コノハはメニューを開いて、トウガ達にメッセージを送った。

メッセージを送り終えると、コノハはサチの方を向いて

 

「それじゃあ、行きましょう。僕はコノハ。えぇっと・・・」

 

「私はサチ。よろしくね」

 

 

 

 

「それじゃあ、コノハもハルトとコハルの友達なの!?」

 

「う、うん・・・一緒にボス攻略にも参加したりしているよ」

 

いつの間にか、敬語じゃなくなったサチの言葉にコノハは、おどおどしながらも答える。

 

「そっか・・・二人は凄いね。今でも必死に戦っていて・・・私もみんなの役に立ちたいっと思っても、怖くて体が動かない時があるんだ・・・」

 

弱々しく喋りながらサチは、自身のことを語り始める。

 

「私のギルド「月夜の黒猫団」って言って、同じ高校のパソコン研究会のメンバーで結成されたギルドなんだけど、みんな攻略組に参加したいと思っていて、必死に強くなろうとしているんだ・・・でも、私、怖がりだから、いつもみんなの足を引っ張ってしまうんだ・・・」

 

「・・・サチさんの気持ち、少し分かる気がする。僕も同じだったから・・・」

 

コノハの言葉にサチは、驚きながらコノハの方を向いた。

 

「コノハも昔は戦えなかったの?」

 

「うん、デスゲームが始まった時、最初は現実を受け入れられなくて、ずっと泣いていたよ・・・しばらくして、みんなこの世界を出ようと武器を取り始めて、僕も少しでもみんなの役に立とうとフィールドに出たんだけど、もし、この世界で死んだら現実でも死ぬっと思うと中々戦う勇気が出なくて・・・」

 

どこか悲哀そうな表情で語るコノハだが、「でも」っと言いながら

 

「そんな時、僕たちのリーダー、トウガ君が言ったんだ。「戦えなくてもいい。けど、この世界で後悔するようなことはしないでくれ。今、俺たちに必要なのは戦う勇気じゃない、この世界に立ち向かう勇気だ」って」

 

「立ち向かう勇気・・・」

 

「そう、立ち向かう勇気。その以来、エネミーを前にしても自然に体が動くようになったんだ。もちろん、今でも怖いと思うことはあるよ。でも、何もしないでいつの間にかみんながいなくなったしまう方がもっと怖い。そう思うと、勇気が出てくるんだ。この世界に立ち向かおう、この世界にだけは負けたくないって」

 

コノハの言葉の一つ一つに、彼のこの世界での決意をサチは感じた。

 

「強いねコノハは・・・小さい頃に通学中に毎朝会う野良猫がいたの。人懐っこくて、毎日なでなでしてたんだけど、ある日、急にいなくなったの。後から聞いたら、交通事故にあって天国に行っちゃったんだ・・・」

 

自身の過去を語り始めるサチをコノハは、黙って見た。

 

「当たり前だけど、その猫とはもう二度と会えなくて、いなくなるってこういう事なのかな、って思ったんだ・・・だから、さっきコノハに助けてもらうまで、私もあの猫みたいにいなくなっちゃうのかな、って思っちゃった・・・」

 

下に俯きながら話していたサチだが、「でもね」っと言いながら上を見上げる。

 

「コノハに助けてもらった時、いなくならなくて良かったって、すっごく安心したんだ」

 

「サチさん・・・」

 

サチの笑顔を見たコノハは、改めて助けることができた良かったっと安堵した。

 

「それに、声を掛けてくれた時のコノハは、神様みたいに見えたんだよ!」

 

「・・・大袈裟だよ・・・」

 

顔を赤くしながら、どこか照れくさそうに呟いたコノハだったが

 

「!?下がってサチさん!!」

 

「きゃっ!!も、モンスター・・・」

 

突如サチの後ろに現れたエネミーに気が付き、慌ててサチに向かってきた攻撃を防いだ。

辺りを見渡してみると、いつの間にか二人の周りにはいくつかエネミーがいた。

 

「戦おう!サチさん!」

 

コノハが短剣を持ちながらサチに呼びかけるが、サチは背中にある槍を持たず

 

「だ、ダメ・・・体が・・・動かないの・・・怖くて・・・」

 

震えながら、その場に突っ立っていた。

そんなサチの様子にコノハは大声で叫んだ。

 

「大丈夫!あなたは絶対に生き残れる!!言いましたよね!大切なのは戦う勇気じゃない、立ち向かう勇気だって。だから!どんなに怖くても、諦めることはしないでください!!」

 

「!!」

 

コノハの言葉を聞いたサチは、未だに震えていたが手に槍を持ち

 

「うん、怖がってばかりじゃダメだよね。私、頑張るね。そして、絶対に生きてみんなのところに帰ってみせるよ!」

 

力強く喋りながら、槍を構えた。

サチの決意を聞いたコノハは笑みを浮かべると

 

「それじゃあ、僕が前に出て、敵にヘイトを向けるので、その隙に槍で攻撃してください」

 

「う、うん!」

 

サチに指示を出しながら、前方にいるゾンビ系のエネミーに向かって走り出すと

 

「やぁーーー!」

 

<スライス>で攻撃をした。

ゾンビは攻撃されたことで、攻撃した人物であるコノハの方を見たが

 

「スイッチ、サチさん!」

 

「こ、これで!」

 

ゾンビの後ろに近づいてきたサチが<ウィンド・シャフト>で攻撃をするとゾンビは、そのままポリゴン状に四散した。

 

「ナイスです、サチさん!この調子で行きましょう!」

 

「うん、任せて!」

 

そんな感じで二人は、連携していきながら次々とエネミーを倒していったがエネミーの数が多くて、中々終わりが見えないでいた。

そして、いつの間にか、二人の距離がたいぶ離れてしまった時

 

「オォーーー・・・」

 

「ひっ!?」

 

一体のエネミーがサチの方に近づいてきた。

 

「しまった、サチさん!」

 

コノハが慌てて向かおうとしたが、周りのエネミーに阻まれて来ることができない。

 

「ああ・・・ああぁ・・・」

 

先程と同じように、エネミーを前に震えるサチ。

このまま何もできずに、いなくなってしまうっと思ったその時、ふと、コノハの言葉を思い出した。

 

’大切なのは戦う勇気じゃない。立ち向かう勇気’

 

「はっ!(そうだ・・・私はこの世界に来てからずっと逃げていた。でも、ここで立ち向かわないと、私は前に進めない。SAOとも向き合えない・・・だから・・・)」

 

エネミーがサチに向かって攻撃したその時、サチは持っていた槍でモーションをし

 

「(絶対に逃げない!)やぁーーー!」

 

<コンヴァージング・スタブ>でエネミーに向かって攻撃した。

サチに攻撃が届く前に、強力なソードスキルの一撃を食らったエネミーは、後ろに跳び

 

「はぁ!」

 

その後ろから、コノハに短剣で斬られ、四散した。

エネミーが倒したのを確認したコノハは、そのままサチの手を掴み

 

「一気に突破します!こっちです!」

 

「う、うん!」

 

包囲網を突破し、転移門まで走った。

 

 

 

 

「なんとか、なりましたね・・・」

 

転移門の近くにたどり着いたコノハは、疲れたように話し始める。

一方、サチは申し訳そうな顔をしながら

 

「ごめんなさい、足を引っ張っちゃって・・・」

 

「そんなことですよ。スイッチのタイミングを合わせてくれたし、隙をついて攻撃してくれたおかげで、とても助かりました」

 

そんな感じでコノハはサチをフォローすると、サチは「そ、そうかな・・・」っとどこか嬉しそうに喋った。

 

「それに、最後の攻撃、中々良かったです」

 

「・・・実は、最初はいなくなるんじゃないかって思って動けなかったんだ。でも、コノハの言葉を思い出して、きちんと立ち向かわないと変われない、逃げちゃだめだって思って、一心不乱に攻撃したら、上手くいって良かったよ。ありがとう、コノハ。私、少しはこの世界に立ち向かう勇気を持てるようになったよ」

 

「・・・お役に立てて何よりです、サチさん」

 

お礼を言うサチに、笑みを浮かべながら返したコノハだったが

 

「ところで、別に敬語で喋らなくていいよ。後、名前もサチって呼んで欲しいな・・・」

 

「えぇ!?」

 

突然のサチの頼みにコノハは、慌てながら首を横に振る。

 

「だ、ダメですよ!サチさんは高校生で、僕はまだ中学生ですよ。いくらゲームの中とはいえ、先輩にため口はできませんよ!」

 

「大丈夫だよ。年もそんなに変わらないし、コノハ、すっごく頼りになるから」

 

頼りになるっと言う言葉を聞いて、少し顔を赤くしたコノハ

今まで年上の女子にそんなことを言われたことはなかったため、恥ずかしかった。

そんなコノハの様子にサチは、困ったような表情で再度頼み込む。

 

「ダメ、かな?」

 

「わ、分かったよ・・・」

 

観念したコノハは、「ふぅー」と深呼吸をすると

 

「サチ・・・」

 

そっとサチの名前を呼んだ。

何とも言えない空気が二人の間に広がったが

 

「ご、ごめん・・・やっぱり、恥ずかしい・・・」

 

「え!?い、いや・・・私の方こそ無理言ってごめんなさい・・・」

 

どこか羞恥心に見舞われたコノハは、顔を赤くしながら謝った。

対するサチも自分から呼び捨てにするように言っておいて、何故か顔を赤くしながら謝ったが、やがて、二人は互いの赤くなっている顔を見合わせると

 

「「フフフッ!!」」

 

互いに笑い合った。

 

「ねぇ、コノハ」

 

互いの笑いが止んだところでふと、サチが話しかけてきた。

 

「あの時コノハが言ってくれたよね。「大切なのは戦う勇気じゃない。立ち向かう勇気」って、それを聞いて、絶対に生き残ってみせるって思ったら、自然と勇気が出たんだ」

 

そう言いながら、サチは笑顔になり

 

「助けてくれてありがとう、コノハ」

 

コノハに向かってお礼を言うと、転移門に向かって去っていった。

やがて、サチの姿が見えなくなり、薄暗い光景だけが残ったが

 

「・・・僕も帰ろう」

 

とりあえず、今日のことはみんなには内緒にしよう。

そう思いながら、コノハは今頃みんなが待っているであろう場所に戻るのであった。




・実は高校生のサチ
本編でもキリトより年上という事実。

・<スライス>
短剣の星3スキル。中々の強さで、星4が揃ってなければ、使うこともある。

・<ウィンド・シャフト>
槍の星1スキル。星1ということもあって、簡単に手に入る。

・呼び捨てで呼んで欲しいサチ
まぁ、キリトも呼び捨てで呼んでたし、サチがそんな風に思っても違和感ないよね。


SAO_UW15話を見て思ったこと
・お前ら結婚しろ
・サトライザーの変態っぷりパネェ・・・
・韓国の人ガンバ!


番外編何とか書き終えました。
こんな感じで、これからも番外編はイベントストーリー、或いは、オリキャラと原作キャラの話を書いていきたいと思います。
次回は七層編です。
あの吟遊詩人が登場します。お楽しみに。
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