ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
今回の話ではあるキャラがキレます。
※次の番外編はどのストーリーが見たいのか、アンケートを取っていますので、みなさん、遠慮しないでどんどん答えてください。
「紅の狼」の面々と再会したハルトたちは、彼らと共に七層のエルフクエストを行った。
激闘の末、何とかクリアできたハルト達は、キズメルから七層のボスについて聞いた。
七層のボスは悪意の化身たる妖精で、ダメージを与えても徐々に回復してしまう自動回復を持っていて、倒すためには、回復する隙を与えない連携攻撃。言わば、攻略組が協力し合って、ダメージを与え続けないといけないという。
それを聞いて、今の攻略組の現状が良くないことを知っているハルト達は顔をしかめたが、キズメルは更に続けた。
そのボスはダメージを与え続けると、ダメージが一切受けなくなる状態になり、倒すためには、無敵状態になる一瞬の隙を付いて《滅却の結晶》というアイテムを使って、無敵状態になるのを阻止するとのこと。
そのことを説明しながらキズメルは、《滅却の結晶》をハルトに渡すと一足先に八層へ向かっていった。
ちなみに《探求者の証》というアイテムは、道中の《地下迷宮》で拾った石のことであり、高く売れるとのことで、ハルト達はそれを売って多額のコルを手に入れた。最もその石は、少し特徴的であったが・・・
そんなこんなで今現在、ハルト達はオークション会場へと向かっていた。
「もう少しでオークションが開催させる圏内に着くようだな」
七層のマップを見ながらそう呟くトウガ。
すると、圏内の入り口付近にエギル達がこちらを待っているかのように立っていた。
「よう、お疲れさん。どうやら、上手くいったみたいだな。それにお前らまでいたとは」
「久しぶりだなエギル。事情はハルトから聞いている。オークションのことも俺たちの知らない所で攻略組が暴走していることもな」
トウガの言葉に、攻略組の主力ギルドに所属しているリーテンとシヴァタは、顔をしかめた。
先程のザントの言葉もあってか、二人共、今の自分たちのギルドの状況にかなり思い悩んでいた。
「・・・幻滅したか?攻略組に」
「ああ、そうだな。他人のアイテムを奪った挙句、揉め事を起こそうとしたり、オークションを勝ち取るために強盗紛いのことまでしていたからな。幻滅しない方がおかしいだろ」
シヴァタの質問に呆れたように返すトウガ。
そんなトウガの様子に、二人は顔を俯いていたが
「だからこそ、これ以上攻略組を暴走させないために、このオークション、必ず勝つ。そうだろ?」
「!・・・ああ、そうだな」
「必ず勝ちましょう」
トウガの勝つという思いに応えた二人。
その様子を見ていたエギルは、咳払いするとハルト達に向けて喋り始める。
「よし、それじゃあ、早速オークション会場に行こう・・・と言いてぇが、一つ問題が発生したんだ」
「問題?」
コハルが疑問の声を出す中、エギルは言葉を続ける。
「お前らがやったエルフクエスト。あいつらもやっていたみたいなんだが、人海戦術で数をこなしていたらしいんだ。だから、今の俺たちの資金で戦えるかどうか・・・」
「でも、エルフクエストを進めているプレイヤーなら、報酬はずっといいものになるってリュールさんが言ってましたよね?」
コハルがそう言う中、トウガが何か思い出したかのように喋る。
「そのいいものってもしかして、《滅却の結晶》のことじゃないか?」
「なんだ?そのアイテムは?」
自身の知らないアイテムに疑問の声を出したエギルに、ハルトは《滅却の結晶》について説明した。
「マジかよ・・・こりぁインゴットどころの騒ぎじゃねぇぞ・・・」
「ボスに影響するアイテムとなると、進行度にバラつきがあるキャンペーンクエストだけの報酬だとは考えられませんね」
「同感だ。むしろ、キャンペーンクエストにかかりきりで、ボス攻略には手つかずのプレイヤー向けのフォローになる報酬だったんじゃないか?」
《滅却の結晶》について、エギル、リーテン、シヴァタの三人が様々な考察をする中、コハルが一つ提案した。
「あの・・・この《滅却の結晶》を《精霊錫》の代金にできないでしょうか?攻略会議に参加する人たちが集まっているならボス攻略に必須のアイテムは大きな切り札に「やめておいた方がいいと思う」・・・え?」
コハルの提案は、ハルトによって遮られた。
「ハルトの言う通りだ。そもそもキリトが攻略組から巻き上げられた《精霊錫》ってアイテムを取り返すためにオークションに参加するんだろ?なのに、ここでボス攻略に必要なアイテムを出してみろ。キリトの二の前になるだけだぞ」
ハルトに続いて、トウガもフォローするかのように反対する。
二人の反対の言葉を聞いて、コハルは納得したかのように頷いた。
「そういうことで、私たちは今あるコルだけで戦いましょう」
「はい!あ、忘れてました。はい、エギルさん。《探求者の証》のコルです」
「おう、ありがとよ」
コハルから大量のコルを受け取ったエギル。更に
「「紅の狼」からも出そう。《探求者の証》のコル。それと、少ないがこれも」
そう言いながら、トウガは《探求者の証》のコルに、いくつかのコルもエギルに渡した。
「お、おう・・・ありがてぇけどよ、お前らのギルドは・・・」
「問題ない。エルフクエストで、いくらかのコルが手に入ったし、ギルドの資金面に関しての心配事は無用だ」
トウガの言葉を聞いて、エギルは「ありがとよ」と言いながら、コルを受け取ると
「そろそろ始まる頃だ。必ず勝つぞ!」
『おーーー!!』
気合を入れながら、オークション会場へ向かった。
会場は既に人でいっぱいであった。
みな、オークションに気合を入れているのか、真剣な表情でオークションの開催を待っていた。
「凄い熱気だね・・・何十人くらいいるんだ?」
「ALSとDKBの主力メンバーはみんな集合してるみたいですね」
ハルトとリーテンが会場の雰囲気について喋る。
すると、キバオウが正面に立ち、会場全体に向けて
「このオークションでギルドが得た利益は一コル残さずボス攻略に役立てること約束する。つまり!高値が付けば付くほどクリアが早まるっちゅうことや。全員!遠慮せずバンバン入礼してくれ!」
『オオオォーーーー!!!』
キバオウの言葉に会場中が歓声で響き渡った。
「あそこまでいくと清々しいな」
「最初は手に入れにくい素材やレア装備などが出品されて、《精霊錫》は恐らく最後に出すでしょう」
「全ては最後の宝を輝かせるための前座。場が盛り上がったところで満を持して登場。というわけだね」
『!?』
最後に聞こえた声に思わず反応し、振り向くとリュールがいた。
「・・・知り合いか?」
「まあね、吟遊詩人らしいよ・・・何でいるの?」
リュールと面識がないトウガに軽く説明すると、ハルトは攻略組でないリュールがここにいる理由を問う。
「それは勿論、面白そうな集まりは見ておきたいからね」
「面白そうって・・・攻略会議も見学するつもり?」
「そうさせてもらうよ。僕の歌い継ぐ物語の芽吹きを見逃してしまわないようにね」
ハルトの問いに、どこかギザな感じで答えるリュール。
そんなリュールの態度が気に入らなかったのか、ソウゴが苛立った様子で話しかける。
「おい、吟遊詩人。攻略会議に参加するつもりなら、そんなふざけた考えで参加するのは、止めたほうがいいぜ。ただでさえ、今の攻略組は危ないところがあるしな」
「無論、僕の考えが理解できずに立ち去れって言われたら、速やかに立ち去るよ。何せ、今の僕じゃ舞台に上がることはできないからね」
「要は雑魚なだけじゃねか」
ソウゴの忠告に相変わらずキザな感じで答えていたリュールだが、新たに聞こえた声により遮られた。
声が聞こえた方に振り向くと、先に会場に入っていたザントがいた。
いきなり、雑魚と言わせて、流石のリュールも顔をしかめながら話しかける。
「君はもう少し言葉を選んでくれないかな。流石に傷つくよ」
「事実だろうが。どんなにクセェ言葉で語ったところで、てめえが隠れることしか能のねぇ雑魚には変わりねぇだろ」
「・・・どうやら、君とは仲良くできそうにないね」
「ケッ、俺は弱ぇ奴には興味ねぇよ」
それを最後に互いに顔を合わせず、オークションに目を向けるザントとリュール。
その様子にハルト達は、ため息を吐きながらオークションを見守るのであった。
オークションは順調に進み、大いに盛り上がったところで、遂に最後の商品が登場した。
「泣いても笑ってもこれで最後!エルフの匠が錬成した最高級素材。《精霊錫》です!」
司会の言葉に場は更に盛り上がる。
「それでは、200コルからスタートします!」
それを筆頭に次々と金額が出されていく。金額は徐々に高くなっていき遂には、10万をも超えてきた。
「どんどん高くなっていくよ・・・」
「大丈夫だ。・・・よし、今だ!」
コハルが心配の声を上げる中、エギルは状況を見極めており、女性プレイヤーが20万を出したところで、名乗り出た。
「22万!」
「2、23万!」
「25万!」
「くっ!・・・ごめん、みんな・・・」
エギルが出した金額に女性プレイヤーが折れたが
「まだだ!26万!」
新たに声を上げたALSの男が声を上げる。更にDKBの男も負けじと金額を出してきた。
未だ続く接戦を見届けている中、コハルがリーテンに質問する。
「リーテンさん。どれくらい集まったんですか?」
「44万弱ですね・・・元々の手持ちとみなさんが稼いでくれたお金を合わせて、余裕ができると思ってたんですけど・・・」
そう言いながら、不安そうな表情でオークションの様子を見守るリーテン。
すると、シヴァタがリーテンの隣に立ち
「大丈夫だよりっちゃん。あれだけ苦労したんだから・・・」
「シヴァ・・・うん、そうだね」
シヴァタの慰めの言葉に少し笑顔になったリーテンは、改めて、オークションへ目を向けた。
「40万!」
「41万!」
そんな中、オークションは遂に40万まで到達していた。
未だに粘り続けるDKBの男に負けじと金額を出していくエギルであったが
「負けるかよ!45万!」
ALSの男が新たに出した金額に二人の顔が険しくなった。
「なっ!?」
「そんな!・・・」
エギルが持っている金額が44万弱と聞いていたハルトとコハルが声を上げる。
他のメンバーも驚きと悔しさの表情へとなっていた。
「4、45万です。他にいませんか?」
司会が周りを見渡しながら問うが、誰も手を上げる者がいない。
その様子を見て、ALSの男が笑みを浮かべ、勝ったと思い込んだその時
「バーカ。まだ、終わってねぇんだよ」
ザントが笑みを浮かべながら、誰にも聞こえないよう小声で呟き、その隣で
「50万!」
新たにフードを被った女性。アスナが声を上げた。
「ハアッ!?」
「私は50万から始めるけど・・・まだ、やるの?」
驚きの声を上げるALSの男に、アスナは容赦なく問いかける。
「くっ・・・降参だ・・・」
50万の大金を出されて、ALSの男は遂に降参した。
「5、50万!50万出ました!他にいませんか!?・・・では、そちらの女性が落札です!」
50万という大金で落札されたことで、場は一気に盛り上がった。
そんな中、ハルト達は50万という大金を持っていたアスナに驚いたと同時に、どうやって、あんなにもの大金を手に入れたことに疑問に思っていたが
「それでは、これでオークションを終了します。2時間後、ここでボス攻略会場が行われますので、ボス攻略に参加する方はここに集まってください」
司会から終了のお知らせが聞こえたので、攻略会議までの間に問いだそうと決め込むハルト達であった。
「アスナ!びっくりしたよ。50万なんて大金、よく出せたね」
「フフフ、アルゴさんからオークションの事を聞いて、あっちこっち走り回って集めたのよ」
攻略会議が始まる間、アスナの下に向かったハルト達。
コハルが上機嫌に質問するのに対して、ごく普通に返したアスナ。
「流石です!キリトさんのパートナーとして負けられない戦いだったんですね!」
「・・・別にキリト君のためじゃないわ」
上機嫌に喋るリーテンに、真剣な表情で返すアスナ。
「私はただ、あの時何もできなかった自分にけじめを付けただけ。これで誰も文句ないでしょ」
「・・・そうだな。アスナ、お前は正々堂々と戦って、そして勝った。それがお前の事実だ」
アスナの決意に笑みを浮かべながら返したトウガ。
その横でエギルが心配そうな表情で問いだす。
「しかし、50万ていうことは、ほとんどの財産が消えちまったんじゃねぇのか?」
「それなら大丈夫よ。ザントさんが20万くらい出してくれたから、まだまだ余裕よ」
「何!?ザントだと!?」
自身にコルを渡したはずのザントが、アスナにもコルを渡していた事実に驚愕するエギル。
そんなエギルを他所にザントは、笑みを浮かべながら
「お前らと別れた後、アスナと会ってな。しかも、コルの所持数がお前らよりも遥かに多かったから、少しでも勝率を上げとくために、クエストやらエネミーをぶっ倒して手に入れたコルを、お前らより少し多く渡しただけだ」
「何が少し多くだ!5万だけって、どうも少ねぇなと思ってたら!」
ザントの別れた後の経緯を聞いて、エギルはすっかり怒り心頭であった。
そんなエギルを苦笑いしながら見るハルト達であった。
「とりあえず、オークションも無事に終わったし、後はフロアボスだけね」
「ボス攻略に参加するんだね!アスナがいたら百人力だよ!」
「安心したよ。麗しのフェンサーを欠けた戦いは華やかさが足りないからね」
「え?・・・」
リュールがこちらに寄ってきながら話しかける。
リュールを知らないアスナは、知らない人がいきなり自身に声を掛けたことに戸惑っていたが、それ以外はどこか迷惑そうな表情でリュールを見る。
「フロアボスと剣を交えることはできないが、君たちの旅の無事を祈っているよ。それじゃあ、またね」
それだけ言うと、リュールは去っていった。
「今の人・・・誰?」
「ただの雑魚だ。忘れておけ」
「気にしない方がいいよ」
「・・・よく分からないけど、あの人とは仲良くなりたくはないわ」
アスナの質問に軽い感じで返すザントとハルト。
アスナもいきなりキザなセリフで話しかけられたからか、印象は良くなかった。
その後、アスナが競り落とした《精霊錫》を、エギルが20万でレンタルさせて欲しいと頼んだり、外に出たハルトとコハルにキリトがクエストの手伝いをして欲しいと頼み、それを引き受けてフィールドで狩りをしたりしながら、あっという間に2時間が過ぎた。
「なるほどな。ボスには再生能力があるから、攻略組が連携して絶え間なく、攻撃を浴びせる必要があるっちゅうわけか」
攻略会議が始めり、エルフクエストで手に入れたボスの情報をキバオウに話すと、納得したかのように頷いた。
ハルトの隣でコハルも更なるボスの情報について説明する。
「それと、ボスに有効な消費アイテムを使うタイミングも、連携が重要になると思います」
「その《滅却の結晶》ちゅうアイテムはジブンらしか持ってないんか?」
キバオウの質問にアスナが答える。
「私とハルト君の二つしかないみたいね。一つでもあれば有効だけど、スペアがあると思ってくれたらいいわ」
「でも、無駄遣いはできない」
「ええ、タイミングは慎重に見極めましょう」
「なら、話は簡単やな。レイドパーティーを率いる司令塔を立てて、全員がその指示に合わせて動けばいいんやな」
アスナとハルトの話を聞いていたキバオウが、ボス攻略の方針を決めた。
すると、リンドがキバオウに近づいてきて
「キバオウさん、意見をいいか?司令塔の役目は俺たちDKBに一任させて欲しい」
「ほう?」
リンドの発言に場が一気にざわつき始める。
そんな中、キバオウはリンドに司令塔を一任させて欲しい理由を聞く。
「理由を言ってみぃ。この場にいる全員を納得させられる根拠があるんやったらな」
「DKBとALSは今や、どちらもボス攻略に欠かせない二大ギルドに成長した。それは、今、この場にいる人たちの共通の認識でもあるはずだ」
リンドの言葉にキバオウは頷きながら、顔で続きを言うよう施す。
「攻略組が二つに別れて以降、ボス攻略で犠牲者を出さずに済んだのは、紛れもなく俺たち攻略組の実力があってこそだ。けど、危ない場面もいくつかあった。それは、俺たちDKBとALSにの間に信頼関係がなかったからだと思っている。二人のリーダーがいる状態で一丸となって戦う。これの難しさはキバオウさん、あんたも実際に感じたはずだ」
「・・・否定はできへんが、ジブンの腹の底は読めたわ・・・ここでDKBが将来的にALSを吸収合併できるかどうか試しておこうちゅうことやろ?」
キバオウの問いに、リンドは否定することなく頷いた。
五層でキリトがギルドフラッグを攻略組に渡すために出した条件の一つが二つのギルドの合併だ。
リンドはここでALSをDKBに吸収合併させて、将来、強くなるであろうボスに備えて、攻略組の戦力を上げていく算段だろう。
「これから先、攻略はもっと厳しくなっていくはずだ。今回みたいに絶え間ない連携が必要なボスを相手にするなら、一人のリーダーが大型ギルドを指示しながら挑んだ方が意思統一が取れやすくて倒しやすいんだ。頼む、同じ攻略組の仲間であるALSを除け者にするようなことはしたくない。今回はこっちの指示に従って欲しい」
「・・・リンドはんの言っていることは理解できたわ・・・けどな、それやったら、ウチが指令を出しても同じちゃうんか?」
「ぐっ」
懇願するリンドを容赦なく突き返したキバオウだったが
「・・・五層で俺たちを出し抜いて、ギルドフラッグを手に入れようとしたあんたがそれを言うのか?」
リンドが侮蔑の眼差しで返し、それを遠くから見ていたザントは呆れたように頭に手を当てた。
ただでさえ、雰囲気が良くないというのに、ここでそんな発言をしてしまえば
「なんだと!?・・・キバオウさん!こいつの言うことなんか聞く必要ないっすよ!さっき《精霊錫》競り落としたビーターの連れだって、一人で50万なんて大金を用意できるはずがない!きっと、DKBの連中と繋がっていたに違いないっす!」
「なにを言っているのよ!それこそ、そっちだって、キバオウがビーターとコソコソ話していたのを私、見てたわよ!きっと、うちを乗っ取ろうとする算段を考えてたに違いないわ!」
「そんなん根も葉もない言いがかりや!」
案の定、揉めることとなってしまった。
「そんな・・・そんなのだめだよ・・・」
「どうしようハルト・・・とてもボス戦にいける雰囲気じゃ・・・」
ハルトは揉めてしまった攻略組をどうにか落ち着かせようと考えた。
攻略会議で揉めることは、今回に限ったことじゃない。今まではボス攻略会議のたびに毎回、どちらかが主導権を握るかで揉めて、最終的にキバオウとリンドがそれぞれのギルドを指示していきながら、ボスを倒してきた。
しかし、今回は今までとは訳が違う。
絶え間ない連携が必要という条件の中、攻略中に揉めたりしたら、攻略は絶対に失敗する。
どうにかして、この状況を何とかしなければならない。と考えている中、一人のプレイヤーが前に出た。
「発言いいか?」
先程まで言い合いをしていたプレイヤー達は一斉に、声を上げた人物、トウガの方を見た。
「そんなに連携が必要だというのなら、今回のボス攻略はALSとDKB、どちらのギルドにも所属してない俺たちだけで行かせてもらう。今のお前らを行かせたところで無駄死にするだけだ」
ボス攻略には二つのギルドに所属していない者たちだけで行く。攻略組にとって、馬鹿げている発言を真剣な表情で発言したトウガ
当然、そんな提案を攻略組が認めるはずもなく
「何言ってんだお前。さっきまで話、聞いていなかったのか?」
「ホントッ有り得ないわ。所詮は攻略組に属していない、攻略する気のない人間の発言ね」
「・・・」
先程までの言い争いが嘘のようにALSとDKBのプレイヤーはトウガを罵倒し始めた。
トウガは黙って聞いているが、罵倒が止むことはない。
「何も分かっていないみたいだから教えてやるよ。いいか、今回のボスは絶え間ない連携が必要なんだ」
「そうよ。連携が必要だって言うのに、攻略する気のない人間を集めただけで、連携が取れるわけないじゃないの?」
「何だったら・・・!?」
「ひっ!?」
トウガを罵倒し続けていたプレイヤー達が急に言葉を止めた。なぜなら
「何も分かっていないのはお前らの方だろうが・・・」
黙って聞いていたトウガが、先程までと違って、物凄い怒気を含んでいたからだ。
そのトウガの様子に周りのプレイヤー達は圧倒されていた。
少なくともこんな圧力。とてもではないが、子供が出せるものではない。
「まずはALSのお前。先程までのお前の発言を聞いていたが、よくもまあ、その程度の思考でボス攻略に参加しようと思ったな」
「な、何!?」
「そして、DKBのお前。何故、二つギルドに所属していない俺たちだけでは大した連携が取れないと思ったんだ?」
「そ、そんなの決まっているじゃない!どちらにも所属していないということは、今までろくにボス攻略に参加していない弱いプレイヤーていうこと・・・」
「言っておくが、俺たち「紅の狼」は一層からほとんどのボス攻略に参加しているし、こっちのハルトとコハル、それにアスナは今のところ全ての階層のボスと戦っている。だから、互いの戦闘スタイルは知り尽くしているし、何回かパーティーを組んで戦ったこともある。これを聞いてなお、俺たちが弱いと思えるのか?」
「そ、それは・・・」
トウガの言葉を聞いて、言葉に詰まる女性。
この女性プレイヤーは今回が初のボス攻略であるため、あまり噂が流れていない「紅の狼」やエギルのことは知らなかったし、ハルトとコハル、アスナのことは知っていても、噂でしか聞いたことがなかったため、あまり認識がなく、何回もボス攻略に参加しいているという事実を聞いて驚いていた。
そんな女性の様子に、男が煽るように話しかける。
「そんなことも知らないとは、所詮口先だけのギルドだな」
「っ!?な、なによ!そっちこそ、有利になったからって偉そうにして!」
「なんだと!?」
「なによ!?」
また、喧嘩をし始めた男と女。
そんな二人の様子にトウガはとうとう・・・
「いい加減にしやがれ!ゴミ虫共!」
キレ始めて、喧嘩をしている二人に暴言を吐いた。
先程までと違って口調が明らかに変わったトウガに間近で聞いた二人は「ひっ」と声を上げ、周りのプレイヤー達もいつもと様子が違うトウガに困惑、或いはビビッていた。
「てめえらは一体、何していやがる!!ここは攻略会議だぞ!それなのにくだらねぇことで喧嘩しやがって!攻略する気がないなら帰りやがれ!!」
「な、何なのあんた!?いきなり出てきて・・・」
「これは、ALSとDKBの問題だ。部外者はひっこ「ざけんじぁねぇ!!」ひっ!」
何とか言い返してきた二人だったが、トウガの乱雑な言葉に、またもやビビッてしまう。
「ALS、DKBの問題だぁ?攻略組全体の問題だろうが!俺らが今やるべきことは、ALS、DKBのどちらが指揮を執るかじゃなく、攻略組の誰が全体の指揮を執って、その上で、どうボスを倒すのか決めるために会議をしてるんだろうが!特にALSのお前!さっきも言ったが、そんな欲やくだらねぇ対立心や嫉妬にまみれた思考でよくもまあ、会議に参加しようと思ったな!ボス攻略は遊びじゃねぇんだよ!!」
完全にビビッてしまった二人に、トウガは机をバンッ!と叩きながら続ける。
「そもそも!お前らのやり方に反対してもなお、俺たちがボス攻略に参加していることの意味をてめえらは考えたことあんのかよ!」
「し、知らないわよ・・・」
「決まってんだろ!俺らの後ろには戦いたくても戦えないプレイヤーが何千人もいる!そんな人たちのために少しでも協力し合って、このSAOをクリアすることが、戦うことができる俺たち攻略組の義務だろうが!!」
トウガの言葉にこの場にいるALS、DKBの全員がハッとした表情になる。
彼らは思い出したのだろう。このゲームに閉じ込められているのは、自分たちだけではないということを。
「俺たちはそんな人たちの思いを背負って戦っているってのに、てめえらはなんだ!くだらねぇことで毎回毎回揉めやがって!挙句の果てに他人のアイテムを奪ったり、利益のために他人を傷つけることばっかりしやがって!ふざけんじゃねぇ!!そんなてめえらが攻略組なんて名乗ってんじゃねぇよ!!」
トウガが「ハァ、ハァ」息を切らす中、攻略組はトウガの気迫に圧倒されて、何も言えずにいた。
怒りを全てぶちまけたことで、ある程度冷静になったトウガは言葉を続ける。
「今回のボス攻略会議。キリトが抜けた分、どう埋め合わせをするのか。俺はこの会議で聞けると思っていたが、いざ来てみれば、まともに話を進めることすらできない挙句、俺たちトッププレイヤーは色んな物を背負っている。その自覚すらもなかった事実・・・はっきり言って失望したぞ。ALS、DKB二つのギルドに対してでない。攻略組全体に対してだ」
トウガが告げた攻略組全体に対しての失望にこの場にいるほとんどが顔を俯けた。
思い出されてしまったのだ。自分たち攻略組が、ただ、ボスを倒すためだけに存在しているのではないということを。
会議の場はすっかり暗くなり、静寂が続いたが
「クールダウンしたところで一つ提案がある」
エギルが前に出てきて、意見を出してきた。
「今回ボスの情報を手に入れたのはハルトだ。しかも、攻略に必要なアイテムも持っている。六層でも、こいつがいなければ、攻略はできても、犠牲者が出たはずだ」
エギルの言葉に、ある程度落ち着きを取り戻した攻略組は、ハルトの方を見る。
六層のボス攻略の時、自分たちはレア武器を手に入れた彼を中傷するようなことをした。しかし、エギルの言う通り、彼がいなければ、犠牲者が出ていたかもしれない。
攻略組が六層での出来事を思い出し、深く考えている中、エギルはハルトにとって、衝撃の一言を話す。
「その功績も踏まえて、今回のリーダーはハルトにしてみねぇか?」
「え?・・・えぇーーー!?」
エギルから発せられた衝撃発言に、ハルトは驚きの声を上げた。
しばらく固まっていたハルトだったが、慌てながらリーダーになることを反対する。
「ちょっと、待って!いきなりリーダーをやれって言われても、無理だよ!僕には誰かに指示を出しながら戦ったことなんてないし、中立の人間だったら、エギルさんやトウガでもいいはずだ!?」
「おいおい、それを言ったら、俺らだって、いきなり全体の指揮を執れって言われても難しいぜ」
「それに俺たちは、ギルドリーダーでもあるんだ。自分たちのギルドをすっぽかして、全体の指示を出せなんて無理な話だ。だから、中立の人間でリーダーになるのに最適なのは、どこのギルドにも所属していないソロプレイヤーなんだ。その中で一番、適しているのはお前だろ?」
エギルとトウガの言葉に、言葉を詰まらせるハルト。
彼らの言う通り、彼らには自分たちのギルドがある以上、そっちの指揮を優先するだろう。当然、ギルドに所属しているソウゴ達も論外。
そうなると、トウガの言う通り、リーダーに適しているのはソロプレイヤーになるが、ザントは指揮なんてまず、しなさそうだし、アスナは普段、キリトと一緒にいることで攻略組からは敵視されている。残りは自分とコハルになり、実力が高い自分が選ばれたいうことだろう。
しかし、そうなると、キバオウとリンドが何と言うか。
そう思いながら、ハルトは二人の方を見たが
「しゃあないか・・・今回ばかりは主戦力が分裂するわけにはいかんし、指揮能力に関してはワイらより劣っとるが、中立の人間が指揮するのも悪くないかもしれへんな」
「同感だ。それに彼は、かなりの実力者だ。中立の人間とはいえ彼は十分、信頼に値する」
なんと、攻略組のギルドリーダーである二人が、ハルトがリーダーになることを賛成した。
それでも、何とか降りようと考えていたハルトだったが
「ハルト。いつも通り、落ち着いてやれば大丈夫だよ」
「コハル・・・」
いつも身近にいてくれるパートナーまでもが、自身がリーダーになることを薦めた。
コハルの言葉を聞いて、ハルトはエギルやトウガ、キバオウやリンドを見る。
こんなにも多くのギルドリーダーの人たちが自分がリーダーになることを薦めているのに、自分が断る訳にはいかない。
ハルトは一度、目を瞑り、数秒後に見開くと
「分かりました。精一杯やってみせます!」
リーダーになることを決心した。
その様子に、どちらにも所属していないメンバー達は笑みを浮かべ、ALS、DKBの面々も一部を除いて頷いた。
「ほんじゃ、仕切り直しや。頼んだで、リーダー!」
「はい!」
その後、ハルト主導の下、攻略会議は順調に行われた。
「一時はどうなるかと思いましたが、一番いい形に落ち着いて本当に良かったです。これもトウガさんのおかげでですね。怒鳴り声には流石に驚きましたけど」
攻略会議を終え、七層の迷宮区へ向かう途中にリーテンが、先程の攻略会議の様子を振り返った。
リーテンの言葉に、トウガは先程の事を思い出したのか、少し控えめに喋る。
「・・・俺はただ、くだらないことで喧嘩しているあいつらに一発言ってやっただけだ」
「の割には、随分と感情が剝き出しだったな。ゴミ虫なんて言葉まで使いやがって、てめえらしくねぇ」
トウガの隣を歩いているザントが、普段と様子が違っていたトウガを不思議そうに見る。
すると、ソウゴが後ろから話し始めた。
「まぁ、トウガがあんな風に感情を剝き出してキレることは、何回かあったからな」
「そうなんですか?」
「ああ。今回の件で一番キレていたのはあいつだ。あいつは昔から、キレたりすると、あんな風に感情を剝き出して暴言を吐いたりしてな。普段はおとなしいし、成績もかなりいいから、周りからも頭がいい無愛想な奴って言われがちだが、俺らから見れば、あいつは怒る時や泣く時、共に笑い合う時も感情を剝き出して行っているだけのただの幼馴染に過ぎねぇよ」
「それに、確かにあんな暴言を吐かれたら、怖いって思うかもしれないけど、それと同時に頼もしく思うんだ」
「頼もしく?」
コハルが疑問の声を出す中、ソウゴの隣で喋っていたコノハが続きを言う。
「うん。だって、トウガ君が感情を剝き出して怒る時は、必ず誰かのためって決まっているもん。さっきだって、あのまま攻略会議が進んでたら、ボス攻略が失敗して大勢の人が死んじゃいそうだったから、そうならないようにあんな風に怒ってまで、止めようとした。そうでしょ?」
「・・・そんなんじゃない。あいつらがいつまでたってもくだらないことで言い争っていたから、苛立って、つい、ムキになっただけだ」
コノハの言葉を否定したトウガだったが、心なしか頬が少し赤く染まっていた。
その様子にハルト達は、特に追求はせず、笑みを浮かべながら、トウガを見守るのであった。
「紅の狼」リーダー、トウガ。
攻略組からは、子供でありながら、高い指揮能力や評価されて、冷静かつ無愛想と言われがちだが、実際は、笑う時は笑い、怒る時は少し汚い言葉で怒る。けれども、それは誰かのためにという思いがある。
そんな友の新しい一面を知ったハルトは、第七層のボスを倒すべく、迷宮区へと向かった。
・特徴的な石
これに関しての説明は控えておきます。どんな石なのか、自分自身で確かめてください。
・久しぶり登場。フードを被ったアスナ
正体を隠すために、久しぶりにフードを被って、オークションに挑む!(なお、顔見知りには普通にばれる模様)
・お前らより少し多く渡した
渡した金額 エギル:5万
アスナ:20万
・トウガブチギレ
感情を全てさらけ出したせいで、もの凄く口が悪くなりました。
※トウガのブチギレシーンはグラブルのあるキャラを参考にしました(ヒント:トウガのイメージCV福山潤)
SAO_UW17話を見て思ったこと
・エイジッーーー!ユナァーーー!
・少年期のPoHの声、ザントじゃん!?
・おや、キリトの様子が・・・
ということで、オークション回。別名トウガ、ブチギレて別キャラになる回は以上となります。
普段は冷静でクールなキャラで書いていたので、ブチギレシーンは一つ一つの口調を変えていかないといけなかったので苦労しました。(SAOIFだとリーファのシーンを如何に上手く修正することも含めて)
次回は七層のボス攻略となり、その次は番外編と予定です。
※今現在、番外編でどのイベントストーリーが読みたいのか、アンケートを取っていますので、もし、見たいなと思うものがあれば、遠慮せず、アンケートに答えてください。