ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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他のSAOIFのバレンタインイベントって、アリシゼーションのキャラが出るから、これしか書きやすいストーリーがないじゃん!と思いながら、書きました。

時系列としては、八層の攻略が進む前辺りです。


女達の戦い!ショコラの道は甘くない

「決戦の時は来た!!」

 

始まりの町の転移門前の広場で大声で叫ぶクラインに、何事かといった様子で見るハルトとコハル。

ハルト達に気付いたクラインは、こちらに向かって来ると真剣な表情で語り出す。

 

「時は慶長五年、九月。数で圧倒する徳川軍と誇り高き豊臣軍は関ヶ原で激闘を繰り広げた。あれから、400年もの時が流れた今!アインクラッドにいる男たちは死して屍拾うもの無き合戦を繰り広げている!見える、見えるぜぇ・・・町に溢れかえっている茶色い甘みを抱えている女子たち。希望と紙一重の絶望、選ばれし男たちの栄光と選ばれぬ男たちの悲哀・・・その先にある見果てぬ夢。俺たちの輝かしきエルドラドが・・・」

 

「何言ってるのか分かる?」

 

「さぁ・・・おかしな物でも食べたのかな・・・」

 

訳の分からない事を語るクラインの言葉の意味が理解できず、ハルト達はその場から立ち去ろうとしたが

 

「ちょっと待て!てめえら!今日が何の日か分かってんのか!?」

 

クラインに呼び止められてめんどくさそうな表情をしながら振り向いたハルト達だが、何の日かと言われて、少し考えていたら思い出したかのように喋り出した。

 

「そういえば、今日はバレンタインか」

 

「そう!遂に始まっちまったんだよ!バレンタインイベントって奴がよう!」

 

「確かに。辺りにチョコレートをテーマにした飾り付けがされていますね。それにイベント専用のクエストもあるみたいですし」

 

クラインの言葉を聞いて、コハルが辺りを見渡しながらそう吐くが、少し暗い表情で喋り出す。

 

「でも、アインクラッドにバレンタインデーってあるのかな?・・・」

 

「お前は随分と悲哀だな・・・この手のイベントは楽しんだ者勝ちだ」

 

「・・・そうですね」

 

クラインの言葉に小さく微笑んだコハル。

 

「そんじゃ、俺はクエストを進めていくぜ!お前らもクエストをやりたけりぁあの人だかりの中心にいるNPCに話しかけてみな。じゃあな。いい、バレンタインにしろよ!・・・グフフフ・・・一人、クエストを華麗に進めていく俺を見て惚れてしまった女の子たちからチョコを貰えたりして・・・フハハハハハハ!!」

 

話を終えたクラインはハルト達に労いの言葉を送りながら去っていったが、その途中、一人、高笑いし始めたクラインに、ドン引きするハルト達であった。

 

「とりあえず、人だかりの中心にいるあのNPCに話しかけよう・・・と行きたいけど・・・あの人だかり・・・女の子しかいない!?」

 

気を取り直してクエストを受けようとしたハルトであったが、人だかりが全員、女子であることに驚くのであった。

 

「確かに女の子しかいないね」

 

「SAOの全女性プレイヤー達が集まっててもおかしくないね」

 

「こんなに女の子が集まることなんて、滅多にないんじゃないかしら」

 

「目的はみんな同じってことね」

 

「みんな!?」

 

ハルトの隣で喋っていたコハルだったが、話しかけてきたサチ、リズベット、アスナの同じ女子のプレイヤー達の存在に気付いて驚いた。

 

「みんなもバレンタインイベントに参加するの?」

 

「そらゃあ、期間限定イベントを見逃すだなんて、ゲーマーの名折れだからね」

 

「私もレベルが低くても気軽に楽しめて、チョコも貰えるイベントって聞いたから、やってみようかなって思って・・・」

 

「ほほーう・・・本当にそれだけかな?」

 

サチの言葉にリズベットが嫌な笑みを浮かべながらサチに近づいていく。

 

「な、何?」

 

「ホ・ン・トはぁ~気になるあの子にチョコをあげたいんじゃないの?」

 

「!?」

 

気になるあの子というのは、コノハのことである。

正月の時、二人が仲良く微笑み合うあの場面を見ていたリズベットは、サチがコノハにチョコをあげる為にイベントに参加しているのだと予想していた。

そんなリズベットの言葉に、サチは顔を赤くしていた。

そんな二人の様子を見て、アスナは微笑みながら二人に話しかける。

 

「フフッ、ここにいる女子はバレンタインに特別な思い入れがある人が大半なんじゃないかしら」

 

「ほほーう?アスナにはイベントに参加するト・ク・ベ・ツな理由がおありかな~?」

 

「・・・高難易度クエストが用意されているって噂があるのよ。挑戦したくなるでしょ?」

 

「それホント!?もっと詳しく教えて!」

 

「(上手く誤魔化したね。アスナ)」

 

今度はアスナを標的にしたリズベットだったが、アスナの繊細な話術に流されてしまい、その様子を見ていたコハルは苦笑いしていた。

 

「さて、お喋りはこのくらいにしといて、あたしはそろそろクエストをこなしに行くわ」

 

一通り話したところで、リズベットがそう言いながら、NPCの所に向かった。

その言葉を筆頭にアスナとサチもクエストを受けるため、NPCの所に向かった。

残ったハルトとコハルはその場に立ち止まっていたが

 

「ねぇ、ハルト。お願いがあるんだけど、このクエスト。私、一人で受けていい?」

 

「コハル!?」

 

コハルの突然のお願いに驚くハルト。

 

「ごめんね。急にこんなお願いして・・・でもね、さっきアスナ達の話を聞いて思ったんだ。理由や事情は様々だけど、みんな、大切な誰かに自分の作ったチョコを食べて欲しいという思いは同じなんだと思うの。私も、大切な人のためにチョコを作りたい。けど、そのためには、私自身が困難を乗り越えないとダメなの。あなたに頼ってばかりじゃ、私は自信を持ってチョコを渡すことができない」

 

「コハル・・・」

 

コハルの決意を聞いたハルトは迷っていた。

女の子たちが真剣に挑んでいる理由。それは、それぞれの大切な人に困難を乗り越えた先にある最高のチョコを食べて欲しいため。

コハルもまた、己の困難を乗り越えて、最高のチョコを作ろうとしていた。

けれど、もし、自分の知らない所で彼女が危険な目にあったしまえば・・・

ハルトの考えていることを感じ取ったのか、コハルは少し微笑みながら

 

「大丈夫。私は攻略組だよ。それに、これくらいの事を一人でもできるようにならないと、あなたのパートナーを名乗れないよ。だから、あなたも、あなたのパートナーを信じて」

 

「・・・分かった。僕も君を。僕のパートナーを信じるよ」

 

ようやく折れたハルトに、コハルは「ありがとう」とお礼を言うと、待ち合わせ場所を始まりの町の噴水広場に指定して、ハルトと別れるのであった。

 

 

 

 

NPCの菓子職人クロードの話によるとこうだ。

この季節に取れる《カカワピース》というチョコレートの材料が足りないから、フィールドにいるエネミーから《カカワピース》を集めてきて欲しいとのこと。

フィールドを駆け巡り、指定された数を集めてきたコハルだったが、今度はチョコレートの味、香り、食感を決めるための三つの素材を集めてきて欲しいとのこと。

順番に素材を集めていこうとしたコハルは、途中、アスナ、リズベットと再会した際、リズベットから「最近ハルトとはどう?」と質問されて、顔を赤くしたり、別の素材を集めている最中に、大勢のエネミーに追われてピンチになっていたサチを助け、その後、誰に渡すかで、サチが黒猫団の面々とコノハに渡そうって話でコノハとの出会いの話を聞いたりしながら、順調に三つの素材を集めた。

素材を渡したら、最後に仕上げとして《高揚の密》を集めて欲しいと頼まれたが、話の途中で出てきたクロードの「究極のチョコレートを手に入れるかもしれない」という言葉に疑問を持ったコハルは、丁度、最後の素材集めのところまでいったアスナ、リズベット、サチと再会し、互いの情報を共有し合うのであった。

 

「つまり、クエストの進み具合はみんな同じくらいなのね」

 

アスナの言葉に頷くコハル達。

 

「後は、仕上げの素材だけど、やっぱり、究極のチョコレートについて気になるよね」

 

コハルがそんな風に喋る中、リズベットが少し疑問に満ちた表情で喋り出す。

 

「そもそもの話なんだけどさ。これって、バレンタインのイベントでしょ?依頼人が菓子職人なのに、内容がチョコレート作りだとすると、違和感があるのよ」

 

「違和感?・・・確かに、お菓子作りのためにモンスターを倒すのは、不思議に感じたけど・・・」

 

「のんのん。私が言いたいのは、リアルのバレンタインなら必ずあるものがないってことよ」

 

サチの言葉を否定すると、リズベットはリアルのバレンタインの話を持ち出しながら、問いだす。

 

「もしかして・・・手作り?」

 

「チョコレートの材料自体が手に入らない?」

 

コハルとアスナの言葉に、リズベットはうんうんと頷いた。

 

「依頼人が自分の調理スキルを自慢してくるくせに、プレイヤーは彼のために素材を集めだけで、手作りチョコが用意できないことなんてある?」

 

「そうね・・・でも、プレイヤーがチョコレートのレシピを編み出したなんて話は聞いたことないわ。クエストで集めた《カカワピース》も、どう見てもチョコレートの精製前の原料だし・・・」

 

手作りのチョコレートが作れないことに悩んでいた四人であったが

 

「・・・クロードさんに聞いてみようよ」

 

コハルがふと口を開いた。

 

「そうね。究極のチョコレートについて、何か知っている素振りもしていたしね」

 

コハルの提案をアスナが受け入れ、二人も賛成したかのように頷いた。

早速、四人はクロードに話しかける。

 

「おや、《高揚の密》はもう集めたのですか・・・」

 

「クロードさん。手作りチョコの作り方を教えてくれませんか?」

 

「あんた言ってたわよね?『今の私たちなら究極のチョコレートを手に入れれるかもしれない』って」

 

「そ、それは・・・」

 

すると、クロードは困ったような表情をしたが

 

「・・・あなた方にはそれほどの覚悟があるのですか?」

 

真剣な表情で問いかけるクロードに対して、力強く頷くコハル達。

 

「・・・分かりました。全てをお話ししましょう。」

 

コハル達の決意を見て、観念したかのようにクロードは究極のチョコレートについて語り出す。

 

「皆さんが倒していったモンスター《ショコラ・モンスター》。実は彼らはごく普通のモンスターなんですが、この季節になると、ある存在によって染められてしまうのです。《カカワピース》の原料をモンスターに与え、体内で《カカワピース》に変えることで、それを自身の餌にする恐るべきモンスター・・・《ショコラティエ・ハートシーカ》に!」

 

「恐らく・・・今回のイベントボスはそいつね」

 

クロードの話を聞いてたリズベットが、正月イベントでもイベントボスがいたことを思い出しながら、クロードの言った《ショコラティエ・ハートシーカ》がバレンタインイベントのボスだと予想した。

その隣で、アスナがボスについて、クロードに質問する。

 

「そのボスって強いんですか?」

 

「《ショコラティエ・ハートシーカ》とは、この大地に魔力が存在していた頃、とある宮廷料理人が、禁忌の魔法に手を出して、それに飲まれて魔物化した存在です。それが、何百年も経って尚、その力は増していると言われております」

 

クロードの説明を聞いて、顔をしかめるコハル達だが、そんなコハル達にクロードは「しかし」と言葉を続ける。

 

「その身に宿した魔力の塊は、年を重ねたことで純粋な結晶と化し、それを手に入れた者に大いなる力をもたらします。それこそが《ショコラオーブ》。そして、それを錬成して作った魔法器具、《ショコラティエ・ボウル》は凄まじい力を発揮します」

 

そう言うと、少し口ごもりながらも、クロードは真剣な表情で語る。

 

「その力とは、どんなに調理スキルが低い者。それこそ、生まれて一度も料理をしたことない者でも、美味しいお菓子が作れるという」

 

クロードの説明を聞いて、コハル達は驚いた。

何せ、生まれて一度も料理をしたことない者でも、美味しいお菓子が作れるということは、その《ショコラティエ・ボウル》は余程チートなアイテムであると言える。もっとも、デスゲームであるSAOでは、あまり意味はないが・・・

そんなことを思っている中、クロードは下に俯いた。

 

「少なくとも、あの味はワタクシがどんなに技術を磨いても、一生超えることができない!究極のチョコレートとは、ワタクシにとって敗北の味でもあるんです」

 

「それで話したくなかったんですね。自分の作るチョコレートよりも美味しいものができると思ったから」

 

コハルが納得したかのように言うが、クロードは首を横に振る。

 

「勿論それもありますが、あなた方が心配なのです。先程もおっしゃいましたが、彼らはとても強い。しかも、戦う者にはある資格が求められます」

 

「資格?」

 

「はい、愛情でも友情でも構いません。心を通じ合わせた二人一組の挑戦者たちの熱い絆が、彼らを呼び寄せるのです」

 

心を通じ合わせた二人一組の挑戦者の言葉に、思い悩む四人。

そんな四人の様子をよそに、クロードは真剣な表情で問いだす。

 

「あなた方には二つの選択肢があります。《ショコラオーブ》を諦めてワタクシに全て任せて最高のチョコレートを手にするか、《ショコラティエ・ハートシーカ》を倒して究極のチョコレートを作るか」

 

クロードに選択を強いられた四人は、一旦相談すべくクロードから離れた。

 

「何だか頭がこんがらがってきたわ」

 

クロードの説明を一通り聞いたリズベットが頭を抑えながら喋った。

 

「情報を整理しますね。チョコレートを手作りするためには、心を通じ合わせた二人一組のパーティーを組んで、イベントボスを倒さないといけない。もし、挑戦しないなら、クロードさんにチョコレートを作ってもらう」

 

「二人だけでボスと戦う・・・手作りするにはそれしかないんだよね・・・」

 

コハルが情報を整理し、その横でサチが不安げな表情で喋る。

すると、アスナが真剣な表情をしながら

 

「・・・みんなは、どうするの?」

 

他の三人にボスに挑戦するのか聞いてきた。

しばらく、思い悩んでいた三人だったが、ふとコハルが口を開いた。

 

「・・・私は挑戦したい。ここまで頑張ってきたんだから諦めたくない」

 

「そうね。それに、目の前に高難度のクエストがあって、挑まないMMOプレイヤーはいないわ。あたし達なら何とかなるわよ」

 

「・・・私も・・・やれるだけやってみたい。ここで逃げたら、きっと後悔すると思う」

 

「決まりね」

 

三人の決意を聞いて、アスナは決まりだといった表情で笑った。

ボスに挑戦すると決まったところで、サチが不安げな表情で喋り出す。

 

「でも・・・まずはボスの情報が欲しいかな・・・」

 

「なら、まずはアスナとコハルで行けばいいじゃない」

 

リズベットがアスナとコハルで行くように提案してきた。

それに対して、二人は互いの顔を見合わせると

 

「そうね。この手の偵察なら、攻略組である私たちがさっきに行ったほうがいいわよね」

 

「それに、アスナとはフロアボスの時や攻略の時に何回も連携しているから大丈夫だよ」

 

笑みを浮かべながら、賛成した。

 

「それじゃあ、私はサチと組むことになるわね」

 

「う、うん・・・でも、上手くやれるかな・・・」

 

未だ不安そうな表情をしているサチに、リズベットは力強くサチの肩を叩いた。

 

「大丈夫よ。理由は違えど、ここにいるみんなは同じ目的でここにいる。それに、こうしてクエストを乗り越えてきた仲間なんだし、自信持ちなさいよ」

 

「リズベットさん・・・ありがとう。私、頑張ります!」

 

リズベットの励ましに、力強く頷いたサチ

 

「それじゃあ、あたし達はここで待っているから」

 

「頑張ってね、二人共」

 

リズベットとサチに見送られながら、二人はクロードの所に向かった。

 

 

 

 

クロードに案内されたフィールドは辺り一面にお菓子の壁や床で満たされていた。

 

「何だか、お菓子の家みたいだね」

 

コハルが辺りを見渡しながら、フィールドの印象を言う。

すると、突然、光が現れて、それはたちまちを変えて茶色いクマになった。

そのクマは少し大きいが、頭にシルクハットのような物を被っており、背中にはチョコレートクリームみたいなのが乗っていた。

 

「コハル!」

 

アスナが掛け声を言うと同時に、クマが二人に向かって突進してきたが、それぞれ左右に避けた二人。

躱されたことで、動きを止めたクマに、アスナがレイピアで攻撃しようとしたが

 

「グオォ!」

 

「キャ!?」

 

クマがどこから持ち出したのか分からないカカオ豆擬きをアスナに向けて投げつけた。咄嗟の攻撃に何とか反応して避けたアスナ。

 

「アスナ!?」

 

その光景を見ていたコハルは、思わず声を上げたが、クマはコハルの方を向くと

 

「キャ!?あ痛!」

 

今度は自信の巨体ごとジャンプすると、コハルを押し潰すかのように飛び込んだ。

慌てて躱したコハルだったが、地面に着地した時の衝撃に巻き込まれ尻餅を着いた。

しかし、クマは先程の攻撃の際に腹から着地したことで、隙ができた。

その隙を逃さず

 

「ヤァーーー!」

 

「グオォ!?」

 

アスナがレイピアで攻撃した。

攻撃されたクマは、慌てながらも二人から距離を取った。

その隙にアスナがコハルに話しかける。

 

「ボスがあの攻撃をしたタイミングを狙いましょう」

 

「分かった。それじゃあ、なるべく遠くに引き付けるね」

 

さっきの攻撃は、自分が少し遠くにいたら行われた。

なら、同じように距離を取れば、さっきの攻撃してくるだろう。

そう考えたコハルはクマの方を向くと

 

「おーい!クマさん!こっちだよー!」

 

クマに向かった声を掛けた。

その行動が功を奏したのか、クマは先程と同じようにコハル目掛けて飛び込んだが、今度はスムーズに避けるコハル。

クマは先程と同様、腹から着地したことで、隙ができ、その隙にアスナとコハルがレイピアを構えて

 

「「ヤァーーー!」」

 

<シューティング・スター>で攻撃した。

強力なソードスキルで攻撃されたクマは、その巨体を跳ね上がらせた。

その隙に丸出しになった腹部分を

 

「これで!」

 

「終わりよ!」

 

<ライジング・エイガー>で切り裂いた。

腹部分を切り裂かれたクマは雄叫びを上げたら、前から倒れてポリゴン状に四散した。

 

「二人で倒せた・・・良かった・・・」

 

「お疲れ様コハル。《ショコラオーブ》も手に入ったし、みんなに胸張って報告できるわね」

 

ボスを倒したことに安堵するコハルと、その隣で笑顔で話しかけるアスナ。

 

「アスナもお疲れ様。これで、胸を張ってキリトさんにチョコレートを贈れますね」

 

「ええ、そうね・・・って、どうしてキリト君が出てくるのよ!?」

 

コハルから出てきたキリトの言葉に、慌てて反応するアスナ。

若干顔が赤くなっているアスナに、コハルは笑みを浮かべながら続ける。

 

「このクエストだって、キリトさんにチョコレートを渡したいから受けたんでしょ?」

 

「ち、違うわよ!?さっきも言ったけど、高難易度クエストが用意されているって噂に興味を持っただけで、別にキリト君のために受けたわけじゃないわよ!」

 

「フフフ・・・アスナ、顔真っ赤かだよ」

 

慌てて否定したアスナだったが、アスナの顔が赤くなっていることに気付いたコハルは笑みを浮かべながら指摘した。

アスナは恥ずかしながらコハルを睨んでいたが

 

「そういうコハルこそ、ハルト君にチョコレートを渡したいからクエストを受けたんじゃないの?」

 

言われっぱなしだと面白くないと思ったアスナはコハルに反撃しようとしたが

 

「そうだよ。私はハルトに最高のチョコレートを食べて欲しいから、クエストを受けたんだよ」

 

「え!?」

 

予想外の反応に思わず固まるアスナ。

 

「ハルトだけじゃない。キリトさんやザントさん。私がこの世界でお世話になった人たちに感謝を伝えたいと思ったから」

 

「コハル・・・フフッ、素敵な理由ね。まぁ、私もそういう感謝の気持ちを伝えたいと思って渡すつもりだけどね。キリト君だけじゃない。ハルト君やザントさんとか・・・」

 

コハルの気持ちを聞いたアスナは、笑みを浮かべながら自身の思いを語った。

しばらくの間、微笑み合っていた二人であったが

 

「戻ろう!アスナ」

 

「ええ!みんなにもきちんと報告しないとね」

 

そう言うと、二人はリズベット達が待っている場所まで戻るのであった。

 

 

 

 

無事戻ってきたコハルとアスナは、リズベット達にボスの特徴を教えた。それを聞いたリズベット達も挑戦して、難なくクリアすることができた。

その後、四人は手に入れた《ショコラオーブ》をクロードに渡すと、クロードは《ショコラティエ・ボウル》を作るために、どこかへ行ってしまったが、数分後に戻ってきた。

 

「完成しました。後はこちらの素材をボウルに入れるだけで、思うがままのチョコレートを作ることができますよ」

 

そう言いながら、クロードは四人に《ショコラティエ・ボウル》を渡した。

 

「クロードさんは使わないんですか?」

 

「使いませんとも。あなた方の絆の強さ。信じあう心が悪しき者を打倒する姿を見て、目が覚めました。ワタクシに足りてなかったもの。それは、自分自身の力の信頼。・・・今まで幾度も修行し、積み重ねてきた調理スキルこそが、ワタクシ自身の才能と努力・・・しかし!魔力が込められているボウルというのは・・・」

 

「あのー、クロードさん。長くなりそうなので、適当に切り上げてくれませんか?」

 

「失礼ですよ、君」

 

長々と語り出したクロードにダメ出ししたリズベットを、どこか悲哀に満ちた表情で見つめたクロードは「ゴホンッ!」と咳払いすると

 

「とにかく、より高い理想を目指して頑張ります!ということです」

 

高々に宣言した。

クロードの宣言に苦笑いしていたコハル達をよそに、クロードはお辞儀よく礼をすると

 

「それでは皆さん。究極のチョコレートをお楽しみください!」

 

そう言いながら、クロードは去っていった。

コハル達はしばらくの間、去っていったクロード達を黙って見ていたが

 

「作ろうみんな!究極のチョコレートを!」

 

「「「おおーーー!!」」」

 

コハルの掛け声に力強く反応した三人。

その後、彼女たちは借り家のキッチンで究極のチョコレートを作るのであった。

 

 

 

 

コハル達がクエストを受けて、随分と時間が立ち、日もすっかり暮れていた。

それでも、ハルトはこの夜の町で、パートナーの帰りを待ち続けていた。

その時、向こうから自身を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「おーい、ハルト!」

 

その声を聞いて、ハルトは安堵した。

あまりにも遅かったから、メッセージを送ろうとも考えていたが、昼の彼女の言葉を信じ続けようと決めていたハルトは、無事戻ってきたコハルの下へ走っていく。

 

「ごめんね、心配かけちゃって・・・」

 

「ううん、無事に戻ってきて何よりだよ・・・それで、その包みは?・・・」

 

コハルの右手に持っている包みに気付いたハルトはそのことについて聞くと、コハルは「あ!」と驚いた表情になったが、「ゴホン!」と咳払いすると、顔を赤くしながら、その包みをハルトの前に差し出した。

 

「私の気持ちです!受け取ってください!」

 

恥ずかしながらも、ハルトにチョコレートを渡すコハルを見たハルトは

 

「ありがとう」

 

笑みを浮かべながらチョコレートを受け取った。

チョコレートを受け取ったハルトはどんなチョコレートなのか、興味深々な表情で箱を見て、それを見ていたコハルは小さく微笑むと

 

「私、あなたに出会えて良かった」

 

「え?」

 

突然の言葉にハルトは驚く中、コハルは言葉を続ける。

 

「もし、あの日、あなたに出会えていなかったら、私はログインしていなかったと思う。あの日、あなたが戦い方を教えてくれて、私はここにいていいんだってそう思えたの。だから、私がこうしてここにいるのも、あなたが傍にいてくれたおかげ」

 

「コハル・・・」

 

未だに某けているハルトに、コハルは「だから」と息を吸うと

 

「これからも、ずっと傍にいてくれる?」

 

「!?・・・勿論!約束するよ」

 

コハルの願いを伝えられたハルトは彼女の手を握りしめながら約束した。

互いの手を握りしめ合いながら、見つめ会っていたハルトとコハルだったが

 

「それじゃあ、宿に戻って一緒に食べよう」

 

「え?」

 

ハルトの言葉に今度はコハルが驚いた。

 

「せっかくコハルが作ってくれたんだからさ、一人よりも二人で食べた方が美味しいはずだよ!」

 

「ハルト・・・うん!一緒に食べよう!」

 

笑顔で語るハルトに対して、コハルもまた笑顔で返した。

こうして二人は宿に向かった。互いの手をつなぎながら・・・

夜道を歩く二人の間には、僅かだがそこに'愛'があった。

 

 

 

 

<オマケ>

それぞれのバレンタイン

 

・キリトの場合

「たく、アスナの奴・・・もう少し、まともに渡せないのかよ・・・アムッ・・・結構、美味いなこのチョコ・・・」

 

 

 

 

・「紅の狼」の場合

「なんか、町に出たら、女性プレイヤーから大量のチョコを貰ったんだが」

 

「ああ、俺もこっちによってかかってきた女共から貰った」

 

「マジかよてめえら!仮想世界でも貰えるなんて、どんなチート使ってんだよ!俺なんて一個も・・・」

 

「大丈夫っすよ!カズヤさんは男前だから、来年は貰えるっすよ!」

 

「可愛いって理由で何個も貰ってるてめえに慰められても嬉しくねぇよ!」

 

「コノハは貰ったのか?」

 

「え!?う、うん。一応は・・・ね」

 

 

 

 

・ザントの場合

「・・・悪くねぇ」

 

 

 

 

・クラインの場合

「よっしゃー!チョコを作れたぞ!・・・自分へのご褒美だぁ・・・ハハハ・・・ちくしょーーーーーー!!!!!!」




・主人公(ハルト)不在
SAOIFだと、当然、一緒に行動しますが、今回はお留守番とさせて頂きました。

・クロード
このイベントのみに登場するNPC。NPCでありながら、感情豊かなお人。

・<ライジング・エイガー>
細剣の星4スキル。季節限定スキルでもあり、それなりの威力も持っているが、最近は使っている人は見かけない。

・お世話になった人たち
「紅の狼」の面々「・・・・・・」(彼らを入れなかったのは、コハルの中では彼らはハルトの友達という認識で、お世話になったという認識がなかったからです。また、アスナも何回かパーティーを組んで戦ったハルトや七層でコル集めを手伝ってもらったザントと違って、「紅の狼」の面々は現段階では共にSAOを攻略する仲間だとしか思ってないからです)


バレンタインでチョコを貰った数
ハルト・・・4個(コハル、アスナ、サチ、リズベット)

キリト・・・2個(アスナ、コハル)

トウガ・・・大量(大勢の女性プレイヤー達)

ソウゴ・・・大量(大勢の女性プレイヤー達)

レイス・・・大量(大勢の女性プレイヤー達)

コノハ・・・1個(サチ)

ザント・・・2個(アスナ、コハル)




カズヤ、クライン・・・0個


カズヤ、クライン。お前らは泣いていい・・・
ということで、以上バレンタインストーリーでした。
SAOIFと違って、主人公(ハルト)がいないストーリーにしてみましたが、どうだったでしょうか?
次回はブライダル一年目(サプライズ・ウェディング)のイベントストーリーの話になります。
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