ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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最新のアリシゼーションイベントストーリー、一枚絵が変態皇帝しかない件について
せめて、アリスやユージオとかの一枚絵欲しかったなぁ。
十層編、続きです。




ep.17 蒼嵐

アルゴは戦慄した。

普段から情報屋を営んでいる彼女はちょっとのことでは驚かない自信があった。

しかし、今、自分の目の前に写っている光景はちょっとどころのことではない。

調査から戻ってきたハルト達を見つけたアルゴは、三つのことを聞かされた。

まず一つ目は、人数が増えていること。これは別に気にしていない。ハルト達が色んなプレイヤーと顔見知りなのは、アルゴも知っていることで、たまたま、フィールドで出会って、彼らと一緒に行動したのだろう。

二つ目は、自分の知らないボス級のエネミーが出現したこと。自分のはあくまでもβテストの情報だったので、正式版で追加されたのだろう。せいぜい攻略本に書く内容が増えた程度で、これも、あまり驚きはしなかった。

しかし、問題だったのが三つ目。そのボス級のエネミーがザントによってテイムされていたことである。しかも、物理で。

それを聞いたアルゴはザントをUMAを見つけた様な目で見た。

いくらなんでも非常識すぎる。

従来のテイムと違って、殴り合いでボス級のエネミーをテイムした。だから、一緒に行動している。そんな非常識すぎる話を聞かされて、どう反応すればいいのかアルゴには分からなかった。

 

「アルゴさん、どうしたんですか?」

 

「いつまで腑抜けてんだ。こっちの事は話したし、さっさと、てめえの話も聞かせろ」

 

お前のせいだヨ!の言葉を必死に飲み込んだアルゴは、一旦、息を吸って落ち着くと、調査で得た情報を話し始めた。

 

「ザント。お前のやろうとしているクエスト、実は十層のボスに有効な武器が手に入る重要なクエストだったんダ」

 

「私も噂なら聞いたことがあります。確か、NPCの町娘が蛇神使いに攫われて、助けを求める父親が依頼人だと」

 

シンカーが付け足すように喋った。

 

「そう、最初は父親から簡単なお使いを頼まれて、その次からが本番なんダ。っで、オレッチはもう、そのクエストを受けているんダ。やってみるカ?」

 

説明の最後でザントにクエストを受けるのか問いかけるアルゴ。

それに対して、ザントは笑みを浮かべ

 

「当然だろ。強ぇ武器が手に入るなら、尚更やらねぇわけにはいかねぇなぁ」

 

クエストを受ける決意をした。

更に、その隣でクラインも

 

「俺も受けるぜ!攫われた娘さんを武士であるこの俺が助ける!熱い展開じぁねぇか!ハルト達もやるよな!?」

 

「勿論。重要なクエストなら尚更だよ」

 

「ボスの情報が貰えるかもしれないし、やって損はないよね」

 

「ここで会ったのも何かの縁だ。俺も参加するぜ」

 

クラインに続きハルト、コハル、シロコイも参加した。

更にシンカー、ユリエールも

 

「私たちも参加させて「ちょっと待て」・・・え?」

 

参加しようとしたが、ザントに止められた。

 

「はっきり言って、てめえら二人は足手まといになるだけだから止めておけ」

 

「・・・おいザント・・・それは流石に言い過ぎだろ。そりぁ、この二人は俺たちよりもレベルは低いけどよ。だからといって、参加まで断ることは・・・」

 

「おいおい、ここに戻る時もそこいらの雑魚よりかはマシだったが、邪魔だったのには変わりねぇだろ。十層攻略に関わる大事なクエストに足手まといを参加させねぇよ」

 

クラインが言い過ぎだと言うが、ザントはそれを容赦なく切り捨てる。

あんまりな言い方にコハルが前に出ようとしたが、その前にシンカーが口を開いた。

 

「確かに、あなた方攻略組にとって、中層ギルドである我々は邪魔な存在かもしれません。ですが、私にはやるべきことがあります。ギルドの資材が行き渡らず、今も尚、苦労をかけさせているユリエールや仲間たち。そして、始まりの町で我々を待ち続けている大勢のプレイヤーのために」

 

「へぇー、つまり、自分で戦うどころか、動こうともしないで、他人に縋り続ける雑魚のためってか?あんた、随分と大馬鹿だな。そんな奴らを助けた所で調子に乗らせるだけだぞ」

 

「ちょっと!ザントさん!」

 

下層プレイヤーを見下すような言い方に、コハルが注意する。

 

「おっしゃる通りだと思います」

 

「あぁ?」

 

ところが、シンカーはザントの言葉を肯定した。

 

「私は大馬鹿かもしれません。ギルドには始まりの町の人たちの面倒まで見る必要があるのかっと不安を持っているメンバーもいます。それでも、私は始まりの町の人たちを助けることを辞めるつもりはありません。だってそれが、私がこの世界でやりたいと決めたことですから」

 

シンカーの決意を真剣な表情で聞いていたザントは、「ハァー」とため息を出し

 

「・・・足手まといにならねぇなら勝手にしろ」

 

シンカーとユリエールの同行を許可したザントは視線でアルゴに合図した。

 

「決まりだナ。それじゃあ、装備を整え次第、この先の《滝見の渓谷》に集合ナ」

 

 

 

 

《滝見の渓谷》に集まったハルト達は早速、アルゴからクエストについて聞く。

 

「βテストだと、大蛇に攫われた町娘を救出するクエストは、娘は途中で死んでしまってナ。その後、娘の父親が敵討ちに乗り出し、プレイヤーはそれを手伝うことになル。そして・・・クエストをクリアしたら、その報酬として強力な両手剣が貰えるんダ。ところが、正式版だと町娘はプレイヤーの助けを拒んで、どっかに行っちゃうんダ。今は《滝見の渓谷》のどこかに逃げ込んだ町娘を探し出すってところからだナ」

 

「なら、さっさと、その町娘を探すぞ」

 

ザントの言葉に頷いたハルト達は、《滝見の渓谷》を歩きながら町娘らしき人物を探していた。

すると、崖の近くに一人佇んでいる着物を着た女性NPCがいた。

 

「見て、あんな所にNPCがいるよ。きっと町娘さんだよ」

 

「不安そうな様子ですね。慎重に近づきましょう」

 

ユリエールの言葉に従い、慎重に近づいていった。

すると、こちらに気付いた町娘は、こちらを睨みつけながら話しかけてきた。

 

「・・・父様に言われて追ってきたの?話すことなんてありません。どうか、そっとしておいて」

 

「取り付く島もないナー。どうすル?」

 

一向にこちらの話を聞きそうにない町娘に、アルゴが困った表情をしたが、クラインが前に出た。

 

「俺に任せておけ!ゴホン、お嬢さん。俺たちは怪しい者じゃない。千蛇城の支配から町を解放したいただの旅人だ。あんたが困っていることになっているらしいって噂を町で聞いてここまで来たんだ。良かったら話を聞かせてくれねぇかな」

 

「千蛇城の主を倒すと言うの?・・・でも、倒せるかどうか・・・」

 

「大丈夫だ!俺たちは今までも手強いモンスターと戦って生き延びてきたんだぜ。今更、蛇の化け物の一匹や二匹、どうってこたぁないさ」

 

「おかしな人ね・・・だけど、そうね・・・あなた達なら私の話を聞いてくれるかも・・・」

 

そう言うと、NPCの頭の上に!マークが表示された。クエスト進行マークだ。

 

「どうやら上手くいったみたいだナ。さて、何から聞こうカ・・・」

 

とアルゴが町娘から色々と聞き出そうとしたその時

 

「やっと見つけたぞ!あれがクエストNPCだな?」

 

突然、男の叫び声が聞こえ、振り向くとALSとDKBのプレイヤーがこちらに向かって走ってきた。

 

「おい、邪魔するなよ。こっちが先に見つけたんだぞ」

 

「そっちこそ邪魔しないでよ。優先度はあたし達の方が・・・あら、先に到着していたグループもいたみたい」

 

新しくきた二人に、町娘は目を見開いたまま固まってしまった。

 

「なあ、蛇クエの途中だろ?だったら、さっさと終わらせてくれよ。こっちも後がつっかえてるんだよ」

 

「ムッ、次はあたし達だからね。割り込まないでよ」

 

「父様は蛇神様の声を聞こうとしない・・・今、連れ戻されるわけにはいかないの。お願い、助けて・・・」

 

「お、おう!任せろ」

 

町娘に助けを求められたクラインは、町娘に言い寄ってきた二人組に話しかける。

 

「悪ぃが、この娘さんの件は俺たちが引き受けることになってんだ。今は引き下がっちゃくれねぇか?」

 

「何言ってんのよ、できるわけないでしょ。ボスクエなのよ」

 

「弱小ギルドがMVPでも狙ってんのかよ。部をわきまえろっての」

 

クラインの言葉に、何言ってんだこいつ的な感じで返す二人組。

しかし、彼らは気付かなかった。何処からか'プツン'と何かが切れる音が鳴ったことを

 

「落ち着いてください。こちらのお嬢さんは大勢の人間に取り囲まれるのが苦手みたいでね。私たちが話す間だけでも、少し遠ざかっていてくれませんか?」

 

「NPCにそんな判断できるかっての。そこまでして抜け駆けしたいのかよ」

 

'プツン'

 

シンカーが宥めるように喋るが、取り扱おうともしない二人組。

 

「NPCだってこの世界の住人だ!僕たちと同じように笑ったり、泣いたりもする!」

 

「あの!この人は本当に怖がっているんです!だから、お願いします」

 

「そう言われてもね・・・こっちだってギルドの威信が掛かってるのよ」

 

'プツン'

 

ハルトとコハルの言葉を困った表情で流すDKBの女性。

すると、ハルト達が揉めている間に、町娘はその場から離れようとしていたが

 

「あ!ちょっと、どこ行くの!?」

 

「何やってんだ!逃がすかよ!」

 

逃げ出そうとした町娘を二人組が取り押さえる。

 

「いや!離して!離してよ!!」

 

'プツン'

 

二人組は町娘を無理やり連れていこうとした。

それを見て、ハルト達は慌てて止めようとしたが、その前に彼らの下に一つの影が飛び出した。

 

「ヴォン!」

 

「うわ!?なんだこいつ!?」

 

突如、現れた白銀の狼に驚き、町娘を掴んでいた手を離すALSの男。

白銀の狼、ラピードは町娘を庇うように立つ。

 

「な、何なのよこいつ!?」

 

「邪魔するってんならお前を「黙れ三下共」」

 

『!?』

 

フィールド全体に響くような低く重みがある声が聞こえた。

誰もが声の主、ザントを向いたが、その表情はかつてないほど怒りに染まっていて、その表情を目の前で見ている二人組は勿論。横から見ていたハルト達も圧倒され動けずにいた。

そんなハルト達をよそに、ザントは静かに喋り始める。

 

「さっきから黙って聞いていりゃ、部をわきまえろ・・・ギルドの威信がかかっている・・・ギルドの名前を利用してイキがってるだけの雑魚共が!・・・七層の時、トウガの言葉で少しは知恵を持ったと思ったらこれかよ・・・」

 

そう言うと、ザントは背中の両手剣を取り出し

 

「やっぱり、猿にはその身で分からせるしか方法はねぇようだな!!!」

 

「「ヒィーーー!!??」」

 

「おいザント、止めろ!」

 

「流石にマズいですよそれは!」

 

二人組がザントの圧倒的な威圧に恐怖してる中、ハルト達が慌てて止める。

ザントは本気だった。本気で目の前の二人組を斬ろうとしている。

ハルト達は見たこともないザントの怒りにどうしたらいいのか分からず、止めることに専念していた。

 

「やめんかい!!」

 

フィールドに新たな怒声が響いた。

誰もが声がした方を振り向くと、怒りに満ちているキバオウがいた。

 

「DKBの奴はともかく、何やっとんやジブン」

 

「で、でも、こいつらが!」

 

「見たところ先に話しかけたのはハルト達やないか。そこを無理やり割り込んだ挙句NPCまで脅してどないすんねん」

 

「でも、俺は・・・剣を向けられて・・・」

 

「その剣を向けられる原因を作ったのはジブンやろ」

 

キバオウの言葉に俯いてしまうALSの男。

それをよそにキバオウはハルト達の方を向いて頭を下げた。

 

「すまんかった。ウチのもんが迷惑かけた。だがな、ザント。同じ攻略組として言っておくが、キレてたとはいえ流石にそれはやりすぎや。プレイヤーに剣を向けたらそいつはもうオレンジプレイヤーと変わらん」

 

「・・・雑魚共に舐められる嫌いだ・・・とは言え、流石にやりすぎたな」

 

キバオウの言葉で頭が冷えたザントは両手剣を背中に納めた。

 

「そんで、そこのねぇちゃんはどうするんや?このまま去るか?それともワイとデュエルするか?」

 

「・・・覚えておきなさいよ」

 

ザントの威圧に恐怖し、その場に座り込んでいたDKBの女性は立ち上がりキバオウをひと睨みすると去っていった。極力、ザントの方を見ないようにしながら。

キバオウはALSの男を下げらせると、改めてハルト達に詫びた。

 

「やれやれ・・・とんだ迷惑をかけてもうたな」

 

「ありがとうございます。あの場を仲裁してくれて」

 

「礼を言われる筋合いはないわ。もし、止めなければ最悪、死人が出たかもしれんしな・・・詫びと言っちゃなんやけど、このボスクエ、ジブンらに任せてもええか」

 

「詫びにしては随分と気前がいいじゃねぇか・・・予想はつくがな」

 

ザントがいつもの笑みを浮かべながらキバオウ向けて喋ると、キバオウは複雑な表情で語り出す。

 

「実はな、ボスクエをやったウチの連中は、みんなここであの町娘を見失っとるんや。今のあいつらと同じ結果やろ」

 

「大方、普通に近づいて逃げられたんだろうよ。考えもしないで、ただ、無駄に突っ走る猿共らしい結果だな」

 

「・・・言い方はともかく、ザントの言う通りや。せやけど、ジブンらはあの町娘と話せる所まで行った。なら、ジブンらに任せた方が効率的っちゅうもんや」

 

一通り説明を終えたキバオウはシンカーとシロコイの方を見た

 

「そっちの新顔もジブンらの仲間か?」

 

「私はギルドMTDのリーダー、シンカーと言います。キバオウさんのことは聞いていますよ」

 

「そうか・・・MTDの評判はワイもよく聞いとる。ALSで拾えなかった低層プレイヤーを使えるようになるまで面倒を見とる熱心なギルドやってな」

 

「ちなみに、俺もその使えるようになったプレイヤーの一人だ」

 

シロコイのまさかの事実にシンカー、ユリエールを除く全員が驚いた。

その隣でシンカーが口を開いた。

 

「当時、実力があっても身長のせいで、どこのギルドにも入れてもらえなかったシロコイさんを私たちのギルドで面倒を見てたんです。シロコイさんはギルドの手伝いをしながら、日々ソロでも最前線に通用するレベルまで上げてて、遂、最近ギルドを抜けて、最前線に来たという噂を聞いてたんですけど、まさかこんなにも早く再会できるなんて思ってませんでした」

 

「今の俺があるのは、あの日シンカーさんが拾ってくれたおかげだ」

 

「そうか・・・あんたとはその内ゆっくり話したいもんや」

 

そう言うと、キバオウは去っていった。

 

「さて、後は・・・」

 

「ひっ!」

 

トラブルがあったが無事解決したので、再び、情報を聞こうとラピードの後ろにいる町娘に歩み寄るザント。

しかし、町娘は先程の怒りに満ちたザントを見たからか、尻餅をつきながら怯えた表情でザントを見上げた。

怯える町娘の前に立ったザントは

 

「おら、立てるか?」

 

「え?・・・は、はい・・・」

 

町娘に右手を差し出した。雰囲気が先程と変わったザントに戸惑いながらも、町娘はザントの手を握りながら立ち上がった。

 

「悪かったな、さっきはビビらせちまって」

 

「い、いえ!・・・私の方こそ・・・助けてくれたのに、お礼も言わずあんな態度をとってしまって・・・」

 

怖がらせてしまったザントと、助けてもらったのにお礼も言わず怖がってしまった町娘は、互いに謝罪し、

 

「あの!・・・助けてくれてありがとうございました」

 

「気にすんな」

 

町娘は改めてザントにお礼を言い、それを軽く受け取ったザント。

 

「意外だな。お前が自分からそんなことをするなんて」

 

先程までと雰囲気が180度変わったザントと町娘のやり取りをハルト達は呆然と見てた中、シロコイが口を開いた。

 

「見た感じ、お前は弱者が嫌いな奴だと思ってたんだが、同じ弱者でも一般人、それもNPCにはそんな風に接するんだな」

 

「別に弱者でも、俺の嫌いな弱者は弱ぇままで居続ける奴と弱者のくせに自分は強い、特別なんだって勘違いしてやがる奴だ。同じ弱者でも、真剣に強くなろうとしてる奴やシンカー、あんたみたいに何かしらの信念を持って、それに向けて精一杯足掻き続ける奴は、俺にとっては、むしろ興味深けぇ存在だ」

 

そう言いながら、ザントは視線をハルト達に向ける。

 

「雑魚の屁理屈や戯言なんざ、いくらでも否定してやるよ。けどな、同じ雑魚であっても守るべき人間の声は否定はしねぇよ。少なくとも今は、俺にとって、こいつやお前らは一部を除いて雑魚であると同時に守るべき存在だからな」

 

「・・・不器用な人ですね」

 

シンカーの言葉に、ザントは「ふん」と鼻を鳴らすと、視線を町娘に戻して話を聞くのであった。

 

 

 

 

町娘の名前はハツ。彼女の話によると、十層迷宮区こと千蛇城は、元々はいい領主が治めていたが、悪い妖術使いに騙され、領主は化け物に姿を変えて、土地を守っていた蛇神様は民を守るために力を使い果たして弱っていた。

千蛇城の主こと十層のボスを倒せば、蛇神様の力が元に戻るが、待っている間にも蛇神様の力が減りつつあり、いつ消えてしまうのか分からない状態であった。

そこで、魔刀の魔力があれば、少しだけだが蛇神様の力が戻るらしいが、その魔刀は《夕映の竹林》の奥にいる、用心棒が姿を変えたと言われているオロチ人間が持っているとのこと。

それを聞いて、《夕映の竹林》に戻ったハルト達は魔刀を手に入れるべく奥へと進んでいった。

その途中、いくつものエネミーがいたが

 

「ハァー!」

 

次々と湧いてくるエネミーを倒していきながら、先に進んでいた。

 

「よっと」

 

シロコイの放った矢が数十メートル先のエネミーに当たり、ポリゴン状に四散した。

 

「凄いですね、シロコイさん。百発百中ですね」

 

「まあな、伊達に弓の熟練度は上げてないぜ」

 

コハルの言葉に、軽く返すシロコイ。

SAOでは滅多にいない弓使いであるシロコイは、次から次へとエネミーに矢を当てていった。

そんな会話をしながら、だいぶ奥まで進んだところでアルゴが口を開いた。

 

「挑む前に一旦、情報を整理するゾ。βテストと同じなら、相手は恐らく本来なら迷宮区レベルのボスだろうナ」

 

「フロアボス前の対策に打って付けですね」

 

「しかし、私たちがいてお邪魔にならなければいいんですが」

 

「今更かよ。あんたらは足手まといにならねぇつもりでここまで付いてきたんだろ。なら、もう少し自信持ちやがれ。そんな考えで一緒に戦われても邪魔なだけだ」

 

「そうですね。ありがとうございます」

 

ザントなりの気遣いにお礼を言ったシンカー。

 

「よっしゃー!行くぜ!」

 

クラインが気合いを入れながら先に進むと、一体の黒いオロチ人間とその周りに二体の普通のオロチ人間が現れた。

 

「あれがボスだな・・・」

 

一人だけ見た目が違うオロチ人間を見て、シロコイが吐く。

すると、こちらに気付いた黒いオロチ人間が

 

「カ・・・タナ・・・ワタサヌ・・・ワタサヌゾ!」

 

「うおっ!?喋るのかよ」

 

「かなり怒っているようですね。我々が刀を奪いに来たのだと判断したようです」

 

「来ますよ!」

 

「三体、一斉に来られたら溜まったもんじゃないな。それぞれ三手に別れて相手しよう!」

 

シロコイの提案に賛成したハルト達は、即興で相手するエネミーを決めると、それぞれ別れて、決められたエネミーと戦うのであった。

シンカー、ユリエール、ラピードペアは二体のオロチ人間の内、一体を相手していた。

 

「来るよ!ユリエール!」

 

「くっ!」

 

オロチ人間の刀をレイピアで受け止めるユリエール。

 

「ガウッ!」

 

その隙を付いて、ラピードがオロチ人間の腕に嚙みつきダメージを与える。

オロチ人間は嚙みついているラピードに刀を振り下ろしたが、当たる前に回避したラピードはシンカーとユリエールの下に戻る。

 

「凄いなこの子は」

 

「ザントさんが言ってた人間の技を盗んで強くなっているというのは間違っていないようね」

 

シンカーとユリエールがラピードを評価しながら、HPが半分以下になったオロチ人間を見る。

次で決めようと、互いの視線で合図した二人は動き出した。

 

「ウオオオーーー!」

 

シンカーがオロチ人間目掛けて斧の振るが、オロチ人間はそれを刀で受け止め膠着状態になる二人。

そこに、ラピードがオロチ人間の足に嚙みつき、オロチ人間は体勢を崩した。

 

「これで終わりです!」

 

その隙をユリエールが<シューティングスター>でオロチ人間の体を突き刺すと、そのまま四散した。

それと同時に、もう一体のオロチ人間と戦っていたアルゴ、クライン、シロコイペアも

 

「俺があいつの頭を射抜くから二人はその隙を作ってくれ」

 

「おう、任せろ!おりぁーーー!」

 

クラインが槍で攻撃しようとするが、それよりも早くオロチ人間は刀を振り

 

「おっと!油断大敵だゾ」

 

クラインに当たる前にアルゴが防いだ。

「悪ぃ!」とアルゴに言うと、気を取り直して、槍をオロチ人間の体に勢いよく突き刺したクライン。

勢いよく槍に突かれ、腹部分を押さえて足を地面に付きながら後ろに下がらさったオロチ人間は体勢を立て直し、前を見上げ・・・目を見開いた。

 

「チェックメイト」

 

そこには弓を構えていたシロコイがいた。

シロコイの放った矢は真っ直ぐに飛び、数十メートル先のオロチ人間の脳天に見事クリティカルヒットした。

脳天に矢が刺さったオロチ人間は何が起きたか分からない的な表情をしながら、体をポリゴン状に四散させた。

 

「ナイスショット!シロコイ!」

 

「当然だろ。俺は狙撃手。アタッカーやタンクの後ろから、隙を付いて敵を狙撃する・・・スナイパーだ!」

 

褒めてきたクラインに向かって、自慢げに語ったシロコイ。

そして、黒いオロチ人間担当のハルト、コハル、ザントペアはというと

 

「なるほどな、動きは他の奴よりも早ぇが見切れない早さじゃねぇな」

 

そう言いながら、刀の攻撃を躱すザント。

ある程度、オロチ人間の動きを理解したザントは、ハルトとコハルに指示する。

 

「ボスの攻撃は基本的に刀を振るだけみてぇだ。刀の振る早さは他のと少し早ぇが見切れない早さじゃねぇ。奴の攻撃を止めて、その隙に一気に腹を狙うぞ」

 

「「了解!」」

 

ザントの指示に応えた二人は走りながらオロチ人間の下に近づく。

そんな二人目掛けてオロチ人間は刀を振ったが

 

「ハッ!」

 

ハルトが槍を横にして防ぐ。

 

「ヤァーーー!」

 

その隙にコハルが刀を持っている腕目掛けてレイピアで攻撃すると、オロチ人間の腕が上に上がり、隙だらけの腹が見えた。

 

「ハルト!」

 

その隙を逃さずザントがハルトに声を掛けると同時に<オブス・ストライク>を発動させ、ハルトも槍を持ち直して<コンヴァージング・スタブ>でオロチ人間の腹を突き刺した。

二つの強力なソードスキルを食らったオロチ人間は後ろに吹き飛ばされるも、僅かなHPを残しつつ立ち上がり、ザントに向けて刀を構えながら迫ってきた。

ザントもまた、迫ってくるオロチ人間に向かって走り、二人が交差すると同時に互いの剣が振られ、互いに攻撃する前とは逆の位置で止まる二人。

しばらく静寂が続いたが、ザントは両手剣を背中にしまい

 

「てめえの敗因は一つ。攻撃に感情が混ざりすぎたことだ」

 

両手剣で体を大きく斬られたオロチ人間は、HPがゼロになり、前のめりに倒れた。

 

「終わったね、ハルト」

 

「中々、強敵だったよ・・・」

 

無事ボスを倒し、安堵するハルトとコハル。

 

「なんとかなりましたね・・・」

 

ハルト達の後ろからシンカー達がこちらにやって来た。

どうやら、向こうも無事倒したようだ。

 

「そんじゃ、ボスも倒したことだし、さっさと魔刀を・・・!?」

 

クラインが喋っている途中、倒れていたはずのオロチ人間が起き上がった。

 

「そんな!倒したはずなのに!・・・」

 

「待って、様子がおかしい・・・」

 

復活したオロチ人間にコハルが声を上げたが、その隣でハルトは冷静にオロチ人間を見ていた。

復活したと思われるオロチ人間は、頭を押さえながら苦しそうに喋り出した。

 

「オオ・・・シネヌ・・・コノ・・・ノロイガワガミヲ・・・カイホウシ・・・」

 

「攻撃してこない?・・・」

 

復活して尚、攻撃してこないオロチ人間にシンカーが疑問の声を出す。

苦しそうにしているオロチ人間に、コハルが恐る恐る声を掛けた。

 

「あの・・・どうしたんですか?」

 

「それがシガ・・・愚かダッタ・・・あれほど止められたノニ・・・魔刀に手をダシテ・・・」

 

「さては、あんた。魔刀に手を出した用心棒だな?」

 

オロチ人間の言葉を聞いて、クラインがある程度察したように喋った。

 

「呪イを解かねば、死ぬコともデキぬ・・・魔刀がこの身カラ離れテくれない・・・蛇神に・・・許しヲ・・・」

 

そう言って、オロチ人間は言葉を止めた。

ハルト達はどうするか悩んだ末、ハツに聞いてみることにした。

 

 

 

 

「・・・というわけなんです。蛇神様に呪いを解いてもらうようお願いできますか?」

 

ハツの所に戻ってきたら、コハルが早速、呪いの解き方について聞いてきた。

ハツは「蛇神様の声を聞いてみる」と言い、目を閉じて集中していたが、しばらくして口を開いた。

 

「《夜藤の河原》にある祠。そこに納められている宝玉を使えば、彼は元に戻る」

 

「宝玉・・・ああ、あれか・・・」

 

ザントは思い出したかのように喋った。

 

「宝玉ってあれだよね?マテルちゃんが言ってた」

 

「あの祠にある奴だろうな。取りに行って来る」

 

早速、宝玉を取りに行ったザント。

しばらくすると、右手に白い玉を持ちながら戻ってきた。

 

「おらよ。これでどうだ?」

 

「・・・これで間違いありません」

 

持ってきた宝玉が本物であるかどうかハツに確認したザントは、すぐさま、オロチ人間の所に戻った。

早速、宝玉を差し出すと、オロチ人間は涙を流した。それと同時に宝玉から光が放たれオロチ人間の体が光り始めた。

 

「ありがとう・・・これでやっと、彼女の下に行ける・・・強き者たちよ・・・どうか、あの千蛇城の主を倒して、平和を取り戻してくれ・・・」

 

一瞬、侍の生前の姿が見えたと思ったら、風と共に体をポリゴン状に四散させ、魔刀が地面に置かれていた。

ザントはそれを拾い、マジマジと見た。

 

「扱いきれなかった力に振り回されて身を滅ぼしちまった男の末路か・・・悲しいなぁ」

 

「どんな力でも、使いこなせなけりぁ人間ってのはすぐ化け物になっちまうもんさ。リアルでも仮想世界でもな」

 

クラインの呟きに軽く返しながら、ザントは魔刀をストレージにしまうとハツの所に戻るのであった。

 

 

 

 

「さ、おハツちゃん!この刀があれば、蛇神さんもしばらくは大丈夫なんだな?」

 

ハツの所に戻ったら、クラインが前に出て、ハツに魔刀を渡した。

ちなみに、ザントのストレージに入ってたはずなのに、何故クラインが魔刀を渡しているのかというと、侍として渡したいという名のただ単に自分が渡せばハツに褒められるかもしれないという理由でそれはもう必死に懇願してきて、ザントはめんどくさそうな表情をしながら渡す役目をクラインに譲った。

 

「ええ、人間にとって大きすぎる力でも、蛇神様なら上手く使えるはず」

 

ハツは笑みを浮かべながら言葉を返していったが、突然、ハッとした表情になると

 

「あ!蛇神様からあなた達に伝えたいことがあるみたい・・・「千蛇城の主は侍の長にして、あらゆる物を切り裂く、恐ろしい刀の使い手。その刀が生む風すら凶器となり蛇の毒を広く運ぶ。用心すべし」」

 

「ボスの情報、ありがとナ」

 

ボスの情報を話してくれたハツに、アルゴがお礼を言う。

すると、ハツはザントの方を見ると、ハツの手元が突然光り出し、その光は形を変えて一本の巨大な刀になった。

 

「それと、蛇神様があなたに「強き者よ。あなたに我が秘宝の一つ、《蒼嵐(そうらん)》を授けよう」だそうよ」

 

そう言いながら、巨大な刀をザントに渡した。

 

「こいつは・・・刀か?」

 

「いや、形は大太刀だが、こいつは両手剣に部類されていやがる」

 

そう言いながら、ザントは《蒼嵐》を鞘から取り出しその場で一振りすると、笑みを浮かべた。

 

「なるほど・・・中々いい刀じゃねぇか」

 

「貰っておく」とハツに言うと、《蒼嵐》を鞘に納め背中に背負った。

それを見たハツは笑みを浮かべ

 

「私は家に帰るわ。父様は分からずやだけど、私のことを心から思ってくれたんでしょう。これ以上、心配かけられないわ。これは少ないけど、お礼よ・・・あなた達の武運を祈っています」

 

そう言うと、ハツは去っていった。途中、こちらに幾度もなく振り返って手を振りながら。

 

「いいよなザントは。立派な刀を手に入れてよう」

 

「んだぁ?てめえは余程侍が好きなのか?」

 

「応ともよ!侍こそ正に俺の生き様よう!名だたる名刀、妖刀を使いこなしてこそ、真の侍ってもんよ!」

 

「そうかよ、精々頑張ることだな」

 

クラインの言葉を軽く流したザントは

 

「そんじゃ、報酬の山分けといこうぜ」

 

報酬の山分けをするべく、ハルト達を自身の周りに集めた。

一通り、報酬の山分けを終えると、シンカーがハルト達の方を見ながら口を開いた。

 

「私たちは仲間たちの所に戻ります」

 

「皆さんには大変お世話になりました。本当にありがとうございました」

 

シンカーの隣でユリエールもハルト達にお礼を言った。

 

「それにしてもハルトさん。中々様になってますね」

 

「そ、そうかな・・・」

 

シンカーは言葉に、初期装備からフード付きの緑コートに着替えたハルトは照れくさそうに返した。

クエストの報酬で手に入れた緑コート。話し合いの結果、ハルトの物になり、ハルトは早速、新装備を着るのであった。

 

「本当に色々とありがとうございました」

 

「フロアボスに参加できないのは、心苦しいのですが・・・」

 

申し訳なさそうに言うユリエールにコハルが口を開く。

 

「シンカーさん達は始まりの町にいる人たちや低層プレイヤーを支えています。それだって立派な戦いですよ」

 

「ああ。この世界じゃ生き延びることが何より大切だからな」

 

「あんた達が攻略組を裏で支えているおかげで俺みたいな中層プレイヤーが最前線に出ることができたんだ。感謝しているよ」

 

コハルに続いて、クラインとシロコイもシンカーとユリエールに言葉を発した。

 

「お前からも何か一言ないのカ?」

 

アルゴはそう言うと、ザントの方を見た。

ザントは「ハァー」とため息をつき

 

「・・・下の雑魚共。馬鹿なことさせねぇように、しっかり、抑えておけよ」

 

「はい・・・」

 

ザントらしい言葉に、シンカーは嫌な顔をせず返した。

 

「それでは皆さん、お気を付けて!」

 

「さようなら。いつかお礼させてくださいね」

 

そう言いながら、シンカーとユリエールは去っていった。

 

「それじゃあ、オレッチも戻るヨ。突破したら教えてくれよナ!」

 

アルゴも一言喋ると去っていった。

残ったのは、ハルト、コハル、ザント、ラピード、クライン、シロコイの五人となった。

 

「さて・・・後はボス攻略だけだな!」

 

「ああ!俺にとって初のボス戦・・・全力で援護するぜ」

 

「まぁ、精々死なねぇことだな」

 

「ヴォン!」

 

そう言いながら、十層迷宮区改め千蛇城に向かった三人と一匹。

 

「私たちも行こう!」

 

「うん。新しい装備も手に入ったし、気合い入れていこう!」

 

新たに装備を整えたハルトもコハルと共に千蛇城へ向かうのであった。




・アルゴは戦慄した
流石のアルゴもテイム(物理)に絶句してしまいました。

・ハツ
十層のみに登場するNPC。こちらもまた、NPCにしては中々の出来栄えだと私は思う。

・ザントブチギレ
七層でトウガの言葉があって尚、自分の目の前で雑魚共が弱いくせにエリート面するあまり、キレました。(なお、斬ろうとはしたが、流石に殺そうとはせず、二度と最前線に来られないようにしようとした模様)

・遭遇、キバオウとシンカー
後の騙す側と騙される側である。

・一部を除いて
ハルト、コハル、アルゴのことです。クラインとシロコイは強いと理解してますが、ザントの中では、まだ雑魚判定です。

・《蒼嵐》
大太刀の形をした両手剣。イメージは「テイルズオブベルセリア」のシグレが持っている大太刀《號嵐》。

・ハルトの新装備
アサシンアバターの緑バージョンを着ています。


SAO_UW20話を見て思ったこと
・サトライザー、アンチスパイラル化する
・みんなの思いが一つに!
・やっぱり、メインヒロインはユージオだった


ハルトとザント、パワーアップ。
新装備を手に入れ、万全の体勢でボスに挑む。
次回はボス攻略です。
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