ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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タイトルを見て、誰が登場するのか察した人は少なくないかもしれない。


ep.21 復活の勇者

薬師の所に戻ったハルト達は、巨大キノコからドロップした素材を渡した。

 

「これで儀式の準備は整いました。後は・・・」

 

「待ってくれ。まだあるのか?」

 

薬師の言葉に、シロコイが疑問の声を上げる。

 

「はい、これはとても複雑な儀式なのです。最初にこの地へやって来たあなた方には特に重要な準備をお任せしました。そして、後から来た旅人の方々には、多くの手が必要な下準備を任せております。それに関しては、おそらく、弟子によって手配されているでしょう」

 

「なるほどな。やはり、俺たちはお前たちの露払いだったようだな」

 

薬師が説明している最中、聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くと、残りの「紅の狼」の面々がいた。

しかし、カズヤの装備は変わっていないが、トウガは青のラインが描かれている黒ズボンに白の半袖の上に胸部アーマーを、ソウゴは甲冑っぽい赤の鎧を着ており何処か武士を感じる装備と二人も装備を新しくしていた。

 

「トウガ君!来てたんだね!」

 

「トウガさん!それにソウゴさんとカズヤさんも!」

 

「お前たち、きちんと戦えたか?ハルト達に迷惑をかけなかったか?」

 

「大丈夫だよトウガ。二人には色々と助けられたよ」

 

「そうか、それは何よりだ。二人共、よくやったな」

 

トウガからの労いの言葉に、コノハとレイスは照れくさそうに微笑んだ。

そんな二人に笑みを浮かべながら、トウガはシロコイとサーニャの方を向く。

 

「お前たちのことはコノハとレイスから聞いている。俺はトウガ。紅の狼のリーダーだ」

 

「シロコイだ。よろしく」

 

「サーニャですわ。あなたの事は二人からお聞きしておりますわ。二人にはサーシャの手伝いをさせておいて、自分は最前線を攻略。ギルドリーダーとしてどうかと思いましてよ?」

 

「・・・生意気だな。つい最近、最前線に来た分際で・・・」

 

初対面にも関わらずトウガをダメ出しするサーニャに、ソウゴが反応するも、トウガがそれを制した。

 

「そう思われても仕方ないさ。二人が一層で頑張っている間、俺たちは最前線を攻略してたんだ。二人をのけ者にしたと思われて当然だ」

 

「サーニャさん。あまりトウガ君を責めないでください。トウガ君はいつも僕たちがサーシャさんの手伝いをしたいって言ったら、許可してくれるだけじゃなく、サーシャさんの手伝いをして攻略やレベル上げが遅れた分、僕たちが他のみんなに追いつける様に色々と計画を立てたりしてくれているんだ」

 

「・・・そこまで言うのなら、ここは引きますわ。改めて、私はサーニャ。以後お見知りおきくださいませ」

 

コノハのフォローもあり、ひとまずは納得したサーニャは改めて自己紹介をした。

 

「今度は俺たちだな。俺はトウガ。後ろにいる二人が・・・」

 

「・・・ソウゴだ」

 

「俺はカズヤだ!よろしくな!」

 

「お前たちと一緒に行動したコノハとレイスを含めて、俺たち五人はギルド、紅の狼のメンバーだ」

 

トウガ達「紅の狼」の面々も自己紹介を済ませた。

一通り自己紹介を終えたところで、シロコイが口を開く。

 

「ところで、さっき言った露払いって・・・」

 

「ああ、そうだ。忘れてた。薬師、あんたの弟子から言われてきた素材を持ってきたぞ」

 

シロコイの問いに答えながら、トウガは薬師に素材を渡した。

 

「ありがとうございます。これで儀式を行えます」

 

「そうか・・・どうやら、俺たちで最後だったみたいだな」

 

「? どういうことだ?」

 

「一番最初に十四層に来たお前たちは巨大キノコ討伐のクエストをしただろ。だが、後から来たプレイヤー達は集める素材はそれぞれ違ったが、共通して薬師の弟子から儀式に必要な素材集めのクエストを受注してたんだ。そして、巨大キノコを最初に来たプレイヤーが討伐して、素材集めクエストを後から来たプレイヤー達が一定の数こなすことで、初めてこの儀式のクエストは進むんだ。俺たちはその素材集めクエストのクリアに必要な数の最後の組だったっということだ」

 

トウガの説明に納得するハルト達。

ハルト達がサーシャの所に行っている間、彼らは三人で情報収集しながら素材集めをしていたのだろう。コノハとレイスのことに関しても、巨大キノコ自身、相当手強いボスだと予想して、二人をこちら側に置いたのだろう。

そして、巨大キノコを討伐し、儀式に必要な素材を全て集めきったことで、儀式を行う準備ができたと。

そんなことを思っていると薬師が口を開いた。

トウガの予想通り、既に儀式の準備が完了している。儀式は集めた素材を融合して作った香で森の王の力を治めるとのこと。その最中に香の匂いに反応して魔物たちが暴れ出してしまう。

そこで、儀式が終わるまでの間、ハルト達には暴れている魔物基エネミーを止めてほしいとのこと。

弟子が《憂愁の渓流》に魔物を誘導しているはずだから、そこに行ってほしいと。

やることが決まったところで、トウガが口を開いた。

 

「決まりだな。早速、《憂愁の渓流》で待っている弟子の所に行くぞ」

 

「あなた方も付いてくるおつもりですの?」

 

「当然だろ。俺たちは攻略組だ。最前線を攻略しないで何を攻略するんだ?それに、お前たちにはコノハとレイスが世話になったしな。行くぞ、ハルト、コハル、サーニャ、シロコイ」

 

「あなたも呼び捨てですわね・・・全く、最近の殿方はデリカシーというものがないのかしら・・・」

 

サーニャが呆れながら呟く中、シロコイは顔をしかめながらトウガに問いかける。

 

「・・・一応聞いておくけどお前、俺を何歳だと思っている?」

 

「? 12か13ぐらいじゃないのか?」

 

「俺・・・19だぞ」

 

「え?」

 

 

 

 

《憂愁の渓流》をしばらく進んでいると、地響きが聞こえてきた。

 

「・・・お出ましのようだな」

 

トウガがそう吐くと同時に、前方から大量のエネミーの群れと薬師の弟子がこちらに向かってきた。

 

「おーい!後は頼むぞー!」

 

「あれを全部倒すのかよ!?」

 

エネミーの数の多さに声を上げるカズヤ。

 

「あれくらいなら行けますわよね?」

 

「ふん、当然だ。お前の方こそ、大口を叩いたからには足引っ張るなよ」

 

「待って!何か大きな音が聞こえてこない・・・?」

 

やる気満々のサーニャとトウガだが、そんな二人にコハルが疑問の声を上げる。

すると、エネミーの群れの後ろに続いて巨大な亀のエネミーが近づいてきた。

 

「どうやら一筋縄ではいかなそうだな」

 

「上等!」

 

トウガの声にソウゴが応えながら、「紅の狼」の面々は巨大亀の方に向かった。

 

「張り切っているな、あいつら。俺たちは周りのエネミーをなんとかするぞ!」

 

シロコイの言葉に頷きながら、ハルト達は大量のエネミーを倒していく。

周りのエネミーはそれほど強くなく、先程と同様、特に苦戦することなく倒していった。

そんな中、サーニャの後ろから一体の虫型エネミーがサーニャ目掛けて突進してきた。

気配を感じたサーニャはエネミーには反応したものの、ここまで近づかれては防御も回避も間に合わない。

 

「させるかっ!」

 

だが、虫型エネミーはサーニャへの突進を成功させる前に横からやって来たハルトによって体を斬られポリゴン状に四散した。

 

「大丈夫、サーニャ?」

 

「心配ご無用ですわ・・・とは言え、助けてくださり感謝いたしますわ」

 

強気に返したものの、少し間を開けて礼を言うサーニャ。

サーニャの無事を確認したハルトはすぐさま、次のエネミーに目標を定め、周りのフォローをしながら次々と倒していった。

 

「・・・・・・」

 

だが、ハルトは気付かなかった。戦っている最中、コハルがずっと不安気な表情で自分を見ていたことに。

一方、巨大亀を相手にしている「紅の狼」の面々は

 

「オラッ!」

 

巨大亀の突進を盾で防ぐカズヤ。

巨大亀が膠着状態になっている隙にトウガ、コノハ、レイスの短剣使い三人が素早い動きで巨大亀に迫り攻撃したが

 

「くっ!」

 

「流石に硬いか」

 

甲羅で防がれ攻撃が全く通らない状況に苦い顔をするコノハとトウガ。

その隙に膠着状態から回復した巨大亀はその巨体を揺らし辺りに毒の胞子を噴出した。

 

「うわっと!?こいつも毒か!」

 

慌てて回避に成功し、巨大亀から距離を取るカズヤ。

 

「ちっ、甲羅で防がれるせいでダメージがほとんど入られねぇな」

 

「なんとか、甲羅に覆われていない部分を攻撃できればいいんだが・・・」

 

毒を吸わないよう巨大亀から距離を取り、策を考えていたトウガとソウゴだったが

 

「ソウゴ、お前に頼みたいことがある」

 

「・・・なんだ?」

 

突然、トウガに頼み事をされ、トウガの方を向くソウゴ。

トウガはソウゴに近づき耳打ちする。やがて、二人は笑みを浮かべ

 

「できるか?」

 

「当然だ」

 

何やら巨大亀を倒す算段がついたトウガとソウゴ。

その間、巨大亀は先程の突進をもう一度トウガ達にしてきたが

 

「させるかよ!」

 

カズヤが再び防ぐ。

 

「押さえてろ!カズヤ!」

 

巨大亀の突進をカズヤが防ぎ、動きが止まる巨大亀。

そこにソウゴが駆けつけ、槍を巨大亀の首の下に置くようにかざすと

 

「うぉーーー!!」

 

思いっきり槍を上に上げた。

槍に首が置かれていた巨大亀は、力強く振り上げられた槍の力により、その巨体ごと空中に上げられ、裏側にひっくり返った。

甲羅が地面に着いてしまい、元に戻ろうと必死に手足を動かす巨大亀。

その隙をトウガ達は見逃すはずもなく

 

「ヤァ!」

 

「隙だらけっす!」

 

コノハとレイスの攻撃が巨大亀のHPを減らす。

そこに、上に跳んだトウガが短剣を構え

 

「そこなら防御はできないだろ?」

 

そう言いながら、トウガは丸出しになっている巨大亀の腹を十字に切り裂いた。

巨大亀がポリゴン状に四散する中、トウガは短剣をしまうと仲間たちの所に戻る。

 

「これで全部みたいだな」

 

「皆さん、ご無事ですわね?よろしゅうございました」

 

サーニャが周りに労い言葉を掛ける。

そこに、弟子が近づいてきた。

 

「いやー、流石は旅人だ。俺の見込んだ通り、いい腕だったな!」

 

「あのー、儀式は無事に終わったんですか?」

 

「ああ!薬師様がお礼を用意しているはずだから会いに行ってやってくれ」

 

コハルの問いに答えると、弟子は去っていった。

ハルト達もまた、薬師の所に戻るのであった。

 

 

 

 

薬師の所に戻ったハルト達は、薬師から儀式の意味と十四層のボスについて聞いた。

森の王こと第十四層フロアボスは強力な力を持っており、その力を治める為に儀式が必要だったと。

儀式によって弱体化したと思われるボスは、巨大な剣を持っており、その刃に触れた者を動けなくしてしまうと。

そのことを伝えると、薬師はハルト達に報酬を渡して去っていった。

 

「触れた者を動けなくするか・・・おそらくスタン攻撃だろうな」

 

「これはいい情報が手に入ったな。よし、この情報を下にフロアボスに挑もう」

 

「あら?あなた方もフロアボス攻略に参加するおつもりですの?やる気があるのはいいですけど、あまり浮かれていると死にますわよ?」

 

「よく言うぜ。先の戦いで雑魚相手に手一杯だった奴が」

 

フロアボスに挑む気のトウガに釘を刺すサーニャだったが、逆にソウゴから釘を刺されソウゴを睨んだ。

ソウゴも敵意を出してサーニャを睨んだが、またもやトウガが制した。

 

「参加するつもりも何も、俺たちはフロアボスの常連だぞ。それに、十三層の事もあったんだ。前回参加できなかった分、今回の攻略で補ってみせるさ」

 

「・・・まあ、ついていきたければ、ご自由にどうぞですわ」

 

「てめぇはもっと素直に他人にものを頼めねぇのかよ」

 

相変わらずツンとした態度で喋るサーニャにソウゴが悪態ついた。

その横で、ハルトとコハルが苦笑いしながら話していたが

 

「相変わらずだね、サーニャは。コハルも当然参加するよね?」

 

「もちろん、私もついていくよ。だって、私はあなたのパートナーだから・・・だけど・・・」

 

「ん?どうしたの?」

 

喋っている途中で言い淀んだコハルに、ハルトは疑問の声を出したが

 

「何でもないよ!行こう!」

 

そう言いながら、コハルは走っていった。

 

「・・・あいつ、なんか様子が変だったけど、何かあったのか、ハルト?」

 

「いや、特には・・・喧嘩とかもしてないし・・・」

 

いつもと様子が違うコハルに、トウガとハルトが疑問に思っていると

 

「あまり詮索なさらない方がよろしいですわよ。乙女には誰にも明かせない秘密の一つや二つありますもの」

 

二人に向かって忠告しながら、サーニャもコハルの後に続いた。

 

「サーニャの奴もああ言っているし、ひとまずは辞めておこう。でも、ハルト。いつかは、きちんと話を聞いた方がいいと思うぞ。何かあった時に後悔してからじゃ遅いからな」

 

「・・・分かっている」

 

トウガとハルトも、ひとまずは保留という形で決めると、攻略会議の場に向かうのであった。

 

 

 

 

会議の場には既にALSとDKBの主力が集まっていた。

皆、前回の事もあったからか、いつも以上に緊張感が高まっていた。

 

「キリトさん達と血盟騎士団の人たちは、まだ来てないね」

 

「これが攻略組ですのね・・・参加資格が得られるよう、腕を磨いてきましたが、少し不安ですわ」

 

少し不安そうな表情になるサーニャ。

 

「全く、あれだけ俺に嚙みついたのに、今更自身を無くしてどうする。少なくともお前はあいつら(ALSとDKB)より強い。それは、フロアボス攻略の常連である俺が保証する」

 

「あら、あなたに保証されていただく必要はなくてよ。私は私の力で攻略組に実力を認めさせてみせますわ」

 

「そうか。まっ、参加できるよう頑張ることだな」

 

「言われなくともですわ・・・あなたも不思議な人ですわね。大抵の人なら、とっくに私の態度に腹を立てて構わなくなっている頃合いですわよ」

 

トウガのフォローに対して冷たく返しても、未だに凛とした態度で話すトウガに、サーニャは何処か呆れるように微笑みながら、トウガの後に続いた。

その様子をシロコイ達はやれやれといった感じで見守っていた。

 

「サーニャも素直じゃないな。それにしても彼、サーニャの物言いに全然動じないな」

 

「基本的にあいつはちょっとのことじゃ、それこそ、自分の悪口とか言われてもキレたりしねぇよ」

 

「なるほどな。サーニャもなんだかんだ言って、彼のことを信頼しているしな」

 

「・・・まあ、実力はともかく、あいつの態度に関しては、俺はあまり好きになれねぇな」

 

「そうか?ツンツン少女も悪くないと俺は思うぜ!」

 

「それはお前だけだ。バレンタインでチョコを貰った数、未だに0野郎」

 

「ボス戦前に傷を抉ってんじゃねぇよ!」

 

ソウゴのあんまりな物言いにキレるカズヤ。

そんなやり取りをしながら、ハルト達はボス攻略会議に参加するのであった。

 

 

 

 

「なるほど、スタンか・・・状態異常の中でも極めつけに厄介だな。ポーションでは回復できないし、攻撃の前兆を見切って回避するのがベストだな」

 

ハルト達が持ってきたボスの情報を聞いて、最善の策を立てるリンド。

すると、その隣でキバオウがサーニャの方を向き

 

「ジブン、サーニャとか言うたな」

 

「ええ、それが何か?」

 

キバオウの問いにサーニャが答えると、キバオウは目線をサーニャの持っている《フィンスタニス》に向けた。

 

「ジブンの持っとる赤い剣、噂の魔剣ちゃうか?」

 

「!? 敵のHPを吸収することができるユニーク武器か!?」

 

キバオウの言葉にリンドが過激に反応する。

噂の魔剣に周りがざわめく中、キバオウが声を上げた。

 

言い値(言った値)の分だけコルを積むからワシらに譲ってくれ!・・・ちゅうたら?」

 

「お断りいたしますわ。お金で売り渡す気などありませんの」

 

きっぱりと断るサーニャ。キバオウも分かっていたと言わんばかりに頷くと、今度はリンドが話しかける。

 

「君の気持ちは分かるよ。だが、その武器は現時点でアインクラッドにただ一本存在する貴重なユニーク武器なんだ。どこで手に入れたのか。それだけでも教えてくれないか?・・・この場を収める為にも・・・頼む」

 

頭を下げて頼むリンド。周りからサーニャに嫉妬の目線が向けられている。

そんな視線を気にともせず、サーニャはリンドの問いに答える。

 

「いいでしょう。お教えいたしますわ。この剣はシュルーマンを倒した時にドロップいたしましたの」

 

「!?・・・つまり、モンスターから盗まれたものだったのか?」

 

「そのようですわね。きっと、元はどなたかの持ち物だったのでしょうね。もし、持ち主が現れたのら、すぐにでも返すつもりでしたのけど・・・」

 

サーニャの言葉に驚くリンド。

サーニャの話が本当なら、彼女はどこにでもいるような雑魚エネミーのシュルーマンから、それも、ユニーク武器というレア武器よりも更にレアな武器をドロップしたことになる。

貴重なユニーク武器の手に入れ方が、そんな一生分の幸運を全て使ったような話であったことを、リンドは予想していなかった。

最も、彼女が今日まで魔剣を持ち続けているのは、持ち主がまだ見つかっていないか、あるいは・・・

ひとまず、サーニャの説明を聞いて納得したリンド。しかし、周りはあまり納得しておらず、未だにサーニャを睨んでいた。そんな中

 

「なんだよそれ・・・汚ねぇぞ!ネコババじゃねぇか!」

 

一人の男がサーニャに向かって叫び出し、全員が声がした方を見ると、そこにいたのは、これまでに幾度も攻略組の揉め事の発端になったであろう黒のレザーマスクの男だった。

その男に伝染されたかのように、今度はサーニャに嫉妬の目線を向けていたDKBの男が叫び出す。

 

「死んだ人から奪い取った武器を使って、強くなって・・・それで、いい気になってたのかよ!?」

 

「み、見殺しにしたんだ!元の持ち主にMPKを仕掛けて・・・それで奪い取ったんだ!」

 

男の言葉に乗せるように、レザーマスクの男が更にサーニャに向かって叫ぶ。

すると、今まで無表情で流していたサーニャの表情が怒りに染まった。

 

「・・・今、発言をしたのはどなたですの?私を人殺しだとおっしゃいましたわね。あまりに愚劣な濡れ衣ですわ」

 

言葉の一つ一つに怒りを含ませゆっくりと問いかけるサーニャ。

しかし、それに答える者は当然いない。その代わりに

 

「お前、何が目的だ?」

 

「何・・・!?」

 

この空気を作った黒のレーザーマスク男に、トウガが真剣な表情で問いかけた。

しかし、その表情には若干の怒りが含まれていて、下手に刺激すると、七層の時みたくキレかねない状態であった。

極力冷静さを保ちながらトウガは、疑問の声を出した男に更に問いかける。

 

「これまで、攻略組の間には幾度もなく揉め事が起きていた。だが、その発端になっていたのはいつもお前の発言だった。それも、一層の時からずっとだ。まるで、俺たちが仲違いするのを望むかのようにだ。答えろ。攻略組を仲違いさせようとて、一人のプレイヤーを大勢で責めさせようとして、挙句の果てには人殺しをさせようとして・・・お前は何を企んでいる?」

 

「うっ・・・!」

 

男はトウガの怒気に圧倒されそうになったが

 

「う、うるさい!何が企んでいるだ!下手な言い訳をして結局はそいつを庇っているだけじゃねぇか!所詮、ビーターとつるむ奴らは全員グルってことかよ!」

 

『!?』

 

男の言葉にトウガ及びキリトと親しみのあるハルト達全員の目が見開く。

 

「いい加減にせい!!さっきから証拠もない中傷を次から次へと、見苦しいぞ!!」

 

男の過激な発言に黙って聞いていたキバオウがキレた。

しかし、男は黙ることはなく、今度はキバオウに目線を向くと

 

「キバオウさん!あんたもだ!ビーターの連中と馴れ合って、腑抜けちまって・・・それで、みんなが死んだんだ!」

 

憎しみの籠った声でキバオウを批判した。

更に傍で聞いていたプレイヤー達も

 

「あーあ、リーダーがしっかりしてなかったから、ボス戦で犠牲者が出たんだ・・・」

 

「MPKの奴に毅然とした態度も取れないなんて幻滅だよ」

 

ALS、DKB関係なく、その場にいたほとんどのプレイヤーが自分たちのリーダーに文句、或いは罵倒した。

 

「ハルト・・・オレンジカーソルになったらごめんね・・・私、こんなの許せない!」

 

「ダメだコハル・・・!気持ちは分かるけど、それだけは辞めてくれ・・・!」

 

腰に装備してある短剣を引き抜こうとし、今にでも攻略組に飛び出しかねないコハルと、それを宥めながら自身の怒りも必死に抑えるハルト。更にその横では

 

「・・・すまない、ソウゴ、カズヤ。俺は今、あのゴミ虫共を切り刻んでやりたい!」

 

「奇遇だな・・・俺も今すぐにでも、あいつらの喉に槍をぶっ刺して、黙らせてやりてぇと思っている」

 

「気持ちは分かるが、落ち着け二人共・・・!」

 

こちらでもまた、怒りを抑えながらも、すぐにでも攻略組に襲い掛からんとしている表情のトウガとソウゴに、そんな二人の肩を両手で抑えながら自身の怒りも必死に抑えているカズヤがいた。

そんな必死に怒りを抑えているハルト達をよそに、コノハとレイスが必死にサーニャの無実を訴える。

 

「いい加減にしてください!僕たちはサーニャさんと何回かパーティーを組んで戦った事があるから分かります。彼女はそんなことをする人じゃない!!」

 

「そうっすよ!大体、サーニャさんがMPKの犯人だったら、シュルーマンから手に入れたって馬鹿正直に言うわけないじゃないすか!なんの根拠もないのに決めつけるな!!」

 

大声で叫び、必死に無実を訴える二人だが、プレイヤー達は二人の声を聞く気もない。

ハルト達の怒りが限界を達し、リンドがひとまず、落ち着かせようと、大声で叫ぼうとしたその時

 

「カァーツ!!!」

 

男の野太い叫び声がフィールド中に響き渡った。

 

「攻略組であろう者達が、女子(おなご)を複数で囲って責め立てるとは何事か!?」

 

突然の男の叫び声に誰もが振り向くと、そこにいたのは

 

『レジェンド・ブレイブス!?』

 

かつて、二層で強化詐欺のことがバレ、一からやり直していたはずの彼らがいた。

ネズハを含む六人の勇者たちは、会議の場に堂々と歩み寄る。

予想だにしてない人物達の登場に周りが困惑する中、黒のレザーマスク男が叫んだ。

 

「なんでお前らがこんな所にいるんだよ!?お前らには関係ないだろうが!引っ込んでろ!この犯罪者集団が!」

 

「貴卿の言う通りだ。一度は大勢の者たちを不幸にし、地に落ちた我らだ。どんな風に言われようと仕方のないことだと思っている」

 

男の言葉をすんなりと受け止めた「レジェンド・ブレイブス」のリーダー、オルランドは大声で周りに向かって叫び出す。

 

「だが、どれほどの咎めを受けようと、罪を受け入れ、この世界で生きし一人の勇者として戦い続けることを我らは再び誓った!だからこそ、こうして最前線へと戻ってきたのだ!そして、そこの姫君もまた、この世界から脱出するべく、死をも覚悟してボスに挑もうとしている。それを武器が他より優れているからとの理由で責め立てるなど言語道断!!」

 

オルランドの豪快な剣幕に圧倒される攻略組の面々。

更に、今までのやり取りを黙って聞いていたシロコイが声を上げる。

 

「彼の言う通りだ!俺たちの敵はサーニャではない!ボスだ!そして、このデスゲームを作り、大勢の人たちを不幸にした人物、茅場晶彦だ!」

 

「そん通りや!サーニャはんは戦う意思を持って、ここに来とる。それでいいやろうが!妙な勘繰りは捨てて、武器に頼らなくともボスに勝てるっちゅうことを見せたれや!」

 

「ああ、俺たちの最大の武器は今まで積み上げてきた時間、そして、団結力だ。みんなで力を合わせてこの場を乗り切るんだ!」

 

シロコイに続いてキバオウとリンドも周りに向かって叫ぶ。辺りは大分落ち着いてきたが、それでも、一部のプレイヤーは不安な表情になっていた。

しかし、先程までのギスギスとした雰囲気は無くなり、攻略会議はスムーズに進むのであった。

 

 

 

 

トラブルがあったものの、一通り攻略会議を終わらせることができた。

 

「ありがとう、皆さん。庇ってくださって・・・」

 

「気にするな。俺たちは思ったことを言っただけだ・・・最も、一番の決め手は彼の啖呵だったけどな」

 

礼を言うサーニャに対し、シロコイは微笑みながら「レジェンド・ブレイブス」の方を見た。

向こうでは、ネズハとハルト、途中で合流したキリトとアスナが楽しそうに話していた。

 

「お久しぶりです、皆さん。こうして、また一緒に戦えて嬉しいです」

 

「僕もだよ、ネズハ。もう一度君たちと一緒に戦える日をずっと待っていた」

 

「そうだな。それにしても、いい啖呵だったぜ、オルランド」

 

「ワハハハ!我ながら、見事だっただろう?」

 

豪快に高笑いするオルランドに苦笑するハルト達。

 

「それにしても、今回は血盟騎士団の人たちは来てないの?」

 

そう言いながら、アスナが周りを見渡すが、その横でキリトが答えた。

 

「そうみたいだな。攻略組も血盟騎士団が来ることを期待してたみたいだったけど・・・」

 

キリトの言葉を聞きながら、ハルトは少し前までの攻略会議の様子を思い出していた。

スムーズに進んでいた攻略会議だったが、「血盟騎士団」が来ないと分かった時の攻略組の様子は酷いものだった。会議に参加していたほとんどのプレイヤーの顔が絶望に染まり、戦う前から諦めている感じの雰囲気だったのが、今でも目に焼き付いてくる。

少し場の雰囲気が暗くなったが、オルランドが声を上げる。

 

「心配ご無用!ここには騎士団はいなくとも伝説の勇者がいる。生まれ変わった我らの力、存分にお見せしよう!」

 

「ふっ、頼りにしているぞ。ボス部屋までも油断せずに行こうぜ」

 

キリトが周りに向かってそう言う。

この場にいる全員の気持ちは一つだった。誰も死なない、死なせない。

そう決心しながら、ハルト達は迷宮区へと向かった。




・トウガの新装備
下は《ザ・ストームグリフォン》のアバター衣装ですが、上は十二層で手に入る防具です。

・ソウゴの新装備
上下、士魂アバターの赤色バージョンです。

・「俺・・・19だぞ」
安定のシロコイ

・復活の「レジェンド・ブレイブス(伝説の勇者達)
ということで、「血盟騎士団」の代わりに彼らが来てくれました。

・「血盟騎士団」
本文中にさり気なく登場していますが、大体、十二層辺りから攻略組入りしてます。(今回は不参加ですが)


バンドリの方も書いてたから、めっちゃ遅くなった。
それと、予め言っておきますが、本編では少しいい感じでしたが、トウガのヒロインはサーニャではありません。
次回は第十四層、ボス攻略となります。
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