ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

3 / 95
タイトル通り、ヤツが登場します。



ep.2 トゲトゲ頭と内気な少女

デスゲームが開始されてから三週間近くが経った。

二人は日々クエストをこなし、時には困っている人を助けたりしながら過ごしていた。

戦闘に関してはハルトの方は片手直剣だけでなく、槍や片手棍などの武器に手を付け、いつどんな敵がきても対処できるようタイプの違う武器を使いこなしながら熟練度を上げていき、コハルは恐怖で動けなくなることや前みたいに尻餅を付くこともなく、着実に成長していた。

そんな彼らは、今日もクエストをクリアしていきながら、困っている人の依頼を受けていた。

 

「言われた素材、集めてきたよ」

 

「おお!ありがとう」

 

「ハーイ!これが報酬で~す」

 

ハルトの報告に喜ぶオネェ口調の男と小太りの男。

この二人は、先程ハルト達に依頼をしてきた二人であり、素材集めのクエストをしていたが素材の一つが結構遠くのフィールドのエネミーからドロップするものであり、今の自分たちでは無理だと悩んでたところ、通りかかったハルト達の強者の風貌を感じて依頼してきたという。

 

「お二人さん、これからどうするんだい?」

 

「もし、よければ俺たちと・・・」

 

「アカン!」

 

どさくさに紛れてハルト達をスカウトしようとした二人組の声が、ドスの効いた男の声に遮られた。

全員が声がした方を振り向くと、茶色のトゲトゲ頭の男がいた。

 

「ワイはキバオウっちゅうもんや。そこのジブンら、こんな腰抜けどもとつるんどったら一生この町から出られんぞ」

 

突然現れた男のあんまりな物言いに反論する二人組。

 

「失礼な奴だな」

 

「俺たちだってここから出る覚悟を固めるつぅの」

 

「覚悟だけなら誰でもできるわ!とっとと実行せんかい!」

 

「「ひぃ・・・」」

 

しかし、男のドスの効いた言葉に怯えてしまった。

キバオウと名乗った男は用済みと言わんばかりの表情で二人組を見た後、ハルト達に話しかけてきた。

 

「ワイは今、ボスに挑んでフロアを突破できる連中を集めとる。そのためには、少しでも戦力の底上げが必要になる。どうや、こんな腰抜け連中なんか放っといてワイらと組んでボス攻略を目指さんか?」

 

キバオウの言っていることは間違いないではない。

どの道、自分たちはゲームクリアのために百層まで登る必要がある。ボスの攻略に専念することは重要なことだ。

だが、その過程で困っている人を見捨てるような選択肢はハルト達にはなかった。

 

「キバオウさん、あなたの気持ちは分かります。こんな状況だからこそみんなで力を合わせるの大切なことです。でも、その過程で弱い人を切り捨てるような選択はしたくはないです」

 

「私もハルトと同じ答えです」

 

ハルトとコハルの答えを聞いたキバオウは特に落胆することもなく、真顔で二人を見た。

 

「そっか。腑抜けた連中や・・・まぁ、腰抜け連中よりかは百倍ましか」

 

そう言うとキバオウは後ろに振り向いた。

 

「ほんなまたな。次に会う時はボス攻略会議でな」

 

そう言いながらキバオウは去っていった。

それと同時に二人組が申し訳なさそうな表情でハルトに謝った。

 

「ごめんな・・・俺たちのために」

 

「別にあんた達のために言ったんじゃない。僕らは僕らなりのやり方でこのゲームをクリアしようとしていることをあの人に言っただけ」

 

「それでも、ありがとう。あのさ、俺たちも死なない程度にクリアを目指して頑張るからさ、その・・・死なないでくれよ」

 

「勿論!それじゃあ、僕らはこの辺で」

 

「また会いましょう。お二人共」

 

二人組に別れを告げながら、ハルト達は去っていった。

 

 

 

 

あれから更に数日経ったある日。

ハルト達はいつものようにクエストを受けており、NPCに必要な素材を受け渡していた。

 

「よし!報告完了!」

 

「これからどうし・・・」

 

ぐっ~~~

 

コハルが次の予定を聞こうとした瞬間、彼女の腹から音がなった。

二人の間に微妙な空気が漂う。

 

「そ、そういえば、もう昼か。うん!お腹も減るよね!」

 

ハルトが空気を変えようと何かと喋っているが、当の腹を鳴らした本人はというと

 

「なんで仮想世界なのにお腹すくの!すっごく意地悪な仕組みだよね!」

 

「ハハハ・・・」

 

顔を真っ赤にしながら文句を言うコハルに対して、ハルトは苦笑いで返した。

 

「フフフ」

 

このままだと目立ってしまうので、何とかコハルを落ち着かせようと考えていると、ふと笑い声が聞こえた。

話をやめ、声がした方を見ると、噴水に座っている女の子がいた。

 

「笑ってしまってごめんなさい。私はサチ。君たちが楽しそうに話してたからなんだか嬉しくなっちゃって。モンスターやクエストじゃない話を聞くと落ち着くんだ」

 

そう言いながら、笑みを浮かべるサチ。

コハルはサチの横に座るとサチに話しかけた。

 

「私はコハル。それと、こっちはハルト、よろしくね。ところでサチは一人なの?」

 

「ううん。同じ高校の友達と一緒だよ。今は別行動だけどね・・・ね、少しお話ししてもいいかな?コハルって結構噂になっているんだよ」

 

「私が?どうして?」

 

「私たちと同じぐらいの女の子なのに、前線で頑張ってるすごい子がいるって」

 

「な、なんだか照れるな」

 

そう言いながらコハルは満更でもなさそうに頬に手を当てる。

 

「そうだ。これよかったら食べて。皆の分買っておいたんだけど、消滅しそうだから」

 

そう言うとサチは包みを二人に渡した。包みを開けると中身はサンドイッチだった。

 

「っ!おいしい!」

 

「うん、中々いけるね」

 

美味しそうにサンドイッチを食べる二人をサチは嬉しそうに見ていた。

サンドイッチを食べながらハルトは一つ疑問に思ったことを言う。

 

「そう言えば、どうしてサチは友達と一緒に行かなかったの?」

 

「・・・私、怖がりだから、圏外に出ただけで足がすくんじゃって・・・それなら、敵と距離が取れる長槍を買う為に皆が私のために稼ぎに行ってくれてるんだ。私、みんなに迷惑ばっかりかけてるのに・・・」

 

小さな声でゆっくりと語るサチの表情が暗くなった。

そんなサチを見かねたのか、コハルは立ち上がると、真剣な眼差しでサチを見た。

 

「怖いのは当たり前だよ!少しずつ頑張ればいいんだよ!」

 

「コハルも怖いの?」

 

「今でもすっごく怖い。でも、仲間がいるから頑張れる」

 

「・・・そうだよね。仲間がいれば私もいつかは・・・頑張れる気がしてきたよ」

 

少しだけ笑顔が戻ったサチを見ると、コハルは何か思い付いたのか手のひらを叩いた。

 

「そうだ!初めて会うエネミーの行動が分かったら、戦いやすいんじゃない?私達で調べてくるよ!」

 

「え?・・・いいの?」

 

サチは申し訳なさそうに聞き返した。

その隣で、ハルトはコハルの予想外の言葉に戸惑いながらも、コハルに話しかける。

 

「ちょ、コハル。勝手に話を進めないでくれ」

 

「サンドイッチのお礼だよ」

 

そう言い返したコハルにやれやれと感じながらも、ハルトはフィールドに向かうべく立ち上がった。 

 

 

 

 

「そう言えば、一つ気になったんだけどさ」

 

「ん?」

 

エネミーを調べるため二人は《原初の草原》の更に先の《探求の草原》でサチ達が会ったことのなさそうなエネミーを調べ、記録していたところでコハルが話しかけてきた。

 

「ソードスキルには属性もあるって本当?」

 

「あー・・・うん、本当だよ」

 

コハルの質問に答えるハルト。

 

「正確に言えば、あるものとないものがあるかな。例えば、この片手直剣のスキル。<ファイア・スラント>は火属性のスキルを持っているよ。ほら、スキル名の横に火のマークがあるよね」

 

そう言いながら、ハルトは覚えているソードスキル一覧をコハルに見せる。

 

「本当だ。でも、属性って戦いに関係あるの?」

 

「勿論あるさ。今はまだ少ないけど、これから色んな属性を持つエネミーが現れた時、そのエネミーに有効な属性のソードスキルを当てれば、ダメージが大きくなったりするよ」

 

そう言いながら、周りを見渡していると一体のネペント系のエネミーがいた。

 

「おぉ、ちょうどいいとこ所に。あいつのゲージの横に火のマークがあるよね。あれが、あのエネミーの弱点の属性だよ。さっきは剣4、5発で倒せたけど、有効な属性のソードスキルを当てれば――」

 

コハルに説明しながら、ハルトはネペントの攻撃を躱して、<ファイア・スラント>を発動してネペントを切り裂くと、ネペントはポリゴン状に四散した。

「おー!」と言いながら、コハルはネペントを一撃で倒したハルトに拍手をするが、一つ気になることがあった。

 

「でも、ソードスキルってレベルと武器の熟練度を上げないと増えないよね。私は短剣とレイピアしか鍛えてないけど、まだ属性のあるソードスキルは手に入らないよ」

 

「うーん、実を言うと僕もまだ属性のあるスキルはこれ一つしかないんだ。スキルを手に入れるにはひたすら鍛えるしかないし、βテストの時に上の層に行った人なら何か知っていると思うけど・・・」

 

言葉を詰まらせるハルト。実際、彼はまだ火属性しか持っておらず、他にどんな属性があるのかまだ知らない。

しばらく沈黙が続いたが、気を取り直して調査を再開した。

 

 

 

 

数時間後、ハルト達はサチが待つ《はじまりの街》の噴水広場に戻ると、早速レポートを渡した。

 

「うわぁ!これだけ詳しく調べてもらったら、きっとみんな喜ぶよ。本当にありがとう!コハル!ハルト!」

 

「役に立ちそうで何よりだよ」

 

「うん!喜んでもらえてよかった!」

 

お礼を言うサチに笑いながら返す二人。

そんな二人に声を掛ける者がいた。

 

「そこのキミ達」

 

「ん?」

 

声を掛けられ、振り向くと、青髪の青年が立っていた。

 

「キミ達は自分達で得た情報を公正に他のプレイヤーに伝えようとしている。とても素晴らしいことだよ。おっと、俺はディアベル。以後よろしく!」

 

「僕はハルト。こっちはコハル。こちらこそよろしく」

 

「コハルです。よろしくお願いします」

 

「うん、よろしく。この世界では知識が命を救うことが多い。これからも皆を助けてくれ。後、今はフロアボスに挑戦する為のメンバーを集めているんだ。上の層に挑戦する意志があるなら明日《トールバーナ》の街に来てくれ。期待して待ってるよ」

 

そう言うと、ディアベルは去っていった。

ハルトは去っていくディアベルを見つめながら彼の言ってたことを思い出す。

フロアボスの攻略。キバオウも言っていたが、それは次の層に進むために必要な攻略であり、このSAOをクリアするのに欠かせないことである。

無論、今までのエネミーと各が違う。最悪死ぬこともある。

それでも、二人は決意を胸に、ディアベルが言ってた《トールバーナ》に向かおうとした。

 

「行こうコハル。ボスを倒しに」

 

「わかった。ハルトが行くなら私も行く」

 

ハルトとコハルは頷き合う。

そんな二人の様子を見ていたサチが口を開く。

 

「二人とも、ボス攻略に行くなら絶対に生き延びてまた会おうね」

 

「うん!約束する!」

 

そうして、二人はトールバーナに向かった。




・オネェ口調の男と小太りの男
アニメ一話に登場した元イケメンと女の子の二人組。その後、アニメや映画で所々登場し、IFでも時々登場している。

・キバオウ
みんなお馴染み「なんでや!」の人。SAOIFではボス攻略を一緒に行った主人公にお礼を言ったり、原作で騙した人物のしていることを口悪くも応援したりするツンデレっぷりを発揮している。

・サチ
本編では悲劇のヒロインで有名なキャラ。他のSAOのゲームだと彼女のスキルは少ないがSAOIFだと彼女の色々なスキルが登場し、その一つ一つが割と強めの性能を持っている。

・属性
SAOIF本編でもある設定をそのまま活用しています。

・<ファイア・スラント>
序盤に手に入る片手直剣のスキル。割とお世話になった人もいるかもしれない。

・ソードスキルと熟練度
この世界では当然ガチャでソードスキルは手に入らず、武器の熟練度を鍛えないとソードスキルは手に入らない仕組みになっております。(初期の星4スキルなら低くても手に入ります)

・ディアベル
声が勇者王あるいは盟主王で有名な自称騎士。アニメ、プログレッシブ漫画版だと普通の好青年だが、小説だとキリトにボスのラストアタックボーナスを取らせまいと色々と策を立てる腹黒い一面がある。




戦闘が少ないと割と早く書ける。
次回は攻略会議です。オリキャラも複数登場します。
今日のアップデートでブライダルイベントの復興が開催されるので少し遅くなるかもしれませんがこの小説をご覧になっている方。ぜひ、楽しみにしてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。