ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
オレンジプレイヤー戦、後編。
「ヒャッハー!どうした!?避けるだけで終わりか!?もっと攻めて来いよぉ!」
「・・・・・・」
毒ナイフ使いが何やら叫んでいるがソウゴは無視する。
こんな安い挑発に乗ってやる程ソウゴは馬鹿でない。
ただでさえ、一発でも食らえばアウトの攻撃を一瞬の油断で食らってやるなんて、こんなにもマヌケなことはない。
一撃一撃を避けたり防いだりしながらソウゴは毒ナイフ使いを観察していく。
「(奇声を発している割には動き自体に無駄がない。相当な数を殺っている見てぇだが、攻略組でもない奴がここまで動けるようになんのか?)」
この男の場合、対人戦になっても、あの毒ナイフで当てさえすれば戦闘もクソもない。麻痺毒で動けなくした後はいたぶるか首を斬るかの二択だ。
にもかかわらず、この毒ナイフ使いは攻略組でないのに相当対人戦慣れしていることにソウゴは疑問に思った。
仲間たちとデュエルして鍛えたからなのか。それとも、クエストなどで人型のエネミーと戦いながら鍛えたのか。それとも、普段は毒ナイフを使わないで戦っているからなのか。
様々な考察を立てていたソウゴだったが、その最中もう一つ疑問が浮かび上がった。
「(こいつの声・・・どっかで聞いたことがあるような・・・)」
聞いているだけで耳障りと思えてしまう馬鹿みたいに高い声。
ソウゴはそれをどこか聞いたことがあるように感じた。それも一回だけじゃない。
どこだ。いったいどこで聞いたことがある、とアインクラッドに来てから今まで行ったことのある場所を思い出しながら考えていたソウゴだったが
「っ!?」
「くぅ~惜しいぃ~!もう少しで楽になれたってのによぉ~!」
いつの間にか隙ができてしまったのか、ナイフが当たる直前の所で何とか防いだ。
「(今はそんなことを考えている暇はねぇな)」
相手は相当な手練れだ。
そんな相手とライフ1で戦うクソゲーの中、他の事を考えている余裕はない。
自身の考察を一旦記憶の片隅に置いて、再度、戦いに集中する。
そんな冷静なソウゴとは違い、毒ナイフ使いは表面は笑っているが、内心かなり苛立っていた。
「(ちっ、ちょろちょろとしぶといガキだな)」
今まで、この毒ナイフを食らった者は一人たりとも動けなくなり、色んな物を奪った後にジ・エンドしてきた。
一撃でも当ててしまえばこちらの勝ちなのに、目の前にいる名も知れぬガキに一撃も食らわせずにいる。
その事実が毒ナイフ使いの苛立ちを更に加速させる。
「(さっさとくたばっちまえよ。お前を人質にしちまえば、ショータイムの続きができるってのによぉ)」
戦闘が長引くごとに湧いてくるイライラを押さえながら戦っていた毒ナイフ使いだったが、遂に限界がきた。
ふと、攻撃を止め、毒ナイフ使いはその場に立ち止まった。
先程まで攻めてばかりだった毒ナイフ使いの急激な変化にソウゴは警戒する。
「あーあ、ちまちま攻撃してんのも飽きてきたな。そろそろ決めてやるよ!俺の最強っの必殺技でな!」
「(・・・何をする気だ?)」
何をするのか分からないが、先程と違って明らかに雰囲気が変わった毒ナイフ使いに警戒するソウゴ。
すると、毒ナイフ使いはソウゴに急接近しながら<サーペント>のモーションを始めた。
来るっと予想し、ソウゴは咄嗟に槍を構え防御の体勢をするが、次の瞬間、毒ナイフ使いの姿が消えた。
「フェイント!?っ!?奴はどこに行った!?」
繰り出されようとしてた<サーペント>はフェイクであり、防ぐのに集中していたソウゴは対応に遅れ、毒ナイフ使いの姿を見失った。
辺りを見渡すソウゴ。その後ろから
「あばよ!シャァーーー!!」
勝利を確信した毒ナイフ使いは奇声を上げながらナイフをソウゴに振った。
一方、奇声のおかげで後ろに毒ナイフ使いがいる事に気付いたソウゴだったが、気付いたにも関わらず一歩も動かないで小さく呟く。
「ああ・・・」
毒ナイフがソウゴの首筋に迫る。
「てめぇがな」
その直後
「うぶっ!?」
毒ナイフ使いは突如腹に衝撃がきて思わず声を出した。
後ろからの攻撃を予測していたソウゴは槍を後ろに突き、柄の部分で男の腹に突いたのである。
毒ナイフ使いが腹を押さえながら怯んでいる隙に
「消えろ」
「ぐぇ!?」
<ワイルド・ゲットリド>で毒ナイフ使いを吹き飛ばした。
毒ナイフ使いは物凄いスピードで後ろに飛んでいき、やがて、森の木に背中から激突した。
その様子を眺めながらソウゴは呟いた。
「なめんなよ。戦いの最中に奇声を上げる馬鹿に一撃でも貰われたら、うちの
ましてや、こっちはてめぇが声を上げるまで後ろにいたことに気が付かなかったのに。こいつ、実は馬鹿なんじゃねぇ?とソウゴは思った。
トウガとソウゴが戦っている一方、ハルトとシロコイは白髪の男と睨み合っていた。
コノハとレイスをリーテンの方に向かわせて、一触即発の状態の中、ハルトは隣にいるシロコイに話しかける。
「気を付けてください、シロコイさん。あのオレンジプレイヤー、《
「《
「・・・強いと思いました。《
ハルトの説明を聞いて、シロコイは厄介そうに顔をしかめながら目線を白髪の男の方に向けた。
トッププレイヤーとなると下手な小細工は通用しなさそうだ。
ならば、やるべき事は一つ。狙撃手として味方を援護するのみ。
「・・・まだ戦えるか?ハルト」
「勿論。こんなことで根を上げている暇なんてないですよ」
「よし、作戦はシンプル。お前がアタッカーで俺が援護。いいな?」
シロコイの言葉に頷くと、ハルトは前に出た。
一方、白髪の男は警戒しながらシロコイを見ていた。
「(あの距離から俺の手をピンポイントに射抜く技術。あの弓使い、相当な腕を持っている)」
かなり離れた距離で自身の手に当てたことを評価しつつも、その弓の腕前に警戒していた。
「ハァーーー!」
「!?」
そして、目線をハルトに戻すと、こちらに迫ってきているハルトがいた。
両者、クイックチェンジで互いの武器を片手直剣に戻し、剣で打ち合う。
最初は防ぐだけで精一杯だったハルトも、反撃したりなど徐々に男の剣に食らいついていく。
次第に自分の剣に追いついてきたハルトを白髪の男は心の中で評価する。
「(あの翠の剣士も戦いの最中にどんどん成長している。早々に消さないとマズイな・・・)」
それと同時に、放置しておけば、将来自分たちに取って危険な存在になるだろうと危惧した。
戦いはハルト達の方が優勢だった。
ハルト自身も戦っていく内にどんどん白髪の男の剣に食らいついていくようになり、徐々に白髪の男を追い詰めていく。
更には
「っ!?」
キンッ!
シロコイの矢を咄嗟に剣を前に出して防ぐ。
一見、簡単そうに防いだがそうではない。シロコイの発射タイミングはほぼ完璧とも言えるものだった。一般のプレイヤーなら矢に気付いても、それを防ぐことは困難だろう。
しかし、白髪の男は驚異的な反射神経で自身を貫こうする矢を次々と避けたり防いだりしていた。
それでも、向こうは一人でこちらは二人。ハルト達が優勢であることには変わらない。
「(翠の剣士の方もだんだん俺の剣についてきているが、一番厄介なのは弓使いの援護だな)」
白髪の男は戦いながらも状況を観察していき、どちらが厄介かを考えた結果
「(ならば・・・やるべき事はただ一つ。先にあの弓使いを消す!)」
白髪の男は標的をハルトからシロコイに変えた。
何回か剣を打ち合い、再び鍔迫り合いになった時、白髪の男はハルトに向かって小さく呟く。
「悪いが、お前は後回しだ」
「何!?くっ!」
男の言葉に驚くハルトだったが、次の瞬間、蹴りが迫り、剣を前に出して防ぐも、その衝撃で後ろまで下がってしまう。
その隙をついて白髪の男はシロコイに迫る。
「!? 奴の狙いはシロコイさんか!?」
「くっ!」
ハルトが男の目的に気付き、シロコイは少し焦りながらも矢を放つが、白髪の男はそれを躱す。
やがて、剣が届く距離までシロコイに近づくと、白髪の男は剣を上げ
「弓使いなど近づいてしまえば、所詮はただの動かない的だ」
そう言いながら、シロコイに向けて剣を振り下ろす。
取った!と思った白髪の男だったが、次の瞬間
キン!
金属音と共にその表情は驚愕に染まった。
確実に決まったと思っていた自身の攻撃をシロコイがある物で受け止めたからである。
シロコイが持っている物に白髪の男だけでなく、ハルトも驚いていた。彼と付き合いの長いサーニャですら驚愕の表情だ。
それもそのはず。弓使いであるはずのシロコイが本来なら使うはずのない物を彼は使い慣れているかのように男の剣を受け止めたからである。
鍔迫り合いとなり、白髪の男がそれを啞然と見つめる中、シロコイは小さく呟いた。
「誰が近づいてしまえばただの動かない的だ。こちとら、当たらない矢をぶっ放し続けたおかげで、ちょうどイライラが溜まってたところだったんだよ・・・」
先程の穏やか雰囲気はなく、自身を正面から見据える笑みに得体の知れない何かを感じた白髪の男は、後ろに跳びシロコイから離れる。
啞然とそれを見つめる白髪の男をよそに、シロコイは右手に持っている物を男に向けながら宣言した。
「ぶった切るぞ、クソ野郎」
シロコイの持っている片手直剣は夕暮れの光によって光り輝いていた。
「どうなっているんだ・・・?」
先程ハルトを痛めつけていた男たちは困惑していた。
先程まで自分たちはショータイム(処刑)をする余裕があったりなど、この仕事も楽に済ませられると思っていた。
なのに、今はこちらが不利になっている。
自分たちよりも圧倒的な強さを持つ幹部は新たにやって来た二人組のガキに苦戦させられていて、サブリーダーも一時は優勢だったが、弓使いのガキ(19歳)が剣を使い始めた上、かなりの手練れであることで一気に逆転されている。
どうにか流れをもう一度自分たちに向けれないかと、男たちは周囲を見渡すと、先程までトウガ達がいた所に取り残されたコハルとサーニャが未だ麻痺が回復してない状態で倒れていた。
そうだ。彼女たちをもう一度人質にしてしまえばいい。そうなれば、今は調子に乗っているガキ共も一斉に動かないサンドバッグになるだろう。
互いに顔を見合わせて頷き、コハルとサーニャに近づこうとしたその時
「ヴォッン!」
「うわっ!?なんだ、こいつ!?」
森の茂みから突如現れた白銀の狼、ラピードに驚く男たち。
何故、安全地帯にエネミーが?と思いながらもさっさと倒してしまおうと剣を取り出すと、今度は男の声が後ろから聞こえてきた。
「寝てろ」
「え?がっ!?」
声を漏らした次の瞬間、男たちは先程自分たちの後ろから声を掛けた人物、ザントに頭を掴まれ、互いの頭を思いっ切りぶつけられて仲良く気を失った。
その隙にザントがサーニャに近づき彼女を肩に乗せて担ぐと気絶している男たちから離れた場所まで移動する。ラピードもコハルに近づき彼女を自分の背の上に乗せると、ザントの下に戻った。
「ザントさん!?どうしてここに?」
「・・・てめぇらがまた人質になったら振り出しに戻るだろうが。だから、すぐに姿を現したあいつらと違って森の茂みに隠れてて、てめぇらを救出するチャンスを狙ってたんだよ」
「それよりも、いつまで担いでおりますの?早く降ろ「おらよ」きゃ!?」
降ろすよう指示するサーニャだったが、言い終える前に雑に降ろされて背中から地面に着地した。
サーニャは背中を押さえながら、雑に降ろしたザントを睨み付けた。
その視線を特に気にもせず、ザントは他のオレンジプレイヤーと戦っているハルト達を見た。
「どうやら全員、順調見てぇだな。後は・・・っ!?」
その時、ザントは視線を。それも、身に覚えのあるかなり殺気が含まれている視線を感じた。視線がした方に振り向くと、オレンジプレイヤーのリーダーと思わしき男がいた。
その男は自分を見つめていた。そして、再会を喜ぶかのように笑っていた。
ザントは確信した。間違いない。あの時の男だ。
五層の頃、圏内を歩いていたザントは、キリトと彼の後ろにいる黒ポンチョを着ている男を見つけた。そして、黒ポンチョ男から他のプレイヤーとは違うただならぬ何かを感じ、思わずちょっかいを出してしまった。その際、男は自身に向かって短剣を振り下ろす直前、咄嗟に漏れ出た殺気に反応し、ザントは剣を振って首筋を斬った。
その男が今、自分を見ている。それも、あたかも殺気を出して自分を誘っているかのように。
一瞬で理解した。あれは、俺の敵だ。
「・・・ラピード。こいつらを見てろ」
「ヴォン!」
相棒の返事を確認したザントは背中に背負っている《蒼嵐》を抜いた次の瞬間、物凄いスピードで黒ポンチョ男に接近した。
一方、黒ポンチョ男もザントが接近してくるのを予想してたのか、笑みを浮かべながら腰から四角い包丁のような短剣を取り出した。
そして、互いの武器を目の前にいる敵に目掛けて思いっ切り振り
キン!!
大太刀と短剣がぶつかり合い、剣戟がフィールド中に響き渡った。
「よぉ、久しぶりだな」
鍔迫り合いの中、ザントが好戦的な笑みを浮かべながら話しかける。
対する黒ポンチョ男も同じように笑みを浮かべる。
「ああ、ずっと会いたかったぜ。クレイジー野郎。いや、今は狼って呼んだ方がいいか?」
「好きにしろ。そんな二つ名なんざ興味ねぇし、てめぇの存在も記憶の片隅程度にしか入れてねぇ。とっとと消えろ」
「そう固いこと言うなよ。俺に初めてを入れやがったんだからよう。きちんと責任取れよ」
いい加減、黒ポンチョ男の存在が鬱陶しくなったザントは鍔迫り合いを解除して距離を取る。
互いに距離を取ったところで、黒ポンチョ男は両手を高く上げ、高らかに叫んだ。
「さぁ!始めようぜ!最高の殺し合いをよぉ!イッツ・ショー・タァーイム!!」
「何がショータイムだ。そんな時間なんて一秒も与えねぇよ!」
そう言いながら、ザントは<ウイング・デストラクション>を繰り出した。
大地を抉り、木々をもなぎ倒す斬撃を黒ポンチョ男は体を捻らせて躱すと、そのままザントに近づき短剣を振る。
ザントはそれを躱すと《蒼嵐》を横に振り、カウンターを仕掛けるが、黒ポンチョ男はそれを上にジャンプして躱し、そのまま木の枝の上に立った。
「ハハッ!今なら土下座すれば降りてやるぜ」
「その必要はねぇよ。俺が引きずり降ろしてやるからよ!」
軽口を叩き合いながら、ザントは<ウイング・デストラクション>を繰り出す。黒ポンチョ男は上に跳んで避けたが、立っていた木が斬れた。
上に跳んだ黒ポンチョ男は、そのままこちらを見上げているザント目掛けて短剣を振り下ろす。ザントは《蒼嵐》を前に出して短剣を受け止めると、そのまま押し出して、黒ポンチョ男を後ろに飛ばした。
その間にも、ザントはすぐに次の攻撃を仕掛ける。
地面に向けて《蒼嵐》を振る。それによって地面がめくれ上がり、土や石が飛び散る。その破片の一つをザントは左手で掴むと、黒ポンチョ男目掛けて投げつけた。
空中で体勢を整えながら着地した黒ポンチョ男はその直後、自身の視界から高速で迫る石の破片を前に、咄嗟に短剣を前に出して防ぐ。
「!? 野郎!どこに!?」
しかし、次に正面を向いた時には男の視界にザントの姿は見えなかった。
突然消えたザントに黒ポンチョ男は困惑しているが、その後ろで、破片を投げたと同時に黒ポンチョ男の後ろに回り込んでいたザントが
「(へっ、マヌケが)」
心の中で罵倒しながら、ザントは《蒼嵐》を黒ポンチョ男に突き刺そうとしたその時
「なーんてな」
「!?」
突然殺気を感じ、攻撃はせず、後ろに退いた。
すると、先程までザントがいた場所に短剣が横に振られた。
黒ポンチョ男が残念そうに「ちっ」と舌打ちする。その様子を眺めていたザントは冷や汗をかきながら呟く。
「・・・あのまま攻撃してたらやばかったな・・・」
もし、あのまま攻撃を仕掛けていたら、攻撃が当たる前に男の短剣に首を斬られてたであろう。
相手の視界を一瞬だけ奪い、その隙に回り込んで一撃っと行きたかったが、黒ポンチョ男はそうすることを分かっていたかのように対応してきた。
戦って数分しか経ってないが、ザントは理解した。
この男は強い、と。
「まさか、今の躱すとはな。やはり、お前を狩るのは一筋縄ではいかねぇみたいだな!」
「へっ、言ってろ!三下ぁ!」
二人は再び剣戟を鳴らし合う。
剣だけじゃなく、拳や蹴りなど体術を使ったりなど、激しい激闘を繰り広げていた。
そんな中、二人は互いの共通点を見つけた。
一見、激しい激闘を繰り広げているように見える。
しかし、この戦いでは、二人共も首や目などといった人間の急所であろう部分しか狙っていない。
戦っている最中で互いの共通点を見つけた二人は心の中で一つの確信にたどり着いた。
「(間違いねぇ)」
「(こいつ、知っていやがる)」
「「(人間の殺し方を!)」」
何度目かの鍔迫り合いを解除し、互いに距離を取る。
しかし、次の攻撃を仕掛けようとしたザントは少し怪訝そうな顔をした。
黒ポンチョ男の戦意が少し緩んだからである。
いや、この男がそう簡単に退くはずがない。戦意が緩んでも心の奥底に潜んでいるであろう殺意に警戒するザント。
そんなザントに対して、黒ポンチョ男は予想だにしていなかったであろう質問をした。
「お前・・・俺たちの下に来ないか?」
「・・・は?」
予想外の質問に思わず声を漏らすザント。
何故、自分がいきなりオレンジプレイヤーにスカウトされているのだろうと。黒ポンチョ男の意図が読めず疑問に思った。
「その凶暴な性格に獣のような戦いっぷり!その上、人間の殺し方も知っている!お前はこんなくだらねぇ猿共と一緒にいていい存在じゃない!俺たちと一緒にその殺戮のセンスを開花させるべきだ!」
そんなザントの疑問を黒ポンチョ男が答えた。
周りがザントが何と答えるのか、緊迫とした表情で見る。もし、この場で黒ポンチョ男の提案を飲み込む。それは同時にこの青年が敵に回る瞬間だ。そうなれば、自分たちは絶対に無事じゃ済まない。
数々の不安や緊迫感がフィールドを満たす中、質問された本人は
「はぁ?なんで俺が影に隠れてこそこそとくだらねぇ手を使わなければ、自分の存在すらも示すことができねぇウジ虫共と組まなきゃいけねぇんだ?」
「は?」
あっさりと答えたザントに、今度は黒ポンチョ男が惚けた。
そんな黒ポンチョ男をよそにザントは言葉を続ける。
「お前、俺と戦い方が似ていれば、俺がてめぇに付いていくのでも思ってたのか?バッカじゃねぇの!?誰が好んで存在自体が鬱陶しいだけのウジ虫共の巣窟に行くかよ」
あたかも当然のように言葉を発していくザント。
「それによ、俺はここを気に入ってんだ。一見、くだらねぇ猿しかいねぇ動物園に見えるが、その中には、ハルト、キリト、アスナ、トウガ、シロコイ・・・俺を滾らせてくれる強者がわんさかいやがる。少なくとも、ウジ虫共のたまり場よりかは100倍マシだな」
「・・・俺らの所に行けば、てめぇを滾らせる奴らと戦えるんだぜ」
「ハッ!何も分かっちゃいねぇな。俺を滾らせてくれる瞬間は何も強ぇ奴と戦うことだけじゃね。強者同士で手を組んで強大な敵を超えていく。その瞬間こそが、俺を最高に滾らせてくれる瞬間だ」
ザントの言葉にハルトとシロコイはザントらしいと微笑み、トウガはうんうんと頷き、ソウゴは自分が入っていないことに少し不満な表情をした。
結局の所、この男もまた、この世界で生きているゲーマーの一人なのだろう。
「つっう訳だ。ウジ虫共の巣窟なんざ俺はゴメンだ。分かったか?ウジ虫」
ザントは自分がお前らの仲間入りするなど絶対に有り得ない、と堂々と黒ポンチョ男に向かって宣言した。
それに対して、黒ポンチョ男は無言だったが、やがて高笑いをした。
「ハハハハハ!ウジ虫共の巣窟より動物園の方がマシってか!?なるほどな!まっ、そんな風に断られる事は予想してたぜ・・・けどよ、安心したぜ・・・」
高笑いが止み、男の声がだんだんと小さくなった次の瞬間
「これで心置きなく、てめぇをぶっ殺す事ができるからなぁ!!」
今まで心の奥底に隠していた殺意を全てザントにぶつけた。
対するザントも
「やってみろよ。ウジ虫共のリーダーなんぞに簡単に負けてやれる程、俺は弱くねぇぞ!!」
こちらも殺意を思いっ切り出し、黒ポンチョ男にぶつけた。
殺意と殺意がぶつかり合う。
圧倒的な殺意と殺意のぶつかり合いに誰もが圧倒される中、動いたのは同時だった。
キーーーン!!!
先程以上の剣戟がフィールド中に響く。
それが再開の合図となり、ザントと黒ポンチョ男は再び剣戟を繰り広げる。
死闘。その言葉が似合うくらい殺意を剝き出しながら戦うザントと黒ポンチョ男の姿に戦っている者もそうでない者もただ黙ってその死闘を見据える。
そして、何度目かの打ち合いの際に戦況が動き出した。
「あぁ?」
短剣と大太刀がぶつかり合い、ほんの僅か膠着状態になる隙を付いて黒ポンチョ男が下から蹴り上げを繰り出した。
そして、男の蹴り上げがザントの手元に当たり、手に持っていた《蒼嵐》が上に上げられた。
ニヤッと笑いながら黒ポンチョ男は追加の蹴りを入れ、ザントは咄嗟に腕をクロスさせて防ぐも、強力な蹴りによって後ろへ飛ばされ、木に背中から激突した。
それを好機と見た黒ポンチョ男は追撃をかけるべくザントに接近する。
ザントは今、武器を持っておらず、防ぐすべがない。
男は笑みを浮かべながらザントに向けて短剣を振り下ろそうとした次の瞬間
グサッ!
「っ!?」
ザントの右手から突如片手直剣が出現し、男の右肩に突き刺した。
自身の肩に刺さっている剣を見ながら驚く黒ポンチョ男。
仕掛けは簡単。男がザントに接近した瞬間、ザントはクイックチェンジでストックしてある片手直剣を取り出し、それを男の右肩部分に刺しただけ。
先程まで優越感に浸っていた黒ポンチョ男はそのことに気付かず困惑している隙を付いて、ザントは剣を持っていない左手で男の顔面を思いっ切り殴った。
思いっ切り殴られて後ろに吹き飛び、そのまま地面に転がっていく黒ポンチョ男。
その隙にザントは片手直剣をしまうと、先程上げられた《蒼嵐》が下に落ちてきて地面に突き刺さった。それを抜くと、すぐさま追撃をかけるべく黒ポンチョ男に接近する。
対する黒ポンチョ男も転がりながらも体勢を立て直し、顔を上げると、こちらに向かって接近して来るザントを見て笑みを浮かべ、短剣を構えながらザントに接近した。
両者、猛スピードで迫り、互いに剣を振るう。
カキーーーーーン!!!
今まで一番大きい剣戟がフィールド中に響いた。
その衝撃により、周りの地面が崩れ、そこから砂塵が舞い上がり、フィールドに置いてある木々が次々と倒れていく。
この場にいる誰もが戦いを中断して、この光景を啞然と見つめる中、砂塵の中にいるザントは静かに息を研ぎ澄ませ、『蒼嵐』を構えながら走る。
いる。あの奥から近づいてきている。俺の敵が。
砂塵の影からそれぞれの敵の姿を見据えた両者は互いの笑い顔を見つめ
「へっ」
「ハハッ♪」
その瞬間、砂塵の中から豪快な轟音が鳴り響き、二人の周りを包んでいた砂塵が一気に散っていく。
もはや、人間同士の戦いではない、と思うくらいの光景に誰もが戦慄する中、やがて砂煙が晴れ、二人の姿が露わになる。
ザントには脇腹を斬られた跡が。対するポンチョ男も右肩から体へと真っ直ぐに斬られた跡が刻まれていた。
両者一歩も動かず、互いの姿を見つ合う。
「くくくっ・・・アハハっ・・・!アハハハハハハハっ!!!」
しばらく静寂が続いていたが、黒ポンチョ男はフィールド全体に響くよう高笑いした。
「いいね!!最高だなぁ!!もっとだ!もっと楽しもうぜ!!最高の殺し合いって奴をよぉーーー!!!」
黒ポンチョ男の叫び声がフィールド中に響き渡る。
ザントはそんな声を気にともせず、次の攻撃を仕掛けようと《蒼嵐》を構えたその時
「そこまでだ!!」
フィールドに一人の男の叫び声が響き、ここにいる全員が声がした方に振り向くと、そこには、クラインがいた。
「悪ぃ、風林火山のみんなを集めるのに時間が掛かっちまった。けど、俺たちがいりゃ、もう大丈夫だ」
「どうする?人数的にはこちらが圧倒的に有利だ。退くというのなら見逃してやっても構わない。それとも、俺たちも相手になってやろうか?」
更にクラインの後ろからエギルが現れ、彼の仲間や「風林火山」の面々も続々と現れた。
一人一人実力はそこそこだが、数は多く、このまま戦えばオレンジプレイヤー達はあっという間に取り押さえられるだろう。
完全にこちらが不利だと状況を確認した黒ポンチョ男はクライン達の方を見て、もう一度ザントを見たが「ちっ」と残念そうに舌打ちすると、部下たちに聞こえるよう大声で指示する。
「・・・撤退だ!獲物は一人も仕留められなかったが、当初の目的は既に達成した」
「ヘッド!?けどよ・・・!」
「撤退だ。何度も同じことを言わせんな。時間は十分稼いだし、今から助けに行っても間に合いはしねぇよ」
仲間の異議を軽く流した黒ポンチョ男はザントの方を見ると
「あばよ、狼。また、殺し合える日を楽しみにしてるぜ」
そう言うと同時に黒い球体を地面に投げた。仲間たちも同じように黒い球体を投げる。
「潮時か・・・また会おう、翠の剣士よ」
白髪の男もまた、ハルトに向かって一言言うと黒い球体を地面に投げる。
その瞬間、黒い球体は破裂し、フィールドは大量の煙に包まれた。
ザントは前にも同じようなことがあったと思いながら、五層の時同様、一振りして煙幕を払うが、既にオレンジプレイヤー達の姿はどこにも見当たらなかった。
「ちっ、逃がしたか・・・」
逃げられたと察したザントは舌打ちしながら《蒼嵐》を背中にしまう。
「時間を稼いだって・・・まさか!シバはもう・・・!」
「落ち着け。木の実をよく見てみろ」
既に手遅れだと思い込み絶望するリーテンをエギルが落ち着かせる。
リーテンは言われた通りに木の実を確認すると、木の実は青白い輝きを放っていた。
「光って・・・いる・・・?」
「生きているって証拠だろ」
エギルの言葉にホッとするリーテン。
「ひとまず、俺たちが案内するから、クエスト進行に必要なアイテムを集めに行こう。連中の目的が時間稼ぎだとしたら、そう時間はないはずだ。手遅れになる前に何としても助けだすぞ」
トウガが周りに向かって喋り、ハルト達も賛同する。
人数も増え、アイテム集めを再開しようとしたその時
「無様だな」
ザントが冷めた目をしながら、コハルとサーニャに向けて言った。
「威勢よく挑んだはいいが、返り討ちに合い、更には人質として利用される。ハッ!実に無様だな。俺だったら恥ずかしくて死にたくなるぜ!」
「何ですの。言いたいことがあるのらはっきりとおっしゃったらいかが?」
言いたい放題言うザントに、サーニャが食ってかかる。
すると、ザントはこちらに寄ってくるサーニャの顔を見ると「ぶふっ!」と吹き出し
「悪ぃ。言いたいことを言えってな。じゃあ言ってやるよ。自分なら勝てると思い、果敢に挑むも相手は予想以上に強くて返り討ち。勇気と無謀を履き違える。オマケに俺たちが戦っている間は、うっかり麻痺を食らって石像見てぇに動けず、挙句の果てに、人質になりハルト殺人未遂の原因になる。くっくっくっ・・・」
必死に笑いを押さえていたザントだったが
「アギャギャギャ!滑稽だな!レア武器を持っている自分は強いと勘違いして強敵に挑むも返り討ちに合う。相手との力の差も測れない雑魚に相応しい無様な姿だな!」
耐えきれれず、腹を押さえながら高笑いした。
それに腹を立てたサーニャが静かに怒りながらザントに詰め寄る。
「何がおかしいんですの・・・あなたはそうやって他人を見下して何が楽しいんですの!?確かに私たちの・・・私の油断のせいでハルトは死に掛けましたわ。ですが、誰かの失態を!苦しみを嘲笑う権利などあなたになど!ましてや、誰にもありませんわ!!」
「おいおい、その油断一つで人一人殺そうとした無能が何ほざいているんだぁ?こんな自分と相手の力の差も測れず、強者の足を引っ張るだけの無能が俺たちと同じ攻略組を名乗っていやがるんだぜ!これを笑わずにしていられるかよ!」
未だにサーニャを嘲笑い続けるザント。
そんなザントをも見て、今でも剣を抜かんとしている表情のサーニャだが、その前にコハルがザントの前に出る。
「いい加減にしてください!ザントさん!確かに私たちは無謀だったかもしれません。私たちのせいで、ハルトを・・・みんなの足を引っ張ってしまいした。でも!だからといって、責めるならまだしも、それを笑って馬鹿にするなんて間違っています!」
「ああっ!?使えねぇマヌケを笑って何が悪ぃんだ。こんな口だけの雑魚が攻略組にいるから俺らトッププレイヤーが三下共に嘗められちまうし勘弁してほしいぜ。つか・・・」
コハルの言葉にも、ザントは笑いながら返していたが、急に真顔になると
「お前・・・誰だ?」
「・・・え?」
コハルは何を言われたのか分からず、小さく声を漏らした。
コハルを見据えるザントの目は氷のように冷たかった。
・<ワイルド・ゲットリド>
オリジナルスキル。SAOIFだと槍の星4スキル。槍を横に振って相手を薙ぎ払うソードスキル。土属性を持っていて、全体攻撃もできる。
・シロコイ抜刀!
アーチャーが弓を使うわけないだろ!×
アーチャーが弓だけ使うわけないだろ!○
・再会!SAOのヤベー奴とオリキャラのヤベー奴
実に十五層ぶりの再会。
・「俺に初めてを入れやがったんだからよう。きちんと責任取れよ」
ここだけ聞くとヤバいセリフにしか見えない。
・ザントがラフコフに寝返らない理由
弱者嫌いのザントは、オレンジプレイヤーは下らない小細工をしないと人一人殺すこともできない弱者という印象で攻略組同様、毛嫌いしているからです。そもそも、ザントの性格上、誰かに命令されても基本は従いませんからね。
・「お前・・・誰だ?」
勿論、ザントが記憶喪失になった訳ではありません。
SAOIF三周年直前生放送の感想
・お金くばりおじさん(竹内P)大好き!
・MODスキルヤベー
・キービジュアル神すぎる。(主人公は?というツッコミをしてはいけない)
いや~オレンジプレイヤーは強敵でしたね~
謎の黒ポンチョ男が原作以上にはっちゃけてた気がする。
次回!コハル、フルボッコにされる!(主にザントのせいで)
次回でボス戦前まで行けるかな・・・
<オマケ>
三周年直前のオリキャラ紹介まだ続いています。興味がある方はこちらからどうぞ。