ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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最近、自分の他にもSAOIFの小説を書いている人を見つけて、しかもお気に入りが1000以上もあって驚いたイノウエ・ミウです。
第二十層ボス戦です。


ep.27 第二十層ボス攻略

リンド救出から数日後、迷宮区前には攻略組の面々が集まっていた。

そこにいたのは、二大ギルドのリーダー及び数十名のALSとDKBのプレイヤー。二大ギルドに属さない中立プレイヤーのハルト、コハル、キリト、アスナ、サーニャ、ザント、シロコイ、「紅の狼」の面々である。

彼らはボス攻略会議を始める前に、ある話題について話し合っていた。

その話題とは、DKBのリーダー、リンドが行方不明になっていたこと。そして、リンド並びにハルト達中立プレイヤーの抹殺を企もうとしていた複数のオレンジプレイヤーの存在のことである。

 

「話はよう分かった」

 

リンドからこの間起きたことを一通り説明されたキバオウは納得した顔をリンドに向けた。

 

「リーテンちゅう証人もおるし、ジブンらが噓ついているって言うつもりはあらへん。せやけど、こっちはいらん疑いをかけられたせいで特に下の連中の腹の虫が治まっとらん。ワイらを対立させようとしとる連中の思うつぼにならん為にもワイらには協定が必要やと思う」

 

「確かに協定は必要だろう。だけど、今すぐに、というわけにはいかないだろうな」

 

「それはワイも分かっとる。せやけど、これ以上オレンジ・・・いや、レッドプレイヤーの連中を放っておくわけにはいかん。そうやろ、キリト」

 

リンドとの会話の途中、キバオウはキリトに目線を送った。

 

「ああ、そうだな。それと、改めて助かったよ。あの時、あんたらやザント達と合流できたのは幸いだったよ」

 

「気にせんでええ。寧ろ礼を言うのはワイらの方や」

 

「何かあったんですか?」

 

コハルが何かあったのかキリトに聞くと、キリトはハルト達と同じく自分たちがレッドプレイヤーの集団に襲われたことを説明した。

ハルト達と違って実力者はいなかったが、その分数が多く苦戦したが、たまたま現場の近くにいたALSの面々とレッドプレイヤーの動向を探っていたザントとシロコイが加勢してくれたおかげで無力化に成功し、いくらか尋問した後に《黒鉄宮》に送った。

 

「その後、連中の主力がハルト達の方に向かっているって聞いてな。俺とアスナはこのことをDKBに伝えに行かないとダメだったから、代わりにザントとシロコイが救援に向かったんだ」

 

「その途中、紅の狼の皆を見つけて、事情を話したら一緒に助けに行こうってなったんだ。後はハルト達も知っての通り、ハルトが死ぬギリギリのタイミングで何とか間に合うことができて本当に良かったよ」

 

キリトの説明の途中でシロコイが補足しながら安堵した表情をハルト達に向けた。

 

「ひとまず、話をまとめようか。連中が狙った相手からして、おそらく連中は百層攻略に欠かせないもんをターゲットにしとる。二大ギルドDKBのリーダーを務めとるリンドはん、キリト達二人にハルトと言ったトッププレイヤー」

 

「・・・奴らの計画を阻止できて本当に良かった。もし、成功したと思うとゾッとするな」

 

「ああ、攻略組は確実に崩壊しただろうな」

 

トウガとソウゴはレッドプレイヤーの計画の成功。すなわち、リンド並びにハルト達の死亡という最悪の結末を想像しながら喋った。

二大ギルドのリーダーの一人とトッププレイヤー数名を失った攻略組は怒りと絶望に飲まれ、無益な争いを繰り広げてしまうだろう。そうなってしまえば、名のある実力者たちは次々と無意味な死を遂げ、攻略組という組織は崩壊し、百層突破にかなり遠のいてしまう。いや、一生突破できないかもしれない。

 

「連中が何のためにそないなことをするのかは今の時点ではよう分からん。まっ、人殺しを楽しむような輩のことなんざ分かりとうないけどな」

 

キバオウが腕を組みながら呟く。

その隣でキリトが今の現状をまとめる。

 

「今の時点で分かっていることとすれば奴らは少なくとも二つ。或いはそれ以上の部隊を動かすことができるギルド。そう考えた方が自然だ」

 

「だろうな。俺らでウジ虫共を十匹ぐらいブタ箱に放り込んだが、あの戦力からして部隊を二つ以上分けれることは可能だな。特にリーダーとサブリーダーと思わしき野郎の実力は下手すりゃトッププレイヤーと同じレベルの強さを持っていやがる」

 

「!? それはホンマかいな・・・?」

 

「ああ、多分一人だけでも猿十匹分の戦力になるだろうよ」

 

ザントの言葉を聞いて、周りのプレイヤー達は戦慄した。

何せ、身近にいるトッププレイヤーですら自分たちからすれば化け物に等しいのに、それがレッドプレイヤーという最悪の集団の中に攻略組一般プレイヤー十人分の強さを誇る化け物が二人もいるという。

そんな非常な現実から真っ先に回復したキバオウは「ゴホン!」と咳払いすると、今後の対策を練る。

 

「今んところ、連中の規模も目的もよう分かっとらん。ひとまず、自警団の働きを強化するわ。他のギルドとも連携して対抗できるようにする。今はそれしかできへんやろ」

 

「ああ、俺たちも強力する」

 

「後は・・・もし、また根も葉もない噂が流れれば、疑心暗鬼にならず、情報屋として信用のあるアルゴはんを通じて事実確認をしてもらう。ワイからは以上や。もし、異論が無いんやったらそのままフロアボス攻略会議に移行する」

 

キバオウの言葉に誰も反論せず、そのまま攻略会議へと移行するのであった。

 

 

 

 

攻略会議は順調に終わり攻略を始めるまでの間、参加するプレイヤー達は休憩を命じられた。だが、休憩している攻略組の空気は何処か気まずいものだった。

 

「やっぱり、こうなるか・・・」

 

「仕方ないさ。レッドプレイヤーに騙されていたとはいえ、結構揉めていたからな」

 

そう言いながら、ハルトとキリトは休憩している攻略組の面々を見る。どのプレイヤーもそれぞれのギルドの面々をちらりと見るだけで、話しかけようとしても中々話しかけることができず、気まずそうにしながら休憩していた。

そんな中、ふと目線を向けると、他のプレイヤー達よりも明らかに暗い雰囲気の二人組がいた。

彼らは数日前に揉めた末に剣を抜いたALSとDKBのプレイヤーだ。サーニャ、ザント、クラインのおかげで彼らが剣を混じ合うことはなかったが、一歩間違えれば彼らはレッドプレイヤーになっていたかもしれない。

そんな彼らは現在、互いの姿を見つめ合っては何も話さず、この世の終わりのような顔をしながらただ黙っていた。

その光景を見て胸が痛んだが自分たちではどうにもならないと思ったハルトとキリトは逃げるように目線を他の場所に向けた。

すると、コハル、サーニャ、リーテンの三人が何やら話している様子が窺えた。

 

「もしよろしければ、話して頂いてもよろしくて?そこまで思い詰めた顔をされると、気になってしまいますわ」

 

「そうですよ。せっかくシヴァタさんが助かったのにリーテンさんずっと悲しそうな顔をして・・・」

 

二人から詰め寄られたリーテンは観念したかのように話し出す。

 

「怖いんです。もう、シバと一緒に戦えなくなる気がして・・・ギルド同士のいがみ合いは日に日に増しています。これから先、ALSの私はDKBのシバと一緒にいたら・・・」

 

もし、ALSリーテンがDKBシヴァタと一緒にいる所を見られたら、そのことを糾弾されるかもしれない。最悪の場合、リーテンとシヴァタは攻略組を追い出される可能性がある。

 

「だからといって、ALSを裏切ることなんて私には・・・」

 

シヴァタとは一緒にいたい。けれども、仲間たちは裏切りたくない。

シヴァタを選ぶかALSを選ぶか。リーテンはその選択に悩んでいた。

 

「分かるよリーテンさん。私も怖かったから・・・」

 

リーテンの気持ちを聞いて、何やら言いかけるコハル。

 

「よお、雑魚野郎」

 

すると、三人の下にザントが見下すような笑みを浮かべながらやって来た。

この間のこともあり、警戒するサーニャとリーテンを余所にザントは口を開いた。

 

「あんだけ無様な姿を見せても今回のボス攻略に参加する見てぇだな。それとも、またテメェご自慢の自称パートナー様が守ってくれると思ってんじゃねぇだろうな?」

 

「ザントさんの言う通りだと思います」

 

「・・・ああ?」

 

ところが、コハルはザントの言葉を否定せず正面から受け止めた。

 

「今まで私はハルトのパートナーって言っておきながら心の何処かでは彼のパートナーを名乗っていいのか不安でした・・・彼が遠くに行ってしまうことが怖かった。でも、気付いたんです。本当に怖かったのは彼に置いていかれることじゃなく、彼を信じられなくなることなんだって。だから、私は強くなります。守られるだけの私じゃない。彼を守れるくらいに強く。二度と離れてしまわないように」

 

「・・・へっ」

 

この間までとは違う。隠しているものなんて一切ないコハルの決意を正面から受け止めたザントは、先程までの見下すような笑みでなく何処か満足気に笑うと後ろを向き

 

「そう言うのは口じゃなく実力で示しやがれ。また情けねぇ姿を晒したら無能ヒロインって呼んでやるよ」

 

そう言いながら、向こう側へ去っていった。

 

「全く、あのお方はあんな下品な言葉しか喋れないのかしら?」

 

「そう言っている割にはサーニャさん、ザントさんに色々言われた後、真剣にザントさんの言葉を意識してましたよね?」

 

リーテンの言葉に「うっ!」と言葉に詰まるサーニャ。

リーテンの言っていることは嘘でない。馬鹿にされたことに対してはサーニャ自身とても腹を立てていたが、実際あの罵倒があったからこそ彼女は自分の戦闘スタイルを見直し、《フィンスタニス》頼りだった戦闘スタイルを改善するようになった。

 

「まあ、あのお方の言葉のおかげで私も更に強くなることができましたし、感謝の気持ちなら少しはありますわ・・・認めたくはありませんけれど・・・ゴホンッ!それよりも、リーテンさん。これをお持ちになってくださいませ」

 

サーニャがストレージから取り出したのは一本のベルトだった。

 

「これは確か・・・あのクエストの報酬の・・・でも、これはサーニャさんがボスを倒して手に入れた物です。貰うわけには・・・」

 

「確かに止めを刺したのは私でした。ですが、あの状況で誰一人も犠牲者を出さずに済んだのはあなたのお守り・・・いいえ、あなたとシヴァタさんの絆のおかげですわ。ならば、二人の絆の勝利である以上、これはあなたが持つべきですわ」

 

そう言いながら、サーニャはベルトを半分に割った。

 

「あれから、このベルトについて色々調べてみましたけどこのベルト、二つに分けられるデザインですの。お守りが片方だけになってしまったのですから今度はこれを二人で分け合うといいですわ」

 

「でも・・・攻略上、重要になりそうなアイテムを敵対しているギルドに渡すのは・・・」

 

「あなた方の結びつきには、ギルドの垣根なんて関係ないでしょう!このベルトはあなた方が勝ち取った絆の証ですわ!」

 

サーニャは半ば強引にベルトをリーテンに渡した。

すると、向こうでリンドとキバオウが休憩していたプレイヤー達に出発すると喋り、続々と集まるプレイヤー達。

 

「そろそろ時間ですわ。さぁ、行きましょう」

 

サーニャがそう言うと、三人は迷宮区へ向かおうとしている攻略組の後に続いた。

 

「・・・こっちは大丈夫みたいだな」

 

「だね」

 

キリトとハルトも特に異常が無さそうな三人を見て安堵しながら迷宮区に向かうのであった。

 

 

 

 

迷宮区を難なく進んでいき、ボス部屋前までたどり着いた攻略組。

攻略を始める前にキリトがボスの情報を確認するべく、攻略組に向かってボスの情報を話していた。

 

「今回のフロアボスは《ザ・ワンアイド・ビースト》。情報から察するに近距離や遠距離もいけて、途中で何らかのデバフをかけてくるみたいだ。後は防御が固いから強力なソードスキルを当てないとダメージはほとんど通らないと思った方がいい」

 

「今のよう聞いたか!?今回のボスは攻守、近遠共に隙がないごっつい相手や!気合い入れて行くで!」

 

「皆、それぞれ思うところがあるかもしれない。でも、今はギルドがどうのこうの関係なくフロアボスを倒すことに集中してくれ。勝とうぜ!」

 

『うおおおーーー!!!』

 

一斉に雄叫びを上げる攻略組。

その様子をキリトは何処か嬉しそうに見ていた。

 

「随分、楽しそうね」

 

「まあ、こういうのは嫌いじゃないし。それに・・・ここにいる皆は根っからのゲーマーだ。もしかしたら、ボスと戦っている間はしがらみとか忘れられるかもしれない。今はそれを信じよう」

 

「うん!キリト君、今回も勝とうね」

 

キリトとアスナが話している頃、リーテンはこっそりとシヴァタの方に近づき

 

「シバ・・・これを持っていて・・・」

 

「これって・・・!?確か、あのクエストの報酬の・・・」

 

「サーニャさんから貰ったの・・・ねぇ、シバ。これが終わった後、ギルド同士の仲がどうなるかは分からない。でも、また一緒に戦える日が来るって私は信じている。だから、その時が来るまで絶対に生き延びよう」

 

「そうだな。俺も信じているよ。いつか、しがらみとか関係なくりっちゃん達と一緒に戦える日が来ることを」

 

シヴァタに青色の方のベルトを渡しながら必ず生き延びると決意する。

また、更に別の場所では

 

「ここの攻略もいよいよ大詰めだね」

 

「今回も勝って、必ず生き残ろう、コハル」

 

「うん!(ハルト・・・あなたは私が守ってみせる!)」

 

いつも通りのやり取りをしつつ、ハルトを守ろうと心の中で決心するコハル。

やがて、キバオウとリンドが同時に扉を押すと扉が開き、攻略組は一斉に部屋の中に入った。

部屋の中は、周りの景色は何処か薄暗く、薄っすらと木が見える。

その部屋の中心にいつも通りボスが出現する。

見た目は全身真っ黒の巨大なゴリラみたいな怪物で、如何にも凶暴な顔つきをしている額には緑の宝石のような物が付いていた。その巨大な右手には魔法使いの杖のような片手棍を持っており、まともに食らえばあっという間にHPがゼロになるだろう。

そのボスの上に《ザ・ワンアイド・ビースト》とキリトが言った通りの名前が表示された。

 

「全員、散開!作戦通りに行くぞ!」

 

リンドの指示通り散開する攻略組。

《ザ・ワンアイド・ビースト》が散開する攻略組の一団に向けて杖を振り下したが

 

「させません!」

 

「やらせるかよ!」

 

リーテンとシヴァタがそれを防ぐ。

その隙にアタッカーが攻撃を仕掛けていく。

 

「スイッチ!」

 

「了解!」

 

キリトとハルトのスイッチ攻撃が《ザ・ワンアイド・ビースト》にダメージを与える。

 

「グオオオーーー!!」

 

キン!

 

「おっと!何もタンクはあいつらだけじゃないぜ!」

 

すぐさま、《ザ・ワンアイド・ビースト》は自身に攻撃をしたキリトに杖を振り下ろしたが、それをカズヤが防いだ。

攻撃こそ強力だが、タンクが全て防いでくれるおかげでアタッカーは安全に攻撃できた。更に

 

「あの宝石、怪しいな・・・よっと!」

 

攻略組唯一の弓使いのシロコイは《ザ・ワンアイド・ビースト》の額に付いている緑の宝石に矢を放ち、見事命中した。

すると、《ザ・ワンアイド・ビースト》は頭を押さえながら苦しんだ。HPもそれなりに減っていた。

 

「どうやら、あの額にある緑色の宝石は弱点みたいだな」

 

《ザ・ワンアイド・ビースト》の弱点を見つけ、攻略組はそこに攻撃を集中させることで着実にダメージを与えていった。

 

「よし!このまま押し切って・・・」

 

攻略組の一人が呟く。《ザ・ワンアイド・ビースト》のHPが半分以下になり、順調に進んでいると誰もが思ったその時

 

「グオオオーーー!!!」

 

《ザ・ワンアイド・ビースト》が突如雄叫びを上げた。

フィールド中に《ザ・ワンアイド・ビースト》の雄叫びに誰もが怯む。やがて雄叫びが止むと、何事も無かったかのようにその場に佇む《ザ・ワンアイド・ビースト》。

 

「な、何が起こったんだ・・・?」

 

キリトが呟きながら周りを見渡す。

見たところ《ザ・ワンアイド・ビースト》に変化はなく、攻略組にも特に異常はない。

 

「へっ!叫んだからなんだ!んなことでビビッてられるかよ!」

 

いち早く復帰したカズヤが《ザ・ワンアイド・ビースト》に向かって突っ込む。

 

「!? ダメだ、カズヤ!戻れ!」

 

何か異変に気付いたトウガが叫びながら制止するも、既にカズヤは《ザ・ワンアイド・ビースト》の目の前に来ており、《ザ・ワンアイド・ビースト》の攻撃をさっきまでと同じように防ごうとしたが

 

「!? うおっ!!」

 

さっきまでと違って、《ザ・ワンアイド・ビースト》の攻撃を防ぐも物凄い勢いで飛ばされたカズヤ。

 

「カズヤ君!?」

 

吹き飛ばされたカズヤにコノハが驚きながらも、カズヤの安否を確かめるべくカズヤの所に向かったが、彼のHPバーを見て目を見開いた。

 

「これは・・・!?防御ダウンのデバフがかかっている!?」

 

『!?』

 

コノハの言葉に誰もが驚愕の表情をする。

カズヤのHPはポーションで回復したから先程まで満タンだったのが一気に半分も減らされていた。更にHPバーの隣には防御ダウンのデバフが付与されている。

カズヤだけでない。この場にいる全てのプレイヤーに防御ダウンのデバフが付与されていた。

 

「嘘だろ・・・タンクでもHPが半分以上減らされるって・・・」

 

「勝てっこねぇよ・・・あんな化け物に!」

 

「だ、誰か!助けてくれ!」

 

一撃でタンクのHPが半分も減らされた事実に攻略組の面々が次々と恐怖に飲まれていき、誰もが隊列や作戦を無視して逃げ惑う。

 

「アカン!ここは落ち着くんや!ここで慌てたら、それこそボスの思うつぼや!落ち着いて互いにカバーし合うんや!」

 

「クソ!頼む皆!言うことを聞いてくれ!」

 

両ギルドのリーダーが必死に叫ぶが、恐怖に飲まれた攻略組の面々の耳には届かず、ただ泣き叫んでは逃げ惑うばかりであった。

 

「!? 危ねぇ!」

 

そんな中、攻略組の一人が《ザ・ワンアイド・ビースト》に狙われ、それに気付いたシヴァタが咄嗟にそのプレイヤーを突き飛ばした。

しかし、庇う事に集中し過ぎたあまり、シヴァタ自身の防御が間に合わない。今のシヴァタのHPはカズヤと違って半分もない。防御してでもHPを半分も削られる攻撃を防御なしでは一撃でHPがゼロになるだろう。目の前にいる《ザ・ワンアイド・ビースト》が杖を振るい、シヴァタが死を覚悟し目を瞑ったその時

 

キン!

 

リーテンが前に出て杖を受け止めた。

 

「シバ、逃げて!」

 

「りっちゃん!?・・・くっ!うおーーー!!」

 

リーテンが逃げるよう《ザ・ワンアイド・ビースト》の攻撃を受け止めながらシヴァタに向かって叫んだが、目の前で自分を守ってくれている恋人を見捨てる程シヴァタは腐っていない。

リーテンの隣に立ち、攻撃を押し返そうとするシヴァタ。

だが、カズヤと同様二人にも防御ダウンのデバフがかかっており、《ザ・ワンアイド・ビースト》の強烈な一撃は二人掛かりでも防ぎきることはできない。

《ザ・ワンアイド・ビースト》の強烈な一撃により、二人は吹き飛ばされ地面に転がされた。

誰もが死んだと思い、絶望の表情になるが

 

「うう・・・あれ?私・・・生きている?」

 

「だ、大丈夫か?りっちゃん。俺も・・・何とか無事だ」

 

ゆっくりとだが立ち上がり、互いの安否を確認するリーテンとシヴァタ。

周りのプレイヤーも二人の無事な様子に安堵したが、同時にHPが半分しか無かった二人が防御したとはいえ、防御しても半分以上削られる《ザ・ワンアイド・ビースト》の攻撃を食らって何故HPがゼロにならなかったのか疑問に思った。

 

「そうか!あのベルトの効果か!二人が装備しているそのベルト。おそらく、このボス攻略の時だけ装備すれば、デバフを上回る防御力アップのバフが付与されるんだ!」

 

トウガがベルトの効果に気付いた。

あのベルトは今までのボス同様、ボス攻略でしか発揮されないアイテムの一つであった。だから、あの場所でサーニャが装備しても何も変化が起きなかったのだ。

そして、その効果は防御力を大きく上昇させるものであり、それを装備しているリーテンとシヴァタはデバフの効果が解除され、更に防御力アップのバフが付与されたのである。

 

「ここは私たちがタンクを務めます!敵の攻撃は私たちで引き付けますので、皆さんはその間に攻撃してください!」

 

リーテンは周りにいる攻略組に向かって指示するが

 

「で、できるわけねぇだろ!あいつの攻撃を一撃でも食らったら死んじまうんだぞ!」

 

「そ、そうだ!あんたらはデバフの効果が軽減されてるからいいけど、俺らにはデバフが付いたままなんだぞ!」

 

「嫌だ!俺はまだ死にたくねぇよ!」

 

一度身に染みた恐怖からは中々解放されず、攻略組は未だに泣き叫んでは逃げ惑い続ける。

 

「!? 皆さん!大丈夫ですから!私たちが引き付けている間、皆さんには絶対に攻撃を向けさせません!だからお願い!話を聞いて!」

 

「皆!頼むからりっちゃんの指示に従ってくれ!」

 

リーテンとシヴァタが必死になって叫ぶが、やはり攻略組の耳には届かない。

フィールドは既に死という名の恐怖に飲まれていた。

 

「(やっぱりダメなのか!?犠牲者を出さずにボスを倒すことなんて、俺たちには無理なのか!?)」

 

この状況を見て、キリトが苦虫を嚙み潰したような顔をする。

ハルト達やキバオウとリンドも苦し気な顔でこの地獄絵図を見つめる。誰もが、犠牲者を出さずにボスを攻略をするのを諦めかけたその時

 

「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!!猿共!!!」

 

一人の男の怒声がフィールド中に響き渡った。

先程まで悲鳴を上げ続けていたプレイヤーも、犠牲者を出さずに攻略することを諦めかけていたプレイヤーも一斉に怒声を上げた人物の方を向く。

 

「普段は攻略組の地位を利用してイキがってる癖に、いざボス攻略となったらピーピーガキ見てぇに喚きやがって!そんなに死ぬのが嫌なら攻略組なんて辞めて猿山(始まりの町)に帰りやがれ!!」

 

怒声を上げた人物、ザントは二十層までに溜め込んでいた苛立ちを発散させるかのように叫ぶ。

 

「いいか!俺はテメェら猿共が死ぬほど嫌いだ!!弱ぇ癖に地位だけを利用して更に弱ぇ奴らを虐げて優越感を得る!そして!いざとなっても何にも役に立たないでただ逃げ回るだけ!テメェらは強者の足を引っ張り、嫉妬することしかできないクソ見てぇな存在だ!!けどな!そんなクソ見てぇに使えねぇテメェらでもあいつに攻撃すりゃ、ほんの僅かでも役に立つことができんだよ!!強者の足を引っ張り、ただその背中を見続けて嫉妬するくらいだったら・・・」

 

ザントは周りで呆然と自分を見ている攻略組に向かって思いっ切り叫んだ。

 

「せめて、こんな状況でも生きようと足掻いている強者に一泡吹かせることぐらいはしやがれ!!」

 

『!?』

 

ザントの怒号に息を吞んだ攻略組の面々だったが、やがて一人が叫んだ。

 

「うおーーー!!やってやる!」

 

「見せてやるよ!攻略組の意地ってもんをよ!」

 

「ああ、そうだ!畜生!あの狼野郎!言いたい放題言いやがって!いつか絶対にぎゃふんって言わせてやる!」

 

「笑わせんじゃねぇぞ雑魚共!テメェらが俺に追い抜こうなんざ十年早ぇんだよ!」

 

『うおおおーーー!!!』

 

ザントを筆頭に先程まで恐怖に飲まれていた攻略組の面々が一斉に吠える。

 

「あいつ・・・俺たちも行くぞ!」

 

「せや・・・!聞こえるか攻略組!リーテンとシヴァタをタンクとし、ボスの攻撃に当たらないよう隙を付いて攻撃!ここが正念場や!一気に決めるで!」

 

ザントのによって戦意を回復した攻略組はリーテンとシヴァタをタンク役として、少しずつ《ザ・ワンアイド・ビースト》にダメージを与えていった。

《ザ・ワンアイド・ビースト》もまた、HPを削られながらも一人でも多くの犠牲者を出そうと攻撃をし続けてた。

戦いは最終局面へと移っていた。

《ザ・ワンアイド・ビースト》のHPは既に1/4を切り、リーテンとシヴァタのHPもほとんどなく耐えれるとしたら精々一撃が限界だった。

 

「クソ!このままだとチリ貧だ!」

 

「一旦、お二人には下がって頂くべきですわ!このままでは持ちませんわよ!」

 

「だが、二人が下がればボスの目は他のプレイヤーに向く。そうなってしまえば・・・」

 

確実に犠牲者が出る。その言葉を言う前にトウガは出掛かった言葉を飲み込んだ。

バフが付与されていない他のプレイヤーが攻撃を食らえば確実にHPがゼロになるのは、誰の目から見ても明らかだった。

 

「俺たちの勝利条件は誰も犠牲になることなくボスを倒すこと。だが、タンクを務めるリーテンとシヴァタが攻撃を受けられるのは後一回が限界」

 

「でも、二人を下がらせたら、代わりに狙われた誰かが犠牲になるかもしれない・・・」

 

キリトとアスナが状況を確認するも、現時点で犠牲者を出さずに攻略できる効率のいい案は思い浮かばない。

 

「キリト。俺たちの一斉攻撃であいつのHPを削り切れるのは可能だと思うか?」

 

「微妙なところだ。こんだけ攻撃を与えてもHPが全然減らないとなると、相当強力なソードスキルで攻撃しないと耐えられるかもしれない」

 

「問題はそこだけじゃねぇだろ。一斉攻撃を仕掛けるにしても、あいつの動きを止めねぇと一斉攻撃なんてできねぇだろ」

 

「ああ、ザントの言う通り一斉攻撃を仕掛けるならタンク二人がボスの動きを。それも結構な時間止めないとダメだな」

 

「つまり、奴を倒しきる為には、奴の動きを長時間止めて且つ奴の残りHPを削り切れる強力なソードスキルを打つ必要があると?」

 

「・・・たった一回のチャンスで奴のHPを上回る方法。それができないと確実に犠牲者が出る」

 

キリトの言葉に誰もが暗い顔をする。

ボスの動きを長時間止める。一斉に攻撃を仕掛ける。強力なソードスキルを放つ。それら全てを一回で成功させて且つ犠牲者をゼロにする方法。急がないといけないが、条件が厳しく中々成功させる良い案が思い浮かばない。

 

「ハルト・・・本当に方法はないのかな・・・?」

 

コハルが縋る思いでハルトに聞く。

ハルトもまた、頭をフル回転させて犠牲者を出さずにボスを倒しきる方法を考えていた。

 

「(本当にないのか!?いや、あるはずだ!犠牲者を出さずにボスを倒しきる方法が!考えろ!考えるんだ!)」

 

そして

 

「!?・・・ある。一つだけ、方法がある!」

 

「!? ホントか!?それ!」

 

キリトが驚いたようにハルトを見る。周りのプレイヤー達も一斉にハルトの方へ向いた。

 

「正直言って、上手くいくかどうかは分からないけど・・・」

 

そう言いながら、ハルトは作戦を伝えた。

 

「確かに・・・これなら可能性はあるな。俺はこれに賭けるよ」

 

「私もよ、キリト君」

 

「俺も賛成だ。時間がない今、これに賭けるしかない」

 

「こういう部の悪い賭けは嫌いじゃねぇ。乗った」

 

「だな。見せてやろうじゃん!奇跡って奴を!」

 

キリトを筆頭にアスナ、トウガ、ザント、シロコイと次々と賛成する。

 

「私たちも参加します」

 

「ここまで来たんだ。俺たちの命も預けるよ」

 

更にリーテンとシヴァタが賛成したことで周りにいた攻略組の面々も賛成し始めた。

 

「皆さん正気ですの?失敗したら自分たちが確実に死ぬんですのよ?止めましょう・・・以前の私だったらこう言って反対してましたけど、あなた方のお人好しっぷりに私も当てられましたわ」

 

サーニャもまた、何処か呆れるように喋りながら賛成した。

 

「やろうよ、ハルト!全員で次の層に行く為に!」

 

最後に自身のパートナーの賛成の声を聞くと、ハルト達は作戦を実行する為、指定の位置に付いた。

一方、《ザ・ワンアイド・ビースト》もまた、攻略組が準備し終わるまで待ち構えており、リーテンとシヴァタが《ザ・ワンアイド・ビースト》の正面に立つと動き出した。

《ザ・ワンアイド・ビースト》は両手で杖を持ち思いっ切り杖を振り下ろしたが、それをリーテンとシヴァタが盾で防ぐ。

その次の瞬間、二人は装備を捨てて《ザ・ワンアイド・ビースト》が杖を上げる前に《ザ・ワンアイド・ビースト》の両腕を掴んだ。

 

「今だ!」

 

二人がボスを抑え込んでいるうちにキリトの掛け声と共に攻略組が一斉に動き出す。

 

「頼んだぜ皆・・・いっけーーー!!」

 

シロコイが放った<アクア・スティッチ>が《ザ・ワンアイド・ビースト》の額の宝石に命中する。

それが合図となり、キリトを始めとしたアタッカーが一斉攻撃を仕掛ける。

 

「そこだ!」

 

「終わりよ!」

 

「ハッ!」

 

「消えろ」

 

「ヤァ!」

 

「おらっ!」

 

「行くっす!」

 

ダスビダーニャ(さようなら)!」

 

キリトが、アスナが、トウガが、ソウゴが、コノハが、カズヤが、レイスが、サーニャが・・・攻略組のほとんどのプレイヤーが次々と攻撃し、《ザ・ワンアイド・ビースト》にダメージを与えていった。

 

「スイッチ任せたぜ!ハルト!」

 

「はい!」

 

そして、止めを刺すべくザントとハルトが動き出した。

 

「!? ダメだ止められない!」

 

「後少しなのに・・・!きゃ!?」

 

しかし、《ザ・ワンアイド・ビースト》が強靭な力でリーテンとシヴァタを振りほどき、そのまま自身に近づいてきているザントとハルトに向けて杖を振り上げた。

ザントは「ちっ」と舌打ちしながら、せめて攻撃を軽減させようと《蒼嵐》を上にかざして攻撃を防ごうとしたその時

 

「「うおおおーーー!!」」

 

ALSとDKBの二人組が《ザ・ワンアイド・ビースト》が杖を振り下ろす直前に足を押さえて《ザ・ワンアイド・ビースト》の動きを止めた。

あの二人組はリンド救出の際に互いに剣を向けたり、ボス攻略が始まる前や防御ダウンのデバフが付いた時にこの世の終わりみたいな顔をしていた二人組だ。

かつて互いに剣を向けるくらいいがみ合っていた二人組だが、今この瞬間だけは力を合わせて強大な敵に立ち向かっていた。

 

「よせ!今すぐ離れるんだ!今のあんたらのHPだと一発でもまともに食らえば終わりだ!」

 

キリトが二人組に向かって叫んだが、それでも二人組は《ザ・ワンアイド・ビースト》の足を押さえていた。

 

「俺たちのことは気にするな!」

 

「今はこいつを!早く!」

 

そんな二人組の決死の叫び声を聞いたザントは

 

「へっ!いい吠えっぷりじゃねぇか!」

 

何処か嬉しそうに笑みを浮かべながら《ザ・ワンアイド・ビースト》に近づき、<ビースト・ランページ>で攻撃した。そして、そのまま後ろに下がると

 

「やっちまえ!ハルト!」

 

止めを刺すようにとハルトに向かって叫んだ。

ハルトがスキルのモーションをし、《ザ・ワンアイド・ビースト》に向かって全力の一撃を放とうとしたが

 

「グオオオーーー!!」」

 

「「うわぁぁーーー!!」」

 

《ザ・ワンアイド・ビースト》が思いっ切り足を振り回し、足にしがみついていた二人を引き剝がした。

そして、そのまま杖を上に上げて目線を自身に近づいているハルトに向けた。

 

「マズい!このままだと直撃するぞ!」

 

「避けろ!ハルト!」

 

《ザ・ワンアイド・ビースト》の行動を察し、キリトとトウガが叫ぶが、既に《ザ・ワンアイド・ビースト》は杖をハルトに向けて振り下ろそうとしてた。

このタイミングでは防御も回避も間に合わない。援護しようにも距離があって届かない。

それでも、この場にいる誰もがハルトを救おうと動いた・・・だからこそ、誰よりも早く動いていた彼女の存在にハルト以外のプレイヤーは気が付かなかった。

 

 

 

 

「(ずっと思っていた。彼は私の事をどう思っているのかな?私の存在が彼の足かせになっているんじゃないかなって)」

 

「(心の奥で悩んでいた。いつも自分の隣にいてくれる彼女を自分は本当に信用しているのかって)」

 

少女は悩んだ。いつの日か自分の存在が彼を殺してしまうのはないかと。

少年は悩んだ。トッププレイヤーとして名乗りを上げた自分は彼女を必要としているのかと。

互いに悩み、その気持ちを心の奥に隠し続けた結果、二人は一度離れ離れになってしまった。

 

「(互いに思い悩んだ結果、私たちは離れ離れになってしまった。でも、離れ離れになった今だからこそ分かる)」

 

「(僕は彼女の隣にいたい。どんなに不格好だろうと、大切な人の傍にいること。ただ、それだけだった)」

 

二人の時間を動かしていた歯車が狂い、一度離れ離れになったからこそ、二人は本当の気持ちを理解した。大切な人の傍にいたい。たったそれだけのことを。

 

「(だから、今なら胸を張って言える!)」

 

「(僕は!)」

 

「(私は!)」

 

「「信じられている!!」」

 

《ザ・ワンアイド・ビースト》がハルト目掛けて杖を振り下ろそうとしたその時、《ザ・ワンアイド・ビースト》の死角からコハルの<フォトンファング>が《ザ・ワンアイド・ビースト》の体を切り刻んだ。

強力なソードスキルを食らい、思わず怯む《ザ・ワンアイド・ビースト》。その隙にコハルはハルトに向けて叫んだ。

 

「お願い!ハルト!」

 

その叫び声に応えるかのように、ハルトは<レイジ・スパイク>で《ザ・ワンアイド・ビースト》に突進する。

そして、《ザ・ワンアイド・ビースト》にダメージを与えると体勢を整え、次のソードスキルを放とうとモーションをし、あるソードスキルで攻撃した。

 

「あれは!<ファイア・スラント>!?」

 

プレイヤーの誰かがそのソードスキルの名を叫ぶ。

<ファイア・スラント>は片手直剣の熟練度を少し上げるだけで習得できる簡単なソードスキルだ。威力も弱いし、とてもじゃないが《ザ・ワンアイド・ビースト》に止めを刺すのに打ってつけのソードスキルではない。

現に《ザ・ワンアイド・ビースト》のHPはほんの僅かしか減っておらず、ハルトの行動に誰もが驚きながらも疑問に思う。

しかし、キリトだけは違った。

 

「いや、違う!これは・・・!?」

 

ハルトの意図が理解したからこそ、彼は他のプレイヤーとは違う意味で驚いた。

ハルトは<ファイア・スラント>を繰り出すと、もう一回<ファイア・スラント>を繰り出した。

誰もがハルトの意図が読めず啞然と見守る中、キリトがそのスキルの名前を呟いた。

 

「バーストスキル・・・!」

 

キリトが呟くと同時にハルトの剣が赤く光り、まるで炎に包まれたかのように輝いた。

 

「いっけーーー!!」

 

そして、《ザ・ワンアイド・ビースト》目掛けてバーストスキル<クリムゾン・スクエア>を放った。

バーストスキルは普通のソードスキルと違い、特定の条件を満たすことで使えるようになる強力なソードスキル。ハルトが繰り出したバーストスキル、<クリムゾン・スクエア>は斬属性のソードスキル一回と火属性のソードスキル二回繰り出すことで発動できるバーストスキルである。ハルトが<レイジ・スパイク>の後に<ファイア・スラント>を二回繰り出したのも、斬属性を持つ<レイジ・スパイク>と膠着状態が短く火属性を持つ<ファイア・スラント>を二回繰り出すことで、バーストスキルの発動条件をスムーズに達成させる為であった。

炎を纏いし剣が一撃二撃と《ザ・ワンアイド・ビースト》の巨体を切り刻む。そして、最後の五連撃目でハルトは剣を両手に持ち直し

 

「僕たちは前に進むよ。今も・・・これからも」

 

《ザ・ワンアイド・ビースト》の額の宝石に向けて思いっ切り剣を振った。

すると、額にあった宝石は割れ、《ザ・ワンアイド・ビースト》は頭を押さえて苦しみながらポリゴン状に四散した。

 

「はぁ・・・はぁ・・・勝っ・・・た?」

 

「勝った!勝ったんだよ!私たち!」

 

息を上げながら周りを見渡すハルトにコハルが駆け寄る。

それと同時に場の緊張はほぐれ、あっという間に歓声へと変わった。

力を合わせて犠牲者を出すことなくボスを倒すこと。それが達成できたことで、場は攻略する前と違ってすっかり和らいでいた。

 

「お疲れ様。さっきは見事なコンビネーションだったぜ」

 

「お疲れ様。二人共かっこよかったわよ」

 

互いに喜び合っていたハルトとコハルの下にキリトとアスナが話しかける。

 

「ギルド同士で揉めているって聞いた時は心配だったけど、ここにいる皆が根っからのゲーマーで安心したよ。ゲーマー同士が分かり合う為には協力プレイが一番だからな」

 

「ALSとDKBの事なんだけど、今はあの人たちを信じてみましょ。それじゃあ、私とキリト君は一足先に二十一層に行ってるから。次の層でもよろしくね」

 

そう言うと、キリトとアスナは二十一層へと向かった。

ザントもまた、先に二十一層に向かった二人を見て、自身も二十一層に行こうとしたが

 

「待ってくれ!」

 

ザントを呼び止める声が聞こえ、振り向くと先程《ザ・ワンアイド・ビースト》の足を押さえてくれたALSとDKBの二人組がいた。

そして、ザントに斬りかかった二人組でもある。

 

「その・・・あの時は悪かったよ。ついカッとなって、あんたに斬りかかろうとして」

 

「それと、ありがとう。あんたやクラインって人がいなかったら俺たちは取り返しのつかないことをしていた」

 

「・・・低脳な猿共のやった事なんざ、覚えといても何の得しねぇから、忘れちまったよ」

 

謝罪とお礼を言われたにも関わらず、二人組を罵倒するかのように返したザント。

しかし、この間と違って二人組はカッとなることも斬りかかることもせず、正面からザントを見据えながら喋った。

 

「あの時、あんた達に色々言われた後、ずっと考えていたんだ。今の俺たちはどういう気持ちでVRMMOをプレイしているんだろうって。でも、今日のボス攻略で分かったんだ。俺たちはVRMMOが大好きなんだって。それこそ、誰にも負けないくらい」

 

「だから、俺たちは今よりももっと強くなる!いつかあんただって超えてみせるさ!」

 

ザントに向かって堂々と超える宣言する二人組。

二人組の顔を真剣な表情で見ていたザントだったが、後ろに振り向き

 

「笑わせんじゃねぇ。俺を超えるんだったら、まずはその猿見てぇな短気な性格をどうにかするんだな」

 

そう言い残すと、ザントは出口へと向かい、そのまま二十一層へ上がった。

 

「やれやれ、あいつも素直じゃないな・・・」

 

そう言いながら、シロコイもザントの後に続くように二十一層へ向かった。

その姿を見届けた二人組は再度「ありがとう」と言うと、それぞれのギルドの面々の所に戻った。

別の場所では、リーテンとシヴァタが見つめ合っていた。

 

「私・・・ずっと待ってるから!また一緒に戦える日が来る時も!いつかリアルで会える時も!だから・・・またね、シバ」

 

「ああ、俺もだ!・・・またな、りっちゃん」

 

そう言い残すと、二人もまた、それぞれのギルドの面々の所に戻る。

やがて、ALSとDKBも二十一層へ上がり

 

「それじゃあ、俺たちもそろそろ。またな、二人共」

 

「次のボス攻略でお会いしましょう。ダスビダーニャ(さようなら)

 

残った「紅の狼」の面々とサーニャもまた、二十一層へと向かった。

部屋に残ったのは、ハルトとコハルの二人だけだった。

 

「ハルト・・・私、今回も守られてばかりだった・・・」

 

ふと、コハルが小さく呟いた。

 

「そんなことはないよ。さっきだって、君に助けられたし・・・」

 

「守られてばかりだよ!」

 

否定しようとしたハルトだったが、大きく叫んだコハルによって遮られた。

驚きながらもコハルの顔を見る。すると、彼女は目元に涙を溜めながらこちらを見ていた。

 

「だって、この間レッドプレイヤーの人達に襲われた時も、シロコイさん達が来るのが後少しでも遅かったら、ハルトは殺されてた・・・嫌だよ。ハルトが死ぬなんて・・・何処か遠くに行っちゃうなんて・・・」

 

この層での出来事を得て、大切な人がいなくなるという最悪の結末にコハルは恐怖していた。

 

「大丈夫だよ。僕は絶対に死なない。どんな時でも、いつだって君の隣にいる」

 

「!?」

 

そんな不安気な様子のコハルにハルトは優しく微笑みながら彼女の手を握った。

コハルは驚きつつも、ゆっくりと口を開く。

 

「・・・本当にいいのかな?私は・・・君の隣にいてもいいのかな・・・?」

 

「良いも悪いも無いよ」

 

「だって」と言いながら、ハルトはコハルを抱きしめる。

 

「僕は、君のパートナーだから」

 

自身を抱きしめる彼の温もりから、彼の思いがしっかりと伝わった。もう二度と遠くへ行かないように。彼女から離れてしまわないように。

コハルは涙を流しながら、笑顔で抱きしめ返す。

 

「うん!守るから・・・今度は私が守るから」

 

やがて二人は抱擁を解き、互いの顔を見つめ合う。そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと目を瞑りながら顔を近づけ、互いの唇を重ね合わせた。

このアインクラッドで出会い、どんな困難も互いに支え合いながら乗り越えていき、遂に二十層を突破した二人。これからも、二人には様々な試練が訪れるだろう。それでも、彼らは乗り越えていくだろう。この世界で出会った仲間たちと共に。

今はただ、大切な人が傍にいることの幸せを感じる二人であった。




・<アクア・スティッチ>
弓の星4スキル。名前から分かる通り、水属性を持っている。また、命中させると攻撃力上昇のバフが付与される。

・<フォトンファング>
短剣の星4スキル。スキルを当てるごとにクリティカル率が上昇するバフが付与され、HIT数が多ければ、追加でダメージを与えることができる。

・<クリムゾン・スクエア>
片手直剣の星4スキルでバーストスキルでもある。一周年イベントで手に入るバーストスキルであり、バーストスキル初心者に取っては、かなりオススメのソードスキル。

・「僕は、君のパートナーだから」
書いてる時に思ったけど、SAOIFで主人公がコハルに向かってこんな風に言うシーンってあったけ?

・ハルト(SAOIF主人公)とコハルのキスシーン
誰か!誰か一枚絵を頼む!!(マジの懇願)



三周年記念パーティーの感想
・松岡さんと安元さんはっちゃけてるな~
・100%エギルLINEスタンプヤバすぎwww
・マグロスタンプはいつ実装されますか?










エギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギルエギル

三周年パーティーじゃなくてエギルパーティーじゃねぇか!


以上で二十層編終了となります。
ハルトとコハルはパートナー=恋人未満からパートナー=恋人に進化?しました。
最初は進化?させるつもりはなかったんですけど、三周年イベントでどっからどう見てもプロポーズにしか見えないやり取りを見て、もうここまでできているのなら、いっそのこと早めにくっつかせた方が今度の展開を書きやすくなるかなと思い、この結論に至りました。
次回は二十五層編・・・と行きたい所ですが、ここで一つ番外編を挟みます。
内容は次回までのお楽しみということで。(ヒント:二十~二十五層までの間と言えば?)
最後に一つ重大なお知らせを・・・


































この層以降、しばらくの間サーニャの出番はありません。
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