ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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毎回思うけど、SAOIFのクリイベはどうして神っているのだろうか。ホント季節限定イベにもシナリオ再生機能付けて欲しいわ。

クリスマスと言えば何か・・・そう、釣り!(適当)
ということで、今回の番外編は釣りイベントの話です。そして、釣りと言えば当然あのキャラが登場します。

※この番外編は他の季節限定イベントの話と違って、サチやシリカの話同様、本編で起きた出来事となっております。時系列としては大体二十三か二十四層辺りを攻略してる最中です。


ヌシを釣る意思

攻略も順調に進んでいるハルトとコハルは休憩がてらに二十二層へやって来た。

強いエネミーがおらず、フロアボスもそんなに強くなかったこの層は色んなプレイヤーにとって人気のフロアであった。

 

「二十二層・・・久しぶりだね・・・」

 

「うん。久しぶりに来たけど、何処も変わらないね・・・せっかく来たんだし、まだ探索してない所とか探索してみようよ!」

 

久しぶりの二十二層にテンションが高いコハル。

ハルトもまた、自然豊かなこの層を気に入っており、早速探索してみようと動いた直後

 

「おや?ここら辺では見ない顔ですな」

 

突然声を掛けられ、振り向くと眼鏡を掛けた老人がいた。

防具などは装備しておらず、見た感じどこにでもいそうなおじいちゃんって感じだ。

 

「あの~あなたは?」

 

「おっと失礼、申し遅れました。私はニシダといいます。ここでは釣り師。日本では東都高速線という会社の保安部長をしとりました。名刺が無くてすみませんな」

 

「こ、こちらこそ初めまして!私、コハルっていいます!それと、こっちは・・・」

 

「ハルトです」

 

「これはご丁寧にどうも」

 

互いに自己紹介をすると、ニシダさんは二人に問いかける。

 

「お二人は攻略組の方ですか?」

 

「え?はい、一応は・・・」

 

ハルトが質問に答えると、ニシダさんは顎に手を当てながら二人の顔を見つめる。

まじまじと見つめられ、二人が困惑していると、ニシダさんは顎から手を外して口を開いた。

 

「ふむ、これもいい機会ですかな・・・お二人共、もし良ければ私の釣りにちょっとだけ付き合ってくれませんか?」

 

「釣りですか・・・どうするハルト?」

 

「僕は構わないけど・・・すみません、ニシダさん。僕ら、釣りは初めてですけど大丈夫ですか?」

 

「そうでしたか。心配しなくとも大丈夫ですよ。私が手っ取り早く教えますよ」

 

「本当ですか?それならお付き合いします。よろしくお願いします、ニシダさん」

 

ニシダさんのご厚意に感謝するハルト。

こうして二人はニシダさんに教えてもらいながらSAO初の釣りをすることになった。

 

 

 

 

二十二層の広大な湖までやって来たハルト達。

ニシダさんから基本的な事を教えてもらい、近くの店で釣竿と餌を買ったハルトとコハルは早速釣りをすることになった。

 

「!? ここだ!」

 

釣竿がブルッと震え、思いっ切り釣竿を振り上げる。

すると、湖から釣竿の針金部分を銜えた小さめの魚が姿を現した。

 

「おお!さっさく釣れましたな!」

 

開始して早々魚を釣れたことにニシダさんが声を上げる。

 

「私も釣れました!」

 

「これはこれは!お二人共、中々筋がいい」

 

更にコハルも釣れたことで、ニシダさんは思わず感心した。

その後も、ニシダさんのアドバイスを聞きながら二人は次々と魚を釣っていき、夕方になる頃にはバケツは魚でいっぱいだった。

 

「どうですか?釣りは楽しんでいただけましたか?」

 

「はい!とっても楽しかったです!ハルトはどうだった?」

 

「勿論、楽しかったよ」

 

「それは良かった。そうだ!せっかく興味を持ってくれたついでに今度行われる釣り大会に参加してみてはいかがでしょうか?」

 

そう言いながら、ニシダさんはストレージから一枚の紙を取り出し、ハルトに渡した。

ハルトは渡された紙をコハルの方に近づけ、彼女と一緒に内容を見る。

そこに書いてあったのは、大会が行われる日付や場所、大会の優勝者に送られる賞品が描かれていたが

 

「ええ!?」

 

コハルがふと声を上げて驚いた。

 

「どうしたの?コハル」

 

「ごめん、急に大声を上げて・・・でもこれ、凄く似てて・・・」

 

「これって・・・確か、優勝したら貰えるブローチ?」

 

「うん。昔、ちっちゃかった頃に初めてのピアノの発表会の時にお母さんが私にくれたブローチがあって・・・そのブローチがこの優勝賞品のブローチとそっくりなの」

 

「ほう!凄い偶然もあるもんですな!」

 

思わぬ偶然にニシダさんが声を上げた。

ふと、コハルを見ると、彼女はまじまじと優勝賞品が描かれた紙を見つめていた。

 

「いいなぁ・・・」

 

「やっぱり欲しい?」

 

「うん、よく似たのをリアルでも使ってたし、それに・・・」

 

「それに?」

 

「ううん、なんでもない。今、使っているブローチも結構気に入ってるし。それよりも、釣り大会どうする?」

 

「せっかくだし、参加してみるよ」

 

何か上手くはぐらかされた気がするが、ハルトはコハルに参加することを伝えた。

 

「おお!これは嬉しいですな!早速、私の方からエントリーしておきます!」

 

「ハルトが参加するなら、私も参加してみようかな。よろしくお願いします、ニシダさん」

 

「こちらこそ!いやはや、これは楽しみになってきましたな!では、私はこれで。もし、釣りで困ったことがあれば、明日また誘ってくださいな」

 

嬉しそうにそう言うと、ニシダさんは二人に手を振りながら去っていった。

二人も、明日またニシダさんと釣りをしようと思いながら、圏内の宿屋に向かった。

 

 

 

 

翌日、ハルトとコハルは昨日フレンド登録したニシダさんにメッセージを送って呼び出し、昨日と同様釣りを楽しんでいた。

 

「一説には、水中に落としたスプーンを餌だと思って魚が食いついた、というがルアーの起源と言われましてな。魚というのは近くに落ちてきた物を金属だろうと餌だと思い込んで食いついてしまうんです」

 

「へぇー知りませんでした」

 

「他にも泳がせ釣りなんて方法もありましてな。生きた魚を餌にして大きな魚を釣り方法です」

 

「なるほど、勉強になります」

 

会話を弾ませながら釣りを楽しむ三人。

すると、コハルの釣竿がヒットした。

 

「また来た!せーのっ!」

 

釣竿を振り上げると、青い魚が姿を現した。

また一匹、魚が釣れて喜ぶコハル。

だが、その魚を見た時、ハルトはふと違和感を覚えた。

その魚は他の魚と違って小さい手足のようなものが付いており、何よりその魚の隣にはHPバーが表示されていた。

 

「!? 避けろ!コハル!」

 

「え?・・・きゃ!?」

 

コハルに向かって叫んだ直後、彼女が釣った魚もとい魚類型のエネミーがコハルに襲い掛かった。

コハルは咄嗟に体を捻らせて何とか躱すが

 

「あ!?」

 

突進してきた際にコハルの防具に付けてあったブローチが外れてしまい、宙へと舞ったブローチはそのまま湖へ落ちてしまった。

 

「うおおーーー!」

 

一歩遅れて、ハルトが<レイジ・スパイク>でエネミーに攻撃すると、そのままポリゴン状に四散した。

 

「大丈夫!?コハル!」

 

「お怪我はありませんか!?」

 

「うん、私は大丈夫。でも・・・」

 

そう言いながら、コハルはブローチが落ちていった湖を見つめる。

その表情は悲哀に満ちていた。

 

「申し訳ございません。私がごく稀にエネミーが釣れてしまうこともあると伝えておけば・・・」

 

「僕ももっと早く倒していれば・・・」

 

「いいのいいの!気にしないで!だって事故でしたし、エネミーが釣れるなんて誰も予想できませんよ。ハルトも君が助けてくれたおかげで怪我することがなかったし、結果オーライってことで」

 

謝るニシダさんとハルトをコハルは責めることなく笑顔で返した。

けれでも、コハルが正面上だけで笑顔を作っていることはハルトは勿論、会ってまだそんなに経ってないニシダさんでも分かった。

 

「でも、あれは大事な物だったんじゃ・・・」

 

「大丈夫だよ!どうせレアでもない安物だったし。だから!・・・気にしないで・・・大丈夫・・・だから・・・!」

 

必死に笑顔を作っていたコハルだったが、遂に耐え切れなくなり、その場で涙ぐむ。

 

「・・・あのブローチ、βテストの時、始まりの町でハルトに会う前にSAOで最初に買った物なんだ。雰囲気がお母さんから貰ったブローチと似てたから。それでね、それを付けていれば、自然と勇気をもらうんだ。おかげで、βテスト最終日に勇気を出して君に話しかけてみようって思えたの。正式版が始まってからは真っ先に同じお店に行って買ったんだ。あの時、ハルトに出会えたのも、ここまで一緒にこれたのも、あのお守りのおかげかもね。大事な時に勇気をくれるお守り。それがあれば頑張れる気がするんだ。だから・・・っ!・・・うぅ・・・!」

 

そうして、顔をくしゃくしゃにしながら泣き始めたコハル。

そんなコハルの様子に、ハルトは黙って彼女の頭を胸に寄せながら彼女を抱きしめ、右手で頭を撫でた。

しばらくの間、ハルトの胸で泣いていたコハルだったが、やがて泣き止み、もう大丈夫だといった様子でハルトの胸から離れると、ハルトは何やら決心した様子で口を開いた。

 

「・・・コハル、昨日言ってたよね?釣り大会の優勝賞品のブローチが欲しいって」

 

「う、うん・・・」

 

質問の意図が読めずコハルが戸惑う中、ハルトは一枚の紙、釣り大会のチラシをストレージから取り出してコハルに見せた。

ハルトの意図が読めたコハルだが、不安気な顔でハルトに言う。

 

「これは・・・でも・・・優勝しないと・・・」

 

「だから信じて。僕は絶対に優勝する。そして、君に必ずあのブローチをプレゼントしてみせる」

 

「・・・うん」

 

そう言いながら、コハルは両目に残っていた涙を払った。

 

「・・・話は全て聞かせてもらいました」

 

すると、今まで黙っていたニシダさんが口を開いた。

 

「ハルトさんの優勝するというその心意気に心打たれました。私もお二人の為に全力で力になりたいと思います」

 

「!?・・・ありがとうございます、ニシダさん」

 

ハルトは協力してくれるニシダさんに頭を下げて感謝した。

 

「とはいえ、大会には釣り自慢が出揃っています。今のままでは、そう簡単に優勝はできないでしょう。大会は大きさだけでなく、釣った魚の数や魚のレア度などでも審査しますからな。今のお二人の熟練度では、ベテランには敵わないでしょう」

 

「そんな・・・何とかならないんですか?」

 

今のままでは優勝できないと言われ、不安気な表情をしながら質問するコハル。

 

「ですが、100%優勝することができる方法なら一つだけあります。それはヌシを釣り上げることです」

 

「「ヌシ?」」

 

「ええ、この湖のヌシです。前に一度だけヒットしたんですが、私の力では取り込めずに逃げられてしまいまして」

 

「そんなに大物なんですか?」

 

「大きいなんてもんじゃありませんよ。あれはもはや怪物。そこいらにいるモンスターなんて比べ物になりません」

 

ニシダさんの口ぶりからして、そのヌシはボス級のエネミーなのだろう。

そこいらにいるモンスターと比べ物にならないなんて、一体どれほどの大物なのかとハルトが思っていると、ニシダさんから声を掛けられる。

 

「ところで、ハルトさん。筋力パラメータの方に自信は?」

 

「え?まあ、一応は・・・」

 

筋力パラメータに関しては、斧も使ったりするので充分にある。

 

「でしたら、ハルトさんなら釣れるかもしれません。ヌシを釣るのに大切なことは二つ。一つはヌシの力に耐えられる釣竿。もう一つはヌシが好む餌です」

 

そう言いながら、ニシダさんは一枚の紙を取り出した。

 

「ここに、釣竿と餌を作る為に必要なアイテムがメモされております。材料さえ手に入れば、後は私が仕入れてきます」

 

「ありがとうございます」

 

ハルトはニシダさんに感謝しながら紙を受け取った。

 

「それでは、さっさく行動開始と行きましょう」

 

ニシダさんの言葉を最後にハルト達はそれぞれ行動に移った。

そして、一日使ってハルトは何とかヌシを釣る為の釣竿と餌を手に入れることができた。

 

 

 

 

数日後、釣り大会当日

会場は人で賑わっており、皆、優勝を狙おうと張り切っていた。

 

「遂にこの日が来ましたな。準備はどうですか?」

 

「いつでも行けます」

 

「それは良かった。では、行きましょう」

 

ハルト達もまた、優勝を狙っており、決意に満ちた表情で会場へ向かう。

会場へ着いたら、司会から釣り大会のルールや優勝商品などの説明が行われ、それが終わると、参加者たちは一斉に釣りのポイントへ付く。

やがて、大会が始まり、参加者たちは次々と成果を上げていく。

 

「やったー!釣れた!」

 

それはコハルも例外でなく、次々と魚を釣り上げていた。

 

「もう少しで時間切れだよ。ハルトはどう?」

 

コハルが隣で釣っているハルトに話しかけ、彼のバケツの中身を見る。

 

「あ・・・」

 

思わず声を漏らしてしまうコハル。

ハルトのバケツに入っていたのは小さめな魚、数匹だけだった。

 

「く・・・!」

 

ハルトの顔を見てみると、彼はかなり焦った顔で釣竿を見つめていた。

優勝を狙っているハルトは中々大物が釣れず、どんどん焦りが溜まっていき、冷静さを失っていた。

 

「負けられない!僕は・・・!負けるわけにはいかないんだ!」

 

「ダメ!ハルト!」

 

力任せに思い切り釣竿を振ったハルト。しかし、焦りからか針はあらぬ方向へ飛び、ハルトのバケツを引っ掛けてしまう。

 

「マズい!」

 

慌てて気付くも、引っ掛かった針はバケツを横に倒してしまい、そこから溢れ出た魚たちが次々と湖へと流れていく。

ハルトがバケツを元に戻した時にはたった一匹しか残っていなかった。

 

「ハルト・・・」

 

「ここまでか・・・」

 

大物が釣れず、せっかく釣った魚もそのほとんどを逃がしてしまい、悔しそうに俯くハルト。

残り時間も僅かしかなく、諦めて棄権しようとしたその時

 

「諦めてしまうのですか?」

 

後ろから声を掛けられ、振り向くと真剣な表情をしているニシダさんがいた。

 

「別に諦めたり、見切りを付けたりすることは必ずしも悪いことじゃありません。これから先の人生でも、そういう決断が必要になる時があるでしょう・・・大切な事は見切りを付けて終わるのではなく、そこから、まだ何かできるか。それを見つけようとすることではありませんか?」

 

「っ!」

 

ニシダさんの言葉にハッとするハルト。

 

「諦めてしまえば0点で終わります。ですが、諦めずにまだ何かできることをすれば、たとえ100点で終わらなくとも0点ではなくなります・・・いけませんな。最近はどうも説教臭くなったようですな。まあ、ただの老い耄れの小言だと思っていただいて結構です」

 

途中から微笑みながら喋っていたニシダさんだったが、折れかけていたハルトの心を動かすには充分すぎる言葉だった。

ニシダさんの言葉で折れかけていた心に僅かな灯火が点いたハルト。

その横で今度はコハルが話しかける。

 

「あのね、ハルト。君が私の為にあのブローチをプレゼントをしようとしてくれる。その気持ちだけで充分だよ。だから・・・優勝にこだわらず、今は釣りを楽しもうよ!」

 

「コハル・・・ありがとう。もう大丈夫」

 

ただ純粋に釣りを楽しむこと。

最愛のパートナーの言葉でそれを思い出したハルトは完全に復活した。

 

「では・・・再開と行きましょうか。残り時間は僅かです。ですが、逆転のチャンスはまだ残っているでしょう」

 

そう言いながら、ニシダさんが元の場所に戻ろうとしたその時

 

「ん?・・・ああ!あれはまさか!?」

 

ニシダさんが見つめる先には、水面に何やら巨大な黒い影が浮かび上がっていた。

 

「間違いありません!ヌシです!あれはヌシです!」

 

「ハルト!早く竿を振って!逃げられちゃう!」

 

コハルに言われ、ハルトは急ぎ釣竿を振った。

しかし、影はいくら待っても釣り糸の方に寄ってくる気配がない。

 

「はて?どういうことでしょう・・・?」

 

ニシダさんが呟く。そうしている間にも、影は深海へ潜ろうとしてるからか、どんどん薄くなってきた。

何とかしないと、と思いながらヌシを釣る方法を冷静に考えていたハルトは、突如何か思いついたような顔をし

 

「そうか・・・そうだったんだ!」

 

ハルトはバケツからたった一匹残っていた魚を針に付けた。

 

「これって・・・泳がせ釣り?」

 

「どうやら、何かに気づいたようですな」

 

「確証はありません。でも、試してみる価値はあります。ここで何もしなければ0点で終わりですし」

 

そう言いながら、ハルトは思いっ切り釣竿を振った。

釣り糸は何の音も立てず、ただ静寂を保っていたが

 

ビクッ

 

「!? 来た!」

 

ヌシが掛かり、ハルトは思いっ切り釣竿を引き上げたが

 

「重すぎる・・・!」

 

ヌシの力は予想以上に強く、いくら釣竿を引っ張ってもビクともしない。

このままだと、竿ごと引っ張られる。そう思ったその時

 

「ハルトさん!ここが踏ん張り時ですぞ!」

 

後ろからニシダさんの声援が聞こえた。

更にニシダさんだけでなく、その様子を見ていた大会参加者からも「頑張れ!」などといった声援が次々と聞こえてきた。

 

「信じてる・・・勝って!ハルト!!」

 

「!? うおおーーー!!」

 

そして、最愛のパートナーの声援を受け、ハルトは叫び声と共に釣竿を思いっ切り引き上げた。

すると、釣り糸は勢いよく上に上がり、その先端には針を銜えているオレンジ色の巨大魚が姿を現した。

 

「やったー!釣れたよ!」

 

コハルが大声で喜ぶ。周りの参加者たちも「うおおーーー!!」と叫びながらハルトがヌシを釣り上げたことに喜んだ。

そんな中、釣り上げたヌシはそのまま地面に着地し、手足のような物で直立すると辺りを見渡す。

すると、ハルトと目が合い

 

「シャァーーー!!」

 

「これって・・・まさか・・・!?」

 

「完全に怒ってるね・・・!」

 

雄叫びを上げながらハルトを睨みつけた。

 

「大変ですぞ!早く逃げんと!」

 

ニシダさんが凄い形相をしながら叫ぶ。

それに合わせて、周りの参加者たちが次々とヌシから離れていく。

 

「コハル!君は参加者の避難誘導を!」

 

「うん、分かった!でも、ハルトは!?」

 

「僕は・・・ヌシを仕留める!」

 

ハルトは腰に刺していた鞘からレイピアを取り出すと、ヌシに目掛けて走った。

対するヌシもハルトに攻撃を仕掛けようとハルトに向かって走って来る。

 

「そこだ!」

 

ある程度近づいたところでハルトは<ブルー・スター>でヌシの体を突き、そこから更に<ミラージュ・スラスト>を二回発動させて追撃を掛ける。

対するヌシもタダでやられまいとハルトに向かって突進するが、ハルトは横に避けると体勢を整えて

 

「終わりだ!」

 

バーストスキル<オーガスト・イフ>でヌシの体を貫いた。

強力なソードスキルを横から食らい、ヌシは数メートル先まで飛ぶと、ズシーンと音を立てながら地面へ叩き付けられ、そのままピクリとも動かなくなった。

 

「ハルト!大丈夫!?」

 

「何とかね」

 

ハルトの無事な様子に安堵するコハル。避難していた参加者たちも次々と戻ってきた。

そして、全ての参加者が戻って来たところで、ちょうど時間切れとなった。

残り時間僅かというところで、ハルトはヌシを釣り上げるという奇跡を起こした。

 

 

 

 

「どうやら集計が終わったようですな」

 

途中トラブルがあったものの、何とか最後まで大会を行うことができた。

現在、大会運営によって釣った魚の集計が終わり、結果が発表されようとしていた。

 

「では、優勝者を発表します。優勝者は・・・ハルト選手です!」

 

ヌシという他の魚とは比べ物にならない大きさの魚を釣り上げたハルトは見事優勝を勝ち取った。

 

「おめでとう!やったね!」

 

「おめでとうございます、ハルトさん。初参加で優勝とは凄いもんですな!」

 

コハルとニシダさんが賞賛の言葉を送る。

周りの参加者たちも拍手でハルトの優勝を祝った。

 

「それでは、優勝したハルト選手にはこちらのブローチが送られます。どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

鳴り止まない拍手の中、ハルトは主催者からブローチを受け取った。

やがて大会が終わり、周りにいた参加者及び観客が次々と会場から去っていき、残ったのはハルト、コハル、ニシダさんの三人となった。

 

「はい、コハル。約束のプレゼントだよ」

 

「うん!本当にありがとう!ずっと大切にするね。それと、改めて・・・優勝おめでとう」

 

コハルはハルトから手渡された優勝賞品のブローチを笑顔で受け取った。

 

「それにしても、ヌシが大きいとは聞いてたけど、まさかあんなに大きかったなんて・・・」

 

そう言いながら、コハルは既に虫の息となったヌシを見つめる。

 

「・・・ん?・・・何だろう、あの光っているもの・・・」

 

すると、何やら発見したのかヌシに近づいていく。

ハルトとニシダさんも慌ててコハルの後に付いていく中、コハルはヌシの歯の部分を見つめ・・・

 

「え!嘘!?こんなことって・・・!」

 

声を上げて驚いた。

 

「ど、どうしたのコハル?何かあったの?」

 

「・・・ヌシの歯に挟まっているやつ・・・湖に落ちちゃった私のブローチだ・・・」

 

「え!?」

 

思わず驚くハルト。まさかあの時、湖に落ちたブローチをヌシが銜えていたなんて。

そういえば、ニシダさんが言っていた。魚というのは近くに落ちてきた物を金属だろうと餌だと思い込んで食いついてしまうと。

おそらく、ヌシはブローチを餌だと勘違いし、食いついた際に歯に引っ掛かってしまったのだろう。

ヌシはまるでコハルがブローチを発見してくれるのを待っていたかのように、その場でポリゴン状に四散した。

ヌシがいた場所には一つのブローチが落ちてあり、コハルはそれを拾って何も言わず見つめていたが、ハルトに近づいていき

 

「ねぇ、ハルト。これを受け取って」

 

そう言いながら、コハルはハルトに湖に落としてしまった方のブローチを渡した。

 

「これって!?ダメだよ。これはコハルの宝物なんだから。貰うわけにはいかないよ」

 

「確かにこのブローチは私にとって宝物だし、湖に落としちゃった時は凄く悲しかった。でもね、君が私の為に優勝しようと頑張ってた時、私、とっても嬉しかったんだ。優勝しようと頑張ってくれたこともそうだけど、私の思い出も守ろうとしてくれたことに」

 

「何より」と言いながら、コハルは先程渡されたブローチを装備の付けた。

 

「私にとって一番の宝物は大切な人と過ごした時間。これはその証。だから、君にも受け取って欲しいんだ。今日ここで二人で過ごした時間を。その証を」

 

「・・・・・・」

 

コハルの気持ちを黙って聞いていたハルトだったが

 

「ありがとう。大切にする」

 

笑顔でブローチを受け取り、コハル同様自身の装備に付けた。

二人の装備に付けられたブローチは太陽の光に照らされて光り輝いており、それは二人を繋ぐ絆の証のようであった。

 

「お揃いだね」

 

「うん、お揃いだね」

 

何処か照れくさそうに微笑むハルトとコハル。

しばらく見つめ合っていた二人だが、やがて互いの肩を掴み、そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~若いっていいですな~」

 

「「!!」」

 

顔を近づける前にニシダさんが微笑みながら口を開いた。

先程まで完全に二人だけの世界に入っていたハルトとコハルは顔を赤くしながらニシダさんの方に振り向いた。

 

「いやはや、若いとなるとこういう大人の階段というものを上りたくなる気持ちは分かります。ですが、そういうのはもっとロマンチックな場所でしといた方がいいですよ」

 

「す、すみませんでした・・・」

 

「いえいえ、私も若い時は妻と一緒にこういうのはしょっちゅうしたもんですよ」

 

「え?ニシダさん、奥さんがいるんですか!?」

 

「ええ、こんな私をいつも傍にいて支えてくれています。だからこそ、一刻も早く帰るべきなんですがね・・・」

 

そう言いながら、ニシダさんは少し暗い顔をした。

彼にもまた、リアルで待ってくれている人がいる。その人と再会するためには、少しでも早く攻略を進める必要がある。

けれども、彼は既に年を取っており、危険なフィールドでモンスターと戦うことは少し厳しい。

ならば、そんな人がいるという事実を知った上で自分たちがすることはただ一つ。

 

「あの!私、頑張りますから!ニシダさんみたいな人達が少しでも早く現実世界に帰れるように!」

 

「・・・ありがとう。でも、無理はしちゃいかん。真っ直ぐな決意もいいが、たまには息抜きも必要ですよ」

 

「分かっています。だから、またここに来ますよ。今度は友達も連れて」

 

「おおー!それはありがたいですな。これでまた釣り仲間が増えますな!」

 

「もう~ニシダさんったら!・・・フフフ・・・!」

 

「「「アハハハハハ!」」」

 

その場で笑い合う三人。

しばらくすると、三人は転移門前まで来た。

ニシダさんは二人の見送りという事で付いて来て、転移門にたどり着くと握手を求め、二人は握り返した。

 

「私にできることは見送ることだけですが、どうかお気を付けて」

 

「はい、ニシダさんもお元気で」

 

「いつかまた、一緒に釣りをしましょう」

 

「ええ、お二人のご武運を祈っております」

 

ニシダさんは握った手を離すと、こちらに向かって手を振りながら去っていった。

二人もまた、ニシダさんに向かって手を振り、やがて彼が見えなくなったのを確認すると、顔を見合わせて口を揃える。

 

「「転移!」」

 

その瞬間、二人の体は青い光に包まれ、二人は最前線へと戻るのであった。




・ニシダさん
作者がSAOのキャラの中で唯一さん付けで呼ぶお人。リアルでは東都高速線の保安部長を勤めている。デスゲームと化したSAOの中でも絶望したり《始まりの町》に籠ることなく、たまに上の階層へ上がって、いい釣りスポットを見つけては釣りを楽しむ非常に愉快な釣り師。アニメでの彼とキリアスのやり取りはマジで必見。SAOIFでも変わらずに釣りを楽しんでいるが、釣り大会で中々大物が釣れず、諦めかけた主人公に発破をかけたりなど、年征く老人として若者を導く姿勢が見られる。ちなみに、キバオウやディアベルのスキルレコードが未だに星2しかないのに、この二人を差し置いてニシダさんには星3スキルレコードが実装されている。流石ニシダさん。

・「諦めたら0点で終わるが、諦めなければ100点で終わらなくとも0点ではなくなる」
過去、ここまで格好いいことを言うニシダさんはいただろうか?

・ニシダさんの凄い形相
「なんですとーーー!!」と叫んでいるニシダさんを思い浮かべてください

・<オーガスト・イフ>
オリジナルスキル。SAOIFだと細剣の星4スキル。バーストスキルでもあり、水属性→突属性→突属性の順で攻撃すると発動できる。スキルレコードのイメージイラストは浜辺でスイカ割りをしている水着SAOIF主人公。

・ヌシを釣る
釣る×
釣って仕留める○
釣りとはいったい・・・


SAOIFのニシダさんがかっこよすぎる件について
というか、SAOIFのニシダさん、何気に原作以上の活躍をしてた気がする。
次回は二十五層編です。
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