ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
私的にSAOIFで一番好きなイベントストーリーです。
長くなったんで前編、後編に分けてます。
「・・・お願い」
暗い虚無の空間。光すらも届かず、ただ静寂のみが漂う世界。
そんな闇の中から誰かの声が聞こえるのをハルトは感じた。
「・・・お願い・・・誰か・・・助けて・・・」
「君は・・・?」
暗い闇の中から聞こえる声にハルトは問いかける。
すると、虚無の空間から突如景色が一変して、気づいたらハルトは雪原に立っていた。
辺りは木々で囲まれており、雪原の奥には一本の赤い木が立っている。
「!? ここは・・・?」
「ここは、まだ存在している場所。もうすぐ消えてしまうけど・・・」
驚きながらも問いかけるハルトに、声の主は縋るように喋る。
「お願い、どうか聞いてちょうだい。心残りがあるの。最後に一目だけ、あの素敵なクリスマスプレゼントを見てみたい」
すると、ハルトの目の前に突如光が集まり、ガラス細工でできた雪うさぎが姿を現した。
「ガラス細工の・・・雪うさぎ?」
「あなたにしか頼めないの。どうか、この導きに応じて、消えゆくモミの木の下へ。セキュリティ権限コード委譲、白き光の翼・・・」
「ま、待って!」
話についていけず、慌てて声の主を呼び止めるハルトだったが、声はだんだんと薄れていき次の瞬間、ハルトの視界は再び闇に染まった。
「はっ!」
次にハルトの視界が写した光景は、見慣れた宿の天井だった。
ゆっくりと起き上がり辺りを見渡しても特に変化はなく、閉じているカーテンから僅かな光が差し込んでいる。
「夢・・・?」
徐々に覚醒していく意識の中で呟くハルト。
変な夢だった。そんなことを思いながら、ハルトは身支度を整えるべくベッドから出た。
「――っていう夢を見たんだ」
ハルトは今日見た夢の内容をコハルとキリトに伝えた。
二人共、ハルトの話を聞いて難しそうな顔をしながら話し出す。
「それは、不思議な夢だな」
「でも、考えてみればVR空間で夢を見ること自体、ちょっと不思議だよね」
「言われてみれば、確かに」
「・・・ねぇ」
「そもそも、夢って何ですか?」
「脳学的には記憶の整理であり、精神活動――」
「ねぇ!!」
夢について話していた三人だったが、アスナの叫び声が聞こえ、慌てて振り向くと、ご機嫌ななめの様子のアスナが三人を睨んでいた。
「な、何だよ、アスナ・・・」
「何だよ、じゃないでしょう!キリト君、ここをどこだと思ってるの?」
「どこって・・・クリスマスのお祭り・・・」
「そう!お祭りだよ!こんなに賑やか会場にいるのに、どうしてそんな難しい顔をしてるのかな!?」
興奮気味に叫ぶアスナに少しドン引きする三人。
今日はクリスマスということもあって、期間限定でクリスマスイベントのフィールドが開かれていることを聞いたハルト達四人は、そのフィールドにある一軒家を借りてクリスマスパーティーを行うことにした。
食べ物や飾り付けに使う道具を一通り買っていたハルト達だったが、その途中でハルトが今朝見た夢の話をしだし、コハルとキリトも真剣になってハルトの話を聞く。
しかし、アスナだけは楽しいはずのクリスマス会場にいるにも関わらず、難しそうな顔をしながら話をしている三人に対して、お怒りモードであった。
「アハハハ・・・ごめんごめん。それで、俺たちの他に来れる奴はいないのか?」
「うーん、私の方で何人か誘ってみたんだけど、みんな用事があって、すぐには来れないみたい」
「そっか。俺の方でも一応何人かにメッセージを送ってみたけど・・・お!返信がいっぱい来た!えっと・・・クラインは『何がクリスマスじゃあい!』・・・あいつ、何があったんだ・・・?シロコイは『サーニャと買い物してるからすぐには行けない』。まぁ、それじゃあ仕方ないか。トウガ達は・・・お!期間限定のクエストをやっているみたいで、ドロップがめちゃくちゃ美味いって!俺たちも――」
「キーリートーくぅーん?」
「そうだな!無粋なクエストはやめて、今夜は楽しくパーティーしよう!」
メッセージを読んでいく内にゲーマー魂が湧いてきたキリトだったが、アスナによって二秒で鎮火された。
「他に誘える人はいないの?」
「うーん、後はあいつだけなんだけど・・・あいつがこの手のイベントに参加するとは思えないんだよなぁ・・・」
キリトは悩みながらも、その相手にメッセージを送ろうとしたその時
「おい!しっかりしろ!」
「ボロボロだぞ!何があったんだ!?」
近くから叫び声が聞こえ、声がした方を向くと、人だかりができていた。
「騒がしいわね?」
「あっちに人だかりができている。行ってみよう!」
コハルが人だかりに向かって走り出し、ハルト達も後に続く。
ハルト達は人だかりをかぎ分けながら中心へと進んでいく。すると、そこにいたのは
「うぅ・・・」
弱々しく呻き声を出しながら倒れているマテルがいた。
「マテルちゃん!?」
「ダメージを受けているじゃないか!」
「は、早くポーションを!」
アスナの言葉に従い、コハルはポーションを取り出しマテルに飲ませる。
すると、マテルは意識を取り戻し、辺りをキョロキョロと見渡す。
「こ、ここは・・・」
「クリスマスイベントの会場だよ。それよりもマテルちゃん、その傷は――」
「助けて欲しいの!時間がないの!」
「え!?」
何があったのか事情を聞こうとしたコハルだったが、マテルが急に大声で助けてと叫び出したことで驚いてしまう。
更に、マテルの大声に反応して周りにいるプレイヤー達が何事かと騒ぎ始めてきた。
このままの状況で聞くのはマズイと思ったキリトは、場所を変えて事情を聞くことをハルト達に提案する。
「とりあえず、一旦場所を変えよう。ここじゃ人が多すぎる。人が少ない場所で事情を聞こう」
キリトの意見に頷き、ハルト達は人が少ない場所へ移動しようとしたが
「その話、俺にも詳しく聞かせろ」
「!? あなたは・・・!」
その前に声を掛けられ、振り向くと、そこには先程キリトがクリスマスパーティーに誘うか悩んでいた男、ザントがいた。
人がいない路地裏に移動したハルト達はマテルから事情を聞いた。
「話を整理すると、マテルちゃんが助けたい人は今、とても寒くて孤独な場所に閉じ込められているってことなのね?」
「そうなの」
「事情は分かったわ。だけど、マテルちゃん。その寒くて孤独な場所はどこの階層はどこにあるのかな?閉じ込められている人って誰のことかな?」
「・・・・・・」
アスナの問いに対して、何も答えず黙り込んでしまうマテル。
アスナが何かマズイことを聞いたかなって思いながら困っていると、今度はコハルが問いかける。
「ねぇ、マテルちゃん。助けたいその人は、マテルちゃんにとって大事な人なの?」
「目的を同じくする者なの」
「マテルちゃんは、どうしてボロボロになってまでその人を助けたいと思ったの?」
「それは・・・あれ?全然分からない。私、今・・・合理的じゃない・・・!」
今度は頭を抑えながら戸惑うマテル。
だんまりの次は戸惑う素振りを見せるマテルに、ハルト達は中々情報が引き出せないことに互いの顔を見合わせながら困り顔をする。
そんな中、ザントはただ一人「はぁ~」とため息をつきながらマテルに近づいた次の瞬間
「っ!?」
「ザントさん!?」
突如マテルの胸ぐらを掴み、そのまま自身の前に引き寄せる。
ハラスメントコードギリギリのザントの行いにハルト達が戸惑う中、ザントは静かに口を開く。
「論理的やらどうとかチンタラしてんじゃねぇよ・・・!助けて欲しいのか欲しくねぇのか、どっちなんだよ!?」
「!? ・・・助けて・・・欲しい・・・の・・・」
驚きながらも、縋るような目でザントを見つめるマテル。
そんなマテルをザントはジィーと見つめていたが
「最初っからそう言え、クソガキ」
乱暴にマテルから手を離すと、今度はハルト達を見ながら聞いてくる。
「んで、テメェらはどうするんだ?こいつは助けたい奴の名前もそいつがいる場所を教えようともしねぇ。はっきり言って怪しいが、こいつを信用するのかしねぇのか、さっさと選べ」
行くか行かないかの選択を問いかけるザント。
すると、コハルはハルトの顔を見ながら彼に話しかける。
「ハルト、私は・・・」
「・・・コハル、マテルを助けたいとは僕も思っている。でも、情報が少ない今、下手に動くのは危険なんじゃないかな?」
「でも・・・あの、ロボットみたいな性格だったマテルちゃんが人生で一番大切な物を見つけて・・・(うるうる)」
「分かった!一緒に行くから、そんな目で見ないでくれ!」
コハルと違って、マテルを助けることに少し抵抗があったハルトだったが、コハルの必死の訴えと涙目によって降参した。
ハルトの答えを聞いたコハルは涙目からパァーと笑顔になり
「ありがとう!ハルト、大好き!!」
嬉しそうにしながらハルトに抱きついた。
そんなコハルに、ハルトはやれやれと思いながらも少し嬉しそうに微笑んだ。
「勿論、私たちも行くわよね、キリト君?」
「まぁ、救出クエストの一環だと思って行けばいいけど・・・さっき、俺がクエストに行こうって言ったら――」
「ドロップ目当てのクエストと美しい友情で結ばれたクエストは全然違うよね!?」
「そうですね、はい」
アスナとキリトもまた、参加を決め込んだ。途中、キリトが何やら言おうとしたがアスナの気迫に押され素直に従った。
「ほら、行くぞ。さっさと案内しろ」
「!? うん・・・なの」
最後にザントの言葉を聞き、マテルは頷くと、案内すべく歩き出した。
しかし、クリスマス会場を出る直前に声を掛けられる。
「彼らをどこに連れていく気だい?マテル」
「リュールさん!」
声を掛けた人物はリュール。しかし、その表情にはいつものおちゃらけた雰囲気はなく、何処か怒っているかのようにマテルを見つめていた。
「やぁ、君たち。いつも美しい物語を紡いでくれてありがとう。でも、今回は駄作だ。これは紡いではいけない物語だ」
「・・・ごめんなさい。今は急いでて――」
「ここから先へ進むのは愚者の行いだ。見過ごすわけにはいかない」
今はリュールに構っている暇はなく、コハルは一言謝りながら先に進もうとしたが、その前に会場の出口を塞ぐように立つリュール。
そんなリュールに普段からリュールを嫌っているハルトは少し敵意を出しながら話しかける。
「悪いけど、僕たちは行かなくちゃいけないんだ。邪魔しないでくれるかな?」
「別に君たちの邪魔をするつもりはないよ。でも、マテル。君はここに残るんだ」
「嫌なの!」
リュールの言葉を必死に否定するマテル。
「・・・マテル、彼女はもう助からない」
「そんなの認めないの!」
「はぁ~、合理性を常に重んじる君がどうしてこんな真似に出るのだか、全く理解できないよ」
「うぅ・・・」
最初は強く反発したマテルだが、次第にリュールの言葉に押されていき、最終的には弱々しく呻き声を出した。
それに対して、ハルトが二人の間に割って入ろうとしたが、その前に動いた人物がリュールに声を掛ける。
「おい」
「ん?何だい――っ!?」
「こいつの道をテメェが決めんなよ」
いつの間にか、二人の間割って入ったザントが、《蒼嵐》をリュールの首筋に突き付けながら本気の殺気をリュールに向けた。
攻略組すらも尻餅をつかせるザントの殺気を正面から浴び、普段おちゃらけているリュールも流石に顔を引きつらせ、その場で固まる。
一歩でも動けば斬られる。勇者なんかとは違う圧倒的強者への恐怖をリュールは内心感じていた。
しばらくの間、沈黙が漂っていたが、ある程度時間が経ったことで落ち着きを取り戻したリュールは、やれやれといった感じで口を開く。
「・・・やれやれ、僕の負けだよ。この場は退散させてもらうよ」
「随分とあっさり引き下がるじゃねぇか」
「あんなのを正面から受ければ誰だって引き下がるさ。ただし、警告はさせてもらうよ。君たちが愚かにも向かおうとしている場所は、一度入ったら最後、何もかも失ってしまう狂った空間。何もできないことの無力さを思い知ってきたまえ」
「そうか。俺からも一言アドバイスしてやるよ。この世界全てがテメェのくだらねぇ夢物語だけで動くと思うなよ、雑魚」
ザントの言葉に顔をしかめながらも、リュールはその場から逃げるように去っていった。
リュールが去っていった方を見つめながら、ハルトが口を開く。
「いつになく嫌味満載でしたね」
「放っておけ。あんな妄想詩人(雑魚)に使ってやる時間なんざ一秒たりともねぇ。さっさと案内しろ。マテル」
「ザントさん、あまりそう言うことを言うもんじゃありませんよ。気持ちは分かりますけど・・・」
相変わらずリュールを雑に扱うザントにコハルが注意するが、彼女自身も先程の事があったからか、あまり否定はしなかった。
マテルに案内された場所は会場から少し離れた場所にあった転移門だった。
「こんな場所に転移門なんてあったっけ?」
見覚えのない転移門にキリトが疑問の声を上げたが、マテルは気にせず起動する。
すると、他の転移門と同様に転移され、次に写ったのは、周りが木々で囲まれている雪原だった。
「見たことがあるようでないような場所だな・・・」
キリトが警戒しながら辺りを見渡す。
見た感じ、フィールドにはいくつかエネミーがいるが、NPCらしき人は一人も見当たらない。
「まずは《虚無への灯火》を集めて欲しいの」
マテルに言われて、ハルト達は早速行動を開始する。
まず初めにハルト達はハルト&コハル、キリト&アスナ、ザント&マテルの3組のペアに分かれて、《虚無への灯火》を集めることにした。
数十分後、指定の数を集め終えた3組は転移門で合流した。
「集めた素材は何処かのNPCに持っていくのかしら?」
「持っていかないの。こうするの」
アスナの問いに答えながら、マテルは集めた《虚無への灯火》を重ね合わせて一つのキューブ状の何かを作り出した。
「そして、えいっ!するの」
作り出したキューブ状の物体をマテルは地面に叩き付けた。
すると、物体は地面に弾け飛び、謎の黒い穴に姿を変えた。
「これで完了なの」
「・・・キリトさん。これは大丈夫な穴ですか?」
「ごめん、俺にも分からない。こんな穴、俺も見たことない」
不安気に問いかけるコハルに、キリトはなるべく冷静さを保ちながら答える。
何せこの黒い穴の奥は真っ暗で何も見えず、穴の奥がどこに続いているのか全く検討が付かない。
コハルは未だ不安気な表情のまま、今度はマテルに問う。
「ね、ねぇ、マテルちゃん。この穴をどうするの?」
「落ちるの」
「落ちるの!?えっと、向こう側の地面はそんなに高くない所にあるんだよね?」
「正規の転移門じゃないし、出口に闇があれば存在が消滅するかもしれないの」
「・・・ねぇ、キリト。今、とんでもない言葉がいっぱい聞こえてきたんだけど、僕の気のせいかな?」
「残念ながら気のせいじゃないぞ。俺も今、ヤバい単語が次々と出てきて、どう反応すればいいのか困っている所だ」
痛みが感じない仮想空間であるのも関わらず、二人は頭が痛くなるような感覚を感じた。
正規の転移門じゃない、出口に闇、存在が消滅するかもしれない。次々と発せられるとんでも発言に、二人の思考は既に限界を超えてオーバーヒートしていた。
「さぁ、早く飛び降りるの」
「君、サラッとそれを言う度胸、凄いな」
キリトはマテルのマイペースさに思わず感心した。
早く飛び降りるようハルト達に勧めるマテルだが、先程のマテルの言葉を聞いたハルト達四人は飛び降りるのに躊躇していた。
どこに繋がっているのかも分からない上、入ったら死ぬかもしれないと言われて、素直に飛び降りる勇気は持ち合わせていない。
そんな中、一人表情を変えずに黙って聞いていたザントがマテルに話しかける。
「一つ聞かせろ。お前が助けたい奴は今、寒くて孤独な場所に閉じ込められているらしいな?」
「そうなの」
「なら、何故お前はそいつを助けようとする?あの雑魚詩人は事情を知っていながら、助けようとはしなかった。だが、お前は違う・・・助けを頼んだ人間に命を懸けるような真似をしてまでお前はそいつを助けようとしている。お前にとってそいつは俺らが命を懸けてまで助ける必要がある存在か?」
「・・・彼女は・・・この世界で生きるための技術を教えてくれた人。彼女のおかげで今の私が存在しているの」
「だから」とマテルは真剣な表情でザントを顔を見据えながら喋った。
「私は彼女を・・・ミューティを助けたい・・・!それこそ、あなた達の命を利用してでも・・・!」
「ミューティ・・・それが、お前が助けたい奴の名前か・・・」
マテルの決意を黙って聞いていたザントだったが、ふと口を開いた。
「一つ忠告しといてやる。俺はまだお前を信用してねぇが、こうして助けて欲しいと頼まれた以上、俺らにも通すべき筋がある・・・だが、もしお前がそいつを助けるという目的から少しでも外れた行動・・・ズバリ、俺らを裏切るような真似をすれば・・・」
喋り続けながら、ザントは背中の《蒼嵐》に手を掛け
「俺はお前の首を跳ね飛ばす・・・!」
「「「「!?」」」」
殺気を剝き出しにしながら《蒼嵐》の刃先をマテルの首筋に当てた。
ザントの殺気に背筋が凍るハルト達四人。アスナとコハルが何か言おうとしたが、上手く言葉が出ない。それほどまでに目の前にいる男の殺気は凄まじかった。
しかし、刃先を首に当てられているマテルは、リュールと違って臆することなく
「・・・覚えておくの」
一言だけザントに告げた。
「・・・・・・」
マテルの言葉を聞いたザントは、特に何も言わず無言で《蒼嵐》を背中にしまうと・・・黒い穴に飛び降りた。
「飛び降りた!?」
「えいっ!なの」
あっさりと穴に飛び降りたザントにコハルが驚く中、マテルも続けて飛び降りる。
「やれやれ、アスナ、行こうか」
「はぁ~ホントっしょうがないんだから・・・」
呆れながらもキリトとアスナも後に続く。
「・・・ハルト・・・」
「分かってる。離れないようにきちんと手を握ってて」
「うん!それじゃあ、せーのっ!」
残ったハルトとコハルも互いの手を握りしめながら二人同時に飛び込んだ。
「これは!?」
穴の深さは相当あったが、そんなことはどうでもいいと思えてしまう程、ハルトは目の前の光景に戦慄した。
フィールドは先程よりも暗い雪原だったが、その所々には黒い何かが雪原や周りの木などにへばりついていた。
「こんなの見たことがない。背景オブジェクトが異常をきたしているのか?」
「皆、危ないから触らないように」
キリトが黒い何かについて様々な考察をし、アスナはハルト達に向かって触れないよう注意した。
すると、ザントが顔を下に向けながら喋った。
「下を見てみろ」
ザントみたくハルト達は視線を下を向けると、巨大な足跡があった。
足跡は雪原の先の方まで続いており、これほど巨大な足跡となると、この先にいるのはおそらく・・・
「この先に、これほどの足跡を持つボスがいるってこった」
「・・・気を引き締めて行こう」
ザントの言葉を聞いて、キリトは注意しながら進むようハルト達に促した。
足跡を辿っていくと、そこにいたのは巨大なトナカイだった。
巨大トナカイからドロップできる、次のエリアに進むために必要なアイテムを手に入れる為、ハルト達は早速巨大トナカイと戦った。
「終わったな」
「おかしい・・・こんな簡単に倒せる相手じゃなかったはず・・・」
ザントがポリゴンになった巨大トナカイを見つめながら呟く中、キリトは何故だか分からないが少しもやっとした気持ちだった。
そんなキリトをよそに、ハルト達はドロップしたアイテムを確認する。
「えっと、名前は・・・《プレゼント・ピース》・・・」
「綺麗・・・薄く白みがかかってて・・・」
幻想的な輝きを放つガラス片の美しさに見惚れるコハル。
《プレゼント・ピース》を見つめていた二人だったが、ハルトがあることに気が付いた。
「(ん?このガラス・・・夢で見たあの雪うさぎに似てるな・・・)」
「どうしたの?ハルト」
「うん、実は・・・」
夢で見た雪うさぎに使われているガラスと《プレゼント・ピース》が似ていることをコハルに説明しようとしたハルトだったが、その前にマテルによって遮られる。
「それ!それが必要なの!」
「ああ、受け取ってくれ。けど、急いだ方がいいな。さっきよりも闇の浸食が進んでいる」
マテルに《プレゼント・ピース》を渡すと、辺りを見渡しながら喋るキリト。
雪原はさっきよりも闇で覆われており、この辺が闇で覆われるのも時間の問題だった。
「みんなこっちなの!ここにピースを集めれば・・・!」
マテルはハルト達を一本の木が立ってある所に集めると、ドロップした《プレゼント・ピース》をかざした。
すると、木の幹に小さな穴が現れた。
「これが次のエリアへの入口?」
コハルがマテルに向かって問うが、マテルは困惑した表情を浮かべながら穴を見つめる。
よく見ると、穴の前に文字を入力するためのウィンドウが表示されており、おそらく正しいキーワードを入力しないと起動しない仕組みなのだろう。
「マテルちゃん、ここには何を入力すればいいの?」
「・・・分からないの。前に彼女と来た時には、こんなの無かったの!」
「そんな・・・!」
「くっ、ここに来て・・・!」
ここへ来て、マテルすらも予想だにしてなかった事態が発生した。
この先に行くためには、正しいキーワードを入力しないと進むことができず、それは今まで案内して来たマテルですらも知らない単語である。更には、闇の浸食も徐々に広がってきており、とてもじゃないが今からキーワードを探す時間がない。つまり、完全に詰みであった。
万事休すかと思われたその時、ハルトがマテルに話しかける。
「ねぇ、マテル。ちょっといいかな?」
「・・・何なの?」
「《プレゼント・ピース》って集めれば一つのアイテムができたりする?例えば・・・ガラス細工でできた雪うさぎとか?」
「な!?」
「・・・ミューティがいる場所ってもみの木の下だよね?」
「ななな!!??」
次々と出されていく質問にマテルは動揺し始める。
その反応を見て、ハルトの予想が確信に変わった。ハルトは動揺しながらこちらを見上げているマテルに向かって笑みを浮かべた。
「分かったよ。この先に進むためのキーワード」
「なんで何もかも知っているの!?そ、それよりも!ここには何を入力すればいいの!?」
慌てながらも聞いてくるマテルに、ハルトはウィンドウの前にしゃがみ込むと今朝、夢で言われた言葉、'白き光の翼'と入力した。
すると、ウィンドウは消え、穴は正常にワープゲートの機能を作動し始めた。
「噓・・・どうしてなの・・・?」
信じられないといった感じでハルトに問いかけるマテル。
そんなマテルに対して、ハルトは一言で答える。
「ミューティが教えてくれた」
「それじゃ分からないの!合理的な説明を求めるの!」
ハルトの答えの意味が理解できず再度問いかけるマテルだが
「んなモンはどうだっていいだろ。今、やるべきことはここで合理的な説明を求めて時間を無駄にすることじゃねぇだろうが」
「・・・そうなの・・・一刻も早くミューティを助けないと!」
ザントの言葉で今はそれどころじゃない、と気持ちを切り替え、マテルはワープゲートに飛び込んだ。
ハルト達もまた、ワープゲートに飛び込み、次のエリアへと移動した。
・「何がクリスマスじゃあい!」
どう足掻こうと、星飛雄馬とクラインが毎年一人クリスマスになる運命は変わらない。
・シロコイ、サーニャと買い物
サラッとデートしてますが、実際はサーシャに買い出しを頼まれただけです。ちなみに、この光景を目撃したクラインは血涙を流し、《始まりの町》の広場のど真ん中で上の発言をしました。
・幼女の胸ぐらを掴む十九歳
事案かな?
・某絶剣
いったい、どこのゼッケンでしょうね~
後編に続く・・・