ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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これで攻略パートは終わり


ep.32 暴かれた真実

数日後、ハルト達はアスナから呼び出され、クエストの更新情報について聞かされた。

内容は《業物》を作り上げる最後の仕上げとして《名工の秘房》という場所へ向かい、そこで作業に取り掛かるのだという。

《名工の秘房》へ向かうメンバーは、ハルト達四人に残りの「紅の狼」の面々、アスナを含む「血盟騎士団」の面々。そして、「血盟騎士団」がクエストを受注している流派の頭領。

《業物》を作り上げる為、《名工の秘房》を攻略するハルト達。

難なく《名工の秘房》を進んでいたハルト達だったが、歩いている途中でふと頭領が口を開いた。

 

「本音を言えば、奴らとは修行時代を共にした仲。できれば、競うことはすれど、争いたくはない。しかし、今更引っ込むことはできなくなってしまった。弟子たち同士で火花を散らし合う日々が度々増えていってな。もはや、頭領同士で手打ちにしたいなどとは到底言えぬ・・・」

 

「リーダーが戦いを望んでいないが、下が対抗心を燃やしているせいで争いの火種を大きくしてしまうか・・・」

 

「ALSとDKBじゃねぇか」

 

頭領の話を聞いたトウガとソウゴがそう述べる。

その横でコハルが二人の言葉に賛同するかのように呟く。

 

「そうですね。キバオウさんやリンドさんも本心では争いたいわけじゃないんだと思います」

 

「コハルの言う通りだと思うわ」

 

先頭を歩いていたアスナが首を後ろに向けながら喋り出す。

 

「だからこそ、ここの攻略を急ぐ必要があるわ。二大ギルドの間に決定的な事件が起きる前に、この層をクリアしてしまえば、少なくとも今回の対立からは脱することができるはずだから」

 

そう言いながら、先へ進んでいくハルト達。

やがて、他の場所よりも一回り広いフロアへたどり着き、そこには二大ギルドの面々がいた。

 

「アスナさん!?それにKoBの皆さんまで!」

 

「なるほど・・・アスナさん、どうやらそちらも《業物》を完成させに来たようだね」

 

驚くリーテンに対して、「血盟騎士団」がここに来た訳を察し納得するリンド。

その直後、フロア全体に一体のエネミーがポップされた音が鳴り響いた。

全員が音がした方に振り向くと、そこには人の体をしているが腕が鳥の翼になっている女性、ハーピーのようなエネミーがいた。

 

「この魔物は我が師が去った後、ここに入り込んだのだ。旅の者よ、気をつけるのだ。こやつはさっきまでの魔物とはひと味違うぞ」

 

「どうやら、積もる話は後にした方が良さそうね。総員!戦闘準備!ALSとDKBの皆さんも、今は攻略が優先です。協力してボスを倒しましょう」

 

「分かった。今は一時休戦と行こう」

 

「聞いての通りだ!DKBとは対立してる状態だが、今はそのことを一旦忘れて、協力して奴を倒すぞ!」

 

アスナの提案に乗っかって、リンドとリーテンがそれぞれのギルドの面々に向かってそう言うと、フロアボスの時と同様、両ギルドは協力し合いながらハーピーへ挑んだ。

攻略組の猛攻にハーピーは押されていき、そう時間が掛からずにハーピーを倒すことができた。

 

「まさか、あの魔物を倒してしまうとは・・・」

 

そう言いながら、頭領はアスナに近づき口を開いた。

 

「これで、ここの設備も使えるようになるだろう。だが、その前にやるべきことがある・・・」

 

アスナにそう告げると、頭領は歩き出した。見れば、他の頭領も歩き出している。

そして、お互い向かい合うと、「血盟騎士団」の方の頭領が口を開いた。

 

「ここで我ら頭領が揃ったのも良い機会。今すぐにとはいかんが、これを気に、我らの雪解けのきっかけにしても良かろう」

 

「これって・・・もしかして、和解イベント?」

 

「たぶん、頭領が三人揃ったから、それがトリガーになったんだよ」

 

「うん!元は一緒に修行した仲間なんだし、きっと大丈夫だよ!」

 

リズベット、ハルト、コハルの順番に喋りながら、和解イベントを見守ろうとしたその時だった。

 

プシューー

 

「な、何!?」

 

「これは・・・煙幕だ!」

 

突如フロア全体に煙が立ちこもり、混乱し始める攻略組。

 

「みんな迂闊に動かないで!むやみに武器を振り回すと同士討ちになるわ!」

 

アスナが周りに向かってそう言うと、混乱から徐々に収まり始めた攻略組だったが

 

「ぐあっ!」

 

突然、頭領のうめき声が聞こえた。

更に、他の頭領からも似たようなうめき声が聞こえてきた。

 

「!? そこか!」

 

ハルトが煙幕の中から人の気配を察知し、その場で剣を振るう。

すると、煙幕からフードを被ったプレイヤーが露わになった。

その一方で、コハルが頭領に駆け寄り安否を確かめる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫だ。だが、《業物》を・・・」

 

頭領が小さく呟く。よく見ると、彼の手に《業物》はなかった。

他の頭領も同様に《業物》を奪われていた。

 

「無事に奪えたか?」

 

「ああ、この通り」

 

「よし、脱出するぞ」

 

襲撃者たちの会話が聞こえる中、リズベットが襲撃者たちの目的を理解した。

 

「いけない!頭領さん達を襲った人達を急いで追いかけて!こいつらの狙いは《業物》を奪って、クエストをクリアできなくさせる・・・違う、二十七層を攻略させない気なんだわ!」

 

リズベットの言葉を聞いた誰もが慌てて襲撃者を追いかける。

だが、辺りは未だ煙幕に包まれており、中々襲撃者の姿が見当たらない。

 

「そんな・・・!せっかくみんなで力を合わせたのに・・・誰か・・・!」

 

アスナが縋るような声で呟いたその時

 

「がはっ!」

 

「ゴフッ!」

 

「ぐはっ!」

 

ドサッ!

 

襲撃者と思わしき三人が突如呻き声を上げ、その場に倒れたような音が響いた。

やがて煙幕が晴れ、襲撃者が倒れたと思わしき方へ向くと、そこには三つの人影がいた。

 

「何か仕掛けてくるとしたら、このタイミングだとは思ってたけど、その通りだったよ」

 

「雑魚にしちゃ中々考えたが、詰めが甘かったな」

 

「まったくダ。出口が一つしかないこのエリアで仕掛けるなんて、ちょいと・・・てか、かなりお粗末だナ」

 

「キリト君!ザントさん!アルゴさん!」

 

襲撃者を気絶させたキリト、ザント、アルゴの三人にアスナが叫ぶ。

 

「大丈夫か?アスナ」

 

「私は大丈夫。それよりも《業物》は?」

 

「分かってる。こいつは返してもらうぜ」

 

そう言いながら、襲撃者が手に持っていた《業物》を奪い返すキリト。

その様子にホッとするアスナだが、ある疑問が一つ思い浮かんだ。

 

「良かった。ひとまず、これで一安心だね。ところで、キリト君。この人達、《業物》を狙ってたみたいだけど、何処から情報が漏れたのかな?」

 

「ああ、それは――」

 

キリトが言いかけたその時

 

「俺!俺知ってる!」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くと、やはりと言うべきかジョーがいた。

 

「そいつらの顔、俺知ってる!そいつら三人共、DKBのメンバーだ!リンドと話している所を見たことあるぞ!」

 

「でたらめだ!俺はこんな連中知らない!」

 

覚えのないことを言われ、慌てて否定するリンド。

しかし、ジョーは止まらない。

 

「噓だ!《黒の剣士》と《狂狼(ヴォルフガング)》と《鼠》に邪魔されたけど、DKB以外の頭領を殺して、《業物》も奪う!そうやって、DKBの独占状態にするつもりなんだ!もし、そうなれば、DKB以外はポーション一つも買えないし、頭領や《業物》もないから、二度と解禁できない!ルールの抜け穴を使った卑怯で卑劣な罠だ!」

 

「DKBめ!とうとう手段を選ばなくなったか!まさか、ここまで非道な連中だったとはな!」

 

「なんだと!ろくな証拠もないくせに勝手なことを!」

 

ジョーの言葉に攻略組は一気に険悪ムードになった。

その様子を見てたソウゴが小さい声でトウガに話しかける。

 

「トウガ・・・野郎の声、どっかで聞いたことあるだろ?」

 

「ああ・・・あいつは間違いなくあの時の奴だ・・・!だが、あいつの正体を暴く為の証拠が今の俺たちにはない・・・」

 

悔しそうにしながら、ジョーを見つめるトウガ。

場は徐々にヒートアップし、両者互いに剣を抜きかねない雰囲気になりかけたその時

 

「ククク・・・アギャギャギャギャ!!」

 

突如フィールドに高笑いが聞こえ、誰もが笑い声がした方へ振り向くと、そこには腹を抱えながら思いっ切り笑っているザントがいた。

それに対して、ジョーが反応する。

 

「な、なんだよ!何がおかしいんだよ!?」

 

「イヤー、悪ぃ悪ぃ。なんたって、あまりにも矛盾点が多すぎる下手くそな煽りな上、それをいとも簡単に信じる猿共の姿が滑稽過ぎてよぉ、ブフゥ!・・・つい笑っちまったぜ」

 

相変わらず攻略組を馬鹿にしながら嘲笑うザント。しかし、今この瞬間だけザントのそれは、ハルト達にとっては頼もしいものであった。

 

「まず第一に、どうしてこいつらがDKBのメンバーだって言える?」

 

「それはさっき言っただろ!俺はこいつらの顔を見たことが――」

 

「こいつらのHPバーにはDKBのマークじゃなく、別のギルドのマークが表示されてるのにか?」

 

『!?』

 

その言葉に誰もが、倒れている襲撃者たちのHPバーを見ると、ザントの言う通り、彼らはDKBに所属しておらず、バーには別のギルドのマークが表示されていた。

にも拘らず、先程DKBメンバーだと言ったジョーの発言には大きな矛盾がある。

その事実に攻略組は一斉にジョーに目線を向け、ジョーは口ごもったが、強気に反論する。

 

「そ、それだったら、こいつらは実は他のギルドで、リンドに依頼されたんだ!高額のコルと引き換えに――」

 

「おいおい、聞けば二十七層は両ギルド攻略に力を注ぎ、それに関するギルド金も全部攻略に使ってるみてぇじゃねぇか。そこいらのギルドの為に渡してやるコルなんざ、そう簡単に用意できるわけねぇだろ。そもそもテメェ、襲撃者(あの馬鹿共)のことをDKBのメンバーだって自身満々に言ったのに、なんで急に他ギルドの連中になったんだ?」

 

「うっ!?それは・・・」

 

再度口ずさむジョー。

すると、好機とばかりにキリトが口を開いた。

 

「お前はそうやって、人を煽り続けていたんだ。第一層で俺をビーターにするためにやった時のように・・・第二十五層でALSを半壊させた時のようにな!」

 

『!?』

 

キリトの言葉に驚愕する攻略組。特にALSの面々は信じられないっといった表情でジョーを見つめる。

そのことに関して、代表するかのようにリーテンが問いかける。

 

「ど、どういうことですか!?」

 

「あの時、ALSは踊起になっていたんだ。独力でクォーター・ポイントを攻略できれば、その発言力と影響力を確たるものにできる。だから、戦闘は勿論のこと、情報に関してもアルゴを頼らず、自分たちで集めていたんだ。情報収集部隊まで用意してな」

 

「確かにそうだが・・・それとジョーに何の関係が――あ!」

 

「ああ、ボスの攻撃変化に関する情報。最重要情報が出るボスクエ攻略の担当を自ら買って出た上で、わざと黙っていた奴がいる。更に、そこで手に入れた情報を利用し、キバオウに迷宮区解放の鍵を手に入れる為のクエストを薦め、ALS単独でボスに挑ませようとした奴。それがお前だ!ジョー!お前とアインクラッドで暗躍する扇動PK集団、お前の背後にいる奴らの企みだ!」

 

キリトの言葉にジョーは一瞬怯むも、すぐに反論する。

 

「言いがかりだ!むしろ、怪しいのはそっちだろ!何せお前は《汚いビーター》だからな!第一、証拠はあんのかよ!?証拠も無いのに人をPK呼ばわりしやがって!相変わらずビーターのやり方は悪どいな!」

 

「確かに証拠がないよな」

 

「いきなり扇動PKって言われてもな・・・」

 

攻略組の面々は困惑しながらもジョーの言葉に納得している雰囲気だ。

対して、キリトは特に反論してくる様子はない。

その様子を見たジョーは更に強気になって追撃する。

 

「オラオラ、どうした!?証拠を出してみろよ!そんなものがあればの話だがよ!それも無しにPK呼ばわりなんざ――「あるぜ、お望みの証拠がよ」なんだと!?」

 

ジョーの言葉を遮ったのは、未だ楽しそうに笑っているザントだった。

ザントはフィールドの出口に向かって手招きする。すると、フィールドに一人の少女が入ってきた。

その人物が誰なのかハッキリすると、コハルが驚愕した。

 

「サチ!なんでここに!?」

 

「証拠なら・・・あります。私が持ってます」

 

「なんだとゴラッ!そんなもん、あるわきゃねぇだろ!適当なこと言ってるとぶち殺――」

 

「黙れ」

 

「ぐえっ!」

 

サチの言葉を遮ろうと罵声を浴びせていたジョーだったが、ザントの蹴りが顔面にクリティカルヒットし、背中から倒れ、強制的に黙らせられた。

ザントはサチに目線を向けると、サチは頷き、ストレージから一つの結晶を取り出した。

すると、結晶から突如声が発せられる。

 

『いいか?もう一度、段取りを確認すっからよ。《業物》と頭領が揃ったところで、コルで釣ったマヌケ共を突っ込ませる。で、そいつらに頭領全員をぶっ殺させて、《業物》もDKB以外の物をぶっ壊す。そうすりゃDKB以外はクエストをクリアすることができず、場は騒然。そこに、俺が『俺!俺知ってる!』って寸法よ!』

 

『了解した。相変わらずえげつないことをする奴だ。影響範囲だけで言ったら、二十五層の時以上だな』

 

『二十五層の時はまぁ、本来ならあのまま単独でボスに挑むように誘導するはずだったんだけどよ、途中で狼野郎に邪魔されちまったんだよ。けど、サブヘッドが気ぃ利かせてくれたみたいでな。帰った時に見たあのキバオウの顔、見物(みもの)だったぜ』

 

「っ!?」

 

「《録音クリスタル》って便利なもんだな。雑音も無く、はっきりと記録することができるんだからな。この声、この口癖、こんな喋り方をする奴は一人しかいない。『俺、俺知ってる』が口癖の思い当たる奴が一人なっ!」

 

「この会話の記録を手に入れることができたのは、嬉しい誤算だったぜ。ご丁寧にテメェの口癖を言ってくれたお陰でこっちも特定すんのにそんなに時間が掛からなかったからな」

 

クリスタルから発せられる会話を聞いて驚くジョーに対して、笑みを浮かべながら言うキリトとザント。

ジョーは一瞬動揺したものの、すぐに強気になって反論する。

 

「デタラメだ!こいつらは俺を嵌めようとしてる!だいたい、SAOには何人のプレイヤーがいると思ってんだ!そりゃあ、多少は減ったけど、それでも、まだ5000人以上もいるんだぞ!声が似ているからって理由で俺を犯人だと決めつけ――」

 

「だから言っただろ。こいつを手に入れることができたのは嬉しい誤算だったって」

 

「なんだと!?」

 

「俺は証拠が一つだけしかないとは言ってないぜ。これでも俺は、俺が用意したモンだけだと、猿共がテメェへの疑心は持っても、テメェお得意の勢いで乗り切られるんじゃないかって心配してたんだよ。だから、こいつがこの証拠を持って来てくれたのは、俺にとっちゃ嬉しい誤算だったぜ。おかげで、テメェに疑心を植え付けることができたんだからよぉ」

 

そう言いながら、ザントは左手を自分の顔の横に持っていくと

 

「これで止めだ」

 

パチン!っと指を鳴らした。

その直後、フィールドに足音が聞こえ、攻略組が足音がした方に振り向くと、このフロアに入ってきたラピードの姿が見えた。

しかし、口にはサチが持っているやつと同じような《録音クリスタル》が銜えられていた。

その銜えられた《録音クリスタル》から声が発せられる。

 

『これで、ALSはしばらくの間、まともに動くことはできまい』

 

『そうっすね!いやーそれにしても、あんな仕掛けをしてたなんて、サブヘッドも中々えげつねぇこと考えますね!』

 

『フン、予想外のことに対応しておくのは当然ことだろ。人間は一度真を得ると、心の中に安心感を持ち、必ず気が緩む。そして、それが偽だと気づいた時には既に遅く、為すすべも無く崩れていく・・・当面は連中にこれといった衝突は無さそうだな。両ギルドに何らかの動きがあるまでは、仕掛けずに待機しておけ、ジョニー・・・いや、'ジョー'』

 

『了解!』

 

会話はここで終わっており、その会話を聞いたジョーが先程以上に動揺しているが見られた。

すると、録音の内容を一部聞いていたALSのプレイヤー達が動揺しながら喋り出した。

 

「お、おい、今の声って・・・」

 

「間違いねぇ。二十五層で俺らに噓の情報を言いやがった情報屋だ!」

 

「ホントか!?それは!」

 

その言葉に、リーテンをはじめとするALSの面々が驚愕する。

 

「こいつは、二十五層のボスを攻略した後、テメェの後ろにラピードを付かせた時に録ったモンだ。テメェがウジ虫共の仲間だってのは既に目星を付けていたが、何せ証拠が無かったからな。だから、決定的な証拠を手に入れる為に、《録音クリスタル》を使って、テメェとウジ虫が裏で会話するところを記録しようとしたんだよ。けど、俺が直接録ろうとしても、遠すぎると上手く録れねぇし、近過ぎたら見つかるリスクがあった。だから、俺はラピードに《録音クリスタル》の使い方を学ばせ、テメェがウジ虫と裏でやり取りしてる所を記録させてたんだよ。テメェも充分警戒してた見てぇだが、そりゃ気づくわけねぇよな。何せラピードの見た目はそこらにいる少し図体がでけぇ狼系のMobと変わらねぇからなぁ!」

 

「ぐっ・・・!」

 

楽しみに笑みを浮かべながら説明するザントをジョーは憎らし気に見た。

そして、止めを刺すかのようにキリトが口を開く。

 

「この声、この口癖、こんな喋り方をする'ジョー'は一人しかいない。『俺、俺知ってる』が口癖の思い当たる'ジョー'が一人なっ!そして、共犯者と思わしき情報屋の男との会話の記録・・・これらのことから導き出される答えはただ一つ!二十五層でALSを壊滅させようと陥れ、二十七層で中層プレイヤーを利用し、《業物》を盗ませて、ALSとDKBとの戦争を引き起こそうとした扇動PKの犯人・・・それはお前だ!ジョー!!」

 

力強く叫びながら、ビシッとジョーに向かって指を刺すキリト。

対して、指を刺されたジョーは下に俯きながら体を震わせて

 

「ぐっ・・・!クソ!クソがぁーーーーーー!!!」

 

フロアに響くような大声で悔しそうに叫んだ。

 

「まさか扇動PKの首謀者がお前だったとはな、ジョー」

 

そこにリーテンがジョーに向かって静かに歩き出す。フルアーマーの鎧ごしに怒りを湧き上がらせながら。

 

「大人しくしろジョー。ここにはALSだけでなく、DKBやKoBもいる。お前に逃げ道なんてないぞ」

 

リーテンの言う通り、ここには二大ギルドの面々に加えて、攻略ギルドのKoBや「紅の狼」、キリトやハルトなどといったトッププレイヤーが出揃っている。そこから一人で逃げ切るなど不可能である。

しかし、こんな状況にも関わらず、ジョーは静かに笑い出した。

 

「ククク・・・アッハッハッハッ!!あるよ!逃げ道あるよ!」

 

「!? この馬鹿みてぇな高い笑い声・・・テメェ・・・!やっぱり、あの時の毒ナイフ野郎か!」

 

「ピンポーン!」

 

ジョーの笑い声を聞き、二十層でオレンジプレイヤーの集団に襲われた時、自身と戦った毒ナイフ使いだと確信したソウゴ。

対するジョーはソウゴの問いに対して上機嫌に返すと、懐から結晶を取り出した。

その結晶を見たリーテンが大きく反応する。

 

「あれは!《転移結晶》!?しまった!」

 

「結晶系アイテムが出やすい層で助かったぜ!あばよ!マヌケ共!」

 

ジョーは《転移結晶》を掲げ、攻略組の面々を嘲笑いながら転移しようとしたが

 

スバッ!

 

「何っ!?」

 

「何処に逃げるつもりかは知らねぇが、俺がそれを黙って見逃すとでも思ったか?」

 

ジョーがこの場から逃げる手段を予め用意していることを予測していたザントによって、掲げていた《転移結晶》は真っ二つに斬られ、その効果を発揮する前にポリゴンと化した。

用意してあった逃げ道を失い、戸惑うジョー。その隙にザントはジョーの後頭部を掴み、地面に叩き付けた。

 

「ふべっ!」

 

顔面を思いっ切り地面に叩き付けられ、マヌケな声を出すジョー。

ザントはそのままジョーの体を右足で踏むと、ジョーの両腕をもう片方の腕で後ろに回し、後頭部を掴んでいた腕を引っ張り、ジョーが付けてた黒レザーマスクを剝ぎ取った。

そこに現れたのは、灰色の髪に目つきが悪い、というか半分死んでいる男の顔だった。

 

「へっ!中身はかなりマヌケだったが、どうやら、見た目も同じくらいマヌケ面みてぇだな」

 

「テメェ・・・!」

 

押さえつけながら自身をコケにしているザントを殺意の籠った目で睨むジョー。

それに対してザントは、既に興味ないっといった感じで顔を逸らすと、どうするんだ?って視線をリンドに向けた。

 

「・・・連行しよう。彼には色々と聞きたいことが山ほどある」

 

リンドの言葉に「了解」と頷くと、ザントはジョーの両腕を持ち上げ、立たせようとしたその時

 

「!? 避けろ!ザント!」

 

キリトの叫び声が響き渡り、それに反応したザントはジョーの手を放し、咄嗟にその場から飛び退いた。その直後

 

ドーン!!

 

先程までザントがいた場所に突如衝撃が迸った。

フロア全体が砂塵に飲まれ、何が起きたのかと困惑する攻略組。

やがて煙が晴れると、そこにいたのはジョーからすれすれの場所で突き刺さっている斧と人影だった。

 

「・・・作戦は失敗し、攻略組に正体を知られる。挙句、逃げることすらもできないとは・・・滑稽だな、ジョニー」

 

「さ、サブヘッド・・・」

 

男の言葉にジョー改めジョニーは申し訳なさそうに返した。

男の格好は黒ポンチョに顔が隠れるくらいのフードを被っている。しかし、フードの影から薄っすらとだが、白い髪の毛が見える。

その男の正体に、彼を見たことがある者は驚き、その中でも特に反応したのが、かつてこの男と本物の殺し合いをしたハルトだった。

 

「お前は・・・!あの時の!」

 

「また、会ったな。翠の剣士・・・いや、ハルト」

 

ハルトの言葉に白髪の男は静かに返す。

すると、今度は一人のALSのプレイヤーが反応した。

 

「その声・・・間違いねぇ!二十五層で俺らに噓の情報を教えやがった奴だ!」

 

「ホントか!?それは!」

 

その言葉にリーテンが驚く。二十五層での悲劇が起きた原因は知っていたが、その要因が目の前にいる男であることに驚愕し、同時に仲間たちを間接的に殺したこの男にリーテンは怒りを感じた。

しかし、白髪の男は先程発言した人物を何処か憐れむように見ながら喋る。

 

「何を言っている。俺は噓の情報を教えてはいない。もっとも、HPを半分切ったら、ボスの攻撃力が急激に上がることを言い忘れていたがな。二十五層でALSが半壊したのは、貴様らが情報の真意を確かめずに、ボスに挑んだ結果だろう?」

 

「なんだと!?」

 

男の物言いに吠えるALSの男。

その様子を見て、白髪の男は「フン」と興味を無くすと、周りを見渡しながら喋る。

 

「どの道、作戦が失敗した以上、もうここには用はない。悪いが、種明かしはこの辺にして、我々はそろそろ退場させて――」

 

「だから、俺がそれを許すとでも思ってんのか?」

 

白髪の男が言い切る前にザントが《蒼嵐》を構えながら迫ってきた。

それに対して、白髪の男は地面に突き刺さっていた斧で《蒼嵐》を受け止めた。

その背後から、キリトとトウガがそれぞれの武器を構えながら迫るが

 

「フッ!」

 

「!? ちっ!」

 

斧に押し返されて、後ろに飛ぶザント。

その間に、白髪の男は斧を持ち直すと、後ろに迫っているキリトとトウガの方へ体を捻らせながら

 

「ハァ!」

 

「うわっ!?」

 

「くっ!?」

 

斧を二人目掛けて横に振り、直撃はしなかったものの、斧を振るうパワーから生み出された風圧によって、二人は後ろに飛ばされた。

直後、白髪の男は横から気配を感じた。

 

「ハァーーー!」

 

振り向くと、既に白髪の男の目の前に接近していたハルトが、レイピアを構えて白髪の男に攻撃しようとしていた。

白髪の男は咄嗟に顔を逸らすことで何とか回避したが

 

「!?」

 

レイピアの風圧によって、被っていたフードが外れ、男の顔が露わになった。

 

『!?』

 

その顔を見た全員が一斉に目を見開いた。

なぜなら、雪のように白い髪の毛と血のように赤い瞳。それらを除けば

 

「ハ・・・ルト・・・?」

 

ハルトと瓜二つと言える顔であったからだ。

フードから露わになったその顔に、誰もが動きを止めていると、ハルト似の男が口を開いた。

 

「どうした?そんなに人の顔をじろじろと見つめて・・・先程までの威勢は何処にいったんだ?」

 

「・・・お前は・・・誰、なんだ・・・!?」

 

恐る恐る目の前にいる自分そっくりの男に問いかけるハルト。

対するハルト似の男は、少し考えるような素振りをした後、笑みを浮かべながら答える。

 

「そうだな・・・春を殺すことを使命とする者っとでも言っておくか・・・」

 

「春を・・・殺すこと?」

 

男の言っていることが分からず、困惑するハルト。

そんなハルトの様子を見たハルト似の男は何処か困ったように口を開いた。

 

「やれやれ、まだ正体を明かすつもりはなかったが・・・こうなってしまえば仕方がない。では、これでお開きとしよう」

 

「!? ま、待て!」

 

左手に《転移結晶》を掲げて逃げようとする男をハルト達は止めようと男に駆け寄るが、男はもう片方の手でストレージから黒い物体を取り出すと、地面目掛けて投げた。

おそらく煙幕を張って、こちらの視界が見えない内に転移するつもりだろう。そうはさせまいと、ハルトは煙幕を払おうとレイピアを構え・・・それが間違いだったと、すぐに気づいた。

 

「うっ!これは!?」

 

「《閃光弾(フラッシュ)》か!?」

 

キリトが腕で顔を覆い隠しながら、その黒い物体の正体を当てた。

その名前通り、突如眩い光がフィールド全体を照らし、全員が腕で目元を覆い隠す。

フィールドが眩い光に包まれていく中、ハルトの耳に男の言葉が微かに響いた。

 

『俺の名前はハルファス。春を殺す者。また会おう、ハルト』

 

「!?」

 

その言葉が耳に響いた直後、光が止み、そこにはハルト似の男もジョーもいなかった。

 

「クソ!逃げられたか・・・!」

 

「何はともあれ、全面戦争は避けられた、ということか・・・」

 

キリトが悔しそうに叫び、その横で最悪の事態を避けられたことにリンドがホッとしながら呟いた。

 

「キリトさん、さっきは助かった。それで、連中から奪い返してくれた《業物》、そろそろ俺たちに返してくれないか?」

 

「そうね。キリト君、お願い」

 

リンドとアスナが先程キリト達が奪い返してくれた《業物》を返すようキリトに言ったが

 

「・・・悪いけど、それはできない」

 

そう言いながら、キリトはフィールドの端にあった溶岩の溜まり、古代の溶鉱炉へ三本の《業物》を投げ入れた。

 

「あ!」

 

「なっ!?」

 

「そんな!」

 

キリトの奇行に思わず声を漏らすリーテン、リンド、アスナ。

攻略組の面々が一斉にキリトを見た。その眼差しにはいくらか敵意が含まれている。

 

「キリトさん、どういうつもりだ・・・!」

 

「待って!炉の中を見て!」

 

リンドが怒りながらキリトを睨んだが、それをリズベットが制止し、溶鉱炉を見るよう促す。

リズベットの言葉に誰もが溶鉱炉の中を見ると、そこには三つのインゴットがあった。

 

「これは・・・インゴット!?」

 

「あたしも見たことがないわ。こんなインゴット。三つの《業物》が溶けたから三つ分あるわ」

 

そう言いながら、リズベットはインゴットを溶鉱炉から取り出した(耐熱用の手袋を装着して)。

 

「キリトさん、このことを知っていたんですか?」

 

リーテンがキリトに向かってそう問いだす。周りのプレイヤー達もキリトを見つめる。

 

「色々と聞きたいことがあるけど、ひとまず街へ戻りましょう。さっき襲撃してきた人達のこともあるし」

 

このままだと、色々とごちゃごちゃになって整理がつかなくなると思ったアスナが、周りに向かってそう提案すると、全員が異議なしといった感じで頷いた。

 

 

 

 

圏内に戻った攻略組は、一通り情報を整理することにした。

先程、襲撃してきたプレイヤー達を捕え、事情を聞くと、彼らは中層プレイヤーであり、攻略組に追いつけず困っていたところ、黒ポンチョの男から例の襲撃計画について話され、知らず知らずのうちに従ってしまったのだという。

黒ポンチョ男の手口の危険性は、特に騙されたことがあるリンドが熟知しており、オレンジプレイヤーの集団とは無関係であることと、彼らもまたオレンジプレイヤーの被害者であったので、結果襲撃者たちは今回の件ではお咎めなしということになった。

《業物》のクエストに関しては、このまま《業物》を完成させても、《業物》は大した能力もない武器になっていたらしく、この武器でフロアボスに挑んでも倒すのはほぼ不可能だと、事前に情報を集めていたキリト達が独断で判断したのが、《業物》インゴット化である。

無断でインゴットにしたことには、流石に攻略組の面々も顔をしかめていたが、きちんと事前に情報を集めていたことと、キリトの言う通り、もし《業物》が完成した状態でフロアボスに挑んでも欠陥を抱えた状態で戦うと、それが大きな落とし穴になる。何より、両ギルドが緊張状態の中、《業物》を完成させたギルドが欠陥品を抱えたまま、先走ってフロアボスに挑むことがあった為、一応は納得してもらえた。

そして、三つのインゴットに関しては、それぞれのギルドで持つことになった。

取っておくもよし、武器の強化に使うもよし、使い方はそれぞれのギルドで決めることになった。

今後のことについては、フロアボス戦前までに、装備の強化や充分なレベリングを済ませ、万全の状態で挑むという方針になった。

各ギルドごとに、利用する狩り場を分け、平等に強化していく形に治まったところで会議は終了となり、ALSとDKBはそれぞれの狩り場に向かい、今回の件で色んな意味で騒がせたキリト達三人も、会議終了後に去っていった。

そして、現在。ハルト達と「血盟騎士団」の面々は再度、《名工の秘房》へ向かい、そこで装備の強化やレベリングをすることになった。

 

「・・・・・・」

 

その移動の最中。というより、情報を整理するため圏内に戻ろうとした時以降、ハルトの表情は一向にすぐれなかった。

 

「ハルト・・・」

 

「やっぱり、気になるのか?あの男のこと」

 

コハルが不安そうな表情で見つめ、その横でトウガが問いかける。

気になると言うのは、無論、白髪の男の素顔に関してだろう。

 

「気にならないって言えば噓になる。ただ・・・」

 

トウガの問いに対して、何処か曖昧に答えるハルト。

すると、今度はソウゴが問いかける。

 

「テメェの家族や親族とかってぇのは?」

 

「・・・僕の家族は父さんと母さん、後は・・・弟が一人・・・」

 

「え?ハルト、弟がいたの!?」

 

「うん、言ってなかったっけ?」

 

「聞いたことないよ!そんなの!」

 

少し怒り気に言うコハルに「ごめん、ごめん」と苦笑いしながら謝っていたハルトだったが、一瞬だけ暗い顔をしたのをトウガは見逃さなかった。

それは、さっきのハルト似の男に対してのものじゃない。先程言った弟のことに対してだとトウガは感じた。

 

「(やれやれ、サチの悩みが解決したと思ったら、今度はハルトの方か・・・)」

 

心の中でそう呟きながら、少し前までの出来事を思い出すトウガ。

ここで、一旦圏内に戻った後、再度《名工の秘房》に行こうとした時に起きたサチと「紅の狼」との会話を見せよう。

 

『まさか、あの時サチが出てくるなんて思わなかったよ。それにしても、よく録音できたね?』

 

『実は、ソウゴさんと別れた後、たまたま路地裏であの人達の会話が聞こえて・・・怖かったんだけど、録音しないとって思って・・・ごめんね、せっかくソウゴさんに励ましてもらったのに、臆病なままで全然変われてなくて・・・』

 

『そんなことないよ!あの状況なら逃げることだって、黙ってやり過ごしたりすることだってできたはずなのに、自分の意志で録音しようって思ったんだよね?それって、凄いことだよ!それができるくらいサチが変われてるってことだよ!』

 

『コノハの言う通りだ。おかげで、あいつらの計画を阻止したついでに、化けの皮を剝がすことができた。お前のお手柄だ、サチ』

 

『そうだよ!だからもう、自分が死んでもいいなんてことは考えないで。頑張って生きていれば、今みたいにきっと強くなれるから!』

 

『!?・・・うん、今すぐフロアボス攻略ってわけにはいかないけど、黒猫団の皆と頑張って、すぐに追いつくから、待っててね!』

 

そう言いながら、お互い微笑むコノハとサチ。

その様子を温かい眼で見守るトウガ達。ただし、カズヤだけは「昨日はソウゴ。そんで、今日はお前か、コノハ・・・リア充爆発しろ畜生」と小さく呟きながら嫉妬の眼差しで見つめていた。

少し前の出来事を思い出しながら、トウガは再度ハルトに問いだす。

 

「家族はともかく、他に何か思い当たる事とかはないのか?例えば、遠い親戚とか・・・」

 

「・・・・・・」

 

トウガの問いに対して、暗い表情のまま一向に答える気配のないハルト。

ホントっどうしたもんだっとトウガが考えた時

 

「別に深く考える必要なんてないんじゃない?」

 

そう言いながら、こちらを向いたのはリズベットだった。

 

「顔が誰に似てようが、あんたはあんたでしょ。ここにいるあんたは、人を平気で貶めるオレンジプレイヤーなんかじゃない。攻略組の一人であたしの友達のハルトでしょ。ほら、いつまでもそんな顔してたんじゃ、レベリングに集中できないでしょ!もっとシャキッとしなさい!」

 

「・・・そうだね。ありがとう、リズベット」

 

リズベットに向かって微笑むハルト。そこには、先程までの暗い表情はすっかり無くなっていた。

その後、先程の巨大な溶鉱炉が置かれたあるエリアに辿り着いたハルト達は、手に入れたインゴットの使い道について話し合うこととなった。

何せ、手に入れたインゴットでは溶鉱炉にセットしても、武器を作ることができなかったからである。

そこでリズベットが提案したのがインゴットの武器継承である。手に入れたインゴットを添加剤として、素体となる武器のパラメータに付与させることで、《業物》の力を元の武器で存分に発揮できるのだという。

二十七層のテーマが鍛冶であることを基に閃いたリズベットの提案を反対する者はいなかった。

そこで、今度は誰の武器を強化するのか話し合うことになった。

 

「さてと、使い道も決まったことだし、誰がどう使うか決めないとね」

 

「そうですね。誰か使いたい人、それか、この人が使うべきだと思う方はいませんか?」

 

アスナが周りに向かってそう尋ねると、ハルトが手を上げた。

これまで幾度も危機を乗り越えてきた彼なら丁度いい人材だろうと、手を上げたハルトを見てそう思ったアスナ。

しかし、次に彼から発せられた言葉はアスナにとって意外なものだった。

 

「僕はアスナが使うべきだと思うな」

 

「あたしも賛成よ。このインゴットはKoBの財産なんだし、現場のリーダーでギルドの中で一番強いアスナが使うべきだと思うわ」

 

ハルトから発せられた言葉は志願ではなく、自身も推薦する言葉だった。

更に、リズベットも彼の意見に賛同した。

 

「二人共・・・皆さんはそれで構いませんか?」

 

アスナは自分を推薦した二人に驚きつつ、周りに異論はないか聞いた。

 

「構わないさ。今の状況でこのインゴットを使うのに相応しい人間はアスナ、お前ただ一人だ」

 

トウガを筆頭に、この場にいる全員が賛成した。

 

「ありがとうございます。では、私が使わせてもらいます」

 

「そうと決まれば、あたしたちは二人で打ち合わせね。ほら、みんなはレベリング頑張って!」

 

インゴットで強化した武器をアスナが使用することに決まり、リズベットは周りに向かってレベリングをするよう促す。

リズベットの言葉に、この場にいた全員が移動し始めたが、リズベットはある人物に声を掛けた。

 

「ちょっといいかしら?ソウゴ」

 

「なんだよ?」

 

エネミーがいる場所へ移動し始めたソウゴをリズベットが呼び止める。

リズベットはアスナの武器強化が優先になったことで、ソウゴの刀制作が後になることに謝罪した。

 

「そういう訳だから、あんたの刀はたぶん、フロアボスが攻略された頃に完成すると思うわ。本当はボス戦前に完成させたかったけど・・・ごめんなさい」

 

「謝んな。こうなることは予想してた。別に刀がないからって戦えねぇわけじゃないんだ」

 

「でも・・・あんたはあたしを信用して依頼してくれたのに、依頼者の依頼も満足に果たせないまま、送ることしかできないなんて・・・!」

 

そう言いながら、悔しそうに俯くリズベット。

そんな彼女を見つめ、ソウゴはしばらく無言だったが、ふと口を開いた。

 

「リズベット、昨日俺が言った、俺自身の戦う理由の話を覚えているよな?」

 

「確か、あんたやあんたの仲間たちの居場所を守るためだったかしら?」

 

「そうだ。お前が鍛冶師として戦う理由があるように、俺にも、あいつらの居場所を守りたいって思いがある」

 

「だから――」とソウゴは真剣な表情でリズベットに言った。

 

「お前も、お前の信じる信念に従って戦え」

 

「!?・・・当たり前でしょ!それに、まだ間に合わないと決まったわけじゃないんだからね!見てなさい!ボス戦前までに絶対にあんたの刀を完成させてやるんだから!」

 

リズベットの力強い返事を聞くと、ソウゴは「フッ」と小さく笑みを浮かべながら、仲間たちの所へ戻った。

その後、ハルト達はボス戦に備え、《名工の秘房》で己を鍛えていった。

 

 

 

 

一週間後、DKBの一部が先走って迷宮区へ行ってしまったという報せが入り、ハルト達はリンド含む残りのDKBの部隊とALSと共に急いで迷宮区へと向かった。




・ラピードに《結晶クリスタル》の使い方を学ばせる
さり気なく言ってますが、かなりのトンデモ発言となっております。そして、使い方を覚え、ジョーの会話を記録したラピードも充分ヤベー奴です。

・ジョーの正体
衝撃の事実その1・・・でもないな。気づいていた人、大多数だし。

・白髪の男、ハルトそっくり
衝撃の事実その2。ハルトよりも少し背高く、髪の色を白にして、目の瞳が赤いハルト(SAOIF主人公)だと思ってください。

・ハルファス
白髪の男改め、後の「ラフィン・コフィン」サブリーダー。春を殺す者を己の使命として動いている。CVは神谷浩史。見た目は上記通りハルト(SAOIF主人公)似。

・ハルト、弟がいた
衝撃の事実その3。少しネタバレになりますが、弟もその内出す予定です。ちなみに、十層(ep.16)で妹ネタを出された時にハルトが一瞬暗い顔をしたのはこれが原因です。


今回の話で衝撃の事実が次々と暴かれました。
これらのことに関しては、今後明かされていくでしょう。
次回、二十七層ボス攻略。

二十七層編終了後見たい番外編は?

  • ネージュのクリスマス
  • キリトさんランド
  • クライン&紅の狼の肝試し大作戦
  • アリスランド改めカオスランド
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