ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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SAOIFでも刀実装されないかな~
二十七層ボス攻略です。


ep.33 第二十七層ボス攻略

DKBの一部隊が単独でフロアボスに挑みに行ったと聞かされたハルト達は現在ALSと残りのDKBの面々、「血盟騎士団」と「紅の狼」と共に、迷宮区を走りながら進んでいた。

フィールドにいたエネミーとの戦闘を避けながら走ったお陰で、普通に攻略するよりも早く、ボス部屋に到着することができた。

ボス部屋の扉はすでに開いており、部屋では先走ったDKBの面々がボスと思わしき巨大エネミーと戦っている姿が見受けられた。

 

「皆さん!大丈夫ですか!?」

 

アスナがボスと戦っている最中のDKBの面々に声を掛ける。

すると、一部のメンバーがこちらに気づいて、驚愕の表情を向けた。

 

「KoBの副団長!?ということは本隊が来たのか!」

 

「来たところで悪いけど、もう俺たちだけで倒せそうだ!リンドさんの言ってた通り、こいつは正攻法だけの脳筋野郎だぜ!」

 

「パターンもここ最近のボスと違って単調だ。ヘンテコな攻撃をするわけでもねぇし、このまま押し切ってやるぜ!」

 

「あいつら・・・!」

 

待機命令を無視し、リンドの許可も無く独断でボスに挑んだにも関わらず、これっぽちも反省してない様子のギルドメンバーにリンドがキレかけるが、アスナが「まあまあ」と宥める。

更に、この光景を見て、キレかけている者達がもう一組いた。

 

「・・・トウガ。俺、あいつらを助ける気なんて元々無かったが、今のを見て、完全に無くしちまったぜ」

 

「奇遇だな。いっそのこと、そのまま'あれら'だけで戦わせて、死なせてやった方が今後の攻略を楽に進めることができるかもしれないな」

 

「馬鹿なこと言ってないで、早く加勢するわよ!全隊!攻撃開始!」

 

加勢したくないって顔をしているソウゴとトウガをアスナが宥めると、「血盟騎士団」に向かって指示を飛ばした。

リンドとリーテンもまた、ギルドメンバーに指示を出し、ボスと戦っているDKBに加勢し始めた。

今回のボスは《ダロス・ザ・クロスギガス》。数十メートルの巨体に首元から頭が二つ生えて、更に腕も左右二本ずつ生えており、それぞれの手には巨大ハンマーと鎖付き鉄球が左右対称に握られている。

《ダロス・ザ・クロスギガス》の攻撃は先程のDKBのプレイヤーの言葉の通り、両手に持っている巨大ハンマー、或いは鎖付き鉄球を振り下ろす攻撃しかせず、これといった変化も仕掛けもない。

攻略組は事前に情報を集め、このことを既に知っていた為、合流してからは勿論のこと、単独で挑んでいたDKBの面々だけでも互角に戦うことができた。

しかし、当然ながらフロアボス戦はそんなに甘くはない。

 

「うわぁーーー!!」

 

「おい!大丈夫か!?うわぁ!?」

 

一人のDKBプレイヤーが突如上から降ってきた電撃を食らい、安否を確かめようと駆けつけた別のDKBプレイヤーの足元に突如炎が広がり、慌てて炎の床から足を退いた。

 

「これは!トラップか!?」

 

「ええ。おそらく、この部屋全体に仕掛けられたものです」

 

リンドとアスナが今回のボスの仕組みに理解したように口を開いた。

今回のボス《ダロス・ザ・クロスギガス》は、特殊な強化や攻撃をしてこない。その代わり、ボス部屋全体がトラップまみれの魔境と化していた。

 

「おそらく、この罠はあのボスを部屋に出さない為に仕掛けられたもので、俺たちはそれに巻き込まれていると考えた方がいいな」

 

「リンドさんの言う通りだと思います。ボスクエでNPCがボスの能力や仕組みについて話して、トラップに関する情報を一切話さなかったのは、このボスのギミックではなかったからだと考えられます。トラップを重視したこの層ならではの盲点でした。でも、今からでも遅くはありません。ギミックに気づくことができれば、いくらでも立て直すことはできます」

 

そう言うと、アスナはトラップに悪戦苦闘中の攻略組に向かって思いっ切り声を上げた。

 

「落ち着いて!皆さんなら大丈夫です!確かにトラップは驚異ですが、今回よりも、もっと厄介なギミックを持つボスだって、皆さんは攻略してこられたんです。今回だって、必ず攻略できます!だから、皆さん落ち着いて、集中していきましょう!」

 

『ウオーーー!!』

 

アスナの言葉に攻略組が雄叫びを上げた。

 

「凄いなアスナは・・・少なくとも、俺にはあんな風に全体をまとめることなんてできないな」

 

その様子を見ていたトウガはアスナのリーダーシップの高さやカリスマ性に感心しながら、《ダロス・ザ・クロスギガス》に応戦する。

アスナの鼓舞もあって、攻略組の士気も高まり、順調に《ダロス・ザ・クロスギガス》のHPを削っていく。

 

「もう少しです!皆さん、頑張って――っ!?」

 

《ダロス・ザ・クロスギガス》のHPが残り1/4程度になり、ラストスパートを掛けるべく、アスナが攻略組に向かって叫ぼうとしたその時

 

「武器が・・・急に重く・・・!?ダメ・・・!このままじゃ、腕が・・・!」

 

手に持っているレイピアが急に重くなるのを感じ、下がった腕を上げようと苦し気に声を上げるアスナ。

周りを見ると、他のプレイヤーもアスナ同様苦し気に声を上げている。特に重装備のタンク、または斧などといった重さがある武器を使っているプレイヤー程苦しそうな顔をしている。

 

「皆、武器から手を離すな!何故だか分からないが、一度床に落とすと、とてもじゃないが拾えなくなる!」

 

リンドの言葉に皆、武器を落とさぬよう必死に持ち上げようとする。

無論、ハルト達も突如重くなった自身の武器を苦し気な顔をしながら必死に持ち上げる。

 

「うぅ・・・何なの、これ?・・・どうして・・・?」

 

「・・・おそらく磁力だと思う」

 

苦し気に己のレイピアを持ち上げようとしてるコハルの隣でコハル同様必死に片手棍を持ち上げながら、何やら感ずいたように発したハルト。

すると、あまり苦しんでなさそうな様子のトウガが二人に近づきながら喋り出す。

 

「ハルトの言う通り、おそらく装備の金属部位に反応していると俺も思っている。しかも、この層は鉱石などの金属が集め放題のボーナスステージみたいなものだからな。どいつもこいつも手に入れた鉱石で装備を強化したせいで、金属ゼロの装備をしてる奴がほとんどいない。その上、武器もほとんどが金属でできてるせいで、まともに動けるのは、俺やコノハみたいな軽装備プレイヤーぐらいだな」

 

これが、二十七層ボス《ダロス・ザ・クロスギガス》の最後の難関、磁力トラップである。

《ダロス・ザ・クロスギガス》のHPを3/4まで減らすと、部屋の床に強力な磁力が働き、重装備プレイヤーは磁力に引っ張られ、武器を持つことはおろか、身動きすらも取れなくなってしまう。

軽装備プレイヤーも多少は動けても、武器が金属でできているせいで武器が床の磁力に引っ張られ、一度手放してしまうと拾うのは困難である。

唯一まともに動けるプレイヤーはトウガをはじめとする金属が含まれていない装備を着て且つ短剣など重さがそんなに無い武器を持つプレイヤー、防御ではなく回避に専念し、隙を付いて攻撃するヒット&アウェイスタイルのプレイヤーしかいない。

 

「そうと決まれば話が早い!りっちゃん!フルブレをストレージにしまうんだ!シャツ一枚になれば、重さから解放されるはず――」

 

「よせ!俺みたいに回避が得意な奴ならともかく、タンクのお前たち二人が装備を外しても、奴(《ダロス・ザ・クロスギガス》)の餌食になるだけだ!」

 

トウガの言葉を聞き、リーテンに装備を外すように言ったシヴァタをトウガが慌てて制止する。

 

「タンクは俺たち軽装備プレイヤーが引き受ける!皆は奴が攻撃した瞬間を狙って攻撃するんだ!」

 

シヴァタを制止したトウガは、攻略組に向かって指示すると、自身は《ダロス・ザ・クロスギガス》を引き付けるべく、《ダロス・ザ・クロスギガス》に向かって走り出す。

トウガに気づいた《ダロス・ザ・クロスギガス》は自身の武器も磁力によって重くなっているにも関わらず、その尋常な怪力で鎖付き鉄球を持つ両腕を無理矢理振り上げて、トウガ目掛けて振り下ろした。

トウガは持ち前の回避力で鎖付き鉄球を躱すと、「今だ!」と攻略組に向かって叫ぶ。

それと同時に、複数のプレイヤーが《ダロス・ザ・クロスギガス》に攻撃を仕掛け、次の攻撃に備えるためにすぐさま後ろに下がろうとしたが

 

「クソ!装備が重くて上手く下がれねぇ!」

 

一人のプレイヤーが金属が沢山含まれている装備のせいで、上手く撤退できずにいた。

そうしてる間にも、《ダロス・ザ・クロスギガス》は両腕を振り上げて、そのプレイヤー目掛けてハンマーを振り下ろした。

 

「くっ!させるか!」

 

トウガが咄嗟に手を掴み、ハンマーの範囲から退避させようとしたが、金属装備と磁力トラップのせいで思った以上に動かすことができない。

 

「うわぁ!」

 

「ぐっ!」

 

直撃はしなかったが、巨大ハンマーの余波に飛ばされ、金属装備のプレイヤーはそんなに減ってないが、軽装備であるトウガはHPが一気に半分近くにまで減った。

 

「ちっ・・・!(俺たち軽装備プレイヤーが何とか戦線を保っているが、この調子で戦ってたら、こちらの体力が持たないぞ・・・!)」

 

何とか立ち上がり、HPを回復しながら悪態付くトウガ。

攻略組は基本的に攻撃、或いは防御を重視したプレイヤーが多く、そのほとんどが金属でできた装備を着ている。逆に回避を重視している軽装備プレイヤーは極めて少ない。

しかし、今はほとんどのプレイヤーが磁力によって、まともに動くことすらもできず、唯一まともに動ける軽装備プレイヤーは、少ない人数でタンク及び他のプレイヤーのフォローをしなければならない状況になっている。

このまま戦えば、タンク役である軽装備プレイヤー達の体力に限界が来て、戦局が崩壊するのも時間の問題だろう。

 

「このままじゃ全滅しちゃう。どうすれば・・・どうすればいいの・・・?」

 

アスナがこの状況を何とか変えようと頭を悩ませてたその時

 

「お待たせ!」

 

アスナに向かって叫ぶ声が聞こえ、彼女が声がした方へ振り向くと、そこにいたのは右手にレイピアを持ったリズベットであった。

 

「リズベットさん!?」

 

「他の誰でもない、あんたの剣よ!受け取って!」

 

そう言うと、リズベットは持っていたレイピアをアスナ目掛けて投げつけた。

 

「ダメ!今投げちゃ――え?」

 

磁力が働いているこの部屋で武器を投げても、途中で地面に引きつけられてしまう。そう思ってたアスナの表情が驚きに変わった。

リズベットが投げたレイピアは、磁力なんて初めから無かったかのように宙に舞い、アスナの手元にきっちりと納まった。

 

「どういうこと・・・?」

 

「これこそが、かつてここに封印された怪物・・・この層のボスが眠っていた封印の間に張られた結界の中を物ともせずに振るうことができた、本物の伝説の武器よ。あんたの思い出や強さの形がきっちりと詰まった、世界にたった一つだけの武器よ!」

 

そのリズベットの言葉に、アスナは一週間前に彼女と会話した出来事を思い出した。

 

 

 

 

一週間前、アスナとリズベットが武器の継承について打ち合わせしてた時

 

「で、あんた、このままでいいわけ?」

 

「え?このままで・・・ですか?」

 

「惚けないの。こうでもしないと、あんた本音言えないでしょ・・・キリト、だったけ?ずっと組んでた相手なんでしょ?なのに、お互いに避けてるのがあからさまよ」

 

リズベットの言葉に一瞬動揺したアスナだが、すぐさま切り替え、正面からリズベットを見据えて喋る。

 

「・・・あの人のことは、もう過去のことです。私の中では既に吹っ切れてるので大丈夫です」

 

「ふーん・・・まあ、いいわ。それよりも、さっさと素体とする武器を決めちゃいましょ。インゴットは強化後の伸び率が凄いと思うから、この先ずっと使い続けることを前提に、素体となる武器を選んで」

 

「分かりました。現状ある装備だと・・・こんな感じでしょうか」

 

「へぇー、やっぱりいい装備を揃えてるのね・・・ん?ねぇ、これなんかいいんじゃないの?名前は・・・《シバルリック・レイピア》。かなり強化されてるし、余程大切に使われてたのね」

 

興味深そうに《シバルリック・レイピア》を見つめていたリズベットだが、その隣でアスナが焦った様子で《シバルリック・レイピア》をストレージにしまおうとした。

 

「ダメです!他の装備を選びますから少し待ってください。あらかた整理した筈なのに、まだ残っていたなんて・・・!」

 

「ちょっと、あんた!何やってんのよ!やめなさいって!」

 

リズベットがアスナの腕を掴み、止めようとするが、アスナは抵抗する。

 

「放してください!捨てたりはしません!インゴットに戻して、心材という形で再利用するだけです!」

 

「やめときなさいよ・・・不用品を整理するのはいいことだけど、本当に大切なものをその時の勢いで処分したら、後できっと後悔するよ」

 

「!?」

 

リズベットの言葉にアスナは手を止めた。

《シバルリック・レイピア》はアスナがアインクラッドで最初に手に入れた武器、《ウインド・フルーレ》の魂(武器継承)が宿った武器だ。

アスナは「血盟騎士団」に入る前までに、幾度もの困難を《ウインド・フルーレ》の魂が宿った武器と共に乗り越えてきた。

そして、その隣にはいつもキリトがいてくれた・・・

己の使命と思い出との瀬戸際で未だに悩んでいるアスナにリズベットは彼女に向かって優しく声を掛けた。

 

「・・・あのさ、立場や責任があっても、別に無理して過去や思い出を吹っ切る必要はないと思うわ。あんたの知識や技術。今のあんたを作ってるものって、キリトと過ごした時間なわけでしょ」

 

「・・・・・・」

 

「人ってさ、インゴットみたいなものだと思うのよ。どんな時間を過ごしたかで、どう叩かれたからで強さとか形とか、できることが変わるじゃない・・・これは、あくまであんた達の事を噂程度で聞いたあたしの想像なんだけど・・・キリトもさ、きっとこのインゴットみたいに誰かをより強く輝かせる為に、自分の力を使おうとして、そのために頑張ったんだと思う。あいつの見つけた'強さの形'がそれだっただけで、決してあんたと離れたかったわけじゃないよ」

 

「キリト君・・・!」

 

アスナは《シバルリック・レイピア》を自身の胸に抱き寄せた。

めいいっぱい抱きしめ、しばらくして腕を下ろすと、決心した顔で口を開いた。

 

「ありがとう。リズベットさんのお陰で大切なものを捨ててしまわずに済みました。素体、これにします。この子を・・・よろしくお願いします」

 

「分かったわ。任しといて、少し時間が掛かると思うけど、ボス戦前には必ず渡すから」

 

そう言うと、リズベットはアスナから《シバルリック・レイピア》を受け取り、作業を開始した。

 

 

 

 

「・・・リズベットさん、別に過去や思い出を吹っ切る必要はないんでしたよね・・・」

 

一週間前に会話したリズベットとの出来事を思い出しながら、アスナはストレージを開くと、その瞬間、彼女の服装が「血盟騎士団」の隊服から一層の頃から着ていた赤いフードが付いている初期装備。赤ずきん装備へと変わった。

赤ずきん装備へ切り替えたアスナは攻略組全体へ指示を出す。

 

「回避に優れている人達はそのままボスの注意を引き付けてください!その間に装備が軽い人を中心にボスに攻撃してください!ボスのHPは後少しです。皆さん、最後まで落ち着いて、着実に削っていきましょう!」

 

アスナの鼓舞によって、崩れかけていた攻略組の士気は勢いを取り戻した。また、磁力トラップを物ともしない伝説の武具を手に入れたアスナがタンク役及びアタッカーに加わったことにより、攻略組は先程よりもスムーズに動けるようになり、着実に《ダロス・ザ・クロスギガス》のHPを削っていった。

それでも、軽装備プレイヤーは普段と違って、ボスのヘイトを集めるタンク役に慣れておらず、次第に疲れが見え始めてきた。

 

「くっ!流石にちょっと厳しいかも・・・!」

 

「できれば後一人、タンクが欲しいところだが・・・」

 

そう言いながら、戦局を見渡すアスナとトウガの二人には若干の疲れが見える。

その横でソウゴが槍を重たそうに持ちながら悪態付いた。

 

「クソ!せめて刀があれば、こんな重い槍を持たずに済むってぇのに!」

 

「刀・・・そうだったわ!」

 

ソウゴの言葉を聞いたリズベットがストレージを開くと、そこから刀を取り出し、投げる・・・ことは磁力のせいでできないため、手渡しするべくソウゴの方へ走り出した。

 

「受け取ってソウゴ!あんたの刀よ!」

 

「完成したのか!?ありがたい!」

 

駆け寄ってきたリズベットから刀を貰おうとソウゴが彼女に近づいたその時、ソウゴの視界に《ダロス・ザ・クロスギガス》がリズベット目掛けてハンマーを振り下ろそうとしている様子が見受けられた。

 

「ちっ!」

 

「きゃ!?」

 

ソウゴは近づいてきたリズベットを咄嗟に手で押し飛ばした。その拍子に彼女の手から刀が外れ、ソウゴの近くに落ちた。

それを確認したソウゴは姿勢を低くして、下に落ちた刀を拾おうとした直後

 

ズドーン!!

 

彼のいた場所に《ダロス・ザ・クロスギガス》のハンマーが振り下ろされた。

突然の出来事に誰も声を発することができず、ボス部屋に静寂が漂う中、ゆっくりとハンマーが上げられる。

そこに残っていたのは・・・ソウゴが身に着けていた赤い甲冑が粉々になり、ポリゴン状に四散した光景だった。

 

「まさか・・・!?」

 

「そんな・・・!」

 

「・・・・・・」

 

アスナとリズベットが悲鳴に似たような声を上げ、トウガはその光景を黙って見つめていた。

トウガ以外の誰もが絶望的な表情でポリゴンと化した甲冑を見つめていたその時

 

「ヴォ!?」

 

《ダロス・ザ・クロスギガス》の左側の顔の右目に突如刀が刺さった。

トウガは小さく微笑みながら《ダロス・ザ・クロスギガス》の頭上を見上げた。

 

「フッ・・・しぶとい奴だよ、お前は」

 

「随分暴れてくれたな、ダブルハゲ」

 

そして、その頭上には甲冑を外しているソウゴが《ダロス・ザ・クロスギガス》に刺さっている刀を手に持ちながら立っていた。

 

「ソウゴ!無事だったのね!」

 

「ああ、後一秒遅けりゃ潰れてた」

 

安堵の表情で声を上げたリズベットに相変わらず無愛想な顔で返すソウゴ。

ハンマーが振り下ろされる直前に甲冑が重くて動きづらかったソウゴは、咄嗟に甲冑を半ば強引に外し、刀を手にした途端に上へ跳んで攻撃を回避していた。

ソウゴは突き刺している刀を抜くと、頭から飛び降り、正面から《ダロス・ザ・クロスギガス》を見据えた。

目に刀を刺された《ダロス・ザ・クロスギガス》は刺された部分を押さえ、「ヴォーーー!!」と雄叫びを上げながらソウゴを睨むと、両腕のハンマーを振り下ろしてきた。

 

「たく、頭が二つあるせいで、うるささも二倍だな」

 

対するソウゴは、何処か鬱陶しそうな顔をしながら勢いよく跳び、《ダロス・ザ・クロスギガス》のハンマー攻撃を躱すと

 

「大人しくしてろ。でないと・・・テメェのハゲ頭を上手く料理できねぇだろうが」

 

《ダロス・ザ・クロスギガス》の両方の頭を刀で斬り刻んだ。

 

「す、凄い・・・」

 

「始めて使う武器の筈のなのにソウゴさん、使いこなしてる・・・」

 

使ったことのない筈の武器を手に入れてすぐに使いこなしているソウゴに圧倒されるハルトとコハル。

 

「そう言えば、お前たちには言ってなかったな」

 

その横でトウガが小さく笑みを浮かべながら話す。

 

「あいつの家、実は戦国時代に名を上げていた武士の家系なんだよ」

 

「はぁ!?それってつまり、侍の子孫!?」

 

「ああ、それであいつは小さい頃から、あいつの祖父の家で刀の構えや振り方について教わっていたんだ。だからこそ、SAOで始めて使う刀であっても、リアルで刀を使いこなしているあいつなら、ソードスキル発動に必要なモーションをほぼ完璧にこなすことができる」

 

「いや、だからといって、手に入れてすぐの武器を使いこなすなんて、できるわけ――」

 

「いや、SAOはモーションでソードスキルを発動させるんだ。リアルで培った経験がそのままゲーム内で反映されてもおかしくはないさ。それよりも、俺たちも早く加勢するぞ。いつまでもソウゴに任せっ切りなわけにはいかないからな」

 

リズベットは未だ納得してない顔をするが、トウガの言う通り、いつまでもソウゴ一人に《ダロス・ザ・クロスギガス》の相手をさせるわけにはいかないので、メイスを取り出し、攻撃に加わった。

タンク役をトウガやソウゴ、赤ずきん装備に着替えたアスナをはじめとする回避特価型の軽装備プレイヤーが引き受けてくれたお陰で、遂に《ダロス・ザ・クロスギガス》のHPをレッドまで削り切った攻略組。

 

「後、一撃!」

 

「これで終わらせるぞ!ソウゴ!」

 

「ok、止めは任せろ」

 

アスナの言葉と同時にトウガが《ダロス・ザ・クロスギガス》の足元に攻撃し体勢を崩す。

そして、既に攻撃体勢に入っているソウゴに止めの指示を出した。

 

「これで止めを刺す」

 

そう言うと、ソウゴは刀を鞘に戻し、腰に鞘を当てながら構えると、そのままの姿勢で《ダロス・ザ・クロスギガス》の首元の宝石目掛けて跳びかかった。

 

「ヴォーーー!!」

 

体勢を崩した《ダロス・ザ・クロスギガス》はこちらに迫ってきているソウゴを叩き落とそうと、ハンマーを持っている左腕を振り上げる。対するソウゴも構えを崩すことなく、《ダロス・ザ・クロスギガス》に接近し、そして――

 

「――っ!」

 

それは一瞬の出来事だった。

両者が交差し合う瞬間、何が起きたのか誰にも分からず、気づいたらソウゴは刀を抜いたまま後ろに着地し、《ダロス・ザ・クロスギガス》は左腕を振り下ろしていた。

誰もが事の結末を見守る中、ソウゴは左手で鞘を持つとゆっくりと刀を鞘に戻した。その直後

 

「ヴォ!?」

 

首元にあった宝石が真っ二つに斬られ、《ダロス・ザ・クロスギガス》も上半身が真っ二つになりポリゴン状に四散した。

居合斬りのソードスキル<(せい)(りゅう)(ざん)>。ソウゴが放った居合の一撃は、すれ違う瞬間に見事《ダロス・ザ・クロスギガス》の首元を捉え、弱点である宝石ごと真っ二つに斬った。

 

『勝ったーーー!!』

 

犠牲者無しの勝利に喜びの声を上げる攻略組。

 

「お疲れ、ソウゴ」

 

「ああ、キッチリ決めてやったぜ、リーダー」

 

互いに一言掛け合い、パン!とハイタッチするトウガとソウゴ。

その横でアスナがリズベットに歩み寄り、話しかけた。

 

「リズベットさん!さっきはありがとうございました!でも、どうしてここに・・・?」

 

「あんた達が行った後、とあるおせっかいな奴がやって来てね。『ボス戦にはその武器が絶対に必要だから急いで持っていってくれ』って頼まれたわけ。丁度その時、ソウゴの刀もギリギリ完成することができたし、正に一石二鳥ね!」

 

「完成することができたって、この一週間でアスナの武器だけじゃなく、俺の刀も作ったのか?」

 

「あったりまえでしょ!あたしは鍛冶師(スミス)。装備を必要としている人がいれば、どんなに難しい作業でもこなして、一刻も早く届けてやるのが筋ってモンよ!」

 

そう言いながら、ソウゴに向けて笑みを浮かべるリズベット。

ソウゴはしばらくの間自身の刀を見つめていたが、やがてリズベットに向かって頭を下げた。

 

「ありがとよ、リズベット。お前は俺にとって最高の鍛冶師(スミス)だ。この恩は絶対に忘れない」

 

「気になさんな。その代わり、またうちに依頼しに来なさいよね」

 

頭を下げ、感謝を述べるソウゴをリズベットはリピーター狙いの発言をしながらウィンクで返した。

すると、アスナがリズベットをスカウトしようと彼女に話しかけた。

 

「・・・リズベットさん。KoBの専属スミスになってもらえませんか?」

 

「・・・気持ちは嬉しいけど、やめとくわ。あたし、自分のお店持ちたいし、組織に属するのって、なんか堅苦しそうだから」

 

「そうですか・・・」

 

スカウトを断られ、少し残念そうな顔をするアスナ。

 

「でも、友達としてならいいわよ。なってあげるわよ。あんたの専属スミスに!」

 

「リズベットさん・・・ありがとうございます!これからよろしくお願いしますね」

 

「違うでしょ。あたしはあんたの友達として専属スミスになったのよ」

 

「!?」

 

リズベットの言葉にアスナは一瞬ハッとした表情になったが

 

「うん!これからよろしくね、リズ!」

 

友達になった自身の専属スミスに笑顔で応えた。

その笑顔はキリトと別れて以来、久しぶりに見せた彼女の最高の笑顔だった。

その後、彼女は「血盟騎士団」の面々(ついでにハルトとコハルも)と共に二十八層へ向かい、それを見届けたリズベットも二十七層の圏内に戻ろうとした時、ソウゴがおずおずと話しかけてきた。

 

「あぁ・・・一ついいか?その・・・だな、今まで出会った鍛冶屋の中で、お前は腕がいいし、信用できる・・・だから・・・」

 

「もう!勿体ぶってないで、さっさと言いたいこと言いなさいよ!」

 

リズベットの強気な姿勢に思わず怯むも、ソウゴは意を決したように言った。

 

「お前を・・・アスナみたく、俺の専属スミスにして欲しい」

 

「・・・最初っからそう言いなさいよ。ほら!あたしの専属スミスになるんだったら、あんたもアスナみたいにリズって呼びなさい!」

 

「あ、あぁ、分かった」

 

リズベットの豪快な姿勢に押されながらも、ソウゴはリズって呼ぼうとしたが

 

「あー・・・あ・・・?」

 

口を開こうとした瞬間、何故か声が出ず、何やら戸惑っている様子のソウゴ。

いつまでリズって言う気配がなく、リズベットが怪訝そうな顔をしたその時、ソウゴは突如地面に膝を付き、更に両腕も地面に付けながら頭を下げた。

 

「すんません。やっぱり、リズベットって呼ばせてください」

 

「ソウゴが土下座しただと!?」

 

滅多に、というか始めて見たソウゴの土下座にトウガは思わず叫んだ。

対する頭を下げられたリズベットは、戸惑いながらも「べ、別にいいわよ・・・!」と言いながらソウゴに頭を上げるよう促した。

ソウゴは頭を上げ、立ち上がりながら先程感じた不思議な感覚について考えた。あの時、彼女のことをリズって呼ぼうとした瞬間、自分は何故、あそこまで差恥感を感じたのかと。

理由については良く分からなかったが、なんにせよ、これで用は済んだと、ソウゴは思考を切り替えて仲間たちの所へ戻ろうとしたが、リズベットに肩を掴まれ制止させられた。

 

「それじゃあ、あんたの専属スミスとして、早速だけど・・・あんたの防具を作るから、それに必要な素材を取りに行くわよ!」

 

「・・・は?」

 

リズベットが言ったことが理解できず、ソウゴは疑問の声を上げる。

 

「は?じゃないでしょ。あんた、そんな軽装備でこのまま戦ってたら死ぬわよ。あんたの友達として専属スミスになったんだし、友達をそんな状態で最前線に送らせるわけにはいかないでしょ?」

 

「待て待て待て、いくらなんでも急過ぎねぇか!?確かに、こんな軽装備でフィールドを歩くのは良くねぇが、専属スミスになってからの展開が早すぎて心の準備ってモンが・・・第一勝手に行動することをトウガが許可してくれるかどうか・・・」

 

確かにボス攻略の途中で甲冑が壊れた為、今のソウゴの装備は金属が一切含まれていない軽装備となっているが、流石にボス戦が終わってすぐに素材集めは少しきつすぎる。

ソウゴは急過ぎる展開に戸惑いつつも、何とかこの場を凌ごうとしたが、ソウゴの言葉を聞いたリズベットがギルドリーダーのトウガに彼を連れていってもいいか許可を取ろうとした。

 

「ねぇ、あんたとこのロクでなし。特別に安い価格で防具作ってあげるから、しばらく借りてもいいかしら?」

 

「そうだな。どの道、こんな装備で最前線に出すわけにはいかないし、物のついでだ。思う存分使ってやってくれ」

 

「トウガ!コノヤローーー!!!」

 

ギルドリーダー(トウガ)の裏切りに思わず叫ぶソウゴ。

 

「ほら!リーダーからの許可も取ったことだし、早速行くわよ!」

 

そう言うと、リズベットはソウゴの服の襟を掴み、そのまま引っ張りながら部屋の出口に向かった。

その姿は某任○堂オールスターゲームXの○空の使者でDDKに無理やり引っ張られるFXやそうめんの姿を連想させた。

 

「あー・・・もう、どうにでもなれ・・・」

 

引っ張られていくソウゴは半ば諦めの表情でリズベットに連れて行かれるのであった。




・'あれら'
もはや人扱いしないトウガ

・<静流斬>
オリジナルスキル。SAOIFだと刀の星4スキル。本編でも描かれてた通り、居合斬りのソードスキル。

・某任○堂オールスターゲームX
発売から既に13年も経っている驚愕の事実。作者の中では一番に好きなシリーズでもある。


以上で二十七層編終了となります。
この後の番外編ですが、アンケートの結果、キリトさんランドとカオスランドが同率でしたが、ここはカオスランドにさせていただけます。それと、ブライダルイベント(二年目)のストーリーを基にした現状カップリング確認回の二本立てとなります。
というわけで次回、アリスランド(エイプリルフールイベント)をモチーフにしたストーリー、カオスランドをお送りします。

二十七層編終了後見たい番外編は?

  • ネージュのクリスマス
  • キリトさんランド
  • クライン&紅の狼の肝試し大作戦
  • アリスランド改めカオスランド
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