ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
ハイスクールD×Dにハマってしまい、そちらを優先してたら、すっかり6月になっていました。
原作ルート最初の話は赤鼻のトナカイです。サチ及び「月夜の黒猫団」の運命はどうなるのか・・・それでは、どうぞ!
ep.34 月夜の黒猫団
二十七層攻略からしばらく経った日の夜。
アスナとコンビを解散して以降、ずっとソロで活動してたキリトはこの日、とあるギルドに誘われ、祝いの席に参加していた。
「それじゃあ!我らが恩人、キリトさんに乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
「か、乾杯・・・」
キリトが助けたギルド、「月夜の黒猫団」の明るい雰囲気に押されながらキリトはグラスを挙げた。
「いや~まさか、攻略組の有名なソロプレイヤー、キリトさんに助けてもらえるなんて、夢にも思っていなかったですよ」
「ホントだよ!レアってレベルじゃないよな!」
「えっと・・・君たちは俺のことを知っているのか?」
「はい!ハルトさん達や紅の狼の皆から聞いたんです。知り合いに、黒い服に片手直剣一本で戦う凄腕の剣士がいるって」
「ハハハ、凄腕ね・・・(あいつら、人のことをペラペラ喋りやがって・・・)」
あながち間違っていないが、人のことを勝手に話したハルトやトウガ達にキリトは心の中で悪態付いた。
そんなこと思っているキリトをよそに、ケイタの話は続く。
「俺たちは普段は前衛を一人だけにして、後は隙を付いて後ろで攻撃するスタイルで戦っているんだ。前までは前衛にサチも加えた編成で行こうと思ってたんだけど、前に一緒にパーティーを組んでくれた紅の狼のトウガから『サチは今のままの、相手の隙を付いて槍で攻撃するスタイルで戦った方がいいと俺は思う。彼女の槍の熟練度はかなり高いが、それ以外に関しては低すぎる。今から最前線に通用するレベルにまで上げるのは非現実的だ。何より、彼女の性格からして彼女に前衛は向いてない。無理にスタイルを変えるより、それ一つを上げることに集中した方が効率はいいと俺は思うな』って言われて、そのスタイルで戦ってみたら、戦闘がスムーズに進むようになってさ。今はそのスタイルで戦っているんだ」
「へぇー、そうなのか」
ケイタの話を聞いたキリトは、黒猫団の面々の性格や特性を見抜いた上で、彼らの戦闘スタイルを指摘したトウガの観察眼に感心していた。
すると、ケイタがおずおずとキリトに話しかけてきた。
「あの~キリトさん、一つお願いがあるんですけど、いいですか?」
「あぁ、いいぞ。後、キリトでいいし、敬語もいらないよ」
「そうか。じゃあさ、キリト。しばらくの間だけでいいから、僕たちのギルドに入ってくれないかな?」
その質問にキリトは目を見開いたが、平常心を取り戻しながら勧誘の理由を問う。
「理由を聞いていいかい?」
「俺たちも、いずれは攻略組と一緒に最前線で戦うことを目標にしてるんだけど、この通りまだまだ未熟な所が多くて・・・この間も最前線に来たのは良かったけど、結局足を引っ張っちゃってさ。だから、攻略組のソロプレイヤーであるキリトに、最前線に通用するレベルでいいから僕たちを鍛えて欲しいんだ」
ケイタの言葉を聞いて、キリトはしばらく考えていた。
彼らは自分の事は知っているが、自分がビーターと言われていた事は知らない。もし、自分がビーターだと知った時、彼らは自分を拒絶するのだろうか。そんな不安が頭によぎった。
けれども、攻略組入りする為に努力し続ける彼らの思いに応えてやりたいという気持ちも、キリトにはあった。
それに、しばらくの間だけでいいと言った。ならば、最前線に出ても死なないレベルにまで鍛え上げる時間は充分にあるか。そう思ったキリトはケイタに向けて口を開いた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて入れてもらおうかな」
キリトがそう言うと、黒猫団の面々全員が笑顔になった。
別の日、キリトを含む黒猫団の面々はとある層の平原に来ていた。
「攻略組、第二十八層突破かぁ・・・凄いよな、二十七層が突破されて二週間しか経ってないのに、もう突破したんだな」
新聞の記事を読みながら、ケイタは感心しながら呟く。
「ねぇ、キリト。僕らと攻略組の違いってなんだと思う?」
「そうだな・・・情報力かな?あいつらはよく効率のいい狩り場とか独占したりするだろ・・・勿論、それだけじゃないと思うけど・・・」
そう答えるキリトに対して、ケイタは「うーん」と悩みながら言った。
「僕は意志力だと思うな。例えば、紅の狼の皆とかそうだろ」
「紅の狼かぁ・・・そう言えば、彼らも黒猫団と同じ五人編成のギルドだったな」
「でも、同じ少数ギルドなのに、彼らは攻略組の一員として常に最前線にいるだろ。何回か彼らとパーティーを組んだことあるけど、一人一人の強さは勿論、きちんと連携が取れていて、バランスがいいだろ。きっと、絶対にクリアするぞっていう、そう言った意志が強いからだと思うんだ」
「うーん・・・トウガ達ならまだしも、それ以外はな・・・」
特に最近のDKBは、前回の二十七層のボス攻略で一部のDKBプレイヤーが他のギルドを出し抜こうと単独でボスに挑んだりなど、やや暴走しがちなところがある。
もし、さっきのケイタの言葉をトウガ達が聞いたらなんて言うのだろうか。苦笑いして聞いているのか。それとも、真っ正面から否定するのか。
そんなことを思いながら、キリトはケイタの話を聞いてるのであった。
夜、キリトは黒猫団の面々にバレないよう、一人こっそりと宿から出た。
その訳はこっそりレベリングをするためである。
今は中層にいるが、いずれ最前線に戻った時に他の攻略組のプレイヤーに付いてこれないとなれば、キリトにとって溜まったもんじゃない。
いつものように圏内を出て、最近通っている狩り場に向かうキリト。すると、見覚えのある三人の人物を見つけ、足を止めた。
「ん?あれは・・・」
フィールドで戦っている少女とそれを見守っている二人の少年。三人共、キリトの知り合いであり、内一人は同じギルドのメンバーである。
「ヤァ!」
槍を持った少女、サチの放った一撃が辺りにいた複数のエネミーをポリゴンに変えた。
「ど、どうだったかな・・・?」
「・・・まだ、動きにぎこちないところがあるが、大分マシにはなったぞ」
サチに向かって答えるソウゴの評価を聞いて、サチは少しだけ笑みを浮かべた。
「やったね、サチ。ソウゴ君のマシはかなりいい方ってことだよ」
「勘違いすんな。前よりかは少し素早く動けるようになっただけで、まだまだな所はいっぱいあるんだよ。次はそこら辺を指導してやっから覚悟しとけ」
「はい、頑張ります」
好評なコノハに対して、厳しく評価するソウゴにサチは特に嫌な顔をせず素直に頷いた。
その様子を遠くから見ていたキリトは気になって三人に話しかけた。
「サチ、それにソウゴとコノハ。三人して何やってんだ?」
「き、キリト!?びっくりした・・・」
サチは驚いた様子でキリトを見て、隣でソウゴがキリトの質問に答える。
「俺は頭下げてまで強くなりたいって言ってきたこいつの面倒を見てんだよ。コノハはその付き添いだ。お前こそ、こんな夜遅くにまで何やってんだ?」
「俺はレベリングだよ。今は黒猫団の皆と一緒に戦ってるけど、いつか最前線に戻った時に、いつでも強敵と戦えるよう、きちんと強化しておかないといけないからな」
ソウゴにそう言ったキリトは、今度はサチにのみ質問する。
「それにしても、意外だったな。君がソウゴ達に頼んでまで強くなろうとしてたなんて。どうして、そこまでして強くなりたいと思ったんだ?」
「うん・・・」
キリトの問いに、サチは顔を少し俯かせながら喋る。
「今までの私は、いつか訪れるかもしれない死の恐怖に、ただ怯えてばかりで、いつ死んでもいいように、《録音クリスタル》に歌を記録したりしてたの。でも、コハルやコノハ達がどんなに辛くても、最後まで諦めないで生きようって勇気をくれた」
「だから」と、サチは真剣な表情でキリトを見据えながら喋る。
「私は強くなりたい。今はまだ、足を引っ張ってばかりだけど、いつか必ず、私に生きる勇気くれた人達に、その恩を返せるように」
「(へぇー)」
サチの真っ直ぐな瞳を見て、キリトは感心した。
正直、キリトは驚いていた。黒猫団の中で一番臆病そうに見える彼女がこうも強くなろうとしていた。
おそらく、コノハやソウゴ、ハルト達などの多くの人達との出会いが彼女に勇気を与えてくれたのだろう。
きっと彼女は・・・いや、黒猫団はこれからも強くなれる。いずれ、攻略組に仲間入りして、共にボス攻略に挑めるくらいまでに。その時が来るのを楽しみにしてようとキリトは思った。
そう・・・あの日が来るまでは・・・
・時系列
二十七層攻略からおよそ二週間程度経っている感じです。
・原作との違いその1
黒猫団の面々はハルト達や「紅の狼」を通して、キリトの事は少しだけ知っている(あくまで少しであって、キリトがビーターと呼ばれていた事は知らない)。
・原作との違いその2
サチが最初から槍使いとして活躍している(原作だと本人の意見も碌に聞かず、前衛を任されそうになり、そのせいでサチが脱走したが、この時空ではトウガの口添えもあって、サチが転職してない)。
・原作との違いその3
サチ強化。(下手すれば、黒猫団の前衛の人(名前忘れた)よりも強いかもしれない)
ようやく突入したアインクラッド編原作ルート。
基本的に原作に沿った話になりますが、一部オリジナル要素もあるのでお楽しみに。
次回はいよいよあの場面です。サチ及び黒猫団の運命は・・・!?
P.S 5月で『ソードアート・オンライン IF』一周年を迎えました。尚、この時期に作者は別作品の小説を執筆するという。