ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
ディアベルから頼まれた依頼を一通りこなしたハルトとコハルは、宿にチェックインを済ませたら、《トルバーナ》の街を歩いていた。
街中は明日のボス攻略に参加するプレイヤーばかりで、
「うん?あの人は・・・」
街中を歩いていたハルト達は、ふと目に付いたある人物を見て、足を止める。
その人物とは、先の攻略会議で真っ先にキバオウのしようとしたことを真っ先に止めようとした人物であり、彼の他にも3人の人物が立っていた。
「あのー、すみません」
「ん?あんた達は・・・」
ハルトに声を掛けられ、振り向く少年たち。
視線の先には、最初にキバオウに異議を唱えた人物トウガの他に、茶髪の少年と黒髪で穏やかな雰囲気の少年。そして、キバオウに元βテスターとビギナーの違いを唱えた青年ザントがいた。
「初めまして、僕はハルト。こっちはコハルって言います。あなた達、先程の会議でキバオウさんに異議を唱えてた人たちですよね?」
「だったら、なんだってんだぁ?」
キバオウをかばっていると感じたのか、敵意を出してきたザントを見て、慌てて誤解を解こうとするハルト。
「誤解しないでください。ただ、あの人のしようとしたことを止めてくれたお礼を言いたいだけです」
「なるほど・・・確かにあのまま止めなければ、元βテスターはビギナー達から批判の的になってただろうしな。おっと、自己紹介がまだだったな。俺はトウガ。ギルド紅の狼のギルドリーダーだ。それと、こっちの二人は・・・」
「ソウゴだ。まぁ、よろしくな。んで、こっちの見た目がひ弱そうで実はかなり強いのがコノハだ」
「ひ弱そうって・・・初めまして、コノハです。よろしくお願いします」
ソウゴとコノハと握手するハルトとコハル。
「他にも後、二人いるんだけど、俺たちと違って、まだSAOに慣れていないから、今回のボス攻略には参加しないで別の街に待機させているんだ」
二人の少年を紹介したトウガは、ザントの方に顔を向けた。
「最後にギルドのメンバーじゃないけど、今回のボス攻略で俺たちとパーティーを組むことになった・・・」
「ザントだ。まっ、ボチボチやるさ」
そう言いながら、ハルトとコハルに握手するザント。
「・・・あれ?」
ザントの手を握ったコハルが、不思議そうな顔をしながらザントを見た。
「なんかザントさんって、どこかで見たことあるような・・・」
「あぁ?何言ってんだお前。お前と会ったことなんて・・・いや、待てよ・・・」
コハルの言葉に怪訝そうな顔をしてたが、何か思い出したのか表情を変えた。
「あぁ、あの時のカップルか」
「「カップル!?」」
ザントのカップル発言により、顔を赤くするハルトとコハル。その後ろではトウガとソウゴが面白そうな表情で見ており、何故かコノハも顔を赤くしていた。
「か、カップルって・・・ゴホンっ!そ、そんなことよりも、あなただったんですね。βテストの時にわ「わぁーー!コハル、ストップ!」むぐぅ!?」
顔を赤くしながらも続きを喋り始めたコハルだが、ある一言を出したことで、ハルトに口を抑えられた。
コハルの口を抑えながら、ハルトはかなり焦った表情でトウガ達を見たが、彼らはというと
「別に俺たちは気にしてないから安心してくれ。ザントからもさっき元βテスターだって、教えてもらったし、
その言葉を聞いて二人は安堵した。よくよく考えたら、そんな考えの持ち主なら、攻略会議の際に真っ先にキバオウがしようとしたことを否定しないだろう。
そんな感じのことをトウガに言うと
「まぁ、この世界には色んな人がいるしな。けど、ああいうのは良くないと思ったから、同じビギナーとして注意したんだけど・・・」
「気にすんなよトウガ。あいつらは自分たちの弱いところを否定して、他人のせいにしてるだけだしな」
「そ、ソウゴ君。流石にそれは言い過ぎだよ・・・」
場が少し暗くなる。
「と、ところで、ザントさんってβテストでは黒髪じゃなかったですか?」
場の空気を変えるべく、ハルトがザントに質問した。
「あぁ、元のアバターがそうだったな」
「元のアバター・・・ということは、この白い髪がリアルの髪型なんですか?」
「そうだが、なんか問題でもあんのかよ?」
「い、いいえ!特に問題ありません」
そんな感じのやり取りをした後、ハルト達は彼らと別れた。
「この世界にも色んな人がいるんだね」
「うん、そうだね・・・」
コハルの言葉に、歯切れ悪く返すハルト。
昨日、今日とで多くの人と出会い、どのプレイヤーもそれぞれの信念を持っていることを知ったハルト。
どれが正しくて、どれが間違っているのかは、まだ分からない。
だが、今はまず目の前の目標だと結論付けたハルトは、明日のボス攻略に備えるべく宿に戻った。
翌日。《探求の草原》
攻略組はディアベルに先導されながら、プレイヤー達は迷宮区に向かうべく、フィールドを移動していた。
「スイッチだ!ハルト!」
「ハァーーー!」
キリトに言われるがままにスイッチを発動して、前方のネペントを切り裂き、四散させる。
ふと、隣を見ると
「す、スイッチ!」
「・・・」
コハルの掛け声と共にレイピアでオオカミのエネミーを突き飛ばし、そのままポリゴン状に四散させるフードの女性。
「す、すごいね、あの人・・・」
「うん、早さだけじゃない。ブレがなく、正確にエネミーの弱点を付いている様子から、細剣(レイピア)の熟練度がかなり高いと思う。でも、そんなすごい人なら有名になってもおかしくないはず・・・」
フードの女性のスキルの高さに思わず感心するコハルと、高いスキルを持っていながら、最前線で有名になっていないことに疑問を持つハルト。
「中々やるだろ、あのフェンサーさん」
そんな二人に声を掛けるキリト。
「ねぇ、キリト。あんなにすごい人なのに、僕らはあの人のことを聞いたことがないんだ。どうして、今まで噂とかにならなかったのか知ってる?」
「まぁ・・・あのフェンサーさん、毎日のように迷宮区に潜り込んでいて、最低でも三日も潜り込んでたって話だよ」
「「三日!?」」
キリトの言葉に驚く二人。
迷宮区に三日も潜り込むなんて、正気の沙汰じゃない。攻略を進めていけば、途中でポーションが切れそうになったり、疲れが溜まったりするから、普通は数時間経てば街に戻り、迷宮区に籠るというのは、三日どころか一日以上籠ることすら至難の業だ。
「まぁ、流石に疲れが溜まってたのか、俺が見つけた時には倒れてな。そのままにしておくわけにもいかなかったから、俺が迷宮区の外まで運んで、ボス攻略会議のことを教えて、今ここにいるって感じかな」
キリトがフードの女性のことについて話していると
「何をしているの?もう皆、先に行ってるわよ」
フードの女性がそう言い、そのまま攻略組の方に向かった。
「ひとまず、話は後だ。行こうぜ」
ハルトとコハルもキリトの言葉に従い、攻略組の後を追うのだった。
その後、何とか迷宮区にたどり着き、迷宮区でも難なく突破した攻略組はついにボス部屋の前にたどり着いた。
巨大な扉を前に、ディアベルを中心にプレイヤー達が集合する。
ディアベルはプレイヤー達の顔を見回すと、真剣な表情で口を開いた。
「俺から言うことは1つだけだ・・・勝とうぜ!」
『おお!!!』
ディアベルが先陣を切ってボス部屋に入り、それにプレイヤー達が続いた。
ボス部屋の中は暗く、大広間だった。プレイヤー全員が立ち回るにも十分な広さである。
プレイヤー達が扉をくぐると、部屋に明かりが灯り、大広間最奥の玉座に腰掛けていたボス《イルファング・ザ・コボルドロード》が立ち上がった。
通常のコボルトの何十倍はあろうかという巨大なコボルト。右手に巨大斧、左手に盾を携えている。通常のコボルトより赤く、太っているかのように見える体は、筋肉の塊そのもので、その筋力でボスは巨大な斧を楽々と担ぎ上げる。
続いてボスの前に
「総員!突撃ぃーーー!!」
『うおーーー!!!』
ディアベルの掛け声と共に、プレイヤー達が一斉にボスに向かっていく。
キリトとフードの女性も後に続く。
「スイッチ!」
「やぁーーー!」
キリトの掛け声と共にレイピアでコボルドを突き飛ばし、そのまま四散させるフードの女性。
「コハル!僕たちも。スイッチ!」
「任せて!」
ハルトの掛け声と共に、コハルは短剣でコボルドを切り裂き、そのまま四散させる。
センチネル担当であるキリト達のパーティーは順調にコボルドを倒していった。
一方、ボス担当の方も攻略は順調だった。
「A隊、下がれ!B隊、前へ!」
ディアベルの的確な指示の下、攻略組は攻撃、防御を繰り返し、順調に《イルファング・ザ・コボルドロード》のHPを削っていた。
「次!H隊、前へ!」
ディアベルの掛け声と共に前に出てきたのは、「紅の狼」の三人とザントだった。
トウガは右手に片手直剣、左手に盾。ソウゴは両手に槍。コノハは右手に短剣。ザントは右手に片手直剣を持ちながらボスの前に立った。
「連携を崩すなよ。ボスの持っている斧は強力だが、避けることも防御することもできない攻撃ではない。隙を見つつ、攻撃しろ」
「「了解!!」」
トウガの指示に従い、行動し始める「紅の狼」の二人。
《イルファング・ザ・コボルドロード》がトウガ達に向かって斧を振り下ろすが
「ふんっ!」
トウガが左手に持っている盾で防ぐ。
その隙に、ソウゴとコノハがそれぞれ左右から
「はぁ!」
「やぁーーー!」
持っている武器で《イルファング・ザ・コボルドロード》の両足を攻撃する。
両足を攻撃され、体制を崩した《イルファング・ザ・コボルドロード》。
「ザント!」
「任せろぉ!」
その隙を付いて、トウガとザントは同時に剣を振り、《イルファング・ザ・コボルドロード》に攻撃した。
攻撃された《イルファング・ザ・コボルドロード》は、そのまま後ろへ押し出され、HPのゲージが残り一本になった。
いける!
誰もがそう思った瞬間、《イルファング・ザ・コボルドロード》は突然、雄叫びを上げ、持っていた巨大斧と盾を捨てた。
事前情報では《イルファング・ザ・コボルドロード》はHPをある程度削ると武器を曲刀(タルワール)に変えてくると説明されていたので、おそらく武器を変えるモーションを行っているのだろう。
「よし!H隊、後退!C隊、前へ。俺も出る!」
ディアベルがH隊を後退させて、自身の隊のメンバーと共に自ら前に出た。
そんな中、《イルファング・ザ・コボルドロード》は背中にあった武器を引き抜いた。
「「「「!?」」」」
この時、《イルファング・ザ・コボルドロード》が引き抜いた武器を見て、違和感を感じたものがこの場に四人いた。
「(あれは・・・本当にタルワールなのか?)」
一人目はハルト。遠くてよく見えないが、曲刀にしてはやけに細いと感じた。
「(タルワールって確か、イスラム圏の・・・だが、あれは・・・)」
二人目はトウガ。自分の知っている曲刀と若干違っている。
「(あの刀・・・どっかで見覚えあるぞ・・・)」
三人目はザント。《イルファング・ザ・コボルドロード》が持っている刀を見て、どこかで見たことがあると思っていた。
三人がそれぞれ感じた違和感に膠着している中、ディアベルが仕掛けたが
「だめだ!全力で後ろに飛べ!」
四人目の違和感を感じた人物、キリトがディアベルに向かって叫んだ。
だが、ディアベルが後退する前に《イルファング・ザ・コボルドロード》が素早い動きでディアベルに近づき、持っていた刀、野太刀でディアベルを切り裂いた。
「ぐぁーーー!」
切りつけられたディアベルが後ろに吹き飛ばされ、更に追撃を掛けるように《イルファング・ザ・コボルドロード》がディアベルに向かってきた。
「!!」
「あ、ハルト!!」
ハルトは咄嗟に飛び出した。
後ろからコハルの声が聞こえた気がしたが、ハルトはそれに構わず、ディアベルの方へ走った。
《イルファング・ザ・コボルドロード》が倒れているディアベルに迫り、追撃を行おうと野太刀を振り下ろした瞬間
「させるかーーー!」
ハルトがディアベルの前に出て、野太刀を剣で受け止めた。
「うおーーー!」
一歩遅れて、キリトも前に出て野太刀を剣で突き上げた。
武器を突き上げられた《イルファング・ザ・コボルドロード》は後ろに後退し、その隙に二人はディアベルをを安全な場所に移動させた。
「ディアベル。何故、あんな無茶を?」
安全な場所に移動したキリトがディアベルに問う。
「お前も・・・元βテスターなら分かるだろ・・・」
「!?・・・ボスのLA(ラストアタック)ボーナスか・・・」
LAボーナス。それはエネミーに止めを刺したプレイヤーが稀に貰えるもので、貰えるものは大量のコルやレアな武器などがある。
「俺は、攻略組のリーダーだ・・・みんなを守っていくには知識だけじゃダメなんだ・・・俺自身も強くなれないと、この先・・・誰も守ることができない・・・だから・・・俺は・・・」
「ディアベルさん・・・」
ディアベルの言葉には一つ一つ悔しさが含まれているのをハルトは感じた。
リーダーとして、元βテスターとして自分の責務を全うすべく、彼はボスのLAボーナスを取りにいったのだろう。
だが、結果はこの通り。自身は危うく死に掛け、周りもリーダーが倒されてパニックに陥っている。状況は最悪だった。
「頼む・・・二人共・・・ボスを倒してくれ・・・俺はまだ動けない。くそ!」
HPこそゼロにはなっていないが、スタンの状態になったディアベルを見て、二人は立ち上がった。
「行こう・・・ボスを倒しに!」
「ああ!」
ハルトの言葉に答えるキリト。更にそこに
「私も一緒に行くわ。あなたのパートナーだから」
フードの女性がそう言いながら、フードを引き剝がした。
その人物はやはり女性。いや、正確にいえば少女であった。
栗色のロングヘアーを持つ美しい少女にキリト達は目を奪われていたが、すぐに前を向いた。
「よし、行こう!」
三人は《イルファング・ザ・コボルドロード》に向かって走り出した。
《イルファング・ザ・コボルドロード》はこちらに向かってくる三人を見ると、「グォォォーーー!」と吠えながら、野太刀を三人に向けて振り下ろしたが
「ふん!」
キリトが剣で《イルファング・ザ・コボルドロード》の攻撃を防いだ。
その隙を付いて、ハルトと少女が《イルファング・ザ・コボルドロード》に攻撃した。
しばらくは、その工程の繰り返しだったが、ピンチは突然起きた。
《イルファング・ザ・コボルドロード》の攻撃を防いでいたキリトだったが、《イルファング・ザ・コボルドロード》の上かと思いきや、下から上に切りつけるフェイント攻撃に対応できず、攻撃をまともにくらい、後方に飛ばされた。
「あっ!」
吹き飛ばされたキリトを見て、一瞬目を逸らす少女。
その隙を付いて、《イルファング・ザ・コボルドロード》が少女に向けて野太刀を振り下ろしたが
「おおーーー!」
雄叫びと共にエギルが両手斧で攻撃を防いだ。
「回復し終えるまで、俺たちが支える!これ以上、あんたらだけに負担をかけさせるわけにはいかねぇ!」
エギルの言葉を聞いてキリトの方に向かう少女。
少女に回復してもらいながら、キリトは《イルファング・ザ・コボルドロード》の前に立っているエギル達に大声で叫んだ。
「ボスは全方位攻撃を使う!囲まないで正面から受け止めて攻撃するんだ!」
『おう!分かった!』
キリトの忠告に返事で返すエギル達。
一方、キリトの忠告を聞いたトウガに一つの考えが浮かんだ。
「あのボスの全方位攻撃とやら。彼の言葉を聞くとおそらく、強力な技だろう。だとすると・・・」
そう考えていたトウガだったが、《イルファング・ザ・コボルドロード》が今までとは違うモーションをした。
それを見たトウガは咄嗟に動き出した直後、《イルファング・ザ・コボルドロード》がエギル達に全方位攻撃を放った。
全方位攻撃によりエギル達は吹き飛ばされたが、《イルファング・ザ・コボルドロード》も動きが鈍った。
「やっぱり、強力な攻撃をするとその分、隙ができるよな!」
その隙を付いて、トウガが<レイジ・スパイク>で攻撃をした。
「うおーーー!」
「やぁーーー!」
更に、ソウゴが<コンヴァージング・スタブ>。コノハが<カーヴ>で《イルファング・ザ・コボルドロード》に攻撃する。
三人の攻撃により、怯んだ《イルファング・ザ・コボルドロード》を見て、ハルトは今自分が持っているソードスキルの中で一番強力なソードスキル<ヴォーパル・ビート>を放った。
「はぁーーー!」
強力な五連撃のソードスキルが《イルファング・ザ・コボルドロード》のHPを削る。
HPはゼロになっていないが、これだけ削れていればハルトにとって十分だった。
「今だ!二人共!」
ハルトの言葉と共に前に出るキリトと少女。
「アスナ、頼む!一瞬でいい!」
キリトの掛け声に少女アスナは《イルファング・ザ・コボルドロード》が野太刀を振り下ろす前にレイピアで《イルファング・ザ・コボルドロード》を突き刺した。
「うおーーー!」
続いてキリトが叫び声と共に、剣で《イルファング・ザ・コボルドロード》の体を一気に切り裂いた。
キリトの攻撃をくらい跳ね上がった《イルファング・ザ・コボルドロード》はそのまま地面に倒れ、その体をポリゴン状に四散させた。
辺りが暗くなり、センチネルもポップしなくなったことで静寂が続いたが
『うおーーー!勝ったぁーーー!』
《イルファング・ザ・コボルドロード》が四散したことで無事にボスを倒したと察したプレイヤー達は勝利の雄叫びを上げた。
「お疲れ様」
「やったね、キリト」
疲れが溜まったのかその場に座り込んだキリトに声を掛けるアスナとハルト。
二人の言葉を聞いて立ち上がったキリトに、エギルとディアベルが声を掛ける。
「コングラチュレーション。見事な戦いだった」
「ありがとう、キリトさん。ボスを倒してくれて」
「いや・・・」
ぶっきらぼうに言いながらも、ディアベルが差し伸べた手を握り返そうとした瞬間
「なんでだよ!!」
突然鳴り響いた叫び声でその場にいる誰もが静まり返った。
「なんで、ディアベルさんを見殺しにしようとしたんだ!」
そう叫んだのは、ディアベルと同じ隊のメンバーの一人であり、彼の背後にも仲間がいたが、全員憎らし気にキリトを見ていた。
「待ってください!キリトさんはハルトと一緒にディアベルさんを助けようとしてたんですよ!何もそこまで言うことないじゃないですか!」
「それは結果の話だろ!現にそいつはボスのソードスキルを知っていた。最初から伝えていれば、ディアベルさんが危険な目に合うこともなかった!」
コハルがキリトを庇おうと抗議したが、相手はそれを聞いてはくれない。
彼の言葉に周りがざわめき始める中、一人のプレイヤーが口を開いた。
「オレ、俺知ってる!こいつ元βテスターだ!だから、ボスの攻撃を知ってたんだ!知ってた上で隠してたんだ!自分がボスのLAを取るために!」
「馬鹿かテメェは?」
プレイヤーの言ったことを否定したのはザントだった。
「ボスの情報はβテストの情報って攻略会議で確認しただろ。こいつが元βテスターだったら、その知識は攻略本と同じだろ。んで、こいつがあの武器の対策を知っていたのは、似たようななエネミーを上で見たからだろ」
「それは・・・あ、あの情報そのものが嘘だったんだ!あの鼠だって元βテスターだ!タダで本当のことを教えるわけないだろ!」
その言葉が響いた直後、周りから「マジかよ・・・」「俺たちは騙されてたのか・・・」「くそ!出てこい、、元βテスター!」など元βテスターに対する敵意が漂った。
ザントはそんな彼らの様子を見て「猿どもが・・・」と悪態づいた。
ハルトは焦っていた。この状況をどうにかしないと、このままでは元βテスター全員がビギナー達の糾弾の対象になりかねない。
「あんたね・・・」
「やめるんだ皆。彼は・・・」
同じことを思ったのか、アスナとディアベルが前に出て口を開いたが、キリトが両手で制した。
「元βテスターの連中と俺を一緒にしないでくれるか」
その言葉に、誰もがキリトの方を向いた。
「確かに、βテスターの連中は千人いたが、それらのほとんどは素人だったよ。でも、俺は違う」
キリトは冷ややかな笑みを浮かべた。
「俺はβテストで誰も到達できなかった層まで登った。ボスの攻撃を知っていたのもザントの言う通り上の層で同じ武器を使うエネミーと戦ったからだ」
「なんだよそれ・・・もう、チートだろ、そんなの・・・」
一人のプレイヤーの言葉に周りから「チーターだ」やらの声が聞こえたが、聞こえた声の一つ、'ビーター'という言葉に反応するキリト。
「いいね、ビーター。気に入ったよ、俺は今日からビーターだ!」
そう言いながら、キリトは《イルファング・ザ・コボルドロード》からドロップした黒コートを装備した。
「二層の門は俺がアクティベートしてやる。死ぬ覚悟があるやつだけ付いてくるんだな」
その言葉を最後に、キリトはボス部屋奥の扉を押し開け、そのまま奥に消えていった。
辺りにまたもや静寂が続いた。
「キリトさん。なんで、あんなことを・・・」
「・・・キリトは僕たちを。いや、全ての元βテスターの人たちを守るために、自分が悪者になるようなことをしたんだ。ビギナー達の憎しみを他の元βテスター達に向けさせないために・・・」
キリトのしたことは、ハルトにはお見通しだった。
彼はビギナー達の憎しみを自分一人が受け止めることで、他の元βテスター達への憎しみを少しでも和らげようとした。
そんなキリトの決意に沈黙が続いたが、二人の隣にいたアスナがゆっくりと口を開いた。
「・・・私、彼を追いかけるわ。まだお礼を言ってないし」
アスナが二人に向かって呟いた。
すると、それを聞いたエギルが近づいてき、アスナにキリトへの伝言を頼む。
「俺から伝言頼む。次のボスも一緒に攻略しようぜって」
「僕らからもお願いします。また一緒に戦おう。それと、困ったときはいつでも頼ってくれって」
「分かったわ。しっかり伝えるから」
エギルとハルト達の伝言を聞いたアスナはキリトを追いかけようとしたが、またもやアスナに声を掛ける者がいた。
「ちょい待ってんか」
後ろから聞こえた制止に足を止め、振り返るとキバオウがいた。
「その・・・ワイからも・・・伝言頼む。今日は自分らに助けてもらたけど、ワイはやっぱり認められん。ワイはワイのやり方でクリアを目指したるって」
そう言うと、キバオウはディアベルのところに戻った。
「・・・分かったわ」
キバオウの伝言を聞いたアスナは、今度こそキリトを追いかけるべく扉の奥に消えていった。
「さて・・・問題はこれだけじゃないな」
エギルが呟きながら、ディアベル達が集まっている方を向く。
「な、なんでだよ、ディアベルさん!なんでリーダーを降りるんだよ!?」
「すまない、俺にはもう皆を導く資格はない」
ディアベルのリーダー降板の宣言に最初にキリトを糾弾した人物は叫ぶ。
「俺は俺の身勝手な行動のせいで、皆に迷惑をかけてしまった。その上、俺は欲を優先してボスのLAを取ろうと迂闊に前に出てしまった」
「それは・・・そもそも、あのビーターが・・・」
「結果的に、俺が皆よりも自分のことを優先した事実には変わりないよ」
ディアベルの言葉に俯く男。
すると、彼と入れ替わるように、キバオウがディアベルに問い掛ける。
「それじゃ、これから誰があんさんの変わりに攻略組のリーダーになるんや?」
「・・・リーダーはリンド。それと、キバオウさんの二人に任せたい。だが、その上で頼みたいことがある」
ディアベルは真剣な表情でキリトを糾弾したリンドとキバオウを見て話した。
「この先もキリトさんの力を借りることは必ず出てくる。その時に、彼を糾弾せずにきちんと受け入れてほしい」
「!? ディアベルさん、それは・・・」
「彼の戦力は貴重だ。この先、皆で生き残るためにも・・・頼む!」
ディアベルの願いを聞いたリンドとキバオウは、しばらく無言だったが、それぞれの答えを言った。
「分かった。ディアベルさんがそう言うなら・・・」
「ワイらはあんさんが戻ってくるのを待っとる。それまでにリーダーの役目は預からせておくわ」
二人の言葉にディアベルは「ありがとう」と言うと、そのままボス部屋の入口から出ていった。
それに続いて、キバオウ達も部屋から出始めた。
「俺も仲間のところに戻る・・・そのー、あまり気に病むな」
エギルが仲間と共に部屋を出る。
「・・・俺たちも出よう。二人にもボスを倒したことを報告しないと」
「そうだな・・・あまり、気持ち良くねぇけどな」
「うん・・・」
「・・・」
エギル達に続いて、「紅の狼」の面々とザントも部屋から出て、部屋に残ったのはハルトとコハルの二人だけとなった。
「僕らも出よう、コハ「(どさっ!)」・・・ル?」
部屋から出ようとコハルに呼びかけようとしたハルトだが、コハルがいきなり抱きついてきて困惑する。
「ごめんね、ハルト。君がディアベルさんを助けようとした時、私は足がすくんで動けなかった」
コハルは涙を流しながら、話を続けてた。
「もし、私が動けなかったせいで、仲間が・・・君が死んでしまったら・・・私・・・」
「コハル・・・」
コハルの気持ちは痛いほど分かった。
自分も、もし自分のせいで誰かが死ぬようなことがあれば、一生後悔するだろう。先程、自分のことだけを優先して後悔したディアベルみたいに・・・
「私、もっと強くなりたい!キリトさんやアスナさん。紅の狼の皆やザントさんみたいに!」
「うん、そうだね・・・強くなろう。あの人たちに負けないくらい」
自分たちが憧れている人たちを超える。
このデスゲームの世界で、少年と少女はまた新たなる目標を見つけた。
こうして、SAO初のボス攻略は代償はあったものの、死者ゼロで攻略することができた。
・ソウゴ
オリキャラの一人。イメージは「機動戦士ガンダムSeedDestiny」のシン・アスカの髪を茶色にして、目つきを「ガンダムビルドファイターズ」のレイジにした感じ。CV鈴村健一。目つきが鋭く、近寄りがたい雰囲気を持つが、ギルドの仲間たちには優しく、思いやりのある少年。
・コノハ
オリキャラの一人。イメージは黒髪に黒目と、どこにでもいそうななろう系主人公の感じ。(一番近いのは「ありふれた職業で世界最強」の南雲ハジメ覚醒前)CVは下野紘。内気な性格の少年で、ギルドのメンバーが揉め事を起こそうとしても、止められずにオドオドするタイプ。
・<コンヴァージング・スタブ>
槍の星3スキル。前方の敵に突きをするスキルで、槍の星4が少なければ、使うこともある。
・<カーヴ>
短剣の星1のスキル。短剣をただ振るだけ。クエストをこなせば簡単に手に入る。
・<ヴォーパル・ビート>
初期の片手直剣の星4スキル。五連撃のスキルで威力は高いがその分、隙が大きい。
・「なんでだよ!!」
「なんでや!」だと思った?残念!「なんでだよ!!」でした!
・キリトビーター化
どの世界でも彼がビーターになる運命は変えられない。
・ディアベル攻略組、脱退
当日、このシーンを見た時、こうきたかーと思わず感心してしまった。
文字数10000越え。ホワァ!!?
やはり、戦闘シーンがあるととめっちゃ長くなる・・・
次回は第二層編。プログレッシブの内容とSAOIFのストーリーが混ざったストーリーになっております。(当然、SAOIFで登場しなかったあの鍛冶屋も登場します)
ぜひ、楽しみにしてください。
※誤字報告&謝罪
ep.2の話の途中で別の小説を読みながら執筆したせいなのかハルトの名前が私の読んでいた小説(同じSAOの二次小説)の主人公の名前になっており挙句、内容もその小説の話と似たような内容になってしまい、その小説の作者及びその小説を読んだことのある読者に困惑や不快な思いをさせてしまったことを謝罪します。もし、ご要望があれば、すぐさま書き直しますので、何卒、メッセージを送ってください。