ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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・めちゃくちゃどうでもいい小話
最近、とある小説の影響(ヒント:私のお気に入り小説に入っている)でゆゆゆにハマっています。ちなみに、私の推しはそのっちです。


ep.37 悲しき決闘

2023年12月24日。

この日はクリスマスイブで、街中はクリスマスで賑わっており、多くのプレイヤーが騒いでいる。

しかし、こんな日にも関わらず、賑わっている街中を暗い顔で歩いている一人のプレイヤーがいた。

そのプレイヤーは噴水広場のベンチに座り、時間が過ぎるの待つ。

すると、一人の女性がベンチの後ろに近づき、背中ごしに話しかけてきた。

 

「噂で聞いたゾ。随分無茶なレベル上げしてるじゃないカ」

 

「・・・新しい情報は無いのか?」

 

「金を取れる情報は無いナ」

 

「情報屋の名が泣くぜ」

 

ベンチを通して背中越しで会話するキリトとアルゴ。

アルゴはキリトの顔を見ないまま話を続ける。

 

「クリスマスイブ。つまり、今日の夜にイベントボス《背教者ニコラス》が、あるモミの木の下に出現すル。有力ギルドも血眼で探してるってサ」

 

「なら、早く行かないとな。蘇生アイテムは一つしかない。急がないと、他のギルドに取られる」

 

そう言って、ベンチを立ったキリトは、《背教者ニコラス》が出現すると思わしき場所へ向かおうと歩き出す。

そんな彼の背中に、アルゴが顔を険しくさせながら問い掛ける。

 

「お前・・・マジでソロで挑む気カ?」

 

「・・・さぁな」

 

「・・・死ぬゾ」

 

その言葉を聞いたキリトは、一瞬足を止めたが、すぐさま歩き出した。

 

 

 

 

SAOで死者が復活することは有り得ない。

だが、クリスマスイブの今夜のみに出現するフィールドボス《背教者ニコラス》は、倒したら死んだプレイヤーを蘇生することができるアイテムをドロップすると言われていた。

そんな噓かどうか分からない噂を信じながらキリトが向かったのは、三十五層にある《迷いの森》だった。

僅かな情報を頼りにフィールドボスがいると思わしき場所へ向かうキリト。

すると、前の方から複数人の足音が聞こえ、キリトは背中の剣に手を当てながら警戒する。

足音はだんだん近づいてきており、同時に薄っすらと複数の人影が見えた。その集団の先頭にいる人物がハッキリ見えた瞬間、キリトの目は見開かれた。

 

「やぁ、キリト。久しぶりだね」

 

「・・・ハルト」

 

予想外の人物の登場に驚きながらも、キリトは久しぶりに顔を見た友の名前を呼んだ。

 

 

 

 

キー坊を止めてほしい。数時間前にアルゴから頼まれたハルトは、コハルには内緒で三十五層の《迷いの森》を探索していた。その途中でクライン達「風林火山」の面々と遭遇し、彼らと一緒に行動することになった。

クライン達と一緒に《迷いの森》を探索して数時間後、ハルトは遂にキリトを見つけた。

 

「お前たちがここにいるってことは、お前たちも蘇生アイテムを手に入れようとしに来たのか?」

 

「違うよ。ここに来たのは、君を止めるためだよ、キリト」

 

「俺を止めるだと・・・?」

 

ハルトの言葉に目を細めるキリト。

 

「いったい何を止めるつもりだ?俺が《背教者ニコラス》にソロで挑むことか?それとも、俺に蘇生アイテムを取らせることか?」

 

「正解は前者だね。君が蘇生アイテムを取ることは止めはしない。でも、一人でボスに挑もうとするのは、流石に無謀過ぎると思うな」

 

「余計なお世話だ。相変わらず、お前のお人好しっぷりには呆れさせられるな。でも、これは俺一人でやらなきゃならない問題なんだ」

 

「うん、そう言うと思ったよ」

 

うんうんと頷きながら、ハルトはストレージからあるアイテムを取り出して、それをキリトに見せた。

その瞬間、キリトの目が見開かれた。

 

「!? それは・・・!」

 

「さっき、クライン達と一緒に倒した《背教者ニコラス》からドロップしたんだ。強さは中層のボスくらいだったから、そんなに苦戦はしなかったよ」

 

ハルトの手元にあったのは、まさしく今キリトが求めている蘇生アイテムだった。

それを見たキリトは、驚きながら蘇生アイテムを見つめていたが、突如背中にある剣に手を当てながら殺気を含んだ顔で口を開く。

 

「・・・そいつを俺によこせ。さもないと・・・!」

 

「おい、キリト!それは――」

 

キリトのしようとしてることを察したクラインが声を上げる。

無論、キリトも分かっていた。自分のやろうとしていることは完全な脅迫及び強奪。オレンジプレイヤーのやる事と同じ犯罪行為であることが。

 

「分かっているさ。それ(・・)がどういうことを意味するのか。でも、俺は何としてでも蘇生アイテムを手に入れる。例え、他のプレイヤーを殺すような事をしてでも・・・!」

 

しかし、それでもキリトは剣を抜いた。例え、罪を犯してでも叶えたい願いがあるから。

 

「・・・本気なんだね」

 

本気で実力行使で蘇生アイテムを奪い取ろうとするキリトを見て、ハルトは一つの提案をする。

 

「だったらこうしよう。僕とデュエルで戦って、勝ったらこの蘇生アイテムを君に渡す。それでどう?」

 

「・・・突拍子で思いついたって割には、随分落ち着いているな。こうなることを予想してたのか?」

 

「元々、君にソロで挑ませるのを防ぐために来たんだ。だったら、君がソロでボスに挑む前に、先にこっちでボスを倒しちゃおうって思ってね。そうすれば、君に無茶な事をさせないで済むしね」

 

そう言って、微笑むハルトに対して、キリトは呆れて言葉が出なかった。

初めて出会ってから一年以上経つというのに、未だこの少年のお人好しには慣れない。その上、無駄に賢く、こちらの思考を完璧に読んだ上で提案してくるから、余計に質が悪い。

そう思いながら、キリトは一歩前に出た。

それを見て、ハルトはウィンドウを開き、キリトにデュエルの申請をすると、後ろで事の成り行きを見守ってたクラインに声を掛けられる。

 

「ホントに大丈夫かよ?ハルト」

 

「大丈夫。勝負は一撃決着でいい?」

 

「構わない。行くぞ」

 

デュエルの申請を受諾したキリトは、すぐさま猛スピードでハルトに接近し、彼に向けて剣を振り下ろした。

それに対して、ハルトは即座に背中にある剣を抜いて、キリトの攻撃を防ぐ。

 

「いきなりだね。挨拶代わりにしては、少し過激過ぎないかな?」

 

「その余裕、すぐに崩してやるよ!」

 

強気になりながらも、キリトは剣を横に振るい、ハルトはそれを後ろに跳んで躱し、カウンターを仕掛けるが、それを防ぐキリト。

しばらくの間、剣戟が繰り広げられたが、キリトの剣を振るうスピードが上がっていき、ハルトは徐々に押されていった。

それもそのはず。《全属性使い(オールラウンダー)》のハルトは、あらゆる武器を使いこなしているが、様々な武器を鍛えている反面、それぞれの武器の強さを均等になるよう強化しているから、一つの武器のみを集中的に鍛えている相手とは相性が悪い。

そのため、レベルはほぼ同じの二人だが、二人が使用している片手直剣の熟練度は、キリトの方が上であるため、ハルトは苦戦を強いられていた。

 

「どうした!?俺を止めるって言った割には押されているな!」

 

「・・・やっぱり、片手直剣の腕と熟練度だけじゃ、君の方が上か・・・なら!」

 

単純な片手直剣の腕だけでは分が悪いと判断したハルトは、一度キリトから距離を取り、クイックチェンジで手持ちの武器を細剣に変えた。

 

「これなら君の速さに追いつける」

 

そう言いながら、ハルトは細剣で突き、それをキリトは防ぐ。

片手直剣よりも比較的軽い細剣に持ち替えたことで、剣を繰り出すスピードも互角になった。

再び激しい剣戟が繰り広げられ、何度目かの鍔迫り合いになった時、キリトが口を開いた。

 

「あの時、俺は黒猫団の皆を見殺しにして、サチを一人ぼっちにさせてしまった!だから、俺は必ず黒猫団の皆を生き返らせる!これ以上、サチを一人ぼっちにさせないために!」

 

「それが蘇生アイテムを手に入れようとしている理由か!?」

 

「そうだ!それこそが、俺のせいで何もかも失ってしまったサチへの贖罪だ!」

 

「違う!サチはそんなことを望んでなんかない!半年間、黒猫団の皆と一緒に過ごした君が、どうしてそれを分かってやらないんだ!」

 

「知った風な口を・・・聞くな!」

 

激情したキリトは、剣を両手に持って、ハルトに突進する。

対するハルトは、冷静にキリトの動きを観察すると、クイックチェンジで片手直剣に切り替え、突進するタイミングを見計らって剣を振り上げ、キリトが持っていた剣を弾き飛ばした。

 

「くっ!」

 

剣を後ろに弾き飛ばされたキリトだが、ハルトの追撃を回避しながら、剣が飛ばされた場所へ跳んだ。

そうはさせまいと、ハルトはキリトに接近する。

 

「(させない!これで決める!)」

 

止めを刺すべく、ハルトはクイックチェンジで再び細剣に切り替え、キリトを突こうとする。

その判断が間違いだったと気づいたのは、その直後だった。

剣が飛ばされた場所へ着地したキリトは、落ちている剣を拾った瞬間、腕を思いっきり振り上げた。

始めからハルトが細剣に切り替える瞬間を狙っていたかのように、キリトが振り上げた剣は、ハルトが持っている細剣を上に弾き飛ばした。

 

「しまっ――!」

 

今度は自分の武器を飛ばされて、思わず声を漏らすハルトだが、その直後、首筋に剣が向けられた。

正面にはキリトがいて、少しでも動けば刺すという意図が込められた顔をしながら口を開く。

 

「《全属性使い(オールラウンダー)》の弱点は、クイックチェンジで武器を切り替えようとする瞬間に、数秒のタイムラグができることだ。例え、攻撃速度が速い細剣で攻撃しようと、その切り替える数秒があれば、対処はできる。お前の手元に武器はもう無い。俺の勝ちだ」

 

「・・・だね」

 

ハルトは負けを認め、ストレージから蘇生アイテムを取り出した。

 

「約束はちゃんと守るよ。これが、君が欲しがっていた蘇生アイテムだ・・・君の望みが叶うかって言ったら、別だけどね」

 

そう言いながら、ハルトは蘇生アイテムをキリトに渡した。

ハルトの言葉に疑問を抱きながらも、キリトは渡された蘇生アイテムを手に持ち、説明が書かれたウィンドウを開く。

 

「っ!?」

 

そして絶句した。

 

『このアイテムのメニューから使用を選ぶか、手に保持して、蘇生プレイヤー名を発声する事で、対象プレイヤーが死亡してから、その効果光が完全に消滅するまでの間(10秒以内)ならば、対象プレイヤーを蘇生させる事ができます』

 

「これを読んだ時、僕もショックだったよ。でも、死んだ人間は生き返るはずがない。少し考えれば分かることだった」

 

そこに書いてあったのは、どんなに足搔いても、決して変えることのできない残酷な事実だった。

しばらく啞然としてたキリトだったが、突如大きな声で叫び出した。

 

「分かってた!死んだ人間を生き返らせる。そんな都合のいいアイテムが存在するはずが無いんだって!でも、少しでも可能性があるのなら、俺はこれをサチに渡して、少しでも彼女に償いをしたかった!」

 

キリトは嘆いた。自分と関わったせいで死んでしまったギルドの仲間たち。一人だけ生き残り、何もかも失ってしまった少女。それら全てが、自分のせいで起きてしまったその絶望と後悔を。

本当なら、一人ぼっちになったサチの傍にいるべきだった。でも、できなかった。'ビーター'である自分の傍にいたら、今度はサチが死ぬかもしれない。自分のせいで、また誰かが犠牲になってしまうのが怖かったから。

 

「俺は忘れていたんだ。自分が'汚いビーター'だってことを。それをいいことに、俺は黒猫団の皆に甘えて・・・そして、彼らを殺してしまった!俺が自分のことをビーターだと言ってれば、彼らを危険な目に合わせることも、一人生き残ったサチに辛い思いをさせることはなかった!あの日、黒猫団の皆じゃなく、俺が死んでいれば――っ!?」

 

感情を爆発させていたキリトだったが、彼の叫びを黙って聞いていたハルトに頬を殴られ、雪が積もる地面に倒れた。

呆然としながら顔を上げると、こちらを見下ろすハルトの姿が見えた。

 

「俺が死んでいれば?ふざけないで。君が死んでたら、それこそサチや黒猫団の皆は悲しんでたよ。自分の命が、黒猫団の皆よりも価値が無いって言うのなら、それは大間違いだ」

 

冷たく、けれども怒りを含んだ声で言いながら、ハルトはストレージから一つのアイテムを取り出し、呆然としているキリトに投げた。

キリトはそれをキャッチし、渡されたアイテムが何なのか確認する。投げ渡されたのは、《録音クリスタル》だった。

 

「それに録音されている言葉を聞くんだ。そして、確かめるんだ。一人だけ生き残ったサチが、君のことをどう思っているのか」

 

ハルトに再生するよう言われて、キリトは《録音クリスタル》を再生した。

 

『メリークリスマス。久しぶり、キリト。私は今、《はじまりの街》にある教会で、この世界に迷い込んじゃった身寄りのない子供たちのお世話をしています。色々大変だけど、それなりに楽しく過ごせているから心配しないで。それと・・・蘇生アイテムの事は聞いたよ。キリトが私の為に命懸けで取りに行こうとしていることも。私思うんだ。キリトは優しいから、きっと自分を責めて、今まで以上に無茶をすると思う。でも、私はそれを望みません。もしそれで、キリトが死んでしまったら、私だけじゃなく、キリトの周りにいる人達も悲しむから。これ以上、私みたいな想いをする人は見たくないから。きっと、ケイタ達もそれを望んでいないと思う。だから、どうかこれ以上自分を責めないで。これからも、誰かのために頑張れるキリトでいてください。私も頑張るから。最後までこの世界で生きて、自分がこの世界に来た意味を、私自身の答えを見つけるから』

 

メッセージはここで終わった。

 

「サチ・・・」

 

サチのメッセージを聞き終えたキリトは、《録音クリスタル》を強く握りしめながら涙を流していた。

ハルトが泣いているキリトに近づきながら呟く。

 

「サチはね、望んでいなかったんだ。罪滅ぼしの為に君が無茶することも、君が自分を責めることも。ただ、君に生きていて欲しいだけなんだ。それは僕も同じ・・・」

 

ハルトはキリトの前に立つと、苦しそうな顔で言う。

 

「君の気持ちが分かるなんて言うつもりは無い。でも、お願いだ。これ以上、この世界の犠牲にならないでくれ。死んだ人間は、もう二度と戻らないんだから・・・!」

 

「うぅ・・・!俺は・・・俺は・・・!」

 

キリトはその場で泣き続けて、ハルトとクライン達はキリトが泣き止むまで彼の傍にいた。

その後、泣き止んだキリトは、蘇生アイテムをハルトに返し、「もし、お前の身近にいる奴が死んだら、そいつに使ってやってくれ」と言い残して、《迷いの森》を去った。

その様子をハルトは無言で見守っていると、クラインが話しかける。

 

「もう、大丈夫なんだよな?キリトの奴・・・」

 

クラインが不安そうな表情で言う横で、ハルトは微笑みながら口を開いた。

 

「大丈夫さ。彼ならきっと、乗り越えられるさ」

 

ハルトは信じていた。キリトならきっと立ち上がれる。そして、いつかもう一度、彼と一緒に戦える日がやって来る。

そう信じながら、ハルトは夜が明けて、暗い《迷いの森》を照らす朝日を見つめた。




・キリト(原作主人公)VSハルト(SAOIF主人公)
何気に本家SAOIFでは未だに実現されていないという事実(まぁ、修行の一環で模擬戦みたいなことはしたことあるけど)

・キリトが蘇生アイテムを取ろうとした理由
原作ではサチが死に際に言った言葉を確かめるためでしたが、この小説では、一人ぼっちにしてしまったサチへの贖罪になっています。また、この小説ではサチが原作より逞しくなった為に、サチの脱走イベントが起きてないので、キリトはサチを守るという約束をしていません。


主人公(ハルト)、約一年ぶりの登場
マジで久しぶり過ぎるだろ・・・私がどれほど投稿を休んでいたのかが伺えますね。
少しネタバレになりますが、この後は原作のストーリーを基準に進めていくため、ハルトの出番はキリトや他のオリキャラ達と比べると少ないです。4周年経っても未だにスキレコや新規一枚絵が無いSAOIF主人公かよ・・・
次回はシリカ回です。前回も言いましたが、執筆は既に終えているので、明日投稿する予定です。
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