ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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今回からオリジナル回が続きます。


ep.41 5人で「紅の狼」

アインクラッド第四十七層《思い出の丘》

ここでは現在、フィールドボスと戦っている五人のプレイヤーがいた。

フィールドのボスである巨大蜘蛛は、その巨体を活かして目の前にいるプレイヤーに体当たりを仕掛ける。

 

「おらっ!」

 

だが、その巨大蜘蛛の突進を一回り大きい盾を持ったカズヤが防いだ。

お互いの力は五分であり、どちらも相手を押し倒そうと足に力を入れて地面に踏ん張っている。

 

「ウォォォォォォ!!」

 

カズヤは雄叫びを上げながら、腕や腰に力を込める。

そして、遂に均衡が崩れ、巨大蜘蛛がカズヤの盾に押され始めた。

このままではマズいと思ったのか、巨大蜘蛛は前足二本を動かして、カズヤに突き刺そうとしたが、その横から刀を持ったソウゴが接近する。

 

「フッ!」

 

ソウゴの一閃は、巨大蜘蛛の二本足を切り落とし、巨大蜘蛛を怯ませるには十分だった。

 

「ハッ!」

 

「そこっす!」

 

更に、青い戦闘服を着て、首に紺色のマフラーを巻いているコノハと赤い戦闘服にサスペンダー付きのズボンを履いたレイスが<サーペント>で巨大蜘蛛の残りの足を斬り、足を失った巨大蜘蛛は最早動かぬ的となった。

そこに、止めを刺すべく黒い戦闘服を着て、黒髪に青メッシュを付けた少年、トウガが空中に飛んで、上から巨大蜘蛛に接近する。

だが、巨大蜘蛛は最後の悪足搔きと言わんばかりに、トウガ目掛けて尻から糸を噴出した。

 

「甘いな」

 

その糸をトウガは空中で体を捻らせることで躱し、その勢いのまま巨大蜘蛛の体に向けて短剣を投げた。

トウガが投げた短剣は、見事真ん中にヒットし、巨大蜘蛛は呻き声を上げながらポリゴン状に四散した。

それを確認したトウガは、ウィンドウを開き、ドロップしたアイテムを確認する。

 

「目的のアイテムは・・・よし、ドロップしているな。帰るぞ、四人共」

 

目的のアイテムがドロップされているのを確認したら、トウガは四人に声を掛けて、そのままギルドホームへ帰還するのであった。

 

 

 

 

二十層のギルドホームへ戻ったトウガ達は、会議室で今日手に入れたコルやアイテムの分配と今後の予定について話し合っていた。

会議は特に揉めたりすることなく順調に進み、明日五十層の迷宮区で必要なアイテムを手に入れると予定を立てた所で会議は終了し、それぞれ自由に行動し始めた。

 

「フゥー」

 

そんな中、トウガは自身の部屋に入り、部屋のベットに腰をかけながら一息ついていた。

ギルドリーダーになって一年以上が経ったが、リーダーというものは未だに慣れたものではない。それこそ、振る舞う相手が普段から普通に過ごしてきた幼馴染たちであるとしたら尚更だ。

疲れている様子のトウガだったが、ふと部屋の扉が開いて、そちらに視線を向ける。

 

「よっ、今日も中々のリーダーぷりだったぜ」

 

そう言って、部屋に入ってきたのは、装備していた鎧を脱いで、普段着の恰好をしているカズヤだった。

こちらに笑みを向けるカズヤに、トウガも自然と笑みを浮かべながら言葉を返す。

 

「わざわざ人を労いにくる体力があるなら、リーダーを変わって欲しいんだがな」

 

「それは無理だな。この役割程、お前以外に適切な奴はいねぇからな」

 

「はぁー・・・全く、いったい俺の何処に、お前らみたいな癖のある奴らを纏める程のリーダーシップがあるのやら・・・」

 

やれやれと言わんばかりの顔で言いながらも、それほど嫌とは思っていないトウガ。

そんなトウガを横目で見たカズヤは、視線を窓の外に向けながら口を開いた。

 

「俺たち、随分高けぇ所まで来ちまったな」

 

「・・・そうだな」

 

「俺らが攻略の為に必死に作戦を練ったり、命懸けでモンスターと戦う毎日なんて、昔じゃ到底考えられなかったよな」

 

「ナーヴギアを手に入れた頃は、一番になるとかそう言った目標は無かったからな。ただ、この五人でいつも通り過ごせればいい。そう思っていたが、今じゃ毎日モンスターと戦うことが、俺たちのいつも通りの日常になっているんだ。とんだ笑い話だよ」

 

普通に生きていれば、過ごすはずのない日常に軽く苦笑するトウガ。

すると、カズヤがトウガの方に顔を向けながら彼に問う。

 

「なぁ、トウガ。お前、俺と初めて出会った時の事って覚えてるか?」

 

「どうしたんだ急に?」

 

「ちょっと聞きたくなったんだよ。こうも忙しいと、普段覚えていることが忘れちまうかもしれないだろ。んで、どうなんだよ?」

 

「・・・忘れてないさ。何せ、俺たち(・・・)の始まりだからな」

 

そう言いながら、トウガはカズヤと出会った時を思い出す。

幼い頃のトウガこと神宮寺統夜は、今と変わらない優秀な学力や抜群の運動神経はあっても、今のような穏やかさは一切無く、他人と極力関わろうとはしなかった。実家の事情(・・・・・)もあり、統夜と言う少年は父親の英才教育の下で氷のように冷たく冷徹な人間に育てられた。

そんな統夜に寄り添ってきたのが、当時小3だった頃、クラス替えで同じクラスになったカズヤこと小笠原和真だった。

最初こそは、しつこく絡んでくる和真に嫌気を差していた統夜だが、彼の寛大な心に触れていく内に、何時しか彼に心を許すようになり、統夜にとって和真は親友とも言える関係になっていた。

 

「あれから翔斗、連弥、総司ってダチが増えていって、それなりに面白れぇ毎日を過ごしていたら、ある日突然俺たちの日常がゲームの世界に変わっちまってよぉ。慣れるまで色々大変だったけど、俺たちは俺たちらしく変わんねぇ毎日を過ごしていたら、いつの間にか、たった五人ぽっちの中学生が、この世界にいる奴らの命運を握る攻略組の一員になってんだ。ホント、人生何が起きるか分かったモンじゃないぜ」

 

「そうだな。でも、ここまで紅の狼が名を馳せるようになったのは、他でもないお前のおかげだ」

 

「俺か?」

 

トウガの言葉に顔をキョトンとするカズヤ。

 

「お前と出会わなかったら、紅の狼は生まれなかった。SAOに入る前の日に、皆でギルド名を決めようとした時に、お前が名付けた'真紅の稲妻のように早く、獣の群れように強く固い絆を持つ'それが、俺たち紅の狼だ。ありがとう、紅の狼(俺たち)を生んでくれて」

 

「・・・そう正面から言われると、照れるじゃねぇか」

 

「だが、噓偽りの無い俺の本音だ。お前がいて、ソウゴにコノハにレイス、そして俺がいて、初めて俺たちは紅の狼(俺たち)になれる。俺たち五人が紅の狼でいられるのも、あの日お前がその名前を名付けてくれたおかげだ」

 

「そっか・・・ありがとよ」

 

照れくさそうに微笑みながら礼を言うと、カズヤはトウガの前に拳を突き付けてきた。

 

「これからもよろしく頼むぜ、相棒」

 

「フッ・・・あぁ、勿論だ」

 

お互い笑みを浮かべながら拳を合わせるトウガとカズヤ。

これからもこいつらと一緒にいつも通りの日常を過ごして行きたい。そのためには、早くこのゲームを終わらせよう。そう決意を新たにするトウガだった。

 

 

 

 

翌日、昨日会議で決めた通り、トウガ達「紅の狼」の五人は五十層の迷宮区へ来ていた。

 

「思ってたよりも早く進んだな」

 

「前に来た時にマッピングは済んでいるからな。道さえ間違わなければ迷うことはないだろう」

 

ボス攻略で一度来た時に、ほとんどのマッピングを済ませていたため、トウガ達は迷うことなく迷宮区の奥へと進んでいく。

そんな中、ふとトウガが足を止めた。

 

「? なんだ?」

 

「どうした?トウガ」

 

急に足を止めたトウガに、カズヤが声を掛ける。

 

「いや、何か音が聞こえたような気がするんだが・・・」

 

そう言いながら、辺りを見渡すトウガ。

しかし、周りにはソウゴ達しかおらず、トウガ達のいる場所も何処か変わった様子はない。

気のせいかと思い、先に進もうとしたその時だった。

 

「!? レイス!」

 

咄嗟にカズヤがレイスの横に立って、彼に襲い掛かってきたトリケラトプス型のエネミーの攻撃を防いだ。

すぐさま、トウガが足の止まったトリケラトプスの体を短剣のソードスキル<デッド・ウェッジ>で斬り刻むと、トリケラトプスはポリゴン状に四散した。

突然の出来事だったが、誰も怪我をしないで済んだことに安堵する五人だが、その表情はすぐさま驚きに変わった。

なぜなら、部屋の先にある通路から、大量のトリケラトプスがこちらに向かって突進して来ているのだから。

 

「モンスター!それも、こんなにたくさん!」

 

「考古学者が見りゃ狂喜乱舞しそうな光景だな・・・!」

 

驚くコノハの横で、冗談混じりの言葉を漏らすソウゴだが、その表情は優れない。

それもそのはず、突進してきているトリケラトプスは、数十体ぐらいいて、いくら「紅の狼」が最前線で活躍するギルドとは言え、これだけの数を相手するのは容易ではない。

 

「迎撃するぞ!」

 

それでも、トウガは迎え撃つべく、武器を構えながら突進してくるトリケラトプスの集団に突っ込んでいき、手前まで来たところでジャンプをして、トリケラトプスの群を飛び越えた。そして、着地と同時に<ラジオナイフ>で攻撃範囲内にいたトリケラトプスと全てポリゴンに変えた。

他の四人も武器を構えて、部屋に入ってきたトリケラトプスの集団と交戦し始める。

初めは余裕を持って戦っていた五人だったが、一向に減らない敵の数に、徐々に苦戦していった。

 

「全然減らないっす!」

 

「次々と湧いてきているな。しかも、こいつら妙に血の気が多いな。いくら理性の無い獣とは言え、こっちから仕掛けて無いのに、こうも興奮するもんなのか?」

 

次々とトリケラトプスを倒していきながらも、一向に減らない状況に疑問を持ち始めるソウゴ。

それはトウガも同じだった。

 

「(いったい何が起きているんだ?さっきの物音といい、突然襲い掛かってきた大量のモンスター・・・まるで、こうなるように誰かが意図的に仕組んでいる感じがする・・・)」

 

思考を巡らせながらも、次々と襲ってくるトリケラトプスを斬っていくトウガ。

その時、部屋の先にある通路の奥から、薄っすらと人影が見えた。

 

「!? そこか!」

 

トウガは腰に仕舞っている予備の短剣を人影が見えた方へ投げた。

短剣は壁の方に突き刺さり、その影に隠れていた黒ポンチョの人物の驚いた姿が見えた。

 

ダっ!

 

すると、気づかれた黒ポンチョの人物は、一目散に逃げ出した。

 

「逃がさん!」

 

「おい、トウガ!」

 

トウガは周囲にいるトリケラトプスを斬り刻むと、カズヤの制止も聞かず一目散に追いかける。

カズヤも慌ててトウガの後を追い、他の三人も出遅れつつも二人を追う。

トウガはひたすらに黒ポンチョの人物を追いかけて、曲がり角を曲がったその時だった。

 

「!?」

 

「トウガ!?」

 

足元の床が突如パカッと開き、そのことに気づいた時には、トウガは下へ落ちていった。

後ろから来たカズヤも、目の前にいたトウガが突然落ちたことに動揺したせいで、上手く止まることができず、そのまま奈落へ落ちていった。

残りの三人は距離があったおかげで、何とか落ちずに済んだが、トウガとカズヤが底が全く見えない奈落へ落ちたことで焦っていた。

 

「大変っす!トウガさんとカズヤさんが下に落ちちゃたっすよ!」

 

「くっ!すぐに二人の所に行くぞ!」

 

いち早く我に返ったソウゴは、コノハとレイスに指示を出しながら、下に落ちた二人を探すべく、その場から走り出した。

落ちた二人は無事なのか?落ちた先に、良からぬ事が起きなければいいが。そんな不安が頭によぎりながらも、ソウゴはトウガとカズヤを探すのであった。




・カズヤの新装備
五十層以降のカズヤは、「アンダーテール」のアンダインのような鎧を身に纏っている。

・コノハの新装備
五十層以降のコノハは、「テイルズオブシンフォニア ラタトクスの騎士」のエミルのような恰好をしている(コラそこ!中の人ネタって言わない!)。

・レイスの新装備
五十層以降のレイスは、「テイルズオブシンフォニア」のロイドのような恰好をしている。

・トウガの新装備
五十層以降のトウガは、「精霊幻想記」のリオ君みたいな黒い戦闘服を着て、黒髪に青メッシュを付けている。

・「紅の狼」の結成秘話
実はこれを考えたの三日前です。というより、この小説を書き始めた頃、ギルド名の由来なんて一切考えず、ただ適当に決めました(ポンコツ)


今回はトウガとカズヤの過去及び、「紅の狼」の結成秘話でした。
そして次回、衝撃の展開が・・・!

<オマケ>
最近、他の小説の作者さんが画像メーカーサイト、ピクルーでオリキャラの一枚絵を作っていたのを見て、私もピクルーで「紅の狼」五人のイメージ画像を作ってみました。
※各キャラごとに使用しているメーカーはそれぞれ違います。ですので、キャラのデザインとかに違和感を感じたりするかもしれませんが、ここはどうか温かい目で見守ってくれたら幸いです。

・トウガ/神宮寺統夜(使用メーカー:はりねず版男子メーカー)

【挿絵表示】

※五十層以降

【挿絵表示】


・ソウゴ/須野田総司(使用メーカー:ぬるメーカー)

【挿絵表示】

※五十層以降

【挿絵表示】


・コノハ/葉山翔斗(使用メーカー:少年少女好き?)

【挿絵表示】


・カズヤ/小笠原和真(使用メーカー:どこでも立ち絵メーカー)

【挿絵表示】


・レイス/藤井連弥(使用メーカー:きゅんショタメーカー)

【挿絵表示】
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