ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
ソウゴ達が必死に探している一方、落とし穴に落ちた二人は、互いの安否を確認する。
「大丈夫か?カズヤ」
「なんとかな・・・大分深いとこに落ちたな」
トウガの無事を確認したカズヤは、辺りを見渡す。
二人がいる場所は薄暗い部屋の中であり、特に目立った物は置いてなかった。
落下によるダメージで減ったHPを回復した二人は、ひとまず出られる場所を探そうと動いたその時だった。
シュ!
「!?」
自身に目掛けて飛んできた矢をトウガは短剣で斬り落とした。しかし、その矢が囮だと気づいたのは、直後に再び矢を射る音が聞こえた時だった。
シュ!
「!? マズい!」
再び放たれた矢は、今度はトウガの足元に向かって飛び、一本目を防ぐ事に集中してたトウガは、咄嗟に飛んできた二本目には反応が遅れてしまい、右足に矢を食らってしまった。
そして、その矢が何なのか。それが分かったのは、自身の体が突如倒れて、動かなくなったと感じた時だった。
「グッ・・・!」
「トウガ!大丈夫か!?」
「大丈夫・・・いや、大丈夫じゃないな。狙ってたかのように放たれた麻痺毒付きの矢・・・この手を使う奴らと言ったら・・・!」
心配するカズヤの方を見ず、トウガは倒れたまま目線を矢が飛んできた方に向けた。
そこにいたのは、黒いポンチョに身を包んだ男だった。男の手には弓が握られていて、先程の矢はその弓を使って撃ったのだろう。
「どうやら、ここに、罠を仕掛けておいて、正解、だったな」
更に別の方向からも声が聞こえて、振り向いたら、そこには赤い眼が特徴的な仮面を付けた男と頭に黒いレザーマスクを被った男が佇んでいた。
トウガはその人物たちに見覚えがあった。いや、ありすぎた。二十層で彼らと遭遇して以来、今も尚、多くのプレイヤー達に恐怖を植え付けている最悪のレッドギルド。
「ラフィン・コフィン・・・!」
「久しいな。お前は、確か・・・トウガ、だったな」
二人いる男の内、かつて二十層でトウガと戦った赤い眼の仮面を被った男、ラフコフの幹部《赤眼のザザ》がトウガに向けて口を開いた。
トウガは《麻痺》で動けない体を動かそうとしながら、今までの状況を踏まえて推理した彼らの作戦を口にした。
「攻撃してないのに突然暴れ出したモンスターの群れ、こちらをおびき寄せるための囮。そして、釣った相手を落とし穴で落として、その先で待ち伏せ・・・全部お前たちの作戦通りってことか・・・?」
「その通り。お前は、俺たちの罠に、まんまと引っかかって、こんな無様を、晒す羽目に、なった」
ザザの言葉に、トウガは己の迂闊さを悔いた。
確かに、あの時は油断していたかもしれない。だが、それは言い訳にはならなかった。様子がおかしいと警戒して尚、迂闊に追いかけてしまった自分が悪いのだから。
「さて、お前には、二十層で斬られた、借りがある。俺の手で、直接殺してやりたい、ところだが・・・折角、仕掛けた罠を、全て使わないのは、勿体無い」
ザザがそう言った途端、ガタッと何らかの仕掛けが起動したような音が部屋に響いた。
「この迷宮区には、ゴーレムの研究を、してる施設が、存在していた。だが、研究は、失敗に終わり、ゴーレムは、そのまま放置された。そして、この部屋こそが、今もゴーレムが眠る、研究室だ」
そして、説明を終えた瞬間、部屋に明かりがついた。同時に部屋の隅に多数の水槽らしきものが立ち並んでいて、その中にはゴーレムが眠る様に佇んでいた。
そのゴーレムの目が一切に光り出した瞬間、部屋の水槽は次々と割れていき、中からゴーレムが次々と現れた。
現れたゴーレムの数は全部で20くらいおり、あっという間に二人を囲んだ。
「精々もがけ。イッツ・ショー・タイム」
そう言い残して、ザザは部屋から出ていき、他のラフコフの面々も後に続いて部屋から出た。
トウガはすぐにでも追いたかったが、動けない体に加えて、周りを囲む大量のゴーレム。絶体絶命としか言いようのない状況に、トウガは顔を顰める。
すると、カズヤが剣と盾を構えながら、トウガの前に立った。
「こいつらは俺が相手する。その間にお前はこのクソったれな状況を打開するための方法を考えてくれ」
「!? 無茶だ!これだけのゴーレムをお前一人で相手するなんて!」
「うるせぇ!無茶でも何でも、ここでやらなきゃ男が廃るだろ!」
制止しようとするトウガの言葉を遮ると、カズヤは一回深呼吸をして、全身に力を入れながら叫んだ。
「来やがれ石ころ共!カズヤ様の一世一代の大見せ場だぁぁぁぁぁぁ!!!」
あらん限りの咆哮を上げながら、カズヤはゴーレムの群れへ突撃した。
ゴーレムの拳を盾で防ぎつつ、もう片方の手に持っている剣を振るって、二体のゴーレムをなぎ倒す。
当然、ゴーレム達はその隙を逃さず、数の差でカズヤを追い込んでいく。
「うぅ!」
何度か攻撃を防いでいたカズヤだったが、遂に体勢が崩されて、カズヤはゴーレムの拳を受ける。
それを筆頭に、カズヤはゴーレム達から体のあちこちに攻撃を受けてしまい、HPゲージが徐々に減っていく。
「ぐっ・・・負けるかよ!」
それでも、カズヤは諦めずに戦い続けた。自分の後ろにいる親友を守るために、ただひたすらに剣を振るい、盾で防いでいた。
しかし、ゴーレムの数が残り僅かとなったその時だった。
「!? ヤベッ!」
倒れているトウガの後ろから三体のゴーレムが迫っているのが見えた。
カズヤはすぐさま目の前にいるゴーレムを倒し、トウガの方へ走ろうとしたが、この距離では盾で防ぐには間に合わない。
「ウォォォォォォ!!」
故にカズヤは盾を捨てて、そのまま全力疾走でトウガの後ろに立つと、トウガに向けて振り下ろそうとしてたゴーレムの拳を正面から受けた。
「カズヤ!」
明らかに大ダメージであろう攻撃を食らい、背中から倒れそうになるカズヤを見て、トウガが声を上げる。
「甞めんじゃ、ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
しかし、カズヤは足を踏ん張りながら、気合と根性で体勢を整えると、剣を持つ手に力を込め、ソードスキルで一気に三体のゴーレムを蹴散らし、ポリゴンに変えた。
それを最後に、部屋にいたゴーレムは全て倒しきり、これで終わりだと思ったカズヤは、「ハァ、ハァ」と息を整えながら、トウガの方に顔を向ける。
既に麻痺は切れており、心配そうな表情でこちらを見上げるトウガに、カズヤは笑顔で応えた。
「へへっ、見たかよトウガ。俺の大活躍をよ」
「あぁ・・・大した奴だよ。お前は・・・」
笑みを浮かべながらこちらに手を差し伸べてきたカズヤに安堵しながらも、トウガは次の行動について考える。
ひとまずカズヤのHPを回復して、ソウゴ達と合流しよう。そして、早めに迷宮区を出よう。あまり長居すると、いつラフコフが襲ってくるか分からない。
そんなことを考えながら、体を起き上がらせて、カズヤから差し出された手を握ろうとし・・・
グサッ!!
「・・・え?」
トウガは何が起きたのか分からないって顔をしながら、
トウガの目の前には、目を見開いたまま自身の体を貫いているエストックを見つめるカズヤ。そして、そんなカズヤの後ろにザザが口元を歪ませていた。
ザザがカズヤの腹に刺さっているエストックを引き抜くと、カズヤは全身の力が抜けたかのように膝から崩れ落ち、そのまま正面にいるトウガの方へ前のめりになって倒れた。
トウガは前のめりに倒れたカズヤを抱きとめたが、未だ何が起きたのか分からず啞然としている。
そんなトウガに向けて、カズヤはゆっくりと口を開いた。
「トウ、ガ――っ!」
今にも消えそうな声で何かを伝えた瞬間、僅かに残っていたカズヤのHPがゼロになり、カズヤの体は徐々に青白い光を放ち、そして・・・
パリンッ!
ガラスが割れるような音と共に、カズヤはポリゴン状に四散した。
「カ、ズヤ?」
先程までふてぶてしく笑っていた親友が突如消え、トウガは思考を停止させてしまう。
「次は、お前だ」
そんなトウガに、無情にもザザはエストックをトウガに向けて、カズヤ同様彼の体に貫こうとする。
「ウォォォォォォ!!」
その時、叫び声と共にソウゴが迫り、ザザに斬りかかった。
ザザは咄嗟に横に跳んで刀を躱す。ソウゴは追撃することなく、トウガを庇う形で彼の前に立った。
しかし、その表情はとても険しく、何処か悔しさが混じっていた。
「チキショー・・・!すまねぇトウガ。後数秒早く見つけていればカズヤは・・・!」
「何言っているんだソウゴ?カズヤは・・・」
険しい顔で謝るソウゴだが、トウガは未だに現実を受け入れることができていない。
そこに遅れて来た・・・カズヤが死んだことを知らないコノハとレイスがやって来る。
「良かった!二人共、ここにいたんだね!」
「道が複雑だったから、遅くなっちゃったっす・・・あれ?トウガさんとソウゴさん。様子が・・・変っすよ?」
「ど、どうしたの二人共?そんな怖い顔をして・・・?そ、そうだ!カズヤは!?カズヤはどこに――」
「死んだぞ。お前たちが来る、ほんの、少し前にな」
困惑する二人に向けて、ザザが先程起きた事実を告げる。
初めは男の言っている事が理解できなかった二人だったが、時間が経つと徐々にその意味を理解し始め、二人は目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。
「そ、そんな!」
「噓だ!」
「噓ではない。お前たちの仲間は、たった今、死んだ。俺の手に、よってな」
「テメェ・・・!」
悲痛な顔をする二人を尻目に、あたかも当然のように話すザザをソウゴが鬼のような表情で睨む。
「フフフ・・・フハハハハハ!!!」
その時、呆然としていたトウガが突如狂ったように高笑いし、周りの視線が一斉に彼の方に向く。
「そうか・・・カズヤは死んだんだな。俺のせいで・・・」
「違う。お前は何も悪くない」
「いや、俺が悪い。俺が軽率な行動をしなければ、こんなことにはならなかった。だから・・・」
次の瞬間、トウガは立ち上がり、短剣を構えると、ザザに向かって叫んだ。
「お前をぶっ殺して、あの世のカズヤに詫び入れさせてやるよ!!」
激昂したトウガの瞳には、目の前にいる男を殺すという強い殺意が込められていた。
それを感じ取ったソウゴは、トウガを止めようとするが、それよりも先にトウガが動く。
一瞬にしてザザとの距離を詰め、短剣を下から上に振り上げようとした瞬間、ザザのエストックが素早く動き、トウガの腹を貫こうとしたが、トウガはその攻撃を体を捻ることで躱し、反撃でソードスキルを放つ。
しかし、ザザはそのソードスキルを後ろに跳んで躱すと、一旦距離を取り、楽しそうに笑いながら口を開く。
「いい殺気だ。さっきまで、死んでいた目に、凄まじい殺意が、込められている。だが、目的は、既に達した。これ以上、お前の相手を、する気はない」
そう言うと、ザザはトウガから視線を外して、別の方向へ走り出した。
ザザが走った先には、隠し口のような場所があった。一度退いた後、ザザはここから入って、カズヤを狙ったのだろう。
「逃げんじゃねぇぇぇ!!」
トウガは叫びながらザザを追いかけようとした。
しかし、ガタッと先程と同様何らかの仕掛けが作動したような音が部屋に響き、当時に、中から数体程のトリケラトプスが出てきた。
トリケラトプスは部屋に出てくるや否や、トウガに向かって突進してきた。
「邪魔だ!!」
トウガが向かってくるトリケラトプスを次々と薙ぎ払いながら先に進む。
しかし、ザザが通った隠し口の入口は、壁が下から上に上がることで徐々に閉まっていき、閉まりゆく入口の隙間から顔を覗かせたザザは、トウガに向かって微笑んだ。
「中々面白い、ショー、だった。また、会おう」
そう言い残した直後、入口は完全に閉じ、ザザの姿は見えなくなった。
それでも尚、トウガは壁の向こうにいるザザを殺そうと壁に向かって短剣を振る。
「クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!」
何度も何度も怒り任せに短剣を振り続けるトウガだが、自身の行く手を阻む壁は壊れる気配すら見せない。
やがて、手を止めたトウガは顔を上に向かせながらあらん限りの大声で叫んだ。
「チキショォォォォォォ!!!」
幼い頃から一緒にいた親友が死んだ悲しみ、親友を守れなかったことの悔しさ、親友を殺した者への怒り、その発端を作ってしまった自分自身への後悔、それらの感情が全て込まれた少年の悲痛な叫びが、部屋中に響き渡るのであった。
今回は特に解説するような事はありません。代わりに、映画ゆるキャン△の感想を3文にまとめました。
(SAO関係ないけど)映画ゆるキャン△を見た感想
・大人になっても皆変わらないなぁ
・しまりんの「考えとく」はいいよの略
・あおいちゃんのクラスの生徒になりたかった・・・
一体いつからオリキャラが一人も死なないと錯覚していた? by藍染惣右介
ちなみに、作者のブリーチの知識は黒崎一護(←主人公)、朽木ルキア(←ヒロイン・・・なの?)、死神代行(←主人公の職業?)、藍染惣右介(←経緯は分からないけど裏切った人)だけです。にわかにすらなれない知識レベル乙。
そして、次回は原作で言うラフコフ討伐戦です。トウガは勿論、他のオリキャラ達にも注目です。