ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
タイトル。最初、”特別なスキルを手に入れろ”だったんですが、SAOIF要素も入れた方がいいと思い、こんな感じにしました。
第一層フロアボス攻略から数日後。ハルトとコハルは第二層へと訪れていた。
転移門の周りには辺り一面、砂漠が広がっていて、所々に枯れ草が生えている。
まるでサバンナのようなフィールドの所々には牛のエネミーが歩いていた。
「見て、ハルト。あそこに牛がいっぱいいるよ。モーモー天国だね!」
「そうだね。でも、その牛たちエネミーだからね」
牛のエネミーがたくさんいることに目を輝かせているコハルと、それを見て呆れるハルト。
第二層に入っても二人は平常運転だった。
「ニァハハハ!相変わらず元気そうじゃないカ。お二人さん」
二人が話していると、後ろから声を掛けられ、振り向くと、アルゴがいた。
最初にあった時と違って、左右の頬に三本の髭らしきものを付けていた彼女は陽気な笑みを二人に向けていた。
「あ、アルゴさん!?びっくりした・・・」
「全く、最初に会った時といい、今といい、相変わらず神出鬼没ですね」
「ニァハハハ!こうでもない限り、情報屋なんて仕事はやってられないからナ!」
驚いているコハルと苦笑いしながら話すハルトに、陽気に返すアルゴ。
「第一層が突破されたと聞いてナ。情報を得るべくフィールドを探索してたんダ。そうしてたら、二人が二層に入ってきたの見て声を掛けたんダ」
「そうですか。せっかくだから二層についての情報とかあったりしません?」
ハルトが二層についての情報がないか質問すると、アルゴはニィーと笑う。
「本来なら数万コルとるところだガ、第一層のボス攻略に貢献したみたいだしナ。特別にタダにしといてやるヨ・・・ここより少し先の《枯燥の草原》にある《自然洞窟》を抜けた先に特別なスキルが貰えるんダ」
「特別なスキル?それってどういうスキル?」
「それは着いてからのお楽しみということデ。ちなみにキー坊も少し前にそのスキルをゲットしたゾ」
「キー坊って・・・キリトのこと?」
その話を聞いて、ハルトは少し興味を持った。
元βテスターであり第一層ボス攻略の際にビーターと呼ばれるになったキリト。そんな彼が取りに行くということは、そのスキルは戦闘で役に立つスキルなのだろう。
「コハル、君はどうする?」
「ハルトが行くなら私も行く。それにキリトさんが取りにいったスキル。私も興味あるし」
コハルの返事を聞き、ハルトはスキルの情報をくれたアルゴにお礼を言った。
「情報、ありがとうございます。その《自然洞窟》に行ってみます」
「気を付けろヨ。オレッチは二層の情報について集めておくから」
「はい」と返事をしたハルトは《自然洞窟》に向かおうとしたが、その前にコハルがアルゴに問い掛ける。
「あの、私からも一ついいですか?」
「ん?なんダ?」
アルゴはまだ何かあるのかと思いながらコハルを見る。
「・・・その髭の理由。教えてくれませんか?」
「トップシークレットダ。結構高いゾ」
《自然洞窟》の中は薄暗く、エネミーは蜂、コウモリ、鼠など様々な種類が洞窟のあちこちに潜んでいた。
洞窟内を警戒しながら歩く二人に一体のコウモリが迫ってきたが
「はぁ!」
ハルトがレイピアでコウモリを突き飛ばし、そのままポリゴン状に四散させる。
「すごいねハルト。細剣の熟練度また上がってる」
「まぁ、ここに来る前に少し上げていたからね。いつ、どんな敵が来ても、それぞれのエネミーの武器の属性に有効な武器で攻撃できるように」
そう言いながら、レイピアを腰に収めるハルト。
「ねぇ、ハルトってどのくらいの武器を鍛えているの?私は動きやすいから比較的軽い細剣や短剣を鍛えているけど」
「そうだね・・・全部で五つかな」
「五つ!?」
ハルトの言葉に驚くコハル。
「具体的に言えば、片手直剣、細剣、片手棍、槍、斧だけど・・・」
「そ、そんなに鍛えていて、武器の熟練度とか低かったりしないの?」
コハルの疑問に、特に表情を変えることなく答えるハルト。
「まぁ、一つの武器に熟練度を注いでいる人たちに比べたら低いと思うよ。でも、僕は一つの武器でやっていくスタイルより、複数の武器を使って臨機応変に対応しながら戦うスタイルの方が自分にむいているから」
「そうなんだ・・・あ!でも、いきなり自分の持っている武器の属性が弱点じゃないエネミーが出てきたらどう対処するの?・・・まさか、一々メニューを開いて持っている武器を交換するって言うんじゃ・・・」
「そんなことをしていれば、エネミーに隙を突かれて最悪ゲームオーバーだよ。そういう時はクイックチェンジを使うんだ。こんな風に今持っている武器とストレージにある武器をその場で入れ替えることができるよ」
そう言いながら、クイックチェンジで持っていたレイピアを一瞬で片手棍に変え、それをコハルに見せるハルト。
コハルが「おー」と言ってハルトを褒める中、ハルトは両手をパン!と叩いて
「よし!一通り説明したし、またエネミーが来る前に、さっさと洞窟を抜けちゃおう」
二人は《自然洞窟》を抜けるため、歩き始めた。
《自然洞窟》を抜けた先は、険しい上り坂だった。
林の中に存在している一本道をハルト達は林の中にいるエネミーを警戒しながら、坂道を歩いていく。
「いつまで続くの?この坂道・・・」
コハルが愚痴を吐いている。
それもそうだ。なにせ二人は《自然洞窟》を抜けてから30分以上この坂道を歩いている。《自然洞窟》でエネミーと戦い続けていた二人にとって、この坂道を歩き続けることは非常に大変であった。
「ん?あれは・・・人影?」
ふと、正面から迫っている人影に足を止めるハルト。
人影は二人の方に近づいてき、ある程度近づいたら、顔がはっきりと見えた。
「ああっ!あなたは・・・ザントさん!」
「あぁ?・・・なんだテメェらか」
そこにいたのは、βテストの時に助けてもらい、第一層ボス攻略の時に共に戦った青年の姿だった。
二人に気づいたザントは、名前を呼んだコハルに反応しつつも、特に表情を変えることなく二人を見る。
「もしかして、ザントさんも特別なスキルを手に入れる為にここへ?」
「あぁ、そうだ。さっき手に入れて、今下山しているところだ。幸運だったなテメェら。もう少し早く着いてたら、ぶっ殺してたからな」
「「ぶ、ぶっ殺・・・」」
ザントの過激な発言に引く二人。
彼がここまで言うなんて、一体どのようなスキルなのだろうか。
ザントと別れた二人はどんなことをされるのか少し不安になりながらも、坂道を歩き続けた。
「あれは・・・岩?」
ある程度坂道を進んでいると、広々とした場所に出た。その場所の所々に巨大な岩が置いてある。
「見てハルト。あの岩におじいさんが座っているよ」
コハルが指を指した方を見れば、筋肉が目立つスキンヘッドの老人が座禅を組んでいた。その老人の頭上にはクエストを行うための!のマークがある。
立っていても何も起こらないので、二人が老人の方に寄ると、老人が二人の方を向いて話し始めた。
「入門希望者か?我が試練を達成すれば、我が秘技<体術>を汝らに授けよう。修行の道は険しいぞ?覚悟はあるか?」
一通り話を終えたら、二人の目の前にyesかnoの選択肢が描かれているメッセージウィンドウが現れた。
互いに向き合い頷いた二人は、yesのボタンを押した。
「よかろう。汝らに与える試練はただ一つ。拳のみでこの大岩を割るのだ」
「「・・・え?」」
老人の予想外の発言に放心する二人。
しばらくして冷静さを取り戻したハルトが岩の強度を確認すべく、岩を軽く叩いてみたが
「この強度・・・おそらく、破壊不能の一歩手前はある」
「えぇ!?」
ハルトの発言に驚くコハル。
未だに慌てている二人に対して、老人は無情にも言葉を進める。
「ちなみに汝らが試練をクリアするまでは汝らの武器は預かっておく」
そう言いながら、素早い動きで二人の武器を取り上げていく。
「あぁ!私の武器が!返してください!素手だけであの岩を破壊するなんて私には無理ですよ!」
コハルが武器を取り返そうと老人を追いかけるが、奪った本人は華麗な動きでコハルを躱している。
「逃げるのか?」
老人を追いかけてたコハルだが、彼の放った一言に足を止めた。
「所詮は女子。我が試練をクリアするのは、ちと難しかったようじゃな・・・それなら」
そう言うと、老人はコハルに近づき
「ワシがもっと有用な<体術>を伝授してやろう」
コハルの防具の隙間に指を入れ、立派に育っている彼女の膨らみを指で押した。
「!!!!」
コハルはすぐさま反応し、老人にビンタしたが、老人はそれを躱しニヤァと笑みを浮かべていた。
ビンタを躱されたコハルは、そのまま動かず黙り込んでいたが、冷たい声でゆっくりと口を開く。
「・・・ハルト」
「な、何?・・・」
一部始終見ていたハルトだが、いつもと違うコハルの様子に少し怯える。
「・・・絶対にクリアしよう」
「う、うん、そうだね・・・」
コハルの顔は笑顔だったが、その裏に怒りが湧いているのを感じたハルトは、特に反論せず頷いた。
二人のやり取りを見ていた老人が再び口を開く。
「一つ言っておくが、この岩を割るまで山を下りることは許さん。汝らにはその証を与えよう」
そう言いながら、右手に筆を持ち出した老人は目にも止まらないスピードで、ハルトとコハルの顔に落書きをし始めた。
「うわっ!?」
「な、何!?」
老人の奇行に思わず目を瞑ったハルトとコハルだが、落書きが止むと目を見開き、互いの顔を見た。
「あっ!ハルト、君の顔に三本の髭が付いてるよ!」
「え、嘘!?・・・ていうか、コハルの顔にも付いてるよ!」
二人の顔にはアルゴが付けているような髭を描かれていた。
「それは汝らが試練クリアするまだ消すことができない。信じているぞ」
そう言うと、老人は先程座っていた岩にもう一度座り始めた。
二人は互いに顔を見合わせず、黙って岩を見つめていた。
「・・・ザントさんがあんな発言をした理由、分かったよ」
「うん・・・そうだね・・・」
ハルトの言葉に共感するコハル。
二人は見た目が悪人ずらのザントの顔に髭が付く姿を想像したが、たぶん、想像しただけでも彼に斬られかねないので、すぐに想像することをやめ、それぞれの岩を破壊し始めた。
あれから三日後。
コハルの方はようやく岩にひびが入り始め、ハルトの方は半分以上ひび割れていた。
もう少しで壊せそうなハルトは、この三日間で培ってきたコツを思い出した。
「ふぅー・・・(やみくもに殴ってもだめだ。なるべくひびが目立っている箇所に全神経を集中させながら手に力を込めて・・・)」
ハルトは深呼吸したら目を瞑り、右手に力を込め
「(一気に当てる!)」
ひびが目立っている箇所を思いっきり殴りつけた。
すると、岩はひびを大きくしたと思ったら、二つに割れた。
「はぁ・・・はぁ・・・や、やったー・・・」
見事、岩を割ることができたハルトはその場に座り込む。
そこに老人がやってきて、ハルトに話しかける。
「見事じゃ。汝に我が秘技<体術>を授けよう」
老人がそう言った途端、ハルトの目の前に<体術>を取得しましたと描かれているメッセージウィンドウが現れ、メニューのスキル一覧を確認すると<体術>が追加された。ついでに顔の髭を消えていた。
無事<体術>スキルを手に入れたハルトは、コハルが割るのを待とうとしたが、ふとウィンドウを開くと、自身のフレンド一覧に手紙のマークが付いているのに気づいた。
「ん?メッセージが届いてる」
差出人はトウガからだった。
第一層のボス攻略後、「紅の狼」のメンバーとフレンド登録したが、そのリーダーからのメッセージに、ハルトはどんな内容かなと疑問に思いながらも、メッセージを開いた。
内容は明日、攻略組が《枯燥の草原》のフィールドボスを討伐しようとしている情報だった。
メッセージを見終えたハルトは悩んだ。
「(フィールドのボスということは、二層のボスに繋がる何かが手に入るかもしれない。今から山を下りれば明日までには間に合うかもしれない。けど、それだとコハルを置いていくことになる・・・)」
攻略を優先すべきか、コハルが終わるのを待つべきかハルトは悩んだ。
すると、ハルトが悩んでいるのを感じたのか、コハルが笑顔で話しかける。
「行ってハルト。私は大丈夫だから。攻略組の人たちを助けてあげて」
ハルトに向かって、自分は大丈夫だと言った。
それを見たハルトは、しばらく悩んだが、決心した表情でコハルに言う。
「・・・攻略が終われば、必ず迎えにいく。だから、ここで待ってて」
「うん!」
コハルの返事を聞いたハルトは《枯燥の草原》に向かうべく、山を下りた。
・武器の属性
こちらもSAOIFを基準としています。
・ハルトの戦闘スタイル
実はSAOIFをプレイしている作者と同じスタイルです。
・エロ老人
プログレッシブ小説版だと普通の師匠キャラなのに、漫画版どうしてコウナッタ?
・髭が描かれているザント
想像してみてください。フォン・スパークみたいな悪人顔をしている奴の頬に髭が付いている姿を。
・体術スキル
SAO本編でも登場する特殊スキル。SAOIFでスティラ(SAOIFオリジナルキャラ)が使った時はマジでびっくりした。
ブライダルイベント(アンコール)をやって思ったこと
コハルは神。異論は認めん!
ということで、第二層編。最初はSAOIFの展開でありつつ、プログレッシブで登場する<体術>を手に入れるという流れでした。
次回もSAOIF、プログレッシブを混ぜたような展開になり、プログレッシブに登場するあの鍛冶屋やあのギルドも登場します。
お楽しみに。