ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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アインクラッド編(原作ルート)後編。
最初は久しぶりの主人公(ハルト)回です。


ep.46 ('ハル')の名を持ちし者達

ラフコフ討伐戦から数ヶ月が経った。

攻略組は討伐戦での傷が癒えて、最前線に復帰した者が増えていき、討伐戦で遅れていた攻略スピードも元通りになっていた。

「紅の狼」も最前線に復帰し、メンバーこそ四人になったが、カズヤがいなくなった分を互いにカバーし合い、順調にレベルアップしていた。

無論、ハルトとコハルの二人も、日々攻略に励んでいるが、今日は息抜きで中層にある海辺エリアに来ていた。

 

「海だぁーーー!」

 

緑色の水着を着て、海辺ではしゃぐコハルを見て、ハルトもまた水着を着ながら笑みを浮かべる。

ここ数日、攻略続きで疲れた体を休めるために、絶好の海水浴スポットと言われている海辺エリアに来たハルトとコハル。しかも、今は人が一人もいなく、二人だけの貸切状態であった。

 

「ほら、ハルト!せっかく海に来たんだし、思いっきり遊ぼうよ!」

 

「まあまあ、あまりはしゃいでいると・・・それ!」

 

「キャ!やったなー!それ!」

 

海に入りながら、お互いに水を掛け合うハルトとコハル。

他にも浅瀬で追いかけっこしたり、砂浜でお城を作ったりなど(水中で泳ぐとHPが減るため、海で泳ぐことはしなかった)、二人は思う存分海を堪能していた。

 

「ふぅー、疲れを癒す為に海に来たのはいいけど、少しはしゃぎすぎたかな」

 

思った以上にはしゃぎ、若干疲れた様子でハルトは、一度水分を取ろうと、予め敷いておいたブルーシート(隣にはビーチチェアーやパラソルが置いてある)に近づき、ブルーシートの上に置いてある飲み物を手に取り、中身を飲んだ。

 

「あれ?」

 

飲み物を元の場所に戻していると、ふとハルトの視界に身に覚えのない紙が置いてあるのが見えた。

 

「こんなところに紙なんて置いてあったけ・・・?」

 

疑問に思いながらも、ハルトは紙を拾うと、それに書かれている内容を見た。

 

『ラフコフは滅んだ。だが、俺とお前の戦いはまだ終わっていない。どちらが真の勝者か決着を付けよう。明日の0時に四十層の監獄エリアで待つ』

 

「こ、これって!?」

 

差出人は書いてなかったが、明らかに先の討伐戦で壊滅したラフコフ関連の物だと理解した。

 

「(どうして、こんな物がここにあるんだ?いや、それ以前にラフコフはあの日に壊滅したはずだ。いったい誰が・・・?)」

 

様々な疑問が浮かぶハルトだったが、あの時の出来事を思い返していく内に、それらの疑問を解消していく。

 

「(いや、違う。ラフコフは完全に壊滅したわけじゃない。あの時の討伐戦で逃げ延びたプレイヤーが二人いたはずだ。一人はラフコフのリーダーPoH。そして、もう一人はサブリーダーの・・・)」

 

「おーい!ハルトー!まだ掛かりそう?」

 

「あ!ごめん、すぐに行くよ」

 

色々考察していたが、ふと少し離れた場所にいるコハルに声を掛けられ、ハルトは考察を一旦中止して、コハルの下に戻った。

その後、日が暮れるまで海で遊んでいた二人だったが、ハルトはあの手紙に書かれていたことが気になって、遊ぶことに集中できなかった。

 

 

 

 

その夜、二人は借りているコテージで一夜を過ごしていた。

時間は既に夜の22時を回っていて、コハルは一日中海で遊んで疲れたのか、ベットの上でぐっすり眠っていた。

一方、ハルトもベットの上に横たわっているが、昼の手紙の事で眠れずにいた。

 

「(もし、差出人が僕の予想通りなら、'彼'は絶対に僕を狙っているはずだ。でも・・・)」

 

ハルトはその人物の誘いに乗るか迷っていた。

その人物がラフコフの生き残り。しかも、自分が予想している通りの人物だった場合、正直言って、勝てる確率は低い。下手すれば命を落とす可能性もある。

しかし、誘いに乗らなかった場合、その人物は必ず自分の周りの人間に手を掛けるだろう。

どうするべきか悩んでいる最中、ふと寝返りを打ち、顔を横に向けると、ハルトの視界に気持ち良さそうに眠っているコハルの寝顔が映った。

 

「コハル・・・」

 

幸せそうに眠るコハルの姿を見て、思わず彼女の名前を呟くハルト。

もし、誘いに乗らず、その人物の凶刃にコハルを巻き込むようなことになれば、自分は一生後悔するだろう。

 

「(そうだね・・・これは僕の問題だ。彼女を巻き込むわけにはいかない)」

 

決心したハルトは、ストレージを開くといつもの装備に着替え、武器やアイテムの確認をする。

そして、準備が完了したところで、視線をコハルの方に向ける。

 

「ごめん。朝になったら、いつも通り君の隣にいるから・・・」

 

今も寝ているコハルの頬を撫でながら彼女に謝ると、ハルトは部屋から出た。

 

 

 

 

ハルトが向かっていたのは、アインクラッド第四十層にある巨大な廃城の中にある監獄《不脱の監獄》だった。

監獄には多数のトラップが仕掛けられており、攻略当時はかなり苦しめられていたダンジョンだったが、ハルトはその時にトラップが仕掛けられている場所をマップにマーキングしていたため、トラップに引っかかる事なく、順調に進んでいた。

監獄の中を進んでいき、大広間に辿り着いた所で、ハルトの視界に部屋の中央で佇んでいる一人の人間の後ろ姿が映った。

ハルトは警戒しながらも、その人物に近づくと、男は口を開いた。

 

「待っていたぞ」

 

そう言って、ハルトの方に振り返った人物は、ハルトの予想通りの人物だった。

 

「僕をここに呼ぶためにわざわざ浜辺まで来て手紙を置いてくるなんて・・・仮にもラフコフのサブリーダーだった男の割には、意外と律儀だね。ハルファス」

 

ハルトは目の前で不敵な笑みを浮かべているハルファスに鋭い視線を向ける。

服装は相変わらず黒いポンチョを着ているが、フードは外しており、雪のように白い髪とウサギのように赤い眼以外はハルトと瓜二つのその顔が露わになっていた。

 

「ここに来たという事は、既に俺の目的が何なのか分かっているだろう?」

 

「その前に二つ聞かせてくれないかな?」

 

「構わん。どうせ、すぐに済むことだ」

 

ハルファスから許可を貰ったハルトは、ハルファスに質問した。

 

「一つ目、もし僕が君の誘いを断ってたら、君はどうしてたの?」

 

「決まっているだろう。お前の大事なコハル(パートナー)を捕らえて、お前をおびき寄せる為の餌にするつもりだった」

 

「やっぱり・・・」

 

ハルファスの言葉に納得しながら、ハルトは二つ目の質問を投げる。

 

「それじゃあ二つ目。君は・・・どうしてそこまでして僕に固執するの?」

 

さっきのは建前だったが、本音はこれだった。

ハルファスがここまで自分に執着する理由がいまいち分からないのだ。

強い相手と戦いたいだけなら、ハルトの他にもいっぱいいる。それなのに、ハルファスが自分だけに執着しているのには、他に何か理由があるはずだと考えていた。

そんなハルトの問いに、ハルファスは少し考える素振りをしながら答えた。

 

「それはだな・・・お前が俺と同じ'(ハル)'の名前を持っているからだ」

 

「春?」

 

ますます意味が分からなかった。

その'(ハル)'がいったい何を意味するのか。或いは、自分とハルファスの容姿がそっくりな理由にその'(ハル)'が関係しているのか。

そんなことを思っていると、ハルファスは背中にしまっている片手直剣を抜いた。

 

「・・・これ以上は知る必要はないだろう。後はお前が死ぬか俺が死ぬかのどちらかだ」

 

「そう・・・」

 

腑に落ちない部分も多少あるが、ハルトもまた片手直剣《フォルネウス》を引き抜いた。

 

「「・・・・・・」」

 

お互い無言のまま睨み合う二人だが、戦闘開始の合図はすぐに訪れた。

 

「「っ!!」」

 

同時に地面を蹴り、互いの武器をぶつけ合う二人。

二人は何度も武器を交え、互角の戦いを繰り広げていく。

 

「良い腕だ。前よりも更に剣の熟練度が上がっているじゃないか」

 

「そっちこそ!」

 

何度かの打ち合いの後、二人は一度距離を取った。

すると、ハルファスは不敵な笑みを浮かべる。

 

「だが、剣の腕が良いからと言って、それで倒せるとは思っていないだろうな?」

 

そう言いながら、ハルファスはクイックチェンジで手持ちの武器を片手直剣から斧に切り替え、ハルトに向けて斧を振るった。

ハルトは咄嗟に《フォルネウス》を正面に構えて防御するが、片手直剣よりも圧倒的に攻撃力が高い斧の力に耐え切れず、そのまま後ろに吹き飛ばされる。

 

「忘れたか?俺もお前と同じ《全属性使い(オールラウンダー)》だ。ただ馬鹿みたいに剣を打ち合うだけが俺の戦いではない」

 

「忘れてなんか、ないさ!」

 

何とか体勢を立て直すと、ハルトは猛スピードでハルファスに接近し、クイックチェンジで変更した細剣《ドミニオン》でソードスキル<スター・スプラッシュ>を放つ。

8連撃の強烈な突きをハルファスは何発か防いだが、全て防ぎきる事はできず、細剣の鋭い突きが数発体に打ち込まれた。

 

「面白い!」

 

しかし、ハルファスは楽しそうに笑うと、再び斧でハルトに攻撃を仕掛けてきた。

ハルトはそれを冷静に対処していき、隙を突いて《ドミニオン》で攻撃していく。

戦いは互角かと思われたが、そうではなかった。

 

「ぐっ!(なんて早さだ。細剣のスピードに追いつくなんて・・・!)」

 

「生憎、ソードスキルを発動しなければ、俺の斧は細剣さえも凌駕する。さぁ、追い抜いて見せろ!」

 

ハルファスの斧を振るう速度は、軽装備の《ドミニオン》の速度と互角に渡り合っていた。

こうなってしまえばパワーで劣る《ドミニオン》が勝てる見込みはなく、徐々にハルトの方が押されていく。

 

「(このまま戦っても、奴の斧の早さがこっちと互角な以上、一撃の力が少ない細剣で戦うのは不利だ。なら、まず狙うべきなのは・・・!)」

 

作戦を切り替えたハルトは、すぐさまクイックチェンジで《ドミニオン》から片手棍《アルバトロス》に変更すると、再びハルファスに接近する。

ハルファスはハルトの動きを見極めながら斧を横に振ったが、ハルトはそれを狙ってたかのように、斧が当たる手前でソードスキルを発動させた《アルバトロス》を振り下ろして斧の側面を叩いた。

すると、勢い良く叩かれたハルファスの斧はピリッと亀裂が入った。

 

「なるほど。狙いはこの斧か?」

 

「どうも君の斧は厄介だからね。先に破壊させてもらうよ」

 

そう言って、ハルトは再び《アルバトロス》を振り下ろして、ハルファスが持っていた斧を砕いた。

斧を破壊されたハルファスは、特に焦る様子もなく、クイックチェンジで手持ちの武器を再び片手直剣に切り替えると、ハルトに斬りかかる。

対するハルトも、クイックチェンジで再び《フォルネウス》に切り替えて、その攻撃を難なく受け止めると、今度はハルトの方からハルファスに斬りかかった。

ハルファスはハルトの攻撃を受け止めると、そのまま鍔迫り合いになる。

そして、次の瞬間には二人は互いの剣を弾いて距離を離すと、そこから激しい攻防が始まった。

互いに一歩も譲らず、剣技と剣技をぶつけ合う二人。

 

「僕は絶対にお前に負けない!ここでお前を捕らえて、このゲームも必ずクリアしてみせる!」

 

「必死だな。そこまでして、現実世界に帰りたいのか?」

 

「当たり前だ!」

 

一度距離を取ってから、ハルトはハルファスに向かって喋る。

 

「彼女と約束したから。必ず二人で生き残って、現実世界に帰ろうって。それに、僕にも現実世界で帰りを待っている人達がいるんだ。その人達の為にも、ここで歩みを止めるわけにはいかない」

 

「・・・フッフッフッ・・・フハハハハハ!!」

 

すると、ハルトの言葉を聞いたハルファスは、突如高笑いし出した。

その突然の行動に、ハルトが呆気に取られる中、ハルファスは言葉を続ける。

 

「笑わせるな。現実世界に帰ったお前を待つ者達は誰だ?血の繋がっていない(・・・・・・・・・)両親と弟だろう!」

 

「!? な、なんでお前がそれを!?」

 

「知っているのか?簡単なことだ。俺は全て(・・)を知っているからだ。お前が生まれてから記憶を失い(・・・・・)、あの家に引き取られる前の全てだ」

 

ハルファスの口から語られた言葉に、ハルトは動揺を隠せなかった。

ハルファスが言った事は、全て事実だった。加えて、ハルトはSAOに来てから己の過去をβテストの時からずっと一緒だったコハルを含め、誰にも話したことが無い。

それなのに、何故この男は誰も知らないはずの自分の過去を知っているのか。

動揺して動けずにいるハルトに、ハルファスは更に言葉を続けていく。

 

「だが、今はそんなことどうだっていい。仮にお前がこの世界から帰還した時、果たしてお前の家族はお前の生還を素直に喜ぶと思うか?特にお前を嫌悪する弟(・・・・・・・・)はどうだろうな?今頃、お前がこの世界で死んでくれるのを望んでいるんじゃないか?」

 

「違う!雪斗(ゆきと)はそんなこと――っ!?」

 

動揺するハルトの一瞬の隙を付いて、ハルファスの剣がハルトの《フォルネウス》を弾き飛ばした。

 

「しまっ――!」

 

「終わりだ」

 

ハルファスは剣を振り上げると、無防備になったハルトに向けて、渾身の一撃を放とうとしたその時だった。

 

「しゃがんで!ハルト!」

 

聞き覚えのある声が廃城に響き渡り、ハルトは声に従ってしゃがむ。

その直後、鎖で繋がれた巨大鉄球が二人に向かって飛んできた。

ハルトは声に従い、咄嗟にしゃがんでいたから鉄球には当たらなかった。

 

「なっ!?」

 

一方、ハルファスは驚きながらも剣を前に出してダメージを減らしていたが、衝撃までは軽減する事ができず、巨大鉄球によって飛ばされる。

 

「ハァァァァァァ!!」

 

その先にいたのは、短剣を持ってハルファスに斬りかかろうとしているコハルだった。

先程コハルがやったことは至ってシンプル。わざとトラップを発動させて、巨大鉄球をハルファスにぶつけたのである。

 

「くっ!甞めるな!」

 

ハルファスはどうにか態勢を立て直し、コハルの奇襲を防いだ。

そして、反撃とばかりに短剣を押し返して、コハルの態勢を少しだけ崩させると、その勢いのまま彼女を斬るべく剣を振り上げる。

その一瞬の隙をハルトは見逃さなかった。

 

「させるか!」

 

ハルファスの注意がコハルに向いている隙を付いて、ハルトはハルファスの死角から《フォルネウス》を突き刺して、ハルファスが持っていた剣を弾き飛ばした。

そのままハルトは《フォルネウス》を構え直して、ソードスキル<ヴォーパル・ビート>を放った。

 

「ぐっ!」

 

五連撃のソードスキルは、ハルファスのHPをレッドまで削り、彼に膝を付かせた。

 

「勝負ありだね」

 

ハルトはこちらを見上げるハルファスに《フォルネウス》を突き付ける。

ハルファスは既にクイックチェンジにストックしてある武器を失い、新しい武器をストレージから出そうとしても、目の前にいるハルトがそれを許さないだろう。

自分の負けだと直感的に悟ったハルファスは、ハルトに悪態付く。

 

「・・・情けない奴だ。俺一人相手に女の力を使わないと倒せないとはな」

 

「悪いね。これが僕らの戦い方だから」

 

そう言いながら、ハルトはストレージから《黒鉄宮》に繋がる《転移結晶》を取り出した。

 

「止めは刺さないのか?」

 

「僕はお前を捕まえに来たんだ。殺しに来たわけじゃない」

 

「ハルトは貴方と違います。平気で人を殺すような事はしません。相手が凶悪な犯罪者でも誰も死なせたくない。それが、ハルトなんです」

 

止めを刺す気のないハルトに続いてコハルが真剣な表情で言う。

 

「フハハハハハ!!」

 

そんな二人の言葉に、ハルファスは再び高笑いし出した。

またもや高笑いするハルファスにハルトとコハルが警戒心を高める中、ハルファスは衝撃の事実を伝えた。

 

「凶悪な犯罪者だろうと誰も死なせたくないか・・・既に何百もの人間の命を奪って来た犯罪者が言う言葉じゃないなと思ってな」

 

「「!?」」

 

ハルファスの口から語られた衝撃的な言葉に、二人は目を大きく見開いた。

 

「お前は自分の罪を知らない。お前が生まれた理由も、お前自身の存在意義すらもな」

 

そう言いながら、ハルファスは後ろに振り向くと、ある場所に向かってゆっくり歩き出した。

呆然としてたハルトだったが、ハルファスが歩き出したのを見て我に返り、「待て!」とハルファスを追おうとしたが・・・

 

時枝(ときえだ)春斗(はると)

 

「!?」

 

突如ハルファスの口から現実世界(・・・・)の自分の名前を言われて、ハルトは驚きのあまりその場に固まってしまう。

そんなハルトに、ハルファスは彼の方に振り向きながら淡々と告げた。

 

「お前の欠けている記憶。それこそが、お前の罪だ。そして、それを知った時、果たしてお前はお前でいられるかな?」

 

喋り終えたハルファスは、満足そうに笑いながら両手を広げて、後ろから倒れた。

倒れた先にあるのは地面が見えない程深い穴。ハルファスの意図に気づいたハルトは、慌てて彼を止めようと声を掛ける。

 

「!? よせ!」

 

「また会おう、ハルト。次は、こことは違う別の世界でな」

 

そう言い残して、不気味な笑みと共に「ラフィン・コフィン」のサブリーダー、ハルファスは奈落の底へ落ちていった。

ハルファスが消えた後、コハルと二人でハルトはしばらくその場に立ち尽くしていた。

 

「ハルト、君は・・・」

 

「ごめん、僕にも分からないんだ。だけど、これだけは信じて欲しい。この先何があっても、僕は誰も傷つけたりはしない」

 

真剣な表情で語るハルトを見て、コハルは彼の顔をジーっと見つめた後に小さく微笑んだ。

 

「うん、信じるよ。だって、私はあなたのパートナーだから」

 

「ありがとう・・・」

 

「それよりも、他に言うことがあるんじゃないかな?」

 

コハルのその言葉に、ハルトはウッと顔を顰めると、相談もせず一人でハルファスの所に行った事を彼女に謝罪した。

 

「その・・・勝手に出ていってごめん。ところで、僕が隠してた事にいつ気づいたんだい?」

 

「海で遊んでいる最中だよ。だって、ハルト急に暗い顔になってたし、何処かソワソワしてる様子だったから、凄く怪しかったよ」

 

「そっか・・・やっぱり、君に隠し事はできないな」

 

「ホントだよ・・・」

 

そう言いながら、コハルはハルトに抱きついた

 

「・・・心配したんだから。ハルトがどこか遠くに行ってしまう気がして・・・」

 

「・・・大丈夫。僕はどこへも行かないさ」

 

そう言って、ハルトは優しく彼女の頭を撫でた。

それからしばらくして、二人は宿屋に戻ると、ベッドの上でお互いの体を密着させながら横になっていた。

 

「ねぇ、ハルト」

 

「・・・何?」

 

ハルトが尋ねると、彼女は彼の胸に埋めていた頭を上げて、上目遣いでこちらを見てきた。

 

「ハルトは・・・私のこと好き?」

 

その唐突な質問に、ハルトは優しく微笑みながら答える。

 

「勿論、好きだよ」

 

ハルトがそう答えると、コハルは嬉しそうな表情を浮かべ、再びハルトの胸の中に顔を埋めた。

 

「フフッ、嬉しいな」

 

そのまま彼女は幸せそうに目を瞑ると、やがて穏やかな寝息を立て始めた。

スヤスヤと眠る彼女を見て、ハルトもまた目を瞑る。

できれば、この時間がいつまで続きますように。そう願いながら、ハルトは眠りについた。

 

 

 

 

翌日、ハルトは一人、一層の《黒鉄宮》へ訪れていた。

昨夜の戦いで奈落に落ちたハルファス。あの高さから落ちてしまえば、いくら実力のあるプレイヤーだろうと生きているはずがない。

それでも、得体の知れない不安を感じたハルトは、こうしてハルファスの生死を確かめるべく、《黒鉄宮》の中に置いてある《生命の碑》に向かっていた。

《生命の碑》の前に立ったハルトは、一万人のプレイヤー達の名前が刻まれた碑を見る。

もし、あの戦いでハルファスが死んだのなら、彼の名前の文字に二本の線が引かれているはず。

そう思いながら、ハルトはHalphas(ハルファス)の名前を探そうと、イニシャルがHで始まるプレイヤーの名前を一通り目で追った。

 

「(え?)」

 

ハルトは目を見開き、その場に固まった。目をこすって、もう一度見ても何も変わらない。

その事実に、ハルトは背筋が凍るような怖気を覚えた。

本来なら生死問わず、この世界に閉じ込められた全プレイヤーの名前が刻まれているはずの《生命の碑》。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにHalphas(ハルファス)の名前は存在していなかった。




・'(ハル)'の名前を持つ者達
'ハル'トと'ハル'ファス。今後の重要ワードになる予感?(※コ'ハル'にも一応(ハル)の名前が付きますが、この二人の関係とは無関係です)

・《フォルネウス》、《ドミニオン》、《アルバトロス》
この回からのハルトの武器は全てルクスインテグラルシリーズ(SAOIFに登場する取得するのが非常に困難な武器)になっています。

・血の繋がっていない両親と嫌悪する弟
キリト同様、ハルトは養子です。また、下の子がいます。違うのは、あっちが妹(直葉)に対して、こっちは弟であるのと、向けられる感情が真逆であることです。

・記憶を失っているハルト
ハルトは生まれてから今の家に引き取られるまでの間の記憶を失っています。

時枝(ときえだ)春斗(はると)
遂に明かされたハルトのリアルネーム。名前はプレイヤーネームと同じです。


というわけで、衝撃な事実が連発で続いた回でした。
そして、少しネタバレになりますが、アインクラッド編(原作ルート)のハルファスの出番はこれで終わりです。奴の再登場はいつになるのやら・・・
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