ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
そこで、今回はSAOIF5周年を記念して、アインクラッド編原作ルートが終わったら執筆予定のフェアリィ・ダンス編の一部シーンを先行公開したいと思います。リーファは勿論、フェアリィ・ダンス編で登場予定の新キャラも登場するのでお楽しみに。
場所は変わって、シルフ領付近の森の上空。
この場所でシルフとサラマンダーの部隊で激しい戦闘が行われていた。
「ヤァ!」
金髪ポニーテールのシルフの少女リーファは、目の前の敵に向けて太刀を振り下ろす。
振り下ろした太刀がサラマンダーの男の体を斬り裂くと、その体は消滅して、小さな赤い火が残った。
この世界で死んだ者はポリゴンではなく、小さな残り火を残して消滅するのだ。
敵を一人倒したリーファだが、その表情は優れない。
なぜなら、自分たちが残り三人しかいないのに対して、敵はまだ多数いるからだ。
リーファは気を引き締めて、迫り来るサラマンダー達を迎え撃つべく太刀を構えると、横からサラマンダーが、こちらに剣を振り下ろしてきた。
「このっ!」
「うっ!」
間一髪、サラマンダーが振り下ろした剣を太刀で受け止めるリーファ。
しばらくの間、剣を打ち合い、鍔迫り合いの状態になる。
しかし、単純な力ならサラマンダーの方が上なのか、リーファは徐々に押されていった。
「(このままじゃ・・・!)」
やられる。そう思ったその時、天から一筋の流星が降り注いだ。
その流星は急速に下降していき、両手に持っていた二本の刀でリーファを襲っていたサラマンダーを一閃した。
二本の刀で体を真っ二つにされたサラマンダーのHPは、あっという間にゼロになり、その体は消滅して、赤い炎と化した。
サラマンダーを斬った流星は、空中で体勢を整えながらその場にとどまる。
流星の正体はシルフの少年だった。黄緑のジャケットの上に緑のフード付きマントを羽織り、雪のような冷たい雰囲気を持つシルフの少年だが、その髪の色は緑や黄色が多いシルフでは異色の白だった。
白髪の少年は宙に浮きながら、周りの様子を確認する。
「右に三人、左に四人か・・・」
左右からこちらに迫って来ているサラマンダーの部隊に、どう対処しようか考えていると、後ろから先程少年に助けられたリーファが声を掛けてきた。
「セツナ君!」
「・・・リーファ、二手に分かれるぞ。お前はレコンと一緒に右の三人を頼む。俺は左の四人を相手する。上手く撒けたら、シルフ領手前の森で合流するぞ」
「ちょ、セツナ君!?」
声を掛けてきたリーファに、ほぼ一方的に指示を出すと、白髪の少年セツナは羽を広げて、左の四人いるサラマンダー部隊の方へ飛んでいく。
こちらに接近してきているセツナの姿を確認したサラマンダーの部隊は、前衛の二人が前に出て、その後ろから後衛の二人が呪文を唱えて、火球を放った。
「フン、そんなもので・・・」
セツナは表情を変えぬまま、次々と放たれる火球を閃光のような速さで躱していく。
しかし、火球は飛行するセツナをしつこく追尾し、セツナが下の森に身を隠した瞬間、火球は一気に集まって、一つの大きな火球となり、そのまま森へぶつかる。
ドカーン!
巨大な火球が大爆発を起こし、森一帯が炎に包まれた。
「やったか!?」
そう言いながら、仕留めたと思い込んだ前衛の一人が、燃えている森を見つめる。
それが思い違いだと気づいたのは、もう一人が自分に向かって叫んだ時だった。
「後ろだ!」
仲間に言われて後ろに振り向くと、すぐ目の前に、セツナが二本の刀を構えながら、猛スピードでこちらに接近していた。
相手に防御する隙も与えず、セツナは体を横に回転させて、サラマンダーの男を斬る。
斬られたサラマンダーの男は、HPがゼロになったことで体が消滅し、残り火と化した。
一人倒したセツナは、飛行しながら体勢を整える。
「この野郎ぉ!」
「!?」
すると、セツナの背後から、もう一人のサラマンダーがランスで奇襲して来た。
セツナは咄嗟に刀を前に出して奇襲を防ぐが、しばらくの鍔迫り合いの後、サラマンダーは一瞬の隙を付いてランスを下から振り上げ、セツナが持っていた二本の刀を上に弾き飛ばした。
「ハハァ!今なら奴は丸ごし――」
「フッ!」
絶好のチャンスと言わんばかりにサラマンダーの男がランスを構えた瞬間、セツナは腰にしまっている二本のダガーを抜き、男の両目に向けて投げた。
「目がぁぁぁぁぁぁ!!」
ダガーが両目に突き刺さり、手で目元を押さえながらパニックになるサラマンダー。
その隙を逃さず、セツナは丁度手元に戻ってきた二本の刀を左右それぞれの手で掴むと、そのままサラマンダーに向けて振り下ろした。
Xの字に斬られたサラマンダーもまた、HPがゼロになり、残り火と化する。
「後二人か・・・」
そう言って、セツナは残り二人のサラマンダーに視線を向ける。
対するサラマンダー二人は、あっという間に仲間を二人倒した少年を警戒して、動けないでいる。
さっさと片付けてしまおうと、セツナが動き出そうとしたその時。
「――ぁぁぁぁぁぁ」
「ん?」
僅かだが、人の叫び声が聞こえてきて、セツナは動きを止める。
しかし、辺りを見渡しても、いるのはサラマンダーの二人だけだ。当然、その二人から発せられているものでもない。
「な、なんだ?」
「どこから・・・?」
サラマンダーの二人も、謎の声に気づき、キョロキョロと辺りを見渡す。
そうしてる間にも、叫び声は段々と大きくなっていく。
「――けてぇぇぇぇぇぇ!」
「・・・上か?」
声の発生源が上空にあると気づき、セツナは上を見上げる。
すると、満月の夜に僅かだが人の影が見えた。その影は、こちらに向かってどんどん近づいていた。
人影は徐々に大きくなっていき、月の光に照らされた瞬間、その正体が明らかになる。
「誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!!」
それは自分と同じシルフと思わしき少女が悲鳴を上げながら、真っ逆さまに落ちている姿だった。
ALOの象徴とも言える羽も出さず、手足をバタつかせながら、ただ真っ逆さまに落ちていくシルフの少女を見つめながら、セツナはポツリと呟いた。
「なんだ、あれ・・・?」