ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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あけましておめでとうございます!今年こそは原作ルート完結させるぞ!
というわけで、新年一発目は青眼の悪魔ですが、一話で収まり切れなかった・・・


ep.51 青眼の悪魔

翌日、ハルトとコハルはナエをサーシャの教会に預けた後、集合場所であるアインクラッド第七十四層の転移門前に向かうため、《はじまりの街》の転移門広場から転移してきた。

 

「転移完了っと・・・って、どうしたの二人共?」

 

転移した二人の視界に入ったのは、険しい表情をするキリトとアスナだった。

二人の存在に気づいたキリトが声を掛ける。

 

「あぁ、二人共。実は・・・」

 

キリトはハルト達が来る前の出来事を話した。

一足先に、集合場所である転移門前に来てたキリトは、アスナ達三人が来るのを待っていた。

そこに、アスナが慌てた様子で転移門から現れ(そこで、少しトラブルがあったが、そこは割愛させていただく)、直後、昨日アスナの後ろにいた護衛の男クラディールが彼女の後を追うように転移門から現れた。

話を聞くに、クラディールは護衛という任務を口実に、アスナの家の前で朝から張り込んでいたらしく、嫌がるアスナを無理矢理連れていこうとしたのだが、それをキリトが制止し、今日はアスナやハルト達と一緒に迷宮区を攻略することをクラディールに話した。

それに激情したクラディールは、口論の末、キリトに決闘を申し出て、キリトはその決闘を受けた。

結果はクラディールの武器を破壊したキリトの勝利。しかし、クラディールは結果を受け入れられず、武器を変えて、再びキリトに斬りかかったが、そこにアスナが割り込み、クラディールの武器を弾き飛ばした。

そして、クラディールに護衛の任務の解任と待機命令を告げると、クラディールは悔しそうな顔で転移門から転移した。

その直後、ハルト達が合流して今に至る。

 

「何それ?完全にストーカーじゃないですか!」

 

一通り話を聞いたコハルが、この場にいないクラディールに怒りを向けた。

それを見たアスナは、彼女を落ち着かせるように口を開く。

 

「まぁ、穏便に済んだし、あなた達が気にする必要はないわ」

 

「もう、アスナは甘いんだから。ちゃんと守ってあげないと駄目ですよ、キリトさん」

 

「な、なんで俺なんだ!?」

 

突然白羽の矢が立たれ、キリトは驚きの声を上げた。

そんなやり取りがあったが、ハルト達は気を取り直して、七十四層の迷宮区へ向かった。

 

 

 

 

その後、七十四層の迷宮区にやって来たハルト達は、順調に攻略を進めていた。

 

「アスナ!スイッチ!」

 

「任せて!」

 

騎士のような格好をした骸骨の攻撃を左右にステップして躱したコハルが、後ろに下がったタイミングを見計らって、アスナが前に出て、骸骨に<スター・スプラッシュ>を放つ。

 

「やっぱり、手練れがいると助かるな」

 

「同感。コハルは勿論だけど、アスナも中々いい動きをするじゃないか」

 

連携しながら骸骨と戦うコハルとアスナを見て、キリトとハルトはそう呟く。

 

「二人共、スイッチ行くよ!」

 

そう言いながら、アスナはレイピアの一撃を盾にぶつけて怯ませる。

その隙に、前に出たキリトが<バーチカル・スクエア>で攻撃し、骸骨の反撃を後ろに跳んで躱すと、入れ替えるように斧を持ったハルトが前に出て、<サージタル・ブラスト>で骸骨に止めを刺した。

 

「ナイス連携」

 

「そっちこそ。コハルとの連携、かなり良かったぜ」

 

「ありがとうキリトさん。最後にこの四人でパーティーを組んでから、かなり経つけど、息ピッタリだね、私たち」

 

「着実に成長してる証拠だよ。後、あの頃の感覚が残ってるってのもあると思う」

 

そんな感じで、迷宮区を進めていた四人だったが、ある程度進めたところで、アスナが何かを見つけた。

 

「見て、あれ・・・」

 

そう言って、アスナは通路の奥に指を指す。

アスナが指を刺した方に近づくと、そこにあったのは、巨大な扉だった。

重厚そうで、いかにもな感じの雰囲気を持つこの扉を見て、四人はこの先がボス部屋であると、瞬時に悟った。

 

「これって・・・ボス部屋だよね?」

 

「あぁ、間違いない」

 

「どうしようか?ボスを見るだけなら、問題ないと思うけど・・・」

 

ハルトがそう言うと、キリトは少し考えながら口を開いた。

 

「そうだな・・・ボスの姿を見るだけなら、特に危険は無さそうだし、姿を見るだけでも、ある程度の推測は立てられる」

 

「分かった。二人もそれでいい?」

 

「私は大丈夫よ」

 

「私も。一応《転移結晶》を持っておいた方がいいかもしれないね」

 

コハルの言葉に全員が頷き、それぞれ《転移結晶》を片手に握り締める。

そして、ハルトとキリトの二人が扉の前に立った。

 

「それじゃあ、ドアを開けたら部屋に入って、ボスが見えた瞬間に即撤退。これでいい?」

 

「OKだ。開けるぞ・・・」

 

ハルトは巨大扉の右側に手を付け、キリトが左側に手を付けたのを確認すると、お互い頷きながら扉を押した。

扉は徐々に開いていき、やがて完全に開き切ったところで止まった。

部屋の中は真っ暗だった。どこを見渡しても、光がある場所は無い。

 

「真っ暗だ。特に目立つ物も無さそうだね・・・」

 

「もう少し進めば、何か分かるか?」

 

「ちょ、進むの!?この暗闇の中を!」

 

「流石に危ないんじゃ・・・」

 

「大丈夫だって。何かあれば、走るか《転移結晶》で逃げればいいし」

 

「どのみち、ボスは部屋から出られないし、ギミックが発動する前に部屋を出てしまえば・・・っ!?何かいる・・・!」

 

ハルトがそう言った瞬間、部屋の隅に青い炎が灯った。

青い炎は次々と部屋の奥まで灯っていき、部屋全体に青い炎が灯った瞬間、中央に巨大な影が見えた。

そいつは、全長くらい4メートルの巨体で体付きも良く、頭には羊のような角が生えていて、瞳は周りの炎と同じような深い青だった。その右手には巨大な剣を持っている。

そして、その悪魔の頭上にHPバーと《ザ・グリーム・アイズ》の名前が表示された。

ボスの凄まじい威圧感に、ハルト達は圧倒されていると、《ザ・グリーム・アイズ》はハルト達を目で捉えた瞬間、右手の剣を持ちながら、物凄い勢いで迫ってきた。

 

「ガァァァァァァ!!」

 

「て、撤退ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「「きゃーーーーーー!!」」

 

すぐさまハルトが撤退を促し、彼らは叫びながらボス部屋から全速力で逃げ出した。

 

 

 

 

「「「「ハァ、ハァ、ハァ・・・」」」」

 

無我夢中でボス部屋から脱出した四人は、迷宮区の安全圏で休んでいた。

 

「あれは苦労しそうだね」

 

「見た感じ、巨大な剣を持ってたけど、多分特殊攻撃とかもしてくるだろうね」

 

「前衛に堅い人を集めて、どんどんスイッチしていくしかなさそう」

 

「盾装備の奴が10人は欲しいな」

 

「盾装備ねぇ・・・」

 

アスナ、ハルト、コハル、キリトの順で口を開いたが、最後のキリトの言葉に、アスナが彼に意味ありげな視線を向けながら反応した。

 

「君、何か隠してるでしょ?」

 

「な、なんだよいきなり・・・」

 

「だって、普通片手剣の最大のメリットは、盾を持てる事じゃない?でも、キリト君が盾を持ってるの見たことがない」

 

「言われてみれば確かに。私やアスナは、盾を持てばレイピアや短剣のスピードが落ちるし、ハルトの場合はクイックチェンジで武器を入れ替える時に、余計な手間が掛かるからだけど・・・」

 

「他にも、スタイルを気にする人もいるみたいだけど、キリト君はそういうのを気にする人じゃないわ。リズに作ってもらった剣(ダークリパルサー)も未だに使ってないみたいだし、怪しいなぁ・・・」

 

そう言って、ジーっとキリトを見つめるアスナ。

その視線に何とか耐えながらも、黙秘を貫こうとしたキリトだったが、そこに別方向からの追撃が来た。

 

「もしかして、キリトはユニークスキルを持ってたりする?」

 

「いぃ!?」

 

「それホント!?」

 

ハルトがそう言うと、キリトは先程よりも大きく反応し、それを見たアスナが更に詰め寄る。

キリトはアスナからの視線を気にしながらも、ハルトにどうしてその考えに至ったのか理由を問う。

 

「なんで、そう思ったんだ?」

 

「キリトがそこまで隠したがるってことは、他のプレイヤーには絶対知られたくないもの。例えば、絶体絶命な状況をソロで乗り越えることができるスキルとか。というか、それぐらいじゃないと、キリトが隠したがる理由が思いつかない。それに、キリトはトッププレイヤーの一人だし、ユニークスキルくらい持っていても、別に不思議でもないさ。それで、結局の所どうなんだい?」

 

推理をしながら再度聞かれた問いに、キリトは気まずそうに顔を逸らしながら答えた。

 

「・・・ノーコメントとだけ言っておく」

 

どうやら、キリトは意地でも答えたくないようだ。

アスナはジーっとキリトを睨んでいたが、諦めたように口を開いた。

 

「まぁ、過剰なスキルの詮索はマナー違反だし、キリト君だって、何か理由があって隠してると思うから、今はこれ以上聞かないことにするわ」

 

「だね。アスナが詮索しないなら、僕もそうするよ」

 

アスナがそう言うと、ハルトもこれ以上詮索しないことにし、その様子を見たキリトはホッと安堵した。

 

「さて、ちょっと遅くなったけど、お昼にしよっか。コハル、あれを出しましょう」

 

「うん、分かった」

 

そう言って、アスナとコハルはストレージからバケットを取り出した。

それを見たキリトとハルトが驚きの声を上げる。

 

「もしかして、手作りか!?」

 

「そうよ。昨日、コハルと一緒に作っておいたの。はい、キリト君の分」

 

「そう言えば、昨日パーティーを組んだ後、二人で何か相談してたけど、これを作ってたのか・・・」

 

「そうだよ。パンに挟む物とか、アスナと一緒に決めてたの。はい、これはハルトの分ね」

 

キリトはアスナから、ハルトはコハルからサンドイッチを貰う。

サンドイッチを受け取ったキリトとハルトは、同時に齧り付いた。

 

「美味い・・・!」

 

「うん、それにこの味・・・なんだか現実世界でよく食べるファストフードの味みたいだ」

 

新鮮な野菜と少し大きめの肉に、甘辛いソースの味が口いっぱいに広がるのを感じた。

 

「大成功ね」

 

「うん、これも一年の修行と研鑽のお陰だね。苦労して作った甲斐があったよ・・・」

 

二人が手を止めることなく、サンドイッチに齧り付いていく様子を見て、アスナとコハルは嬉しそうに微笑んだ。

一旦手を止めたキリトが、サンドイッチについて問い出す。

 

「しかし、どうやってこの味を・・・?」

 

「アインクラッドで手に入る約百種類の調味料が、味覚再生エンジンに与えるパラメーターを全部解析して作ったのよ」

 

「これが、その作った物だよ。手を出して、ハルト」

 

そう言って、コハルは小瓶をストレージから取り出し、中身をハルトに差し出す。

ハルトは手の平に乗せられた紫の液体を舐めた。

 

「この味・・・もしかしてマヨネーズ?」

 

「正解。グログワの種とシュブルの葉、カリブ水を混ぜて作った物だよ」

 

「そして、こっちがアビルパ豆とサグの葉、ウーラフィッシュの骨を混ぜた物」

 

今度はアスナが別の小瓶を取り出し、キリトに差し出す。

出された液体を舐めたキリトは、驚愕の表情になる。

 

「この懐かしい味・・・醤油だ・・・!」

 

「サンドイッチのソースは、これで作ったのよ」

 

「凄いな・・・これを売り出したら、凄く儲かるぞ・・・」

 

キリトは感心した様子で呟いたが、すぐさま自分の言葉を訂正した。

 

「いや、やっぱり売るのは駄目だ」

 

「え?どうして・・・?」

 

「俺の分が無くなったら困る」

 

真面目な顔で言うキリトに、アスナは呆れ顔で口を開いた。

 

「もう、意地汚いなぁ・・・気が向いたら、また作ってあげるわよ・・・」

 

そう呟くアスナの表情は、何処か照れ顔を隠しているようであり、頬も若干赤くなっていた。

 

「これは・・・何やら良い雰囲気だね」

 

「フフッ、私たちはお邪魔だったかな?」

 

そして、その光景をハルトとコハルは微笑ましそうに見守ってた。

その時、フィールドの一部が突如歪み出し、そこから複数人のプレイヤー達がこのエリアに入ってきた。

その中で、会話しながら先頭を歩いていたのは、四人の知る人物たちだった。

 

「フゥー、ようやくゆっくり休めそうな場所に着いたな」

 

「そうだな。今のうちに皆の体力を回復させておこう。この先、何があるか分からないからな・・・ん?」

 

「どした?トウガ・・・お?」

 

そんな会話をしながら歩いてきたのは、クラインとトウガだった。後ろには、それぞれのギルドの仲間たちも一緒だ。

二人はハルト達に気づくと、彼らに声を掛ける。

 

「おぉー、キリト!それにアスナやハルト達も一緒じゃねぇか!」

 

「キリトとアスナはともかく、お前たち二人とは久しぶりだな。ハルト、コハル」

 

「久しぶり、トウガ。まぁ、ここ最近色々あってね・・・」

 

「そうか・・・何やら事情はありそうだが、特に問題が無いのなら、それでいい。何かあれば、いつでも連絡してくれ」

 

「ありがとう、トウガ。トウガ達はクライン達と一緒に攻略を?」

 

「いや、元々俺たち四人で攻略してたんだが、途中でクライン達と会ってな。せっかくだから、彼らと協力して攻略することにしたんだ」

 

「いやー、トウガ達がいてくれて助かったぜ。俺らだけだったら、途中でへばってたところだったぜ」

 

「オーバーな奴だ・・・」

 

そんな感じで、トウガ達と軽く話していると、不意に複数の足音が聞こえてきた。それも、ガシャ!と金属音のような音だった。

音がした方に振り向くと、黒の鎧を身に付けたプレイヤーの集団が歩いていた。

ハルト達はその集団に見覚えがあり、思わず目を丸くした。

 

「あれはアインクラッド解放軍?一層の《はじまりの街》を縄張りにしている奴らが何故ここに・・・?」

 

トウガの疑問は尤もだった。

「アインクラッド解放軍」。二十五層のボス攻略で半壊し、その後も勢力を立て直すことができず、最前線からの撤退を余儀なくされた「アインクラッド解放隊」略称ALSが新たに作り上げたギルド。

彼らは、主に一層の《はじまりの街》で活動しており、未だ《はじまりの街》に閉じこもっているプレイヤー達に、食料や生活品を配布しているらしいが、一方で悪い噂も絶えない。寧ろ、そっちの方が多い。

そんな彼らが、どうして最前線に出てきたのか。しかも、歩いている者達は、何処か疲弊しているように見える。

様々な疑問が浮かぶ中、軍の者達はどんどんこちらに近づいてくる。

やがて、先頭を歩いていたリーダーらしき男が「休め!」と言うと、後ろにいたプレイヤー達は一斉に座り込んだ。

一方、リーダーらしき男は、そのままハルト達に近づき、彼らに声を掛ける。

 

「私はアインクラッド解放軍のコーバッツ中佐だ」

 

「俺はキリト。ソロだ」

 

名前を名乗ったコーバッツに、キリトが代表して前に出る。

 

「君たちは、この先のマッピングは既に済ませているのかね?」

 

「あぁ、ボス部屋の前までな」

 

コーバッツの質問に答えるキリト。

直後、コーバッツは彼らにとんでもない要求をしてきた。

 

「ならば、そのデータを我々に提供してもらいたい」

 

「なんだと!?タダで渡せってのか!テメェ、マッピングするのがどれだけ大変か分かってんのか!」

 

「流石に横暴過ぎると思うぞ。ハルト達が苦労してマッピングしたデータを、火事場泥棒のように奪い取ろうとするとはな。軍はいつから強盗紛いの卑劣なギルドに成り下がったんだ?」

 

コーバッツのあまりにも自分勝手な要求に、クラインが怒りながら反論する。トウガもまた、内心怒っているが、低い声で極力冷静さを保つように言う。

しかし、そんな二人の声に対し、コーバッツは声を大きくしながら力強く言った。

 

「これは強盗などではない!我々は全てのプレイヤーに情報や資源を平等に分配し、秩序を維持すると共に、一刻も早くこの世界からプレイヤー全員を解放するために戦っているのだ!故に、諸君が我々に協力するのは当然の義務である!」

 

「当然の義務だって?ふざけないでください!あなた達が《はじまりの街》の人達に、どれだけ非道な行いをしているのか、知らないとは言わせませんよ!」

 

「そうっすよ!サーシャさんやチビ達にあんなに迷惑を掛けておいて、よくもまぁこの世界の人達を救うなんて言えたもんっすね!」

 

「《はじまりの街》で散々ぬるま湯に浸ってた奴らがよく言ったもんだぜ。その上、自分の思い通りにならなかったら、みっともなくキレ散らかす・・・汚ねぇ大人の良い見本だな」

 

そんなコーバッツの物言いに反応したのは、コノハ、レイス、ソウゴの三人だった。

特にコノハとレイスは、ここ最近サーシャやサチから、《はじまりの街》にいる軍の非道な行いを何度も耳にしており、普段の温厚な彼らからは想像できないような強い怒りを露わにしていた。

 

「貴様ら・・・!我らを侮辱するか・・・!」

 

激情したコーバッツは、腰にある剣に手を掛けようとする。

流石にここで彼らと戦闘になるのはマズいと、そう思ったキリトが口を開いた。

 

「よせ。ちゃんとデータは渡すから、その剣から手を放せ」

 

「おいおいキリト。流石に人が良すぎだろそりゃ!」

 

「良いんだ。どの道、この攻略が終わったら、データは公開するつもりだった」

 

キリトがそう言うと、クラインやトウガ達もそれ以上反論することはしなかった。

キリトはウィンドウを操作し、マッピングのデータをコーバッツに渡す。

 

「提供感謝する」

 

コーバッツはそれを一目通すと、キリトに一言礼を言って、休んでいる部下たちの所に戻った。

そんなコーバッツに、キリトが忠告した。

 

「ボスにちょっかいを出すつもりなら、止めておいた方がいいぜ」

 

それに対して、コーバッツは僅かに振り返りながら口を開く。

 

「それは私が判断する」

 

「!? さっきボス部屋を覗いてきたけど、生半可な人数でどうこうなる相手じゃない!あんたの仲間も疲弊してるじゃないか!?」

 

「私の部下は、この程度で音を上げるような軟弱者ではない!」

 

キリトの言葉を一蹴すると、未だ座り続けているプレイヤー達に怒鳴りつける。

 

「貴様ら、さっさと立てぇ!」

 

まだ疲労が抜けてない様子のプレイヤー達は、コーバッツの言葉に従って、よろよろと立ち上がる。

コーバッツは部下たちが立ち上がったのを確認すると、ボス部屋の方へ歩き出した。

 

「大丈夫なのかよ?あの連中」

 

クラインが彼らの背中を眺めながら呟く。

 

「ほっとけよ。ああいう連中は、所詮口だけだ。どうせ、ボスの部屋に入ったら、チビって、その場から逃げ出すに決まってんだろ」

 

「そうだな。あんな連中に、俺たちが義理を掛けてやる必要はない。それに、指揮官が無能じゃなければ、あの戦力でボスに挑もうだなんて馬鹿な真似はしないだろう・・・多分な」

 

放っておくべきだと言うソウゴとトウガだったが、トウガは先程のコーバッツの傲慢な態度を思い出し、少し不安な様子だった。

それは、キリトも同じであり、少し悩んだ後に口を開いた。

 

「一応、様子だけ見に行くか」

 

「・・・あの男は腐ってもレイドリーダーだ。流石に引き際を見極めるくらいの力はあると思うぞ?」

 

「俺もそう思うさ。でも、万が一もあるかもしれないだろ?」

 

「だね。何かあってからじゃ遅いからね。うん、僕も様子を見に行くべきだと思うな」

 

「全く・・・ハルトはそうだが、お前もとんだお人好しだな」

 

そう言って、困った笑みを浮かべるトウガだったが、一応は納得し、これ以上反論することはしなかった。他の者達も、やれやれといった様子だったが、反対することはなかった。

そして、キリト達は軍の者達を追いかけるべく、ボス部屋に向かって、歩き出すのであった。




・トラブル
トラブルについては、原作かアニメをどうぞ。キリアス好きには堪らない内容です。

・アスナとクライン
原作ではお互い初対面みたいな感じのアスナとクラインですが、この世界線では既に何回か会話して、五層やそれ以降のボス攻略でも一緒に戦っているので、友人とまではいきませんが、知り合いの攻略仲間みたいな認識になっています。故に、クラインは原作のような自己紹介はしてないです。無論、「風林火山」の面々も原作みたくアスナに詰め寄ることはしませんでした。

・コーバッツ
「アインクラッド解放軍」所属のプレイヤー。非常に自分勝手で、部下に対する気遣いや優しさゼロ。


ちなみに、最初はザントも参戦させる予定でしたが、コーバッツはザントが嫌悪する弱者のタイプに当てはまる人物であり、最悪《ザ・グリーム・アイズ》に斬られる前に、ザントに斬られる恐れがあったので、彼の出番はボツになりました。
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