ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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青眼の悪魔も終わり、アインクラッド編原作ルートも終わりが見えてきました。
今回は短めです。


ep.53 ユニークスキルVSユニークスキル

七十四層での死闘から数日後、ハルトとコハルに一つの知らせが届いた。

それは、つい先日アインクラッド第七十四層のボスを倒した《黒の剣士》キリトと「血盟騎士団」の団長ヒースクリフが決闘するという内容だった。

その知らせを聞いた二人は、デュエルが行われるアインクラッド第七十五層の主街区《コリニア》にあるコロシアムにやって来た。

 

「凄い人だね。攻略組から中層や低層の人達までいるよ」

 

「それだけ皆、今日の決闘を楽しみにしているんだよ」

 

コロシアムの前にいながら、二人は目の前の光景に驚いていた。

入口の方には、何十人ものプレイヤーが長い行列を作っていて、コロシアムの周りには複数の屋台が並んでおり、最早一種のお祭り騒ぎのような状態だった。

目の前の光景に驚きながらも、ひとまず列に並び、コロシアムの中に入る。

入口だけであれだけの人数だったのだから、当然、観客席もほとんどが埋まっていて、何とか空いている席がないか探していると、二人に声を掛ける者がいた。

 

「あぁ?ハルトにコハルじゃねぇか。しばらくぶりだな」

 

「ザント!」

 

「ザントさん!お久しぶりです!」

 

こちらに呼びかけてきたのはザントだった。その傍には、彼の相棒であるラピードが座っている。

丁度、彼の隣の席が二席分空いていたので、ハルト達がその席に座ると、ザントが話しかけてきた。

 

「アルゴの野郎から聞いたぜ。この間は災難だったな。軍の馬鹿どもの尻拭いをさせられて」

 

「アハハ・・・まぁ、体が勝手に動いたって言うか・・・」

 

「たく、使えねぇ雑魚共を助けるとはなぁ。相変わらずのお人好しだな。お前もキリトも・・・まぁ、いい。で、お前らはどっちが勝つと思う?」

 

ザントからの問いに、二人は少し考えながら答える。

 

「・・・ヒースクリフの<神聖剣>はかなり厄介だ。けど、僕はキリトが勝つと思うよ。あの時のキリトの早さなら、あの固い防御も破れるかもしれない」

 

「私もそう思う。それに、キリトさんは私たちの友達です。応援するなら当然キリトさんを選びます」

 

「まぁ、感情面での理屈はともかく、確かにキリトの野郎のユニークスキル・・・確か<二刀流>だったな。俺は直接見てねぇから、どういったスキルか知らねぇが、少なくともとんでもねぇスキルなのは確かだ。そうでなきゃ、単独でボスを殺し切ることなんざできやしねぇ」

 

そう言うザントだが、目を細めながら言葉を続ける。

 

「だが、スキルのヤバさなら、ヒースクリフの<神聖剣>も負けちゃいねぇ。巧みな剣技にあの強力な防御力。ハッキリ言って、異常だぜありゃ」

 

「それ言ったら、ザントさんのユニークスキル(・・・・・・・)も十分異常だと思うんですけど・・・」

 

「ハッ、たかが両手剣を片手で持てるようになっただけで異常とは笑わせんな。どれだけ攻撃を受けようが、一度もHPバーがイエローにならねぇ、ヒースクリフの方が異常だろ」

 

「それはまぁ、そうかもしれませんけど・・・」

 

コハルの意見をバッサリ切り捨てたザントは、ヒースクリフの<神聖剣>について思い返す。

ここで話しておくが、ザントもまたユニークスキルを持つプレイヤーの一人である。

スキルの説明は後にしておくとして、彼が己のユニークスキルを初披露したのは、五十層のボス戦の時だ。

この時のボスは、クォーター・ポイントのボスであったこともあり、攻略組は普段のボス攻略よりも苦戦を強いられたが、その危機的な状況を打破したのが、ヒースクリフとザント。二人が持つユニークスキルだった。

彼らのユニークスキルは、瞬く間にボス戦の悪い流れを変えていき、結果攻略組は犠牲者無しでクォーター・ポイントである五十層を攻略することができた。

そんなザントだからこそ、自分と同じくユニークスキルを持つ者であるヒースクリフを強く警戒していた。

ユニークスキルは強力だ。それは、使用している自分が一番良く分かっている。

だが、どれだけ強力な攻撃や防御ができようが、相手から攻撃を食らえばHPは減るし、防ぎ続けても、いつか限界が来る。

だからこそ、どんなに強力な攻撃を真っ正面から受け続けても、HPバーがイエローにならない<神聖剣>と、それを扱うヒースクリフに、ザントは違和感を感じていた。

 

「どちらにせよ、これだけはハッキリ言える・・・ユニークスキルを持ってる奴ら同士の戦いだ。しっかり見ときな。この決闘、ただの決闘で終わるとは思わねぇからよぉ・・・」

 

そう呟くザントの視線の先には、キリトに決闘の申請をするヒースクリフが映った。

それをキリトが受諾すると、カウントダウンが始まった。

両者お互いの武器を構え、カウントダウンがゼロになるのを待つ。

やがて、カウントダウンがゼロになり、決闘が始まった。

 

「ハァ!」

 

初手はキリトからだった。

<二刀流>のソードスキル<ダブルサーキュラー>で攻撃するが、ヒースクリフはそれを盾で防いでいく。

そして、攻撃の隙を付いて、ヒースクリフはキリトに剣を突いたが、キリトは後ろに大きく跳んで躱した。

しかし、ヒースクリフはそのまま距離を詰めて、剣ではなく盾をキリトにぶつけて吹き飛ばした。

 

「盾!?」

 

「ああ言う使い方もできるのか・・・」

 

防御ではなく、攻撃として用いた盾の使い方に、コハルとハルトが驚く。

しかし、吹き飛ばされた当の本人は、すぐに体勢を立て直し、追撃を掛けるヒースクリフの攻撃を後ろに跳んで躱し、反撃に<ヴォーパル・ストライク>で突進する。

ヒースクリフはそれを盾でいなし、両者ここで一旦動きを止める。

 

「す、凄い・・・」

 

白熱する決闘に、観客たちが歓声を上げる中、トッププレイヤー同士のハイレベルな戦いに圧倒されるコハル。ハルトとザントも、彼らと同じくユニークスキルを持つ者として、この戦いを真剣な表情で見ていた。

両者一歩も退かず、互角の戦いを繰り広げていたが、遂にキリトが仕掛けた。

 

「ウォォォォォォ!!」

 

キリトの放った<スターバースト・ストリーム>は、連撃を与えるごとに速くなり、ヒースクリフの防御を徐々に崩していく。

そして遂に、ヒースクリフが持っていた盾が大きく弾かれ、キリトはその隙をついて、渾身の一撃を振るう。

 

「キリトの勝ちだ・・・!」

 

これは防御できない。

そう思ったハルトが、キリトの勝利を確信した様子で口を開いた。コハルやザントも同じことを思っているのか、特に反論しなかった。

だが、次の瞬間・・・

 

キンッ!

 

「なっ!?」

 

「噓・・・!」

 

ヒースクリフが防御不可能と思われたその一撃を防ぎ、それを見たハルト達の目が大きく見開かれた。

そして、ヒースクリフはがら空きとなったキリトの背中を剣で突いた。

そのままキリトは地面に倒れ、ヒースクリフの頭上にWINNERのウィンドウが表示される。

ヒースクリフが勝利し、観客たちが歓声を上げるが、有り得ない光景を目にした三人は、とてもではないが歓声を上げるようなことはできなかった。

 

「い、今、何が起きたの・・・?」

 

コハルが信じられないものを見た顔で呟く。

そんな彼女の問いに、動揺しつつも、冷静さを保ちながらハルトが答える。

 

「・・・キリトの攻撃をヒースクリフが防いで、カウンターでキリトに攻撃して、ヒースクリフが勝ったんだろうね」

 

「そうじゃない!いや、そうだけど!」

 

見た出来事だけ言えば間違っていないが、コハルは声を荒げながら自分の言いたいことを言う。

 

「キリトさんの最後の一撃、あれを防ぐのは普通無理だよ!でも、あんな異常な速度で動いて防ぐなんて、絶対おかしいよ!」

 

「落ち着け。もしかしたら、そいつも<神聖剣>の効果かもしれねぇ。防御する際に、異常な速さで動くことができる効果とかな」

 

そう言ったザントだったが、それを聞いてもコハルは納得してない様子だ。

そんなコハルに、ザントは冷静に告げた。

 

「仮想世界ってのは、未だに分かんねぇことだらけだ。ユニークスキルもその一つだろうな。けど、そう言った現象に対して、一々喚き散らしてんじゃねぇよ。どんなに異常だろうと、今起きたことは全部、仮想世界で起きた事実。たったそれだけのことだ」

 

「・・・そうですね。ごめんなさい」

 

渋々納得したコハルは、ザントに謝った。

しかし、ザント自身もまた、先の決闘に違和感を感じていたらしく、隣にいるハルトに意見を求めた。

 

「お前はどう思った?」

 

「・・・コハルにはああ言ったけど、僕は彼女の考えていることは正しいと思う。キリトの最後のあの一撃、あれを完全に防ぐのは難しいと思う。でも、ヒースクリフは尋常じゃない早さで動いて防いだ。いくら<神聖剣>の力があったと言えど、あれは完全にシステムの常識を覆している」

 

「同感だ。<神聖剣>の力だって言えば、それはそれで納得できるが、どうも腑に落ちねぇ・・・(或いは、システムを細工して、意図的に防御を間に合うようにしたか・・・いや、そんなこと、一プレイヤーであるヒースクリフができるはずがねぇ。そんな馬鹿な真似ができるとしたら、このSAOを管理していると思われる奴・・・この世界を作った男ただ一人・・・)っ!?」

 

思考の末、何かに気づいたザントは、ニヤッと笑みを浮かべた。

 

「(・・・そうか。そういう事か。確かに、あの人(・・・)なら、ぜってぇそうするな・・・)」

 

ある一つの答えを導き出したザントは、ハルト達と別れると、ある場所に向かった。

彼が向かった場所はどこなのか。それは、彼にしか分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、ハルトとコハルの下に、キリトとアスナの結婚報告のメッセージが届いた。

過程はどうであれ、ようやくかと思いながらも、二人はキリト達にお祝いのメッセージを送るのであった。




・ザントのユニークスキル
今言えるのは、両手剣を片手で持てるです。スキルの名前や詳しい説明については、また後日(スカルリーパー戦で紹介する予定です)。

・五十層のボス攻略について
ここら辺の話は、SAOIFルートでやる予定です。無論、ボス前の出来事等も含めて。

・問題のシーン(ヒースクリフ、チート速度で防御の場面)
この地点でヒースクリフに違和感を感じた三人だが、コハルは渋々納得し、ハルトは未だ納得せず違和感を感じたまま。そして、ザントは何かに気づいた模様!?


決闘を見終えて、帰ってきたハルト達が家でイチャイチャしてる一方、裏でひっそりと退場させられたゴドフリーさんに合掌!(クラディール?「血盟騎士団」にそんな男は、元々いなかったではないか)
次回はいよいよあの子が登場します。ナエちゃんとの絡みにもご期待ください。
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